2015年09月25日

VW社、排ガス不正 [The Economist]



フォルクスワーゲン社(Volkswagen)の不正(falsification)が明るみに出た。

The German carmaker has admitted that it installed software on 11m of its diesel cars worldwide, which allowed them to pass America's stringent NOx-emissions test.

ドイツの自動車メーカー(フォルクスワーゲン)は、アメリカの厳しい窒素酸化物(NOx)排出規制を回避するためのソフトウェアを、世界中の1,100万台のディーゼル車に搭載していたことを認めた。

But once the cars were out of the laboratory the software deactivated their emission controls, and they began to spew out fumes at up to 40 times the permitted level.

ひとたび試験場を出た車は、排ガスを制御するソフトウェアの動作を停止し、最大で基準の40倍の有毒ガス(fumes)が放出される。






窒素酸化物(NOx)をはじめとする有毒ガスは、早期死亡(early deaths)の原因とされており、アメリカだけで年間5万8,000人が死亡しているという。フォルクスワーゲン社の不正は決して犠牲なき犯罪(victimless crime)ではない。

同社のマルティン・ウィンターコルン(Martin Winterkorn)最高経営責任者は辞意を表明。また、スキャンダル発覚後の4日間で、株価はその3分の1が吹き飛んだ(約260億ユーロ、およそ3兆5,000億円)。

フォルクスワーゲン社にとってのクリーン・ディーゼル(Clearn Diesels)は、アメリカ市場の弱点(weak point)を突いた重要な戦略の一つであり、世界一のトヨタを凌がんとする一手でもあった。がしかし、いまや画餅に帰した。



アメリカのゼネラル・モーターズ社(General Motors)にも、点火スイッチ(ignition-switch)の欠陥問題があった。その不具合から少なくとも124人が死亡し、275人が傷害を負ったとされている。

独フォルクスワーゲン社の不正が意図的(deliberate)なものと見られているのと同様、米ゼネラル・モーターズ社もまた、事前に不具合を知ってたのではないかと疑われている。両社とも、安全よりも利益を優先させた(put profit before safety)のではなかろうか。

米ゼネラル・モーターズ社の場合、法廷で真相を追求されることなく、9億ドル(約1,000億円)の罰金で和解しているが、アメリカではそうした多額の罰金がビジネス化している(fining business)との問題がもちあがっている。



アメリカに比べ、ヨーロッパの排ガス規制はゆるいという。

In Europe, emissions-testing is a farce. The carmakers commission their own tests, and regulators let them indulge in all sorts of shenanigans.

ヨーロッパの排ガス試験はまるで茶番(farce)だ。自動車メーカーは自社でテストを行う権限が与えられており、規制当局はあらゆる種類の不正行為(shenanigan)をさせるがままにさせている。

Such as removing wing mirrors during testing, and taping up the cracks around doors and windows, to reduce drag and thus make cars burn less fuel.

たとえば燃費を向上させるために、テストの間はドアミラー(wing mirrors)を取り外し、ドアや窓の隙間はすべてテープでふさがれる。そうすることで空力抵抗(drag)を減らすのである。

その結果、自動車メーカーが公表する燃費(fuel efficiency)は実地の運転(realistic driving conditions)とは掛け離れる。

This is why the fuel efficiency European motorists achieve on the road is around 40% short of carmakers' promises.

だからヨーローパのドライバーは、自動車メーカーの保証する燃費に40%ほども届かないのである。

ディーゼル車はガソリン車に比べて、二酸化炭素(carbon dioxide)の排出量が少ない。だが窒素酸化物(NOx)の排出は増える。ヨーロッパの窒素酸化物(NOx)排出基準が甘いため、ディーゼル車が好まれることになった。



Some fear that this may be the "death of diesel".

今回のスキャンダルによって「ディーゼル車の死(death of diesel)」を懸念する人がいる。

So be it.

それならそれで良い。

There is still scope to switch to cleaner cars that run on methane, hydrogen and electricity, or are hybrids.

よりクリーンな車に切り替える余地はまだある。メタンガスや水素ガス、電気自動車やハイブリッド車。

If VW's behaviour hastens diesel's death, it may lead at last to the beginning of the electric-car age.

もしフォルクスワーゲン社の行いがディーゼル車の死を早めるのなら、ようやく電気自動車の時代がはじまるのかもしれない。






(了)






出典:
The Economist, Sep 26th 2015
A scandal in the motor industry「Dirty secrets」




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2015年09月18日

立ち上がった日本の学生たち [The Economist]



何万という群衆(a crowd of tens of thousands)が日本の国会(the Diet)を包囲した。日本でのデモといえば、これまでは年配の方々の領域(the domain of elderly)だった。だが、今回は違う。


The student protests are a novelty in a country where the young have been singularly detached from politics.

若者たちが政治に対して極端に無関心なこの国で、学生デモが起こるのは実に珍しいことだ。




こうした20代の若者たちは、昨年(2014)の総選挙で3人の一人の割合でしか投票所に足を運んでいなかった。その彼らが、安倍政権の安保法案に対して反対の意を明確にしているのである。この新しい法案が通れば、アメリカなどの同盟国(allies)が攻撃を受けた場合、日本の自衛隊(Japan's armed forces)が出動することが可能となる。

"They've shown that it's not the action of a marginalised and weirdo few", says Jeff Kingston of Temple University.

アメリカ、テンプル大学のジェフ・キングストンは言う、「彼ら若者たちは、政府に対する抗議が社会のはみだし者や風変わりな少数派による行動ではないことを示している」。

Now students have made street protest normal, even fashionable, with trendy clothes and polite manners.

いまや学生たちは街頭デモ(street protest)をごく普通のことに、そしてよりおしゃれなものにした。流行の衣装に身をつつんだ彼らはたいへん礼儀正しい。

They are the toast of talk shows.

彼らはトーク・ショーで評判(the toast)だ。





今回、国会周辺を封鎖した街頭デモは、日本では過激な行動(a radical act)と報じられている。しかし、暴動のさなかに死者まで出した1960〜70年代の安保闘争と比較すれば、なんと穏やかなことか。

"So we behave well and take our rubbish home.", says Nobukazu Honma, student leader.

学生団体のリーダー、本間信和(ほんま・のぶかず)氏は言う、「私たちは行儀よく行動しています。ゴミは家に持ち帰ります」

Mr Okuda group's ultra-polite tone is a far cry from the student protests of the 1960s and 1970s.

奥田氏のグループの丁寧すぎるほどの声音(こわね)は、1960〜70年代の学生運動とはかけ離れている。

明治大学の奥田愛基(おくだ・あき)氏は、9月15日の参議院に招かれた。SEALDs(Student Emergency Action for Liberal Democracy s)という学生団体の代表として。

He bought a suit in the morning and re-coloured his dyed-brown hair back to fit in with the MPs.

午前中に彼はスーツを買って、茶髪を黒髪に染め直した、国会議員たちに合わせるために。





「あのー、すいません、こんなことを言うのは大変申し訳ないんですが、さきほどから寝ている方がたくさんおられるので、もしよろしければ、お話を聞いていただければと思います。



最初はたった数十人で、立憲主義の危機や民主主義の問題を真剣に考え、5月に活動を開始しました。


この安保法制に対する疑問や反対の声は、現在でも日本中で止みません。つい先日も、国会前では10万人を超える人が集まりました。しかし、この行動は何も、東京の、しかも国会前で行われているわけではありません。私たちが独自にインターネットや新聞で調査した結果、日本全国で2000カ所以上、数千回を超える抗議が行われています。累計して130万人以上の人が路上に出て声を上げています。



強調しておきたいことがあります。それは私たちを含め、これまで政治的無関心といわれてきた若い世代が動き始めているということです。



ある金沢の主婦の方がフェイスブックに書いた国会答弁の文字おこしは、またたくまに1万人もの人にシェアされました。ただの国会答弁です。普段なら見ないようなその書き起こしを、みんなが読みたがりました。なぜなら、不安だったからです。



いったいなぜ、11個の法案を2つにまとめて審議したか。その理由もわかりません。ひとつひとつ審議してはダメだったのでしょうか。全く納得がいきません。



どうかこれ以上、政治に対して絶望してしまうような仕方で、議会を運営するのはやめてください。



私たちは決して、いまの政治家の方の発言や態度を忘れません。3連休をはさめば忘れるだなんて、国民をバカにしないでください。



新しい時代はもう始まっています。もう止まらない。すでに私たちの日常の一部になっているのです。私たちは、学び、働き、食べて、寝て、そしてまた、路上で声を上げます。できる範囲で、できることを、日常の中で。

… 」



こうした学生らによる新しい動きは、さまざまな人を巻き込みながら活性化している。

Minako Saigo, a 28-year-old mother of three, founded a mothers' protest group last July after watching students; about 2,000 people marched under her banner in Shibuya in Tokyo.

3児の母、28歳の西郷南海子(さいごう・みなこ)さんは、学生たちの活動に触発されて、母親たちによる抗議団体(「安保関連法案に反対するママの会」)を7月に立ち上げた。東京渋谷、彼女の旗の下におよそ2,000人がデモ行進をおこなった。

Many in Mr Abe's Liberal Democratic Party are growing nervous about the prime minister's lower approval ratings ahead of an election for the upper house next summer.

来夏に参議院選をひかえる自民党員の多くは、安倍首相の支持率(approuval ratings)の低さに不安を募らせている。

No matter what happens with the security bills, people will not stop protesting, Mr Okuda insists.

安保法案がどうなろうと、国民は抗議を決してやめません、奥田氏(SEALDs)はそう断言した。












(了)






出典:
The Economist, Sep 19th 2015
Protest in Japan; To the barricades, politely




posted by エコノミストを読む人 at 09:25| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月16日

保存されるべき種子 [The Economist]



農業は効率化されたがゆえに、ある特定の作物だけに集中してしまっている。

From the wheat in steaming noodles to the maize of fresh tortillas, just 30 crops now sate almost all of humanity's nutritional needs.

蒸し麺の小麦(wheat)からトルティーヤのトウモロコシ(maize)まで、たった30ほどの作物が現在、人類が求める栄養のほとんどを満たしている。



しかしながら、すべての卵を一つのカゴに入れてしまうのは危険である。

Monoculture carries great risks. A single disease or pest can wipe out swathes of the world's food production.

単一栽培(monoculture)には多大なリスクが内在する。たった一種の病気もしくは害虫が、世界の食物生産すべてを一掃してしまうこともありうる。

増大をつづける世界人口は、2050年までには今の70%増の食料を必要とすることになるそうだ。もし、アジアの洪水がもっと頻繁に、アメリカの旱魃がもっと深刻になるのだとしたら、食料の増産は容易ならざることになる。

Pests are on the move. Since the 1960s, unwanted beasties, spared harsh winter frosts, have moved polewards at an average of around 3km (2miles) a year.

好ましからざる害虫は1960年代から移動を続けている。厳しい冬の寒さを避けてきた害虫らは、年平均3km前後のペースで極地方向へと移動している。

地球全体の平均気温が上昇しているため、害虫にかぎらず病害までが、かつてない地域にまではびこりつつある。



40年前、アジアの水田(paddy fields)では害虫トビイロウンカ(brown planthopper)による大被害があった。その危機を救ったのは、ある野生のマコモ(Indian rice)の遺伝子だった。

The solutions to some of these problems lie in the genes of wild relatives of food crops. This is often cheaper and less controversial than genetic modification.

これらの問題(食糧問題)の解決策の一つは、栽培作物(food crops)の野生近縁種(wild relatives)の遺伝子のなかにある。この方法は、遺伝子組み換え(genetic modification)よりも安価、かつ反対意見が少ない。



種子バンク(seed bank)は現在、740万種のサンプルを保有しているという。種子のサンプルを健全に保つためには、乾燥や冷凍ばかりではなく、一定の繁殖(propagation)を繰り返す必要がある。そうした作業のなかで植物学者ら(botanists)は経験を積み、新たな種の発見へと至っていく。

だが、そうした費用は多大である。種子バンクの多くが1970〜80年代の設立であるため、現在では資金不足、もしくは戦争や火災によって失われてしまったものもある。生物工学(biotech)企業はといえば、金になる特定の作物にしか興味はない。ゆえに、生物の多様性(biodiversity)を維持するためには、政府の力が必要とされることになる。



世界の種子バンクは、135ヵ国およびEUによって2004年に調印された国際種子条約(the International Seed Treaty)にしたがって協力運営されている。

It identifies 35 food crops as so essential to global food security that their genetic diversity should be shared widely.

国際種子条約(the International Seed Treaty)は、35の食用作物(food crops)を世界の食の安全にとって極めて重要な作物と指定しており、それらの遺伝的多様性(genetic diversity)は広く共有されるべきものである。

しかし、生物資源の盗賊行為(biopiracy)に対する規制が、いくつかの国において国際種子条約の履行をさまたげている。

19世紀、泥棒男爵(robber baron)はアマゾンの密林からくすねてきた種子よって、財を築いた。たとえば探検家のヘンリー・ウィックハム(Henry Wickham)は、ブラジルから7万もの種子を得て、アジアにゴムの大農場をつくった。そのような歴史的経緯から、インドなどでは種子サンプルの輸出を禁じたままである。



過去100年のあいだに、作物の遺伝的多様性はその4分の3が失われたとされている。

Preserving what remains is an insurance policy against the effects of climate change. The damage from the brown planthopper came to $1 billion in today's money. Governments should share species and fund seed banks. Their work is a vital safeguard against hunger.

残った種を保全することは、気候変動(climate change)の影響に対して保険証書(an insurance policy)となる。トビイロウンカ(brown planthopper)による損害は、今の金額にすれば10億ドル(約1,200億円)に達しているのだ。政府は種子を共有し、種子バンクに出資すべきだ。そうすることが、飢餓に備える決定的な対抗手段となるのだ。













(了)






出典:
The Economist, Sep 12th 2015
Biodiversity; Growing pains.



posted by エコノミストを読む人 at 16:28| Comment(0) | 自然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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