「ハンガリー政府(Hungary’s government)
独裁色を強めるビクター首相(To Viktor too many spoils)」
英国エコノミスト誌 2012年1月7日号より
「民主主義の規範(democratic norms)」
ハンガリーでは民主主義の規範(norms)が後退(erosion)していると言いますが…。どうやら、首相であるビクター・オルバン氏に批判が集まっているようです。
「思いがけない悪党(an unlikely villain)」
保守的な(conservative)首相であるビクター・オルバン氏。彼は思いがけない悪党(an unlikely villain)でもあるとのこと。
「扇動的な反体制派(a firebrand dissident)」
共産主義の時代(communist times)には、オルバン氏は扇動的な(firebrand)反体制派(dissident)だったそうです。
1998〜2002年、彼はハンガリーの首相を務めます。多少ポピュリスト的だった(populist)とはいえ、多くの尊敬を集めた首相(a respectable)でした(ちなみに当時35歳の彼は、ハンガリーでは史上最年少の首相)。
「フィデス党(Fidesz party)」
オルバン氏の率いる政党フィデス(Fidesz party)は、2010年に政権を奪還(back into power)。3分の2以上の議席を確保する地すべり的勝利を収めます。
「独裁国家(autocracy)」
2012年1月1日、オルバン首相がハンガリー新憲法(a new Hungarian constitution)を施行するや、彼は国の内外から非難を浴びます。
独裁国家(autocracy)に逆戻りさせる気か、と。
「過激なアプローチ(radical approach)」
オルバン首相の過激なアプローチ(radical approach)は、彼の支持者たちによって擁護されています。
その支持者たちに言わせれば、経済的混乱(mess)の収拾、汚職(corruption)の一掃、共産主義の払拭(eradicate)のためには、過激さも必要なのだとのことです。
「大胆な憲法改正(big constitutional changes)」
議席の3分の2の大多数(majority)を押さえるオルバン首相には、大胆な憲法改正(constitutional changes)をするだけの信認(a mandate)があるとも言います。
それが自由主義に反し(illiberal)、愛国的すぎたとしても(nationalist)…。
「独立性を持つはずの各種機関(supposedly independent outfits)」
メディア規制(media regulator)、司法機関(the judiciary)、中央銀行(the central bank)、会計監査の監督機関(audit watchdogs)などは、独立性を持つべき機関(independent outfits)です。
たとえ、議席の3分の2を占めるとはいえ、これら独立性を持つはずの機関(supposedly indepedent outfits)を支配する権限がフィデス党にはあるのでしょうか?
「影響力(leverage)」
ヨーロッパ連合(EU)は、加盟を希望する国には強い影響力(leverage)を持つものの、すでに加盟している国への影響力は限定的です。
そのため、すでにEU加盟国であるハンガリーの行動(behaviour)に対しては、EUのできることは限られてきます。ハンガリーの行動が過激すぎるとしても、EUは軽々しく口も出せなければ、手も出せません。
「中欧最大の債務国(central Europe’s biggest debtor)」
ハンガリーは中欧最大の債務国(central Europe’s biggest debtor)です。
そのため、ハンガリーでは外国人投資家たちの支援が切に必要とされています。しかし、オルバン首相が増大させた政治的リスクによって、投資家たちはすっかり怖気づいてしまいました。
「予備的な信用枠(a precoutionary line of credit)」
さらに、EUとIMF(国際通貨基金)までが、ハンガリー政府に与えようとしていた予備的な信用枠(a precoutionary line of credit)の協議から手を引きました。
つまり、ハンガリーは個人投資家からも、国際機関からもお金を借りられなくなってしまったのです。
「格下げ(downgrade)」
当然のことながら(not surprisingly)、ハンガリーの国債はジャンク(がらくた)にまで格下げ(downgrade)され、金利(interest rates)は上昇、通貨フォリントも大きく価値を下げました。
「抵触する(contradict)」
ハンガリーの新法(the new law)は、EUの条約義務(treaty commitment)に抵触している(contradict)かもしれません。
その新法によれば、同国の中央銀行の独立性が脅かされているからです。
「不利な判決(an adverse judgement)」
もし、ハンガリーの新法を欧州司法裁判所(the European Court of Justice)に提訴すれば、ハンガリーに対して不利な判決(an adverse judgement)が下される可能性もあります。
もしそうなれば、欧州委員会はハンガリー政府と真正面から対立する(confront)ことになるかもしれません。場合によっては、ハンガリーのEU採決への投票権(voting rights)を一時的に無効にするというような厳しい措置も取らざるを得ないでしょう。
「非難する(condemn)」
ハンガリーの反民主的な行動(anti-democratic behaviour)を真っ先に非難した(condemned)のは、アメリカのヒラリー・クリントン国務長官でした。
本来ならば、ヨーロッパの指導者たちが声を上げるべきところですが、EUの指導者たちはお互いに慣れ合いになってしまっているようです(too chummy)。EU首脳陣は、毎月のように首脳会議を開いているのですから…。
「欧州人民党(the European People’s Party)」
ヨーロッパには巨大な政治集団である欧州人民党(EPP)というものが存在します。
この欧州人民党には、ドイツのメルケル首相のドイツキリスト教民主同盟(CDU)や、フランスのニコラ・サルコジ大統領が率いる国民運動連合(UMP)も属しています。
「脅し(threatning)」
そして、ハンガリーのオルバン首相のフィデス党も欧州人民党(EPP)の一員であり、このことはフィデス党の誇りでもあります。
それゆえ、EUの口出しには反発するかもしれないオルバン首相も、欧州人民党(EPP)から追放するぞ(chuk out)という脅し(threatning)には屈するかもしれません。
そして、独裁国家(autocracy)に向かう道から、オルバン首相を引き戻すことができるも欧州人民党(EPP)かもしれません。