2012年04月04日

大統領選挙直前のフランス。現実離れしてゆく各候補者たち。

「フランスの未来(France's future)
現実を否定する国(A country in denial)」


英国エコノミスト誌 2012年3月31日号より



「改革の嵐(gusts of reform)」

債務危機の渦巻くユーロ圏の国々では、改革の嵐(gusts of reform)が吹き荒れているようです。

イタリアやスペインでは政権が変わりました。震源地となったギリシャでも税金逃れ(tax-dodging)はもう出来なくなりつつあります。

※「gust」は「突風・にわか雨・燃え上がる炎」などの意味に見られるように、突然何かがほとばしるようなニュアンスがあります。



「放り出す(toss out)」

ユーロ危機以来、ユーロ圏のほぼすべての国での選挙において、現職政権が放り出されてしまいました(tossed out)。

それと同様に、フランスでも現職のサルコジ大統領が破れるという世論調査が出ています。



「取り戻す(claw back)」

ところが、フランスで起こったテロリストによる凶行(terrorist atrocity)のおかげで、サルコジ大統領は勢いを取り戻しています(claw back)。

なぜなら、治安に不安になると、サルコジ大統領のような右派が有利になるからです。

※「claw」は「爪」。「claw back」には「お金を回収する」という意味もあります。



「ひどい経済的苦境(dire economic straits)」

選挙前となると、候補者たちは悪いことを言いたがらないのかもしれません。

フランスがひどい経済的苦境(dire economic straits)に置かれていることに関して、どの候補者も目をそらしているようです。

誰も涙が出るような法外な税金(eye-watering taxes)を課すことには言及しません。

※「strait」には「海峡」という意味もあり、狭い状態を示すようです。それが「窮乏・難局・苦境」といった意味になります。



「羨むほどの経済的強み(enviable economic strengths)」

経済的苦境(strait)どころか、他国が羨むほどの経済的強み(enviable economic strengths)がフランスにはあると主張します。

教育を受けた生産性の高い労働力、幾多とある大企業などなど。



「ガツガツ食べる(gobble up)」

しかし、フランスの公的債務はGDPの90%に達し、公共支出はGDPの56%を占めています。

フランスはユーロ圏諸国のどの国よりも、国民から集めた税金を国がガツガツと食べてしまっている(gobbled up)のです。


お金がなくても平気なフランス人
お金があっても不安な日本人



「慢性的な失業(chronic joblessness)」

フランスの失業率は1990年代後半以来、最悪の水準にあり、ここ30年近く7%を下回ったことはありません。

大都市近郊の郊外地域では犯罪が多発し、慢性的な失業(chronic joblessness)が改善されることはありません。



「博愛心(benevolence)」

それでも現実から目をそむけるのは、フランス国民が国家を愛する博愛心(benevolence)がそれほどに強いからなのでしょうか?



「対決姿勢をとる(square off)」

大統領選挙で対決姿勢をとる(square off)候補者たちは、決選投票(second round)ともなると、その主張を現実的にするのかもしれません。



「逃げ出す(flee)」

もし、現在の非現実的な主張がそのままフランスで実現するのであれば、投資家たちはフランス国債市場から逃げ出して(flee)しまうかもしれません。

そうなってしまえば、フランス国債の利回りは再び急騰し、国家財政が立ち行かなく恐れがあります。

マネーだけではなしに、富裕層(well-off)や若者たちは実際に海を越えて税率の低いイギリスへと渡ってしまう可能性もあります。



セクシーに生きる
― 年を重ねるほどに、フランス女性が輝きを増す秘密



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2012年04月03日

アジア流「倹約的な(frubal)革新」とは? フルーガル・イノベーションの力。


「アジアに起こる革新(Asian innovation)」

英国エコノミスト誌 2012年3月24日号より



「倹約的な考え(frugal ideas)」

アジアの革新を一言で言うならば、それは倹約(frugality)ということになります。

※「frugality」は「質素・倹約・節約」の意。


けちのすすめ
仏教が教える少欲知足



「革命そのもの(the embodiment of a revolution)」

インド企業が作ったナノという小型車は、2,000ドル(約16万円)という世界一の低価格であり、ナノは革命そのもの(the embodiment of revolution)と大宣伝されました(hyped)。

インドの低価格車はアジアの革新の前触れ(a foretaste)となり、その到来を告げた(herald)のです。


タタのすべて


「不要な装飾(the unnecessary frills)」

アジアの技術者たちは徹底的に欧米の製品を再考し(reimagine)、不要な装飾(the unnecessary frills)を全て取っ払ってしまったのです。

※「frill」は洋服などのヒラヒラ(フリル)のことで、「余分な飾り」を意味します。



「誇大広告(the hype)」

残念ながら、世界一安い自動車・ナノはその誇大広告(the hype)の期待に応えることに失敗しました(failure to live up to)。

あまり売れなかったのです。



「革命的な論文(a path-breaking article)」

ナノの販売が思ったより振るわなくとも、アジアで起こった革新は欧米から高く評価されました。

アジアの革新に触発された革命的な論文(a path-breaking article)が欧米で次々と発表されているのです。

倹約的な革新(frugal innovation)が世界を変えていくと。



「展開する(deploy)」

多国籍企業(multinationals)は、新興国で湧き出たアイディアを欧米の先進国に向けて展開しています(deploy)。

たとえば、GEが中国で開発したVスキャンという小型の超音波装置(ultrasound device)は、医師が患者の体内を見ることができる携帯型(portable)の製品ですが、貧しい国でも豊かな国でも同様にヒットしているそうです。

そのVスキャンは今後、聴診器(stethoscope)のように医師にとっては必要不可欠(indispensable)なものとなっていくと考えられているようです。



「逆輸入(reimport)」

今や新興国(the emerging world)でヒットした商品が先進国へと逆輸入される(reimport)ことも珍しくはありません。

巨大店舗で世界を制したウォルマートは、アルゼンチン・ブラジル・メキシコで展開した小型店を、本国アメリカへと逆輸入(reimport)しているそうです。


なぜウォルマートは
日本で成功しないのか?



「共食いする(cannibalise)」

新興国でヒットした安価な製品を先進国で売ってしまうと、今までの高価な製品が売れなくなる恐れがあります。

自社の高い製品が安い製品に駆逐されるという共食い(cannibalise)が起こる可能性もあるのです。

※「cannibalise」には「人間の肉を食べる」という意味もあります。ちなみに「食人族」は「a cannibal tribe」と言います。



「値段を下げる(undercut)」

欧米企業は共食いを恐れて立ち止まっているヒマはありません。アジア企業が続々と安価な製品を背負って、続々と押し寄せて来ているのです。

中国のハイアールという企業はあらゆる家電製品の価格を切り下げ(undercut)、欧米の競合企業をたじろがせています。

ワインクーラーなどは欧米企業の半値で販売し、2年も経たずして巨大なアメリカ市場の60%ものシェアをもぎ取ってしまいました。


ハイアール
ワインクーラー




「根底から(from the ground up)」

世界中の起業家たちは、劇的なコスト削減(radical cost-cutting)のためにあらゆることを根底から(from the ground up)見直し始めています。

ある企業が開発した未熟児(premature babies)用の保育器(infant warmers)が低価格を実現できたのは、そうした努力の成果です。



「最低価格帯(bottom-of-the-range prices)」

欧米の大企業は新興国企業に太刀打ちするために、最低価格帯(bottom-of-the-range prices)での販売を余儀なくされることも少なくないようです。



「物色する(fish)」

大企業といえども安穏としていられる時代ではありません。自らがのし上がってきた弱肉強食の世界が、その牙を自らに向けてきているのです。

世界の頭脳集団(a global brain pool)を物色する(fish)ことは、その戦いを勝ち抜くためには欠くべからざることとなりました。世界を変えるアイディアの多くがアジアで生まれつつあるのです。

そして、アジアで起こった倹約的な革新(flugal innovation・フルーガルイノベーション)は、まさにその大きな一翼を担っているのです。




インド・ウェイ 飛躍の経営


posted by エコノミストを読む人 at 16:04| Comment(0) | 企業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月01日

老人ひしめくインド政治。絶対に死のうとしない古きインド。

「インド経済(India's economy)
失いつつある魔力(Losing its maic)」


英国エコノミスト誌 2012年3月24日号より



「怠惰な成長(slothful growth)」

古いインド経済は、気がおかしくなるような(mind-bending)お役所仕事(red tape)、息が詰まるような(suffoating)官僚主義(bureaucracy)によって、怠惰な成長(slothful growth)しか生み出せませんでした。

※「sloth」はナマケモノ(動物)のことでもあり、古期英語では「slow」の意味。「slothful」で「やる気のない様」を表します。



「加速する(rev up)」

インド経済が加速した(revved up)のは、意欲的な企業(fired-up firms)や有利な人口動態(favourable demography)のおかげだそうです。

※「rev」は「エンジンの回転数を上げる」という意味。「revolution(革命・回転)」の略でもあります。



「ボリウッド映画の悪役(a Bollywood villain)」

ボリウッド映画の悪役(villain)は、絶対に死のうとしない(refuse to die)そうですが、それと同様、古いインド経済も恐るべき再登場(a terrifying reappearance)を果たしてきたようです。

※ボリウッドとは、インドのムンバイの映画産業のことで、ムンバイの旧称である「ボンベイ」とアメリカの「ハリウッド」を合わせた造語。




「舌なめずりする(lick one's chops)」

膨大な人口を抱えるインドは、次の超大国(a superpower-in-waiting)と見なされていたこともあり、多くの世界企業がその巨大市場に舌なめずりしていました(licked their chops)。

※「chop」は「羊や豚などの小さな肉片」の意味。空手などのチョップとも同意であり、切り刻むというニュアンス。



「軌道(trajectory)」

ところが、復活を果たした古いインド経済のせいで、その成長軌道(trajectory)は急降下。

その成長率(the rate of growth)は人力車(rickshaw)並みになってしまいました。

※「trajectory」は「弾丸やロケット、彗星などの軌道」を意味することから、空飛ぶモノを連想させます。そこに、空をも飛ぶ勢いだったインド経済が、急速に失墜した様が思い浮かびます。

※「rickshaw」は日本語である「ジンリキシャ(人力車)」が語源となっているようです。発音は「リクシャー」となります。




「上層部の混乱(the muddle at the top)」


経済成長が減速したことにより、インドの上層部(the top)は混乱状態(muddle)に陥っているようです。

突然、綿花の輸出禁止を発表し、数日後にそれを撤回したり(backtracked)、最高裁の判決を覆して(overruled)、税法(tax code)を変更したり…。



「不機嫌な(sulky)」

突然の税法変更により、ボーダフォンは過去に遡って(retroactively)課税されることになります。

インドに期待していた企業が不機嫌になる(sulky)のも無理はありません。



「したたかな民間部門(a wily private sector)」

巨大で異常な政府を前にしては、したたかな民間部門(a wily private sector)といえども停滞を余儀なくされてしまいそうです。

※「wily」は「狡猾な・陰険な・ずるい」などのように「悪賢い」という意味。



「台無しにする(muck up)」

政府の借り入れブーム(borrowing binge)により、インドの財政赤字はGDP比で10%に近づきつつあり、今までの成長を台無しにしてしまいました(mucked up)。

官僚機構のベトベトとした支配力(clammy grip)は、健全であった新産業(携帯電話など)までをも害し始めているようです。

※「muck」は「家畜のフン・汚物・くだらないモノ」などの意味。「muck up」で「汚す・台無しにする・しくじる」。この単語を使うことにより、インド政府に対する嫌悪感が表現されているように感じます。



「議会での数合わせ(parliamentary arithmetic)」

政権与党である国民会議派は有権者の忠誠(voter'sallegiances)を失ってしまっているため、連立による議会での数合わせ(parliamentary arithmetic)に必死なようです。

その連立パートナー(coalition partners)はと言うと、気まぐれで大衆迎合的(fickle and populist)だそうです。

※「arithmetic」は「算術・算数・計算」の意味。




「世襲の総裁(the hereditary chief)」

与党・国民会議派の総裁はソニア・ガンジー氏であり、世襲の総裁(the hereditary chief)です。

次の君主(the next dynast )も同氏の息子であるラウル・ガンジー氏になるかもしれません。



「自己満足(complacent)」

インドの政治家たちは自己満足(complacent)してしまっているのでしょうか?

その場しのぎの行政(administrative improvisation)はしばらく続きそうです。



「ひしめく老人政治家たち(crowd of gerontocrats)」

お決まりの汚職(the usual graft)や世襲候補者たち(hereditary candidates)が今も目立ちます。

新世代の政治家たちが、ひしめく老人政治家たち(crowd of gerontocrats)を打ち破るのには、何年もかかるのかもしれません。

※「a gerontocrat」の「geron」はギリシャ語で老人。語尾の「-crat」はその一員を示します。たとえば、アメリカの民主党員は「a democrat」となります。





posted by エコノミストを読む人 at 16:16| Comment(0) | アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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