「あの邪魔な英国人め(Those obstructive Birts)」
英国エコノミスト誌 2011年12月10日より
「人気者(the toast)」
ほんの数ヶ月前、イギリスのデビット・キャメロン首相は、ヨーロッパの人気者(the toast)でした。
「恒久的な救済基金(a permanent rescue fund)」
キャメロン首相は、恒久的な救済基金(a permanent rescue fund)の設立を邪魔しませんでしたし(not stand in the way)、アイルランドには救済の手を差し伸べました。
「ヨーロッパ懐疑主義者(Eurosceptic)」
キャメロン首相の属するイギリスの保守党は、ヨーロッパ懐疑主義者(Eurosceptic)の集まりでしたが、その中にあって、キャメロン首相はとても協調的だったのです(accommodate)。
「不実な英国人(the perfidious Brits)」
ところが、今回のEU条約改正(treaty change)にあたっては、キャメロン首相の中の不実な英国人(the perfidious Brits)が復活してしまったようです。
ユーロを救済するための条約改正に対して、反対を明言したのはイギリスだけでした。
「最後通牒(an ultimatum)」
フランスとドイツは、イギリスに最後通牒(an ultimatum)を突きつけたと言います。
EU条約の改正(rewrite)を受け入れろ。さもないとイギリスは孤立するぞ(isolation)、と。
「保護条項(safeguards)」
それでも、キャメロン首相は拒否権(veto)を行使しました。
なぜなら、イギリスの利益(interests)を守る保護条項(safegurads)が盛り込まれていなかったからです。
「サッチャー元首相の影(a whiff of Margaret Thatcher)」
今回のキャメロン首相の言動には、マーガレット・サッチャー元首相の影(a whiff)が感じられたと言います。
かつての鉄の女(the iron lady)・サッチャー元首相は、EUにイギリスのカネ(拠出金)を返せと迫り、今また、キャメロン首相はEUへの権限を取り戻したいと思っているようです。
「柔軟すぎる(too flexible)」
それでも、キャメロン首相の態度は保守党(the Tory)の熱心な議員(the zealots)にとって、柔軟すぎる(too flexible)ようです。
「部分的な解決策(a partial fix)」
EUの改正に関して、部分的な解決策(a partial fix)が考案されました。
総会(convention)、政府間協議(inter-governmental conference)、EU加盟27ヶ国すべての批准は煩雑すぎるので、27ヶ国の指導者による投票(vote)だけで済むようにしたのです。
「喧嘩別れ(a bust-up)」
しかし、この方法では最後の審判(the reckoning)を先延ばしするだけだ(postpone)との意見もあります。その場の喧嘩別れ(a bust-up)だけは避けられる(avert)かもしれませんが…。
遅かれ早かれ(slowly or quickly)、イギリスはユーロ圏諸国から離れつつあるのです(moving apart)。
「よくある英国の反撃(just another British spat)」
EUの古参たち(veterans)は、こうした英国の態度を、よくある英国の反撃(spat)だと見なしているようです。
「曖昧な(equivocal)」
イギリスはEUの前身であるECCに参加した時から、曖昧な(equivocal)態度を取り続けていると言われています。
「シェンゲン協定(the Schengen free-travel area)」
イギリスはEUから拠出金の返還(badget rebate)を達成し、自由な移動を認めるシェンゲン協定(the Schengen free-travel area)に加わらず(stayed out)、ユーロへの参加も見合わせました(opted out)。
「半分だけの協力(half-out of co-operation)」
EUに対して、イギリスの協力は半分だけ(half-out)とも言えます。
共通の防衛政策や外交政策(common defence and foreign policies)は、常に阻止しようとしているかのようです。
「単一市場(the single market)」
それでもイギリスがEUにこだわり続けているのは、単一市場(the sigle market)というものが、それほどに魅力的だからです。
とりわけ、サービスの自由化(freeing up services)という点では、イギリスは最も協力的です。
「ミルクの攪拌(the churning of milk)」
ミルクを攪拌すると(churn)、バターが分離します。
それと同じように、ユーロ圏をかき混ぜた今回の金融危機(financial turmoil)は、イギリスをユーロ圏から分離させたようです。
ユーロ圏諸国は結束を深め(bind closer)、イギリスは自国通貨のポンドにより一層誇りを持つようになりました。
「経済的・政治的な統一(economic and political unity)」
今回のユーロ危機によって、通貨同盟(monetary union)は経済的・政治的な統一(enocomic and political unity)なしには機能しえないということが明白となりました。
この点においては、ヨーロッパ連邦主義者(Euro-federalists)もヨーロッパ懐疑主義者(Euro-sceptics)も一致するところです。
「終着点(the end point)」
ヨーロッパは終着点(the end point)に向きあう時が来ているのかもしれません。
終着点とは、ヨーロッパ国家連合(United Nations)なのでしょうか? それともヨーロッパ合衆国(United States)なのでしょうか?
「連邦主義(federalism)」
ユーロ圏諸国が連邦主義(federalism)へと向かう一方で、イギリスはもっと主権(sovereignty)を取り戻したいようです(regain)。
「排他的な中核勢力(exclusive hard core)」
フランスのサルコジ大統領は、EUの中のユーロ圏を排他的な中核勢力(exclusive hard core)にしたいと望んでいます。より保護主義(protectionist)を強めたいのです。
そして、その中核勢力(hard core)の舵取りは、ドイツとフランスが担うこととなります。
「国の債務と赤字(national debt and deficits)」
ドイツのメルケル首相は、EU各国の債務と赤字(debt and deficits)をより懸念しています。
債務と赤字の規制強化のためには、サルコジ大統領の経済政府(economic government)という構想にも耳を傾けます。
「ドイツとフランスの書簡(German-French missive)」
ドイツとフランスが交わした最新の書簡(missive)は、ユーロ17ヶ国に関するものではなく、EU27日ヵ国すべてに関するものです。
金融規制(regulation)、労働市場、金融取引税(financial-transactions tax)、法人税基盤の共通化(harmonisation)…。
「賛成への見返り(price for assent)」
なぜ、イギリスのキャメロン首相は条約改正に反対したのでしょうか?
賛成すること(assent)への見返り(price)はハッキリしませんでした(unclear)。
「圏内と圏外(ins and outs)」
当局者たちは多くを話し合いました。
EU雇用法の改正、イギリス金融サービスへの保護、ユーロ圏内国(ins)と圏外国(outs)のバランス…。
「ユーロ圏外の国の利益(the interests of the euro “outs”)」
もし、イギリスがユーロ圏外の国の利益(interests)を守る方向へ動くのならば、多くの支持を得られるでしょう。
「特別な保護(special protection)」
しかし、イギリスが自国のロンドン金融街シティに特別な保護(special protection)を求めるならば、多くの理解は得られないでしょう。
「軽くあしらわれる(get short shrift)」
ロンドン金融街シティに関する手前勝手な議論(special pleading)は、EU諸国に軽くあしらわれています(get short shrift)。
「最終的な目的(ultimate aim)」
ユーロ圏外の国々の最終的な目的(ultimate aim)は、イギリスに接近することではなく、ユーロの圏内に入ることなのです。
「弱体化する(debilitate)」
キャメロン首相がEUの進む道に立ちはだかるのならば、イギリス国内は内部分裂を起こして、自らの党も弱体化する(debilitate)恐れもあります。
そのため、キャメロン首相は物議を醸し出すであろう国内での批准(ratification)を避けるため、ユーロに道を譲ることもあり得るでしょう。
「長期的な利益(longer-term interests)」
キャメロン首相にとっての長期的な利益(longer-term interests)は、自らの要求(bidding)を和らげ(moderate)、EUに条約改正の道を開けることかもしれません。
「経済自由主義の推進者(a promoter of economic liberalism)」
イギリスに期待されているのは、単一市場を維持し(preserve)、経済自由主義(economic liberalism)の推進者(promoter)として行動することです。
それこそが、ヨーロッパのためであり、イギリスのためともなるでしょう。