2011年12月15日

EUの行く手に立ち塞がったイギリスのキャメロン首相。その是非は?


「あの邪魔な英国人め(Those obstructive Birts)」

英国エコノミスト誌 2011年12月10日より



「人気者(the toast)」

ほんの数ヶ月前、イギリスのデビット・キャメロン首相は、ヨーロッパの人気者(the toast)でした。



「恒久的な救済基金(a permanent rescue fund)」

キャメロン首相は、恒久的な救済基金(a permanent rescue fund)の設立を邪魔しませんでしたし(not stand in the way)、アイルランドには救済の手を差し伸べました。



「ヨーロッパ懐疑主義者(Eurosceptic)」

キャメロン首相の属するイギリスの保守党は、ヨーロッパ懐疑主義者(Eurosceptic)の集まりでしたが、その中にあって、キャメロン首相はとても協調的だったのです(accommodate)。



「不実な英国人(the perfidious Brits)」

ところが、今回のEU条約改正(treaty change)にあたっては、キャメロン首相の中の不実な英国人(the perfidious Brits)が復活してしまったようです。

ユーロを救済するための条約改正に対して、反対を明言したのはイギリスだけでした。



「最後通牒(an ultimatum)」

フランスとドイツは、イギリスに最後通牒(an ultimatum)を突きつけたと言います。

EU条約の改正(rewrite)を受け入れろ。さもないとイギリスは孤立するぞ(isolation)、と。



「保護条項(safeguards)」

それでも、キャメロン首相は拒否権(veto)を行使しました。

なぜなら、イギリスの利益(interests)を守る保護条項(safegurads)が盛り込まれていなかったからです。



「サッチャー元首相の影(a whiff of Margaret Thatcher)」

今回のキャメロン首相の言動には、マーガレット・サッチャー元首相の影(a whiff)が感じられたと言います。

かつての鉄の女(the iron lady)・サッチャー元首相は、EUにイギリスのカネ(拠出金)を返せと迫り、今また、キャメロン首相はEUへの権限を取り戻したいと思っているようです。



「柔軟すぎる(too flexible)」

それでも、キャメロン首相の態度は保守党(the Tory)の熱心な議員(the zealots)にとって、柔軟すぎる(too flexible)ようです。



「部分的な解決策(a partial fix)」

EUの改正に関して、部分的な解決策(a partial fix)が考案されました。

総会(convention)、政府間協議(inter-governmental conference)、EU加盟27ヶ国すべての批准は煩雑すぎるので、27ヶ国の指導者による投票(vote)だけで済むようにしたのです。



「喧嘩別れ(a bust-up)」

しかし、この方法では最後の審判(the reckoning)を先延ばしするだけだ(postpone)との意見もあります。その場の喧嘩別れ(a bust-up)だけは避けられる(avert)かもしれませんが…。

遅かれ早かれ(slowly or quickly)、イギリスはユーロ圏諸国から離れつつあるのです(moving apart)。



「よくある英国の反撃(just another British spat)」

EUの古参たち(veterans)は、こうした英国の態度を、よくある英国の反撃(spat)だと見なしているようです。



「曖昧な(equivocal)」

イギリスはEUの前身であるECCに参加した時から、曖昧な(equivocal)態度を取り続けていると言われています。



「シェンゲン協定(the Schengen free-travel area)」

イギリスはEUから拠出金の返還(badget rebate)を達成し、自由な移動を認めるシェンゲン協定(the Schengen free-travel area)に加わらず(stayed out)、ユーロへの参加も見合わせました(opted out)。



「半分だけの協力(half-out of co-operation)」

EUに対して、イギリスの協力は半分だけ(half-out)とも言えます。

共通の防衛政策や外交政策(common defence and foreign policies)は、常に阻止しようとしているかのようです。



「単一市場(the single market)」

それでもイギリスがEUにこだわり続けているのは、単一市場(the sigle market)というものが、それほどに魅力的だからです。

とりわけ、サービスの自由化(freeing up services)という点では、イギリスは最も協力的です。



「ミルクの攪拌(the churning of milk)」

ミルクを攪拌すると(churn)、バターが分離します。

それと同じように、ユーロ圏をかき混ぜた今回の金融危機(financial turmoil)は、イギリスをユーロ圏から分離させたようです。

ユーロ圏諸国は結束を深め(bind closer)、イギリスは自国通貨のポンドにより一層誇りを持つようになりました。



「経済的・政治的な統一(economic and political unity)」

今回のユーロ危機によって、通貨同盟(monetary union)は経済的・政治的な統一(enocomic and political unity)なしには機能しえないということが明白となりました。

この点においては、ヨーロッパ連邦主義者(Euro-federalists)もヨーロッパ懐疑主義者(Euro-sceptics)も一致するところです。



「終着点(the end point)」

ヨーロッパは終着点(the end point)に向きあう時が来ているのかもしれません。

終着点とは、ヨーロッパ国家連合(United Nations)なのでしょうか? それともヨーロッパ合衆国(United States)なのでしょうか?



「連邦主義(federalism)」

ユーロ圏諸国が連邦主義(federalism)へと向かう一方で、イギリスはもっと主権(sovereignty)を取り戻したいようです(regain)。



「排他的な中核勢力(exclusive hard core)」

フランスのサルコジ大統領は、EUの中のユーロ圏を排他的な中核勢力(exclusive hard core)にしたいと望んでいます。より保護主義(protectionist)を強めたいのです。

そして、その中核勢力(hard core)の舵取りは、ドイツとフランスが担うこととなります。



「国の債務と赤字(national debt and deficits)」

ドイツのメルケル首相は、EU各国の債務と赤字(debt and deficits)をより懸念しています。

債務と赤字の規制強化のためには、サルコジ大統領の経済政府(economic government)という構想にも耳を傾けます。



「ドイツとフランスの書簡(German-French missive)」

ドイツとフランスが交わした最新の書簡(missive)は、ユーロ17ヶ国に関するものではなく、EU27日ヵ国すべてに関するものです。

金融規制(regulation)、労働市場、金融取引税(financial-transactions tax)、法人税基盤の共通化(harmonisation)…。



「賛成への見返り(price for assent)」

なぜ、イギリスのキャメロン首相は条約改正に反対したのでしょうか?

賛成すること(assent)への見返り(price)はハッキリしませんでした(unclear)。



「圏内と圏外(ins and outs)」

当局者たちは多くを話し合いました。

EU雇用法の改正、イギリス金融サービスへの保護、ユーロ圏内国(ins)と圏外国(outs)のバランス…。



「ユーロ圏外の国の利益(the interests of the euro “outs”)」

もし、イギリスがユーロ圏外の国の利益(interests)を守る方向へ動くのならば、多くの支持を得られるでしょう。



「特別な保護(special protection)」

しかし、イギリスが自国のロンドン金融街シティに特別な保護(special protection)を求めるならば、多くの理解は得られないでしょう。



「軽くあしらわれる(get short shrift)」

ロンドン金融街シティに関する手前勝手な議論(special pleading)は、EU諸国に軽くあしらわれています(get short shrift)。



「最終的な目的(ultimate aim)」

ユーロ圏外の国々の最終的な目的(ultimate aim)は、イギリスに接近することではなく、ユーロの圏内に入ることなのです。



「弱体化する(debilitate)」

キャメロン首相がEUの進む道に立ちはだかるのならば、イギリス国内は内部分裂を起こして、自らの党も弱体化する(debilitate)恐れもあります。

そのため、キャメロン首相は物議を醸し出すであろう国内での批准(ratification)を避けるため、ユーロに道を譲ることもあり得るでしょう。



「長期的な利益(longer-term interests)」

キャメロン首相にとっての長期的な利益(longer-term interests)は、自らの要求(bidding)を和らげ(moderate)、EUに条約改正の道を開けることかもしれません。



「経済自由主義の推進者(a promoter of economic liberalism)」

イギリスに期待されているのは、単一市場を維持し(preserve)、経済自由主義(economic liberalism)の推進者(promoter)として行動することです。

それこそが、ヨーロッパのためであり、イギリスのためともなるでしょう。



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2011年12月14日

破産の足音が迫るデトロイト(アメリカ)。人種差別問題にまで発展。


「破産に近づくデトロイト(Detroit nears bankruptcy)

逃げ場はなし(Nowhere to run)」


英国エコノミスト誌 2011年12月10日号より



「法的措置(leagal steps)」

12月6日、ミシガン州はデトロイト州の吸収(takeover)に向けた法的措置(leagal steps)を取ったとのことです。

もし実現すれば、デトロイト市は州に吸収される最大の都市になることになります。



「不動産価格の下落(declining property values)」

数十年前から、デトロイト市の不動産価格(property values)は下落しています(decline)。



「裕福な市民(better-off people)」

かつて、デトロイト市に住んでいた裕福な市民(better-off people)は、郊外(suburbs)へと転出してしまいました(flight)。



「なお広大な都市(a still-sprawling city)」

不動産価格(property values)の下落と、裕福な市民(better-off people)の転出は、デトロイト市の税収(revenues)を直撃(hit)。

それでも、なお広大な都市(a still-sprawling city)の行政サービスの費用は、税収減ほどに減りませんでした。



「危機への引き金(the trigger for the crisis)」

そこに、訪れた景気後退(the recession)。

これが、デトロイト市の危機への引き金(the trigger)となりました。



「資金が枯渇する(run out of cash)」

デトロイト市長のデイブ・ビン氏によれば、来年の4月までには資金が枯渇する(run out)とのことです。



「公法第4号(Public Act 4)」

公法第4号(Public Act 4・PA4)というのは、財政難の地方政府にも適用され、州により緊急管理人(emergency manager)が任命されます(appoint)。



「緊急管理人(emergency manager)」

緊急管理人(emergency manager)が任命された市は、市議会議員の権限(the authority)が一時停止されます(suspend)。

そして、緊急管理人が各種の実権(control)を握ることになります(assume)。

ミシガン州では、12月1日にフリント市に対して、緊急管理人を任命しています。



「財政審査(financial review)」

デトロイト市に対しては、12月6日に予備の(preliminary)財政審査(financial review)が始まりました。

この30日間の審査結果次第では、デトロイト市にも緊急管理人が任命されることになります。



「反発(resentment)」

こうした事態に、デトロイト市では反発(resentment)が高まっています。

デトロイト市は、それを望んでもいなければ、必要でもない(not need or want)としているのです。



「大幅な譲歩(big concessions)」

デトロイト市長は、労働組合(the unions)から大幅な譲歩(big concessions)を引き出す必要があります。

賃金削減(wage cuts)、職員解雇(lay-offs)、年金(pensions)、医療保険(health-care)…。



「痛みを伴うが…(while painful,)」

これらの改革(reform)は痛みを伴いますが(while painful)、実行可能(viable)だと考えられています。



「万事休す(the game is up)」

労働組合(the unions)は、もはや万事休す(the game is up)と気付くかもしれないからです。

労組の代表者の中には、壁に突き当たっていると感じている人もいるのです(feel up against a wall)。



「奴隷制の闘争(the fight against slavery)」

この戦いは、人種問題の様相も帯びてきているようです(racially charged)。

ある市議会議員は、奴隷制の闘争(the fight against slavery)と発言しました。



「法律のムチ(a legal lash)」

また地元メディアは、こうも報じています。

黒人が多数を占める都市(black-majority city)に対して、、ミシガン州知事は法律のムチ(a legal lash)を振るっていると。あたかも奴隷の主人(slave-master)のように。



「差別的なやり方(discriminatory fashion)」

ある黒人議員は、PA4(公法第4号)が差別的なやり方(discriminatory fashion)で適用されているとして、その再考(a review)を求めています。

なぜなら、黒人比率の高い都市(high proportions of blacks)にばかり、PA4(公法第4号)が適用されているからです。



「選挙イヤー(an election year)」

アメリカの大統領選挙の年(an election year)に、共和党の白人知事が、民主党の黒人市議をクビにしたとなれば、デトロイト市の騒動はますます大きくなるかもしれません。



「異議(challenge)」

PA4(公法第4号)に対する異議(challenge)は、申し立てに向けてすでに動いており、一定数の署名(signatures)が集まれば、来年11月までPA4は一時失効(abeyance)します。

そして、その後の是非は住民投票(a referendum)に委ねられることになります。



「複雑な法廷闘争(complex legal battles)」

もし、そうなれば、複雑な法廷闘争(complex legal battles)は避けられません。



「ありがたくない結果(an unwelcome outcome)」

しかし、それは有難くない結果(an unwelcome outcome)でもあります。

なぜなら、揉めれば揉めるほど、経済の低迷は続き、芽生えかけている景気回復の芽(green shoots)を摘んでしまうことにもなりかねません。



「不確実性(the uncertainty)」

ビジネスは、こうした先の見えない不確実性(the uncertainty)を最も嫌うのです。



「デトロイト市の破産(a bankruptcy in Detroit)」

最悪の結果は、デトロイト市の破産(a bankruptcy)です。

その悪影響は周辺地域にも広がるはずで、裕福である(wealty)隣のオークランド郡までがトリプルAの格付けを失うかもしれません。



「相当なリスク(risk a great deal)」

デトロイト市を救うための戦いに足を踏み入れたミシガン州知事。

相当なリスク(a great deal risk)を背負い込んでしまったようです。



posted by エコノミストを読む人 at 13:01| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月12日

ヒビ割れたロシアの政権。プーチン氏の去就やいかに。


「ロシアの未来(Russia’s future)

見えてきたヒビ割れ(The cracks appear)」


英国エコノミスト誌 2011年12月10日号より



「管理された民主主義(managed democracy)」

ロシアの民主主義は、管理された民主主義(managed democracy)だと言われています。



「投票操作(vote-rigging)」

メディアには口輪がかけられ(muzzled)、選挙では御しやすい対抗馬(tame opposition candidates)の立候補しか許されず、投票操作(vote-rigging)が行われるのが常のようです。

その結果、プーチン氏率いる政党「統一ロシア(United Russia)」が圧勝するのがお決まりです。



「番狂わせ(upset)」

ところが、今月4日の下院選挙(Duma election)では、とんでもない番狂わせ(upset)が起こってしまいました。



「ギリギリの過半数(a slim majority)」

圧勝するはずの統一ロシア(United Russia)の得票率(share of vote)が、50%を割るまでに低下してしまったのです。

その結果、統一ロシアの議席数はギリギリの過半数(a slim majority)にまで落ち込んでしまいました。



「プーチンなきロシア(Russia without Putin)」

この投票結果でさえ不正があったとして、大規模なデモは「プーチンなきロシア(Russia without Putin)」を叫んで、モスクワの街路を埋め尽くしました。

この大規模デモは、治安部隊(troops)が投入されて、ようやく鎮圧に至りました。



「最大のヒビ割れ(the biggest crack)」

こうした事態は、プーチン氏が権力の座に就いて以来(1999〜)、初めてのことです。

ここに来て、盤石に見えていたロシアの政権(regime)に、最大のヒビ割れ(the biggest crack)が入ったのです。



「偶然の一致ではない(no coincidence)」

このヒビ割れ(crack)は、来期の大統領としてプーチン氏が名乗りを上げたことと、偶然の一致(coincidence)ではありません。

ロシア国民は、プーチン氏の返り咲き(return)に強烈なNOを突きつけたのです。



「正当性(legitimacy)」

プーチン氏の正当性(legitimacy)は、その圧倒的な人気(extremely popular)に裏打ちされていました。

そのため、人権を軽視しようが(contempt)、泥棒政治(the kleptocracy)と呼ばれようが、政権は安定していたのです。



「迫り来るプーチン政治の終焉(an imminent end for Putinism)」

今回の投票結果とその後の大規模なデモを見ると、プーチン氏の人気に陰りが生じ始めたことを示しています。そして、ロシア経済を支えていた石油価格の低迷も、彼の政権に打撃を与えています。

いよいよ、プーチン政治の終焉(end for Putinism)の足音が聞こえ始めたのでしょうか。



「一定の強み(certain strengths)」

陰りが見えたとはいえ、プーチン氏には依然として一定の強み(certain strengths)があります。

なぜなら、ロシアの世論調査によると、57%の人々が強力なリーダーシップを求めており、自由主義(liberalism)を求める人々は32%に留まっています。



「支持率(approval ratings)」

強力なリーダーとしてのプーチン氏の支持率(approval ratings)は、40%前後と高い数字が出ています(操作されていなければの話ですが…)。

この数字を信じれば、来年3月の大統領選挙(the presidency)でプーチン氏が勝利するのは明らかです。



「傀儡(the puppet)」

現在のロシア大統領は、プーチン氏の傀儡(the puppet)とも言われているメドベージェフ氏が務めています。

それ以前、プーチン氏は2期(6年間)に渡りロシア大統領を務めていました。ところが、連続の3選が禁じられていたため、しばし傀儡(the puppet)として、メドベージェフ氏を起用したという次第です。



「交換(swap)」

プーチン氏は大統領を一期休んだことにより、来年の立候補が可能になりました。

プーチン氏は現在のロシア首相ですが、来年、傀儡(the puppet)のメドベージェフ氏と大統領と首相を交換する(swap)予定なのです。



「ブーイング(boo)」

ところが、この交換(swap)計画が発表されるや、プーチン氏はブーイングを食らってしまったのです(booed)。

かつてのロシアでは、プーチン氏にブーイングをかますなど、到底考えられなかったこと(staggring)です。



「チャウシェスクの決定的瞬間(Ceausescu moment)」

このブーイングは、チャウシェスクの決定的瞬間(Ceausescu moment)なのでしょうか?

チャウシェスクの決定的瞬間(Ceausescu moment)とは、甘やかされた独裁者(a coddled dictator)が、民衆の怒り(popular fury)を初めて自覚する(wake up)瞬間のことです。



「利益誘導システム(patronage system)」

プーチン政権(regime)が築き上げた利益誘導システム(patronage system)は、石油と天然ガスに大きく依存するものです(heavily dependent)。

それゆえ、プーチン氏の権力維持のために、ロシア経済はプーチン氏の手の中に固く握りしめられています(tight grip)。



「腐敗と非効率(corruption and inefficiency)」

プーチン氏の手の中で、ロシア経済は腐敗(corruption)と非効率(inefficiency)な状態に長らく放置されています。

そのため、石油価格が110ドル(1バレル)を維持しなければ、ロシア経済が利益を出すことはできません。



「世界経済の見通しの厳しさ(the grim global outlook)」

しかし残念ながら、世界経済の見通しの厳しさは、石油価格をそれほどの高値に押し上げ続けることが難しくなっています。



「資本と人材(capital and talent)」

この暗く硬直化したロシア経済からは、資本(capital)と人材(talent)がどんどんと逃げ出してしまっています(fleeing)。

ロシア経済の未来にチャンス(opportunities)は見い出せないのです。



「憤り(resentment)」

このままロシアの経済成長が滞り、ロシア国民の生活水準(living standards)が向上しなければ、政府に対する憤り(resentment)は募るばかりです。



「矛盾(contradiction)」

こうした政治と経済の矛盾(contradiction)が、20年前のソビエト連邦(the Soviet Union)を崩壊させました。



「ユーラシア連合(Eurasian Union)」

最近のプーチン氏が、外交の優先事項(foreign-policy priority)とするのは、ユーラシア連合(Eurasian Union)です。この連合(union)は、旧ソ連構成国(former Soviet republics)から成るもののようです。

かつてのソ連が崩壊した古傷がロシアに蘇りつつある中、再びプーチン氏がかつての連合を取り戻そうとするのも奇妙なことです(weird)。



「停滞(stagnation)」

プーチン氏は現在のロシアの停滞(stagnation)を正当化することにも熱心なようです。

なぜなら、プーチン氏が支持者に称賛させている「ブレジネフ政権時代(the Brezhnev years)」というのは、安定(stability)が停滞(stagnation)に変わった時期だからです。



「高まる不満(rising discontent)」

腐り続けるロシア政治と、なかなか開放されないロシア経済には、ロシア国民の不満(discontent)も高まらざるを得ません。



「刑事司法のシステム(the criminal-justice system)」

刑事司法のシステム(the criminal-justice system)までが、政府(Kremlin)と財界仲間(commercial allies)の道具と化しています。



「縁故主義(cronyism)」

ロシア国民は、そうした縁故主義(cronyism)を嫌悪しています(loathe)。

しかし、プーチン氏もメドベージェフ氏も、口ばかりで何もしていません。汚職(graft)は蔓延(はびこ)るばかりです。



「さらなる抑圧(more repression)」

ロシアは問題解決のために、さらなる抑圧(more repression)を強める可能性もあります。

今回の大規模デモを治安部隊(troops)により鎮圧したことは、悪い兆候です。



「不正と泥棒の党(the party of crooks and thrives)」

プーチン氏の統一ロシア党(United Russia)は、不正(crooks)と泥棒(thrives)の党と嘲笑されています(derided)。

もしかしたら、プーチン氏は自分の政党と距離を置き(distance)、傀儡のメドベージェフ氏を犠牲者として祭り上げるかもしれません。



「仮想敵(imagined threats)」

経験豊富な観測筋(seasoned observers)は、こんな憶測もしています。

プーチン氏が仮想敵(imagined threats)を作り出し、それを弾圧すること(cracking down)で国民の信頼を取り戻すというシナリオです。



「ヨーロッパ最後の独裁者(Europe’s last dictator)」

その好例(model)は、隣国ベラルーシです。

ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ヨーロッパ最後の独裁者(Europe’s last dictator)と呼ばれている人物です。



「異論を抑える(suppress dissent)」

力で異論を抑える(suppress dissent)ことは、今のプーチン氏には可能かもしれません。しかし、切実な経済問題を抱えたままでは、抑圧(repression)を維持することは次第に困難となっていきます。

それは、かつてのソ連、そして現在のベラルーシが身をもって学んでいることです。



「選挙不正工作(voting fraud)」

また、インターネットに監視される現在、大規模な選挙不正工作(voting fraud)は難しくなりつつあります。



「ロシアの春(Russian spring)」

現在のロシアでは、社会的、政治的な爆発(explosion)が起こる可能性が高まっています。

もしかしたら、ロシアの春(Russian spring)が迫りつつあるのかもしれません。

ちなみに、ロシアの春という表現は、現在の中東アラブ地域で起こっている「アラブの春」という民主化運動を意識したものです。



「政治の均衡(political equilibrium)」

ロシアで起こっている出来事は、政治の均衡(equilibrium)の乱れを示すものです。

かつては安定していたと思われていたロシアの政権も、もはや盤石とは言い切れません。



「ルールに則ったシステム(the rule-based system)」

現在のロシア経済には、ルールに則(のっと)ったシステム(the rule-based system)が構築されていません。

それは多くの西側企業が指摘することであり、外国人投資家たちが痛感していることでもあります。



「心配する理由(a reason for concern)」

心配する理由(a reason for concern)は、今回のデモだけではありません。

北カフカスでは無法状態(lowlessness)が悪化し、周辺地域全体への悪影響も懸念されています。



「硬直(rigid)」

ロシアは安定しているわけではありませんでした(not stable)。

じつは、硬直していただけでした(rigid)。



「皇帝(tsar)」

皇帝(tsar)たるプーチン氏が改革に乗り出さなければ、帝国(realm)の存続は危ういかもしれません。

帝国の存続以前に、皇帝(tsar)自身の去就が問われるところではありますが…。




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2011年12月11日

The best books of 2011「政治と時事問題 (Politics and current affairs)」



Exceptional People





Tide Players





Dancing in the Glory of Monsters





Cables from Kabul





The 9/11 Wars





Pakistan: A Hard Country





Red Capitalism


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2011年12月09日

困窮するヨーロッパの銀行。それほど長くは耐えられない…。


「ヨーロッパの銀行資金(Bank funding)

キャッシュにダッシュ(The dash for cash)」


英国エコノミスト誌 2011年12月3日号より



「厳密な調査(scrutiny)」

通常、1ペニー(1円)を貸し出すのですら厳密な調査(scrutiny)を行うのが銀行というものです。

ところが、今のヨーロッパでは、厳密な調査(scrutiny)を受けるのは、逆に銀行の方だといいます。投資家、企業、預金者(savers)の銀行に対する見方は、それほどに厳しいというのです。



「投資家のストライキ(an investor strike)」

投資家たち(investors)は、あたかもストライキ(strike)を行なっているかのようです。

このストライキにより、銀行側は新規融資(new loans)を中断したり(halt)、売れるものは売却したり、担保にしたり(pawing)と窮々とした状態に陥っています。



「信用収縮(a credit crunch)」

もし、この投資家のストが終わらなければ、ヨーロッパ全域が本格的な信用収縮(a credit crunch)に見舞われかねません。

最悪の場合、取り付け騒ぎ(bank run)や破綻(failures)などの懸念も現実化してしまいます。



「静かなる取り付け騒ぎ(a slow bank run)」

ある意味(in one sense)、静かなる取り付け騒ぎ(a slow bank run)はすでに起こっているとも言えます。

それは銀行債券(bank bonds)の市場においてです。



「凍結する(freeze up)」

7月以降、ヨーロッパの銀行の銀行債市場は、完全に凍結してしまっている(freeze up)とのことです。



「債券の発行(bond issuance)」

7月以降に発行されたヨーロッパの銀行の無担保債券(unsecured European bank bonds)の額は、たった170億ユーロ(約1兆7,600億円)。

これは前同期比の7分の1に過ぎません。



「微々たる額(a paltry amount)」

上記の額は、必要額(the requirement)に照らしてみれば、微々たる額(a paltry amount)の資金調達(funding)です。



「担保付き債券(secured bonds)」

投資家たちが欲しがるのは、こうした無担保債券(unsecured bonds)ではなく、担保付きの債券(secured bonds)なのだそうです。

担保付き債券(secured bonds)であれば、万が一銀行がデフォルト(債務不履行)してしまっても、投資家たちは何らかの資産(assets)を手に入れる(grab)ことができるのです。



「資金調達市場(bank-funding markets)」

現在の銀行の資金調達市場(bank-funding markets)で起きていることは、国債市場(government-bond markets)で起きていることそのままです。



「銀行と政府のつながり(the links between banks and governments)」

というのも、銀行と政府のつながり(links)は表裏一体です。

リーマン・ショックの時は、政府が銀行を下支えしましたが(prop up)、今回は銀行が政府の国債を買い支えています。



「避難所(havens)」

国債の場合、まだイギリスやドイツなどの避難先(havens)が存在します。

しかし、銀行の場合は、ユーロ圏の中核国(core countries)の強い銀行ですら、市場から締め出されてしまっています(frozen out)。



「死活的な資金調達源(a vital source of funding)」

短期のインターバンク市場(short-term interbank markets)は、死活的な資金調達源(a vital source of funding)でしたが、次第に干上がりつつあるそうです(dry up)。



「重要なドルの調達源(a big source of dollars)」

ヨーロッパの銀行にとって、重要なドルの調達源(a big source of dollars)であったアメリカのMMF(マネー・マーケット・ファンド)は、過去6ヶ月で40%以上も融資を減らしている(reduce)とのことです。



「翌日物(overnight)」

各種の資金調達源を失いつつある銀行は、翌日物(overnight)という最も短い貸し借り以外、互いに資金を融通することを嫌がる(reluctant)ようになっています。

そのため、毎晩、あちらこちらの(here and some there)銀行から資金をかき集めなければ、やりくりがつかなくなっているようです。



「悪夢のシナリオ(nightmare senario)」

ある銀行家が悪夢のシナリオ(nightmare senario)と呼ぶものがあります。



「わずかな預金流出(a trickle of deposits leaking)」

それは、わずかな預金流出(a trickle of deposits leaking)が、凄まじい取り付け騒ぎ(a full-flood bank run)に発展してしまうことです。



「考えられないことではない(It is not unthinkable)」

今のところ(for now)、悪夢のシナリオ(nightmare senario)は、ありそうもないように見えます(seems remote)。

しかし、考えられないことではありません(it is not unthinkable)。



「預金の移し変え(shifting diposits)」

ギリシャの預金者(savers)は、ここ一年でセッセと資金を移し変えています(shift)。

イタリアとスペインでも、同じことが始まっています(starting to do the same)。



「もっと遠く離れた(further afield)」

大企業などは、ヨーロッパ中核国ではなく、もっと遠く離れた(further afield)国へと預金(diposits)を移し変えているようです。



「密かに移し変える(quietly move)」

ドイツの自動車メーカー(carmakers)などは、ドイツ国債を買ったり、資金を密かに(quietly)ヨーロッパ中央銀行(ECB)に移し変えたりしているようです。

彼らが金(gold)を買いに走るのも、そう遠い先ではない(not far off)との見方まであります。



「貯め込み(hoarding)」

干上がりつつある銀行は、必死で(desperately)現金の貯め込み(hoarding)を始めているようです。

資産を売却したり、新規融資(new lending)を遅らせたり(slowing)…。



「急激な厳格化(a sharp tightening)」

ある調査によれば、ユーロ圏の銀行のお金を貸し出す基準(与信基準)は、9月に急激に厳格化(a sharp tightening)されたようです。



「規制変更(regulatory changes)」

こうした規制変更(regulatory changes)に泡を食ったのは、ユーロ圏諸国ばかりではありません。

スウェーデンやオーストリアなどの周辺地域にも広く悪影響を与えました。



「ヨーロッパの銀行の撤退(withdrawal of European banks)」

アジアですら、こうしたヨーロッパの銀行の撤退(withdrawal)の煽りをうけて、借り入れコスト(borrowing costs)が増大しているのです。



「再開(reopen)」

しかし、いくらヨーロッパの銀行側が取り引きの規模を縮小したとしても、資金調達市場(funding market)が再開(reopen)しないことには、根本的な解決にはならず、むしろ状況を悪化させてしまいます。



「追加措置(more action)」

今求められているのは、各国中央銀行による追加措置(more action)です。



「ドル不足(a shortage of dollars)」

追加措置(more action)の一つとして、ドル不足(a shortage of dollars)を和らげる(ease)ために、主要6ヶ国の中央銀行はドルの貸出金利を0.5%引き下げました(11月30日)。

それでも、長期債務(longer-term debt)の調達には、さらなる助けが必要だとも言います。



「もう一つの選択肢(another option)」

もう一つの選択肢(another option)として考えられるのは、政府が銀行債務を保証する(guarantee)という案です。

しかし、火の車のようなヨーロッパ各国の財政事情は、この選択肢(option)を除外する(rule out)ことでしょう。



「何もしない(inaction)」

かと言って、何もしない(inaction)ことは、悲惨なことにもなりかねません(could be disastrous)。

銀行が資金調達できない期間が長引くほどに、その破綻の可能性は大きくなるのです。



「車両止め(the buffers)」

ある銀行家は不気味に(ominously)つぶやきました。

「車両止め(the buffers)に向かって、線路をドンドンと進んでいる…」



posted by エコノミストを読む人 at 12:44| Comment(0) | 金融 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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