英国エコノミスト誌 2012年3月24日号より
「大豊作の年(a bumper year)」
ケール(kale)という野菜が大豊作の年(a bumper year)、Tシャツ職人のミューラー・ムーア氏は、「Eat More Kale(もっとケールを食べろ」と印刷されたTシャツを作りました。
※「bumper」は車のバンパーと同じ綴りですが、その意味は全く異なり、「満杯の・非常に大きい・すばらしい」などとなります。「a bumper crop」で「豊作」。
「ユーモアのない目(the humourless eyes)」
その「Eat More Kale」というフレーズが、大企業チックフィレイ(CHICK-FIL-A)のユーモアのない目(the humourles eyes)に止まったら…、さあ大変。
チックフィレイの「Eat Mor Chikin(もっとチキンを食べろ)」と酷似している(too close)として、クレームをつけてきたのです。
※チックフィレイ(CHICK-FIL-A)とは、アメリカ全土に1,600店舗以上あるチェーン店。毎秒平均9個のサンドイッチを売っているとか。昨年の売上高は40億ドル(約3,300億円)以上。
「警告状(a cease-and-desist letter )」
Tシャツ職人・ムーア氏のもとに送りつけられた警告状(a cease-and-desist letter)。
知的所有権(intellectual property)を侵害しているというのです。
※「cease and desist」で「排除する」という意味になる決まり文句。排除命令(cease and desist order)、停戦(cease and desist fire)など。
「cease」も「desist」も「やめる」という意味。
「不正私用(misappropriation)」
チキンフィレイは、「Eat More Kale」が不正私用(misappropriation)であり、混乱を招く恐れがあると言うのです。
誰一人混乱した人はいないにも関わらず。
「薬物でハイになった人(the stoned)」
かたやTシャツ、かたやサンドイッチ。誰が混乱するのでしょうか?
Tシャツを食べようとしたり、サンドイッチを着ようとしたりするのは、薬物でハイになった人(the stoned)か精神が錯乱した人(the deranged)に違いありません。
※「stoned」は麻薬でラリったり、酒で酔っぱらったりした状態。
「強硬な大企業の商標権担当者(a big firm’s trademark hawks)」
強硬な商標権担当者(a trademark hawks)は相手が小さな企業(個人)だろうが容赦はしません。
ザ・ノース・フェイス(The North Face)は、ザ・サウス・バット(The South Butt)という社名を訴えています(Buttは「尻」の意)。
※「hawk」は鷹のことですが、タカ派などとも言うように「強欲な人・強硬論者」などとなります。
「いじめ(bullying)」
自己防衛(self-defence)を主張する大企業ですが、普通の目で見れば、単なる弱い者いじめ(bullying)にしか見えません。
※「bull」は「雄牛」、「bully」は「ガキ大将」。「bully」には、強気な様を表す一方で、「すてきな・素晴らしい」などの意味もあります。
「便乗する(piggyback)」
他人の名声に便乗(piggyback)しようとするのなら話は別ですが、「Eat More Kale」というフレーズは、困った農家を助けようとしたムーア氏の善意から生まれたものです。
※「piggy」とは「子ブタ」のことで、「piggyback」は背中や肩に乗せて運ぶという意味になります。おんぶ(a piggyback ride)など。
「反抗的なヤツ(A Defiant Dude)」
そんな弱い者いじめ(bullying)をする大企業にムーア氏は怒りました。
フェイスブックなどで資金を募り、「反抗的なヤツ(A Defiant Dude)」と題したドキュメンタリー映画を作成しようと奮闘しています。
※「defiant」は「挑戦的・反抗的・けんか腰」。傍若無人という意味もあります。
「資金潤沢な企業(deep-pocketed corporations)」
公式な法廷の場において、資金潤沢な企業(deep-pocketed corporations)は圧倒的に優位(an enormous advantage)です。
ところが、世論(public opinion)とう場においては、大企業が優位とは限りません。
不買運動(boycotts)や悪評(negative publicity)などは大企業にとって大きな痛手です。そのため、いじめ的な訴えが取り下げられることもままあるようです。
「過ちを認める(eat more crow)」
世論が敵に回れば、大企業もその過ちを認める(eat crow)より他にありません。
※通常、「eat crow」で「過ちを認める」という意味になりますが、ここでは「more」を挟んで「eat more crow」となっています。
それは当然、話題にしてきた「Eat More Kale」や「Eat Mor Chikin」を踏まえてのことでしょう。
※「crow」は「カラス」。まずそうなカラスを食べなければならないことからか、「eat crow」には「屈辱に耐え忍ぶ」という意味もあります。