日本の選挙:第3極の小政党群
Japan's elections : Pole dancers
英国エコノミスト誌 2012年11月24日号より
「自由でもなければ、民主でもない(neither liberal, nor democratic)」
自民党(Liberal Democratic Party・LDP)をからかう言葉にこんなものがあります。「自由でもなければ、民主でもない(neither liberal, nor democratic)」。口さがないエコノミスト誌に言わせれば、「まともな政党(a proper party)ですらない」となってしまいます。
「寄せ集め(a ragbag)」
それでも自民党は、反社会主義からなる雑多な派閥(anti-socialist factions)を寄せ集めてできた1950年代以来、半世紀以上にわたって何だかんだと団結を維持してきました。
2009年に綻びが生じるまでは…。
「歴史は繰り返す(history is repeating itself)」
歴史は繰り返すかのように、日本には再び雑多な政党群が乱立しています。今月(12月)に行われる総選挙(general election)には、じつに14もの政党が参戦することになっています。
この雑多さは第二次世界大戦の敗戦以来といえるでしょう。
「日本再生への想い(desire to revitalise Japan)」
日本を建て直さねばと立ち上がった各新政党の思い(desire)は、その政党名にも表れています。
「Restoration(維新 → 維新の会)」、「Renaissance(再興 → 新党改革)」、「Sunrise(日の出 → 太陽の党)」…。
「Sunrise(日の出)」はたった4日で日没(sunset)を迎えてしまいましたが…。
「第3極(third-pole)」
民主党(DPJ)、自民党(LDP)の2大政党の寡占状態に対抗すべく生まれたこれらの新政党群は、一把ひとからげに第3極(third-pole)と呼ばれています。
世論調査を見てみると、日本の有権者の多くは現与党である民主党を、次の総選挙で罰したい(want to panish)と考えているようです。かといって、自民党への逆戻りを望んでいるわけでもありません(not wanting to return)。
現在のところ、民主・自民合わせても過半数には達しない見込みです(fewer than half)。そこに小さいながらも第3極の力を振るう場が出てくるということです。
「熱狂的なお見合いゲーム(a frenetic speed-dating game)」
単体では力の弱い第3極、彼らは最も魅力のあるパートナー(the most dazzling partner)を引っかけようと一生懸命です(try to hook up)。
たとえば、太陽の党を結成したはずだった石原慎太郎氏は、結党の数日後に橋下徹大阪市長の率いる維新の会(the Japan Restoration Party・JRP)に合流していきました。
「政策の対立(policy clashes)」
第3極の人々にとって、政策が対立すること(policy clashes)などは二の次となるようです。
石原氏と橋下氏の合流にあたっては、いくつかの政策を曖昧にしてしまいました(fudge some policies)。その結果、石原氏はTPPによる自由貿易(free trade deal)への反対姿勢を軟化させ(soften his opposition)、橋本氏は2030年までの原発廃止を取り下げました(dropped the insistence)。
「橋石(HashiIsh)」
この橋石合併(the HashiIsh merger)は、同じ第3極である「みんなの党(Your Party)」と「減税日本(Taxcut Japan)」を驚かせたようです。
連立の可能性を模索していた「みんなの党(Your Party)」は自由貿易には賛成(pro-TPP)で、原発には反対(anti-nuclear)でした。ところが橋石合併はその両方を曖昧にしてしまいました。「減税日本(Taxcut Japan)」も石原氏と話を進めていたのですが…。
どうやら、お見合いゲーム(speed-dating game)は目移りしてしょうがないようです。
「支持率(a support rate)」
世論調査(opinion polls)による野党・自民党の支持率(support rate)は25%前後ということですが、与党・民主党はその半分程度のようです。
最近では、自民党総裁の安倍晋三氏の支持率は低下傾向、逆に解散に踏み切った野田首相の支持率は上昇に転じています。
「便宜上の連立(coalitions of convenience)」
決定的な決め手となる政党が存在しないことで、有権者の多くは投票先を決めかねています(undecided)。
第3極の魅力はといえば、並外れた個性(outsized personalities)や古風な愛国心(stodgy patriotism)。これらは粘着テープ(sticky-tape)のように有権者たちを惹きつけますが、力を握るためには便宜上の連立(coalitions of convenience)を余儀なくされそうです。
「右傾化(shift to the right)」
尖閣諸島を巡る中国との論争(a row with China)によって、日本の政治は右派(the right)に傾いていきそうな傾向が濃厚です。
エコノミスト誌の言う「右」とは愛国主義、悪くいえば軍国主義にもつながります。石原氏の強硬姿勢(tougher stand)は世界に悪名高く、平和憲法の改正や核兵器保有の発言はよく揚げ足を取られております。
「密室交渉(the backroom dealing)」
各政党同士の駆け引き(jockeying)は激しさを増すばかり。それでも選挙の夜が終われば、その結果に応じた密室交渉(the backroom dealing)が待っています。その点、各党の党首たちはそれなりの柔軟性(flexiblity)を備えているのでしょう。
不透明な中でも明確なのは、必ずどこかと手を握る必要が出てくるということ。尖った主張ばかりでは孤立するばかり。右に行くにしろ、左に行くにしろ、政党が乱立すればするほど、その歩みはユルリとしたものとならざるを得ないのでしょう。
もっとも、そのせいで各党のマニフェストが曖昧になることには、日本の有権者たちもウンザリしている(fed-up)のかもしれませんが…。
英語原文:
Japan’s elections: Pole dancers | The Economist