2012年07月26日

原発再稼働に怒れる日本人。それでもまだ温厚(今のところ)。


日本の反原発運動:高まる熱気
Japan's anti-nuclear protests : The heat rises

英国エコノミスト誌 2012年7月21日号より



「整然とした街・東京(a bottoned-up city, Tokyo)」

普段の東京は、特徴のないサラリーマンたち(identikit salarymen)の通勤する、じつに整然とした街(a bottoned-up city)です。その点、アラブの春でみられたエジプトのタハリール広場やリビアとは、わけが違います。



「露わになった怒り(got visibly angry)」

ところが、放射能事故後の原発再稼働がなされるや、日本人の導火線(a fuse)には火がついてしまったようです。

多くの市民がこれほどの怒りを露わにするのは、じつに50年ぶり、ベトナム戦争以来だとも言われています。



「『さよなら原発』集会("Sayonara Nukes" rally)」

気温が30℃を軽く超える猛暑をものともせずに、東京都心に集った人々は7万人とも(警察発表)、17万人とも(主催者発表)。いずれの数字にせよ、ここ数十年では最大規模の抗議集会です。



「1960〜70年代の名残り(the ramnants of the 1960s and 1970s)」

その大規模集会には、かつてベトナム戦争に猛烈抗議したであろう中高年たちが大勢参加していました。衰えていた筋金入りのリベラル派(diehard liberals)が、ホコリをかぶっていた拡声器(bullhorns)を引っ張り出してきたのです。

すでに77歳となった大江健三郎氏(ノーベル文学賞)もステージ上で熱弁をふるっていました。



「回顧的な価値以上(more than nostalgic value)」

今回の集会は、リベラル派や中高年たちばかりのものではありません。かなりの数にのぼる普通の家族(ordinary families)も参加していました。その結果、750万人もの署名が集まったのです。





「世界中の大地震の2割が起こる国(a country with one-fifth of the world's strong earthquakes)」

その地震の国・日本には54基もの商用原子炉(commercial reactors)があります。そして、福島で起きた放射能事故は、世界一密集した大都市・東京の首元に、あわやの大惨事(catastrophe)を突きつけたのです。



「なぜ、そんなに事を急ぐのか(why are they in such a rush?)」

福島の放射能(the radiation)は、いまだ私たちに害を及ぼし続けています。そして、自然災害を軽んじた規制の仕組み(a regulatory structure)にも問題が残ったままです。

そんな中途半端な状況での原発再稼働。「なぜ、そんなに事を急ぐのか?(why are they in such a rush?)」。それは素朴にして直球の疑問です。



「理由の一つはお金(one reason is money)」

国内の全原発が停止してから、日本の燃料輸入(石油・天然ガス)は一日当たり80億円以上も増大し、日本は30年ぶりの貿易赤字(trade deficit)を計上することとなってしまいました。



「選択の余地はない(no choice)」

野田首相に言わせれば、原発再稼働は選択の余地のないものです(no choice)。

原発の夢(the nuclear dream)の終わりは、これまでの巨額の設備投資を無駄にし、日本が世界的なリーダーとなっている原子力産業からの撤退を意味するのです。



「読売新聞と経団連(Yomiuri and Keidanren)」

日本最大の新聞社「読売新聞」、そして日本最強の経済団体「経団連」。この2強の発する警告は、「原発のない日本の将来は悲惨なものになる(dire predictions about Japan's future without reactors)」というものです。

一部の人々は、今まで原発を推進してきた日本株式会社(Japan Inc)の屋台骨である読売新聞と経団連を疑ってかかり、野田首相がすっかり丸め込まれてしまったと嘆いています。



「反原発路線(an anti-nuclear line)」

政府与党の民主党は原発を巡って、2つに割れました。古強者(old warhouse)の小沢一郎氏が反原発路線(an anti-nuclear line)へ向かって走り去っていったのです(その新党に対する国民の関心は予想よりも低いものでしたが…)。



「毎週金曜の夜(every friday night)」

毎週金曜の夜に行われる首相官邸でのデモは、すっかりお馴染みのものとなりました。幸いなことに、今のところデモ参加者たちの行動は、じつに行儀の良いものです(mostly good-natured)。

しかし、彼らのその温厚な態度はいつまで続くのでしょうか(But for how long?)。




子どもたちに伝えたい―― 
原発が許されない理由




英語原文:
Japan's anti-nuclear protests: The heat rises | The Economist

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2012年07月24日

政府に重しを乗せられた「タイの米」


タイ米: 力の弱まる輸出大国
Thai rice: Less paddy power

英国エコノミスト誌2012年7月14日号より



「世界一の輸出国の座(its perch as the number-one exporter)」

タイという東南アジアの国は、30年以上にわたって世界最大のコメ輸出国(the world biggest rice exporter)の座に君臨してきました。

「タイといえばコメ」というほどに、一つの作物がその国を象徴する例は世界でも珍しいです。とくに、香り高いホームマリ(Hom Mali)というタイのジャスミン米は、広く世界に知られるようになりました。



「輸出が44%減(exports had fallen by 44%)」

ところが、今年に入ってからタイ米の輸出は44%も減少しています。この減少を受けて、タイが世界一のコメ輸出国の座をインドかベトナムに明け渡すことがほぼ確実となりました。

タイにとっては30年ぶりの首位転落です。





「政治的なキナ臭さ(unsavoury political taste)」

いったい、タイのコメに何があったのでしょうか? 異常気象でしょうか。去年の大洪水の影響がまだ残っているのでしょうか。

どうやら、問題の根っこはタイの政治にあるようです。



「新助成金制度の影響(the consequence of a new subsidy)」

昨年9月から導入された「コメ担保融資制度(rice-mortgage scheme)」というのは、簡単に言えば、農家に対する新しい助成金(subsid)であり、その仕組みは、農家のコメを高い値段で政府が買い取ることを定めたものです。

タイ政府による買い取り価格は、市場価格のおよそ2倍という高値です。



「与党・タイ貢献党の支持母体(a bedrock of support for the rulling Pheu Thai party)」

なぜ、これほどまでに気前の良い補助金(subsidy)を農家に補償するのかといえば、それは政府与党・タイ貢献党(Pheu Thai party)の支持母体(a bedrock of support)」が、補助金の恩恵を直接受ける小規模なコメ農家だからです。

こうした構図は日本でも見覚えのあるものでしょう。



「コメ輸出業者への損害(disastrous for rice exporters)」

小さなコメ農家にはありがたい新しい補助金制度ですが、大規模な輸出業者にとっては大打撃となってしまいました。

なぜなら、他国へ輸出するよりも国内政府にコメを売ったほうが2倍も儲かるのですから、輸出用のコメが極端に減ってしまったのです。



「高騰した米価(the inflated price)」

輸出に回るコメが減ってしまったため、タイの輸出米の値段は高くならざるを得ませんでした。その高値はお隣りベトナムよりも一万円以上も高く(トン当たり)、また、通貨安の恩恵を受けるインドとも競合できなくなりました。

当然、高いタイ米は他国に売れなくなってしまい、コメ輸出業者は干上がらざるをえず、その一方で政府の米蔵にはドンドンとコメ袋が高く積まれていったのです。





「透明性の欠如(the lack of transparency)」

政府のコメ蔵にどれほどの量のコメが備蓄されているのかは、まったく不透明です(一説には1000トン以上)。また、その備蓄米をいつ、いくらで放出するのかも定かではありません。

この不透明さは、今後の市場を一層歪める危険性をはらんでいます。



「誤った見通し(the mistaken assumpiton)」

ある批判的な向きに言わせると、タイ政府は誤った見通し(the mistaken assumpiton)を立てているのではないか、ということになります。政府が国内のコメを買いだめすれば、コメの国際価格をつり上げられるという誤った見通しを。



「不満のタネ(seeds of discontent)」

どうやら、コメ農家に対する新しい助成金制度は、好ましからざる側面を多々もつようであります。その不満のタネ(seeds of discontent)は、そこかしこにバラ蒔かれており、それらは芽を出しつつあります。

小さな農家に渡るはずの助成金が、仲介業者(brokers)や中間業者(middlemen)の懐に流れているという疑惑も浮上しているようです。

それでも今のところ、タイ政府がその方針を変える気配はありません。その政策が大衆迎合(populist)と非難されてもなお…。







英語原文:
Thai rice: Less paddy power | The Economist

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2012年07月20日

エスカレートし続ける中国叩き(アメリカ)


中国叩き症候群
The China-bashing syndrome

英国エコノミスト誌2012年7月14日号より



「より強硬な政策(a more assertive policy)」

アメリカ大統領選挙に立候補する人物は、前任の大統領の軟弱な対中外交をヤリ玉に上げるのが常のようです。クリントン氏は「独裁者を甘やかしている(coddling dictators)」とブッシュ・シニアを非難し、オバマ大統領は「騙されやすいカモ(a patsy)」とブッシュ・ジュニアを呼んでいました。

そして、今回の対立候補、ミット・ロムニー氏はというと、オバマ大統領を「北京にへりくだる者(supplicant to Beijing)」と言っています。



「言い訳はなし(no apology)」

もともと、ロムニー氏は中国をあまり好んでいないようで、中国に身の程をわきまえさせる必要があると考えています。

ロムニー氏は勇ましくも、大統領に就任したその初日に中国を「為替操作国(a currency manipulator)」に認定すると宣言しています。これは中国からの輸入品に対する関税引き上げへの第一歩となります。





「もう盗ませない(no more theft)」

中国が知的財産権(intellectual property)を無視して偽物や海賊版を乱発することや、国有企業にばかり不公正な補助金(subsidies)を与えていること、また、不当に安い値段でモノを売り続けること、などなど。ロムニー氏はこれらを決して許さないと息巻いています。



「制裁(sanctions)」

ロムニー氏はアメリカ一国だけではなく、先進国すべてが中国に制裁(sanctions)を加えることを望んでいます。中国が諸外国のノウハウを泥棒するのを止めるまで、中国を叩かなければならないのだそうです。



「中国と直接対決する(confront China directly)」

ロムニー氏のウェブサイトの見出しがコレで、中国からの政府調達(government procurement) を停止することも匂わせています。

中国の軍事力に対抗するために、アメリカ軍を増強すること(追加で6隻の軍艦)を約束し、台湾は欲しい武器を何でも自由に買うべきだと主張しています(台湾は中国と睨み合いを続けています)。

それもこれも、思い上がった中国(uppity China)と直接対決するためなのだとか。



「宣戦布告なき戦争(an undeclared war)」

ロムニー氏に言わせれば、中国との戦争はもう始まっているとのことです。そして、その戦争にアメリカはすでに負けている、それはオバマ大統領の中国に対する弱腰が原因だと彼は豪語するのです。



「中国に立ち向かうことを嫌がれば、中国に踏みつけられる(If you're not willing to stand up to China, you'll get run over by China)」

ロムニー氏はこう言い切っています。彼の目算では、アメリカが中国に懲罰的な関税(punitive tariffs) を課したとしても、中国が報復することはない(not dare to retaliate)と考えています。

なぜなら、中国がアメリカに販売する額のほうが2730億ドル(22兆円)も多いのだから、対立がエスカレートしていくほど、アメリカよりも中国の方が失うものが大きいと計算しているのです。つまり、対決しないのはアメリカが損をするだけだと言うのです。





「肩をすくめる(shrug)」

こうしたロムニー氏の強硬姿勢には、みな肩をすくめるしかありません。

ただ、選挙戦中(on the campaign trail)は強気なことを言っていても、いざ大統領になってしまうと、ずっと控えめになる(more temperate)ことも多いのですが…。



「極めて重要な貿易相手国(an all-important trading partner)」

冷静な目で見れば、アメリカにとっての中国は敵というよりも、重要なパートナーです。とりわけ貿易に関しては極めて重要な相手国です。

また、中国はアメリカ国債の最大保有国(the biggest foreign holder)でもあります。つまり、アメリカに一番お金を貸しているのが中国だということです。



「敬遠する(shy away)」

かつてオバマ大統領も中国を為替操作国に認定すると息巻いていた時期がありましたが、結局彼はその約束を実行しませんでした。

米中間の経済を考えた場合、中国を敵に回すことの非は明らかです。直接対決よりも敬遠してしまうほうが結局は利口なのです。



「ピンストライプのシャツを着た金融マン(a pin-striped man of finance)」

ロムニー氏はもともとピンストライプのシャツを着た金融界の人です。そんな利に聡い人物が、経済的な利益に気づかぬはずはありません。

彼はいずれ自らが掘った墓穴から這い上がってくるだろう、というのが大方の見方です。とどのつまり、いくら強がってみても、金融マンに軍服は似合わないということです。





「口先(rhetoric)」

中国側もロムニー氏が口先だけであることを理解してあげているのかもしれません。その証拠に、いくらロムニー氏が過激で暴力的な発言を繰り返しても、中国は一向に警戒感を示さないのですから。



「止めることのできない川(an unstoppable river)」

ロムニー氏がギャーギャー騒ぐ中、中国の習近平氏(国家主席候補)はワシントンを訪れ、米中関係を「止めることのできない川(an unstopable river )」と表現しました。

流れを増し続けるその大河。いくらロムニー氏が弁舌に巧みであろうと、その大河は流れるところに流れていくのでしょう。時にはロムニー氏をまったく無視して…。



「中国叩き(China-bashing)」

いずれにせよ過度な中国叩き(China-bashing)は、あまり品の良いものではありません。しかし、アメリカ大統領選挙においては、中国叩きで相手の上を行こうとする妙な風習が生まれているのも事実です。

昨年、共和党からの立候補を匂わせたドナルド・トランプ氏は「中国はこの国をレイプしている(China is raping this country)」とまで発言しています。



「グローバル化の悩みの種(the bogeyman of globalisation) 」

アメリカ大統領候補による中国叩きがいくら建前上のものだとはいえ、民主・共和両党が中国のことを喜んで「グローバル化の悩みの種(the bogeyman of globalisation) 」と叩いている事実は、アメリカの国益を損なう恐れもあります。

それはあたかもアメリカ全土が中国に敵対心(hostility)を示しているようなものなのですから。



「誰がボスか(Hu's your daddy?)」

ミッシェル・パックマン氏は、「Who's your daddy?(誰がボスか?)」という言い回しを文字って、「who」を「Hu」に替えました。「Hu」とは「Hu Jintao(胡錦濤・中国国家主席)」のことです。

この言葉は、中国に対して卑屈になりすぎるオバマ大統領を批判して、「お前のボスは胡錦濤(中国国家主席)か?」と揶揄したものです。

しかし、この面白くないジョークはアメリカと中国の金銭的な関係を暗示しています。というのも、アメリカは中国からお金を借りている身分であって、 その点、ボスは中国だからです(資本主義の評価基準に従えば)。となると、身の程をわきまえなければならないのは…。







英語原文:
Lexington: The China-bashing syndrome | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 06:04| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月18日

若返った身体、依然硬い脳ミソ…。アメリカ


復活を遂げるアメリカ経済
The American economy: Comeback kid

英国エコノミスト誌2012年7月14日号より



「脆弱な状態(in a tender state)」

アメリカの失業率(unemployment)は8%を超え、経済成長率は2%を下回りそうです(年率換算)。

アメリカ経済が悪い状態にある(in a bad way) という事実は、次期大統領を目指す両候補(オバマ氏、ロムニー氏)、お互いに認めるところです。たとえ選挙戦では両者がお互いの意見を異にして、ののしり合い(slagging-match)をしていたとしても…。



「財政の崖(fiscal cliff)」

そんな脆弱な状態のアメリカ経済には、さらなる脅威(threats)が迫っています。ユーロ崩壊(a euro break-up)、中国の減速(a slowdown in China)、財政の崖(fiscal cliff)…。

財政の崖(fiscal cliff)というのは、今年の年末にアメリカで増税(tax increases)と歳出削減(spending cut)が重なる極めて厳しい事態のことです。





「いびつな経済(the misshapen economy)」

アメリカの経済が停滞したのは、民間の消費が行き過ぎて(excess)、いびつな経済(the misshapen economy)となってしまっていたためです。

収入に見合わない住宅を買い過ぎたアメリカ国民は、その家計債務(household debt)を所得の100%(2000年)から、133%(2007年)にまで大きく増大させていたのです。



「迅速な修復作業(fast repair)」

とはいえ、金融危機後の3年間、アメリカ経済はそのいびつさを急速に修復してきました。

バブっていた住宅価格は、いまや世界でもっとも過小評価されており(undervalued)、適正価格を20%近くも下回っているといいます(エコノミスト誌の住宅価格指数)。



「ユーロ圏とは異なる(unlike euro-zone)」

アメリカ経済の迅速さは、ユーロ圏のノロさとは全く対照的です。

たとえば、アメリカの金融機関・シティグループは即座に1430億ドル(11兆円)の損失を計上しましたが、ユーロ圏ではいまだ300億ドル(2兆4000億円)以上の損失を計上した銀行はありません。

家計債務も急減し、一時の133%から今では所得の114%にまで低下しています。



「活力を増した輸出部門(a more dynamic export sector)」

ドル安(the weaker dollar)の恩恵もあり、アメリカの輸出は好調です。貿易赤字(the trade deficit)は2006年)の6%から、現在は4%にまで減少しています。

この改善は新興国市場の消費拡大に助けられた部分が大いにあります。特に中国への輸出は2007年から比べると50%以上も増加しているのですから。たとえ、大統領候補がどんなに中国の悪口を言おうとも…。



「アプリ経済(app economy)」

新たな強み(new strengths)もあります。アップルやグーグルが育て上げた「アプリ経済(app economy)」は、苦もなく国境をまたいで世界中へと広まりました。そして、アメリカ国内には30万人を超える雇用を生み出しているのです。





「輸入石油への過度の依存(addiction to imported oil) 」

かつて、輸入石油はアメリカ経済にとっての大きなアキレス腱(an Achilles heel)となっていました。輸入石油への大きすぎる依存(addiction)によって、その価格が1バレルあたり100ドルを超えてくると、決まってアメリカ経済は勢いを失っていたのです(2008、2011、2012)。

そんな悪循環を打開したのが、新資源シェールガス(shale gas)です。アメリカの地下に大量に眠るというそのお宝のおかげで、アメリカは天然ガスの純輸出国(net exporter)になろうとしているほどです。





「先駆者(precursors)」

インターネット革命(the internet revolution)がそうだったように、アメリカはシェールガス開発において、世界の先頭に立っています。連邦政府が開発資金を出し、リスクを厭わない起業家たちが、フラッキング(水圧破砕法)という採掘方法を確立したのです。

このスピード感は欧州ではついぞ見られないものでした。欧州のシェールガス開発は環境保護規制(green rules)や限定的な財産権(limited property rights)によって阻まれたままです。



「ほとんど失業率を下げない(do little to reduce unemployment)」

アメリカ経済の変革を主導する企業は、生産性が非常に高いゆえに、多くの人員を必要としません。この点、労働者にとっては非情であり、格差を広げる割にはそれほどの雇用を生み出しません。

しかし、改革の進まぬまま年老いてゆくヨーロッパに比べれば、アメリカに吹き始めた新しい風は、新たなバランスと繁栄を同国にもたらす可能性を秘めています。



「害を与えないこと(do no harm)」

民間による新たな胎動を生かすため、政府には何ができるのでしょうか。エコノミスト誌が助言するは「まず、害を与えないこと(First, do no harm)」だそうです。

というのも、すでにシェールガス(天然ガス)の輸出を規制する提案がなされたり(民主党)、中国を敵に回す作戦が蠢いていたり(共和党)もするからです。

そうした好ましからざる動きに対して、エコノミスト誌は皮肉を込めてこう言っています。「投資と生産をくじくためには、実に優れた戦略だ(a brilliant strategy to discourage investment and production)」と。



「倒壊寸前の公共サービス(ramshackle public services)」

民間の俊敏さ(an agility)に対して、政府方はの鈍さ(sluggishness)ばかりが目に付きます。荒れ果てた道路(dilapidated roads) 、世界一高い医療システム、複雑怪奇な移民制度(a Byzantine immigration system)…。

当記事、および今週号の表紙には、「顔は老人で身体が筋肉ムキムキの若者」という奇妙な人物像が描かれていますが、それは政府と民間の温度差(ギャップ)を示しているようです。





民間から沸き上がる活力。それが十分に生かされるか否かは、司令塔である政府、そして新たな大統領のサジ加減一つで吉凶どちらへも転びうるということでしょう。

政治の茶番劇が続けば、今年の末にも財政の崖(fiscal cliff)から落っこちる危険性も残されているのです。昨年の夏、同様の茶番劇によってアメリカが世界最高の格付けを失ったように…。

残念ながら、今のところ身体(民間)ばかりが若々しくリフレッシュして、頭(政府)の方はいまだ老化したままのようですが…。



原文記事(英語):
The American economy: Comeback kid | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 07:02| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月16日

もっと評価されて然るべし。アジアの有能な女性たち


アジアの女性管理職:未開発の人材
Woman managers in Asia : Untapped talent

英国エコノミスト誌 2012年7月7日号



「性差別(sexism)」

アジアで横行する性差別(sexism)は、そうでない企業(non-chauvinist firms)を利するといいますが…。



「大きく遅れをとっている(lag far bihind)」

欧米社会では、およそ10〜20%の女性が、上級管理職(upper anagement)や取締役会(company boaards)に名を連ねるということです。それに対して、日本の場合はその十分の一、たった1〜2%です。



「例外(exception)」

アジアと一口にいえども、その域内でも各国によって大きな差があります。最も女性管理職の割合が高いのはオーストラリア。その割合は欧米のそれと同等です。また、シンガポールの女性管理職の多さも際立っています。

一方、最も低いのは日本と韓国。両国ともに豊かな国家でありながら、女性が取締役会の席に着く可能性は、男性がお茶を出す可能性ほどに低いと、エコノミスト誌に揶揄されるほどです。





「労働参加率(labour-force participation)」

アジアにおける女性の管理職の少なさは、労働参加率(labour-force participation)の低さもその原因の一つです。欧米における女性の労働参加率はおおむね60〜70%ですが、アジアはそれを一段下回ります。

この点、日本や韓国は50%を越えており、アジア諸国の中では高いほうの部類に属します。一方、低いのはインドです(30%)。



「不平等な教育(unequal education)」

インドでは、仕事につく前の教育の段階で、すでに女性は不平等(unequal)です。インドの名門大学IIM(Indian Institutes of Management)に入る女性は、全学生のわずか10〜15%程度にすぎません。



「二重の負担(the double burden)」

欧米でもアジアでも、女性は二重の負担(the double burden)にさいなまれます。それは仕事と家事(domestic responsibilities)です。

家事に足を引きずられる女性は、男性のようにいつでも海外出張になどは行けません。また、保育(child-care)などの公共サービスも十分とは言えません。



「戦略的な優先事項(a strategic priority)」

家事や育児の負担などは欧米とアジアで共通ですが、両世界の考え方が最も異なるのは、女性を戦略的に用いるかどうかという点です。

欧米では、女性を戦略的な優先事項(a strategic priority)として雇用し、管理職を与えます。なぜなら、管理職に女性が多い企業ほど業績が良いということが数字で示されているからです。

ところが、アジアの企業でそうした意識は極めて低いようです。ある調査によると、およそ7割のアジア企業が、女性を戦略的に用いようとは考えていませんでした。



「アジアにおける性差別の恩恵(benefit from Asian sexism)」

アジアの企業が女性を積極的に用いないおかげで、欧米企業は楽々とアジアの優秀な女性たちを採用することができます。たとえば、アメリカのハイテク企業・シスコなどのように。

また、日本の資生堂などは女性を用いることによって成功した、アジアでは珍しいケースです。



「難しい売り込み(hard sell)」

アジアで女性を売り込むのはまだ難しいようです。地域によっては、文化による制限(cultural constraints)も見られます。

それでも、そんな恵まれない環境にも関わらず、アジアの女性たちの学歴・資質が高まっているという報告もあります。さらに、女性は男性よりも企業への忠誠心が高いとも言われています。

「あと5年か10年すれば」、アジアの女性はもっともっと評価される時代となるのかもしれません。この記事は、そんな希望で締めくくられています。





英語記事・原文:
Women managers in Asia: Untapped talent | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 10:10| Comment(0) | アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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