2012年11月30日

決め手を欠く第3極の政党群(日本)。政策よりも…


日本の選挙:第3極の小政党群
Japan's elections : Pole dancers

英国エコノミスト誌 2012年11月24日号より



「自由でもなければ、民主でもない(neither liberal, nor democratic)」

自民党(Liberal Democratic Party・LDP)をからかう言葉にこんなものがあります。「自由でもなければ、民主でもない(neither liberal, nor democratic)」。口さがないエコノミスト誌に言わせれば、「まともな政党(a proper party)ですらない」となってしまいます。



「寄せ集め(a ragbag)」

それでも自民党は、反社会主義からなる雑多な派閥(anti-socialist factions)を寄せ集めてできた1950年代以来、半世紀以上にわたって何だかんだと団結を維持してきました。

2009年に綻びが生じるまでは…。



「歴史は繰り返す(history is repeating itself)」

歴史は繰り返すかのように、日本には再び雑多な政党群が乱立しています。今月(12月)に行われる総選挙(general election)には、じつに14もの政党が参戦することになっています。

この雑多さは第二次世界大戦の敗戦以来といえるでしょう。



「日本再生への想い(desire to revitalise Japan)」

日本を建て直さねばと立ち上がった各新政党の思い(desire)は、その政党名にも表れています。

「Restoration(維新 → 維新の会)」、「Renaissance(再興 → 新党改革)」、「Sunrise(日の出 → 太陽の党)」…。

「Sunrise(日の出)」はたった4日で日没(sunset)を迎えてしまいましたが…。



「第3極(third-pole)」

民主党(DPJ)、自民党(LDP)の2大政党の寡占状態に対抗すべく生まれたこれらの新政党群は、一把ひとからげに第3極(third-pole)と呼ばれています。

世論調査を見てみると、日本の有権者の多くは現与党である民主党を、次の総選挙で罰したい(want to panish)と考えているようです。かといって、自民党への逆戻りを望んでいるわけでもありません(not wanting to return)。

現在のところ、民主・自民合わせても過半数には達しない見込みです(fewer than half)。そこに小さいながらも第3極の力を振るう場が出てくるということです。



「熱狂的なお見合いゲーム(a frenetic speed-dating game)」

単体では力の弱い第3極、彼らは最も魅力のあるパートナー(the most dazzling partner)を引っかけようと一生懸命です(try to hook up)。

たとえば、太陽の党を結成したはずだった石原慎太郎氏は、結党の数日後に橋下徹大阪市長の率いる維新の会(the Japan Restoration Party・JRP)に合流していきました。



「政策の対立(policy clashes)」

第3極の人々にとって、政策が対立すること(policy clashes)などは二の次となるようです。

石原氏と橋下氏の合流にあたっては、いくつかの政策を曖昧にしてしまいました(fudge some policies)。その結果、石原氏はTPPによる自由貿易(free trade deal)への反対姿勢を軟化させ(soften his opposition)、橋本氏は2030年までの原発廃止を取り下げました(dropped the insistence)。



「橋石(HashiIsh)」

この橋石合併(the HashiIsh merger)は、同じ第3極である「みんなの党(Your Party)」と「減税日本(Taxcut Japan)」を驚かせたようです。

連立の可能性を模索していた「みんなの党(Your Party)」は自由貿易には賛成(pro-TPP)で、原発には反対(anti-nuclear)でした。ところが橋石合併はその両方を曖昧にしてしまいました。「減税日本(Taxcut Japan)」も石原氏と話を進めていたのですが…。

どうやら、お見合いゲーム(speed-dating game)は目移りしてしょうがないようです。



「支持率(a support rate)」

世論調査(opinion polls)による野党・自民党の支持率(support rate)は25%前後ということですが、与党・民主党はその半分程度のようです。

最近では、自民党総裁の安倍晋三氏の支持率は低下傾向、逆に解散に踏み切った野田首相の支持率は上昇に転じています。



「便宜上の連立(coalitions of convenience)」

決定的な決め手となる政党が存在しないことで、有権者の多くは投票先を決めかねています(undecided)。

第3極の魅力はといえば、並外れた個性(outsized personalities)や古風な愛国心(stodgy patriotism)。これらは粘着テープ(sticky-tape)のように有権者たちを惹きつけますが、力を握るためには便宜上の連立(coalitions of convenience)を余儀なくされそうです。



「右傾化(shift to the right)」

尖閣諸島を巡る中国との論争(a row with China)によって、日本の政治は右派(the right)に傾いていきそうな傾向が濃厚です。

エコノミスト誌の言う「右」とは愛国主義、悪くいえば軍国主義にもつながります。石原氏の強硬姿勢(tougher stand)は世界に悪名高く、平和憲法の改正や核兵器保有の発言はよく揚げ足を取られております。



「密室交渉(the backroom dealing)」

各政党同士の駆け引き(jockeying)は激しさを増すばかり。それでも選挙の夜が終われば、その結果に応じた密室交渉(the backroom dealing)が待っています。その点、各党の党首たちはそれなりの柔軟性(flexiblity)を備えているのでしょう。

不透明な中でも明確なのは、必ずどこかと手を握る必要が出てくるということ。尖った主張ばかりでは孤立するばかり。右に行くにしろ、左に行くにしろ、政党が乱立すればするほど、その歩みはユルリとしたものとならざるを得ないのでしょう。

もっとも、そのせいで各党のマニフェストが曖昧になることには、日本の有権者たちもウンザリしている(fed-up)のかもしれませんが…。







英語原文:
Japan’s elections: Pole dancers | The Economist

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2012年11月27日

ヨーロッパにおける農業のあり方とは?


予算を搾り取るEUの農業補助金
Milking the budget

英国エコノミスト誌 2012年11月24日号より



「農業政策の不一致(the incompatibility of its farming policies)」

かつて1960年代にフランスのシャルル・ド・ゴール大統領(当時)が、イギリスのEEC(EUの前身)加盟を拒絶したことがありました。その理由の一つは農業政策の不一致(incompatibility)だったといいます。

イギリスは世界中の安い食材を買い漁る貿易立国だったのに対して、フランスをはじめとしたヨーロッパの国々は、自国で食べるものは自国で作るという政策を持っていたのです。



「対照的な姿勢(contrasting attitudes)」

結局、イギリスは1973年、共同体に加盟することになりますが、農業に対する対照的な姿勢(contrasting attitudes)は、いろいろな場面でずっと妨げとなってきました(dogged)。

予算を巡る応酬(budget rows)、農産物の保護するのか(protectionists)、自由貿易(free-trades)に舵を切るのか…。



「農家に対する過度の予算(disproportionate sums on farmers)」

農業政策に関する問題は、いまだ歴史ではなく時事問題です。先日(11月22日)のEU(欧州連合)首脳会議においても、大いに言い争いをやってました(fight at a summit)。

今のヨーロッパはユーロ危機により各国とも台所事情が大わらわとなっています。そんな中、農業ばかりに大盤振る舞い(extravagance)をし続けてよいものか?、ということです。



「甘やかし(coddling)」

ヨーロッパでは農業ほどに甘やかされている労働者集団はほかにいません。EU(欧州連合)の予算の40%は農業に費やされています。しかし、農業はGDP(国内総生産)のわずか2%しか生み出しておらず、雇用面でもたったの5%しか寄与していません。

競争の激化している各産業は、一様に規模の縮小や雇用の削減を迫られています(slimmed down)。製鋼や炭鉱、造船業しかり、自動車産業とて例外ではありません(following suit)。それでも、地方の農家(rural peasants)は保護されているのです。



「気前の良さ(largesse)」

なぜ、ヨーロッパはこれほど農業に気前が良い(largesse)のでしょうか。EUの予算だけに限らず、EU非加盟国であるノルウェーやスイスでも同様の大盤振る舞い(egregious)が行われています。

農業が深層の記憶(a deeper level)にある先祖代々の村々、田園風景(rural landscapes)を呼び覚ますからでしょうか。それとも、農業関連の圧力団体(obstreperous farm lobbies)を恐れてのことでしょうか。



「欧州共通農業政策(the common agricultural policy・CAP)」

ヨーロッパには欧州共通農業政策(CAP)というものがありますが、その誕生の背景にあったのは第2次世界大戦です。食料不足の時代に食糧生産高を引き上げたい(boost food production)という願いがあったのです。

ドイツ・フランス間の共通市場(common market)があれば、ドイツは工業製品を、フランスは豊富な農作物(agricultural bounty)を自由に交換することができたのです。これはドイツからフランスへ資金を移すシステムでもあり、裏の意味として、隠れた戦後賠償金(hidden form of war reparations)という側面もありました。



「バターの山とワインの湖(butter mountains and wine lakes)」

こうして、欧州共通農業政策(CAP)に守られることとなったヨーロッパの農産物は、高い関税(high tariffs)に支えられ、農家のつくる農作物は高価格での販売が保証されました(guaranteed)。しかし、それは消費者の犠牲(expense)の上に成り立った砂の城でもありました。

その歪みが露呈してくるのが1980年代。高くて売れ残った大量の在庫を抱えてしまったEEC(EUの前身)は、バターの山(butter mountains)とワインの湖(wine lakes)と揶揄されるようになるのです。それらの大量在庫は世界市場に投げ売りされることも珍しくありませんでした(dumped)。



「改革(reforms)」

一時は予算の80%をも占めていたCAP(欧州共通農業政策)の予算は、当然のように見直しを余儀なくされます。

その政策は価格支持(price support)から農家への直接支払いへと移行し、かつての無条件の支払い(unconditional payments)から報奨金(incentives)へと移転されることとなります。その過程で、CAP(欧州共通農業政策)のEUに占める歳出割合は徐々に低下していくのです。



「うそ(bogus)」

現在、農家への補助金(subsidies)に対する大義は、環境保全(maintaining environment)であったり、食糧安全保障(food security)であったり、農業地域への貧困対策であったり…。

しかし、その実、うまく機能していない面も多々あるようです。土壌を劣化させて(soil-degrading)水質を汚染する(water-polluting)大規模農家(big landowners)に大金が拠出され続けていたり、山間でヤギのチーズをつくる貧困小農家にはあまり支払われていなかったり…。



「低い天井(low ceilings)」

補助金の支払いに関しては、農家の大小のバラつきに加え、地域的なバラつきもあります。

西ヨーロッパ(ベルギーやオランダ)への補助金は、東ヨーロッパのそれの3倍ないしは4倍。東ヨーロッパへの補助金の導入は段階的であり、その上限(celing)も低いのです。



「根こそぎの改革(a root-and-branch reforms)」

他産業に対しても、農業界にあっても、CAP(欧州共通農業政策)は根っこからの改革(a root-and-branch reforms)が必要とされています。

しかし残念ながら、最近示された妥協案(the latest compromise budget)には改革の意志が見られませんでした。無条件の補助金支払い(unconditional subsidies)の割合は逆に高まりました。そしてその上限額(cap)も削除されました。さらに、地域格差をなくすために単位面積あたりの支払いを均等にするという計画は延期されてしまいました(stretch out)。



「誰も農民を怒らせたくない(nobody wants to upset farmers)」

ただでさえデモが相次ぐヨーロッパ(特に南欧)にあっては、誰も農民たちを怒らせたくないのかもしれません。

フランスは頑なに農業補助金を擁護し、イギリスは半ば改革を諦めてしまいました。どこの国の政権も不安定な時代にあって、変化は望ましいものではないのでしょう。自分たちを支持する集団を敵に回す(antogonise)ことは、よほどに高い志が求められます。



「耕作限界地(marginal land)」

かくして、山深い耕作限界地(marginal land)には細々とながらも補助金が支払われ続けるようです(不十分かつ不公平なままかもしれませんが)。

かつてフランスのシャルル・ド・ゴール元大統領は「チーズの種類が246もある国をどうやって統治すればいいんだ?」と問いかけたことがあると言います。ヨーロッパという多様性に富む地域にあって、その統治は容易なことではないのでしょう。

ただ願わくは、鈴をブラ下げた牛がのうのうと草をはむ平和が失われんことを…。







英語原文:
Charlemagne: Milking the budget | The Economist

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2012年11月24日

シェールガスに沸くアメリカ。洋々なる前途と落とし穴


石油とガス:宝の山に沸くアメリカ
Oil and gas : America's oil bonanza

英国エコノミスト誌 2012年11月17日号より



「スピンターン(a handbrake turn)」

アメリカで起きたシェールガス革命(the shale-gas revolution)は、超大型タンカー(a supertanker)がスピンターン(a handbrake turn)を決めたぐらい衝撃的だったといいます。

なにせ、かつては中東諸国への燃料依存に危機感を抱いていた国が、天然ガスの自給(self-efficiency)を達成しようとしているのですから。



「世界最大の産油国(the world's largest oil producer)」

次々と好転するニュース。もはやアメリカにとって、世界最大の石油産油国(oil producer)となるのも夢ではありません。

IEA(国際エネルギー機関)による最新の予想によれば、あと8年後の2020年までにはアメリカがサウジアラビアとロシアを抜いて世界一になるとのことです。



「価格シグナル(price signals)」

なぜ、アメリカが急浮上してきたかといえば、それはここ10年以上にわたって、石油価格が高止まりを続けてきたからでした(costly)。

石油が高値だったおかげで、今まではコストが合わなかったシェールガスのような非在来型の燃料探しが割りに合うようになってきたのです。



「非在来型の燃料(unconventional fuels)」

非在来型の燃料(unconventional fuels)というのは、深い海に眠っていたり、地下深くの岩盤(シェール層など)に潜んでいたり、大量の砂の中に散ってしまっていたような掘りにくい(集めにくい)石油やガスのことです。

とりわけ、アメリカ(シェールガス)やカナダ(オイルサンド)に多く存在しているようです。



「最先端の技術(whizzy technology)」

地下資源に恵まれていたアメリカは、そこから炭化水素(hydrocarbons)を効率よく抽出するための最先端技術(whizzy technology)を開発しました(フラッキング・水圧破砕法)。

そして、そのあまりの成功のために、今や北米ではガスが余るほどであり(gas glut)、価格が急落するほどです(plummeted)。



「エネルギー自給(self-sufficient in energy)」

IEA(国際エネルギー機関)によれば、アメリカは今から23年後の2035年までには、エネルギー自給(self-sufficient in energy)を達成する見込みです。大胆なアナリストに言わせれば、それはもっと早いとも言います(sooner)。

アメリカと地続きのカナダも同様にこうした地下資源に恵まれており、膨大な可能性(immense potential)を秘めているとのことです(下手したら、アメリカに匹敵する量)。



「大当たり(bonanza)」

シェールガスはアメリカにとって大当たり(bonanza)だったわけですが、いくつかの落とし穴(pitfalls)も潜んでいるようです。岩盤破壊による地震発生だったり、ガス漏出によって汚染された地下水に火がついたり…。

しかしそれでも、経済的なメリット(the economic pluses)は明白なようです。



「安い電気(cheap electricity)」

安いガスは安い電気(electricity)を生んでくれます。そして、安い電気は電力を大量消費するような産業(power-hungry sectors)の背中を押してくれます。

たとえば、アルミニウム、鉄鋼、ガラスといった産業です。また、プラスチックのようなガスを使う石油化学会社(petrochemicals firms)にとっても追い風です(buoy)。



「輸入石油(imported oil)」

現在、アメリカは一日当たりおよそ1,900万バレルの石油を消費しているそうですが、輸入石油1バレル当たり109ドルということを考えれば、およそ一日につき20億ドル(1,700億円)の出費です。

もし、エネルギー自給が達成されるのであれば、アメリカはもう余計なお金をサウジアラビア(アルカイダ発祥の地)に支払う必要もなくなります。



「環境面での得点表(the environmental scorecard)」

それでは環境への影響はどうなのでしょう。種々の意見はありますが、結果的にアメリカの温室効果ガス(greenhouse-gas)の排出量(emissions)は全体で減りました。

それはアメリカが一気に安いガスに移行したためです(the dash for gas)。ガスは石油・石炭よりもずっとクリーンなのです。



「汚染いちじるしい石炭(filthy coal)」

そのアメリカと対照的なのがヨーロッパです。環境の大義をかかげて原子力発電所の閉鎖を進めた諸国もあったのですが、エネルギーが昔ながらの石炭に逆戻りしてしまいました。

その結果、汚染いちじるしい石炭(filthy coals)は過去3年間のヨーロッパでの温室効果ガスを増大させています。



「必要悪(necessary evils)」

残念ながら、太陽光や風力などの再生可能エネルギー(renewable energy)が、石油やガスなどの化石燃料に取って代わるのはまだ何年も先の話となりそうです。

ということはそれまでの期間、化石燃料(fossil fuels)とそれに伴う温暖化(the warming)というのは必要悪(necessary evils)となりそうです。



「アメリカ政府の務め(the American government's job)」

化石燃料が必要悪(necessary evils)である限り、その供給に歪みを生じさせることは好ましくなく、むしろ安全に自由に流れるようにすることが、大量の資源を擁するアメリカ政府の務め(job)なのかもしれません。

しかしその反対の手では、代替燃料(alternatives)の開発・普及に務めることも必要となるでしょう。環境や地球にかかるコストも負担していかなければなりません。



「キーストーンXLパイプライン(Keystone XL pipeline)」

カナダの石油をアメリカを通ってメキシコ湾まで運ぶ石油パイプライン(キーストーンXL)の建設計画があります。

今のところ、オバマ大統領はその許可を渋っているようですが、その流れを止め続けることはできないかもしれません。環境主義者たち(greens)は石油漏出(leakages)を心配するものの、タンクローリーでの陸上輸送と比べればずっとリスクは少ないのだそうです。



「バカげた規制(barmy rules)」

また、アメリカには原油(crude-oil)の輸出を禁止するというバカげた規制(barmy rules)もいくつかあります。精製したそれ(the refined version)は売ることができるようですが…。

一方、シェールガスの開発に当たっては、その土地の地主(its landowners)に資源の所有権を認めているため、採掘がスムーズに進んでいるようです。この点は、それを認めないヨーロッパとの大きな違いです(ヨーロッパではシェールガスを開発していません)。



「汚染による悪影響(the damaging effects of pollution)」

現在のアメリカのガソリン税(petrol taxes)は微々たるもの(tiny)であるため、汚染による悪影響(the damaging effects of pollution)を考慮しているとは言えないでしょう。

環境を汚すエネルギー(dirty energy)は割高であったほうが良いとエコノミスト誌は主張します。価格が需要を抑えるからです(curb demand)。たとえば、カナダの重油(heavy oil)は通常の石油よりもCO2の排出量が6%ほど多いそうです。それでなくとも、石油はガスより汚染度は30%も高いとのことです。



「本当のコスト(the true cost)」

アメリカがシェールガスの大当たり(bonanza)に熱狂するのは大いに結構なことですが、それを本当の恩恵にするには、まだまだ考慮すべきことも多々あるようです。

考えられる得るリスクをコストに反映していかなければ、たとえば原子力のように、見かけばかりが割安なエネルギーとして普及してしまうかもしれません。

もっとも、それを身に染みて知ったのはアメリカ人ではなく、日本人だったのかもしれませんが…。





英語原文:
Oil and gas: America’s oil bonanza | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 05:49| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月17日

虚実入り乱れる尖閣諸島、日中両国によるハラの探り合い


尖閣諸島:無遠慮な言葉と鋭い剣
Blunt words and keen swords

英国エコノミスト誌11月10日号より



「膠着状態(stand-off)」

小さな無人島群(uninhabited islands)尖閣諸島をめぐる日中両国の対立(the row)は、膠着状態(stand-off)にあるどころか、ますます激化しているようでもあります(be intensifying)。

中国側が火に油を注いでいる(be fanning the flames)ようにも見受けられるのです。



「恥ずべき帝国主義の過去(shameful imperial past)」

中国の報道官(spokesmen)が持ち出すのは、第二次世界大戦時における日本の帝国主義。その恥ずべき過去(shameful past)を引き合いに出して、日本側に譲歩するよう警告しています(warn to back off)。

島の近海で両国の船舶(vessels)が睨み合うのは、もはや毎日のこととなっています(almost daily)。



「鋭い剣(keen swords)」

そんな緊張の中、日本とアメリカは共同で軍事演習「キーン・ソード(Operation Keen Sword・鋭い剣)」を始めました。

これは定期的に行われる海上演習(naval drill)とはいえども、この時期に日本から3万4,000人、アメリカから1万人の軍人らが、問題の島(disputed islands)の近海で一同に会することは中国を刺激するばかりです。かろうじて、侵略された島を奪還する訓練(recapturing an invaded island)は中止されたようですが…。



「どこの国のためにもならない(no countries' interests)」

哀しいかな、尖閣を巡る緊張状態(the tension)はどこの国の利益(interests)にもなりそうにありません。

中国は指導部の交代する政治的に不確実な時期であり(politial uncertainty)、隣国にケンカを売る(pick a fight)のに良いタイミングとは言えません。



「非公式な制裁(informal sanctions)」

中国の日本に対する非公式な制裁(informal sanctions)は、確かに日本を苦しめています。中国の消費者による不買運動(boycotts)は日本にとって大きな痛手です。

しかし、日本の投資家や観光客が怯えていることで(take fright)、中国も同じように損失を被っています。



「中国の戦意(Chinese bellicosity)」

中国の戦意(bellicosity)に怯えるのは日本人だけではなく、東南アジアの国々の人々も同様です。

南シナ海でもやはり、中国は領土の諍いを起こしているため、東南アジアでは軍事費の増強、アメリカとの関係強化が積極的に図られています。



「報復の連鎖(tit-for-tat reprisal)」

現在の対立(stand-off)が衝突(a clash)にまで発展してしまうと、報復の連鎖(tit-for-tat reprisal)を引き起こし、戦争にまで発展してしまいかねません。

それがもし尖閣諸島で起きれば、アメリカをも巻き込む可能性があります(embroil America)。



「安保条約(the security treaty)」

1960年に締結された日米安保条約(the security treaty)によれば、日本が攻撃を受けた場合、アメリカが援助すると定められています。

アメリカは尖閣諸島の領有権については口を閉ざすも(takes no position)、尖閣諸島が安保条約の適用対象であること(covered by the treaty)は明言しています。



「誤解や誤算(mistake or miscalculation)」

10月後半に中国を訪問したアメリカの国務長官ヒラリー・クリントンは、こうしたアメリカの態度に関して、中国側に釘を刺しています(reminded China of this)。

それでも、尖閣を巡る誤解(mistake)や誤算(miscalculation)が、いつ軍事衝突(military confrontation)に発展するかはわかりません。それがアメリカの懸念するところでもあります。



「国有化(nationalisation)」

9月に日本政府が行った尖閣諸島の買い取り国有化(nationalisation)は、当時の東京都知事・石原慎太郎氏が先に買い取ってしまうことを阻止する狙いがあったといいます。過激化しやすい石原氏の行動は、日本政府の恐れるところでもあったわけです。ところが結局、あべこべに日本政府が中国に対して強硬姿勢を示したことになってしまいました。

中国側はそうした日本政府による苦肉の策を顧慮することさえ拒否しています(refused even to consider)。



「共謀(connivance)」

むしろ中国のアナリストたちは、野田首相と石原氏が共謀しているのではないか(conniving with)との疑いを強めました。尖閣諸島の現状(the status quo)を変えるために、両者が結託して、日本の領有権を確固たるものにした(to solidify)と勘ぐっているのです。

なぜならその後、石原氏は都知事を辞任し、自らの政党を立ち上げたからです。



「根本的な変化(fundamental changes)」

日本の尖閣国有化(nationalization)以来、中国政府は尖閣周囲の領海基線(territorial baselines)を申し立て、以前よりさらに頻繁に政府の巡視船(government patrol vessels)を送り込んできています。

中国外交部は、日本の国有化が尖閣諸島に根本的な変化(fundamental changes)をもたらしたと指摘。日本の船舶を駆逐する(expell)と言っています。



「ファシスト国家(a fascist country)」

中国軍は、日本の軍国主義の過去(militarist past)を引っ張りだして、日本はオーストラリアにも爆弾を落としたファシスト国家(a fascist country)だと息巻いています。

駐英中国大使(China's ambassador)の劉氏は、日本が過去の軍事ファシズム(military fascism)を否定しようとしているとフィナンシャル・タイムズ紙への寄稿で非難しています。



「危ないくらいの誤解(alarmingly ill-informed)」

日本がファシズム国家だという主張は、欧米諸国の人間には危ないくらいの誤解(alarmingly ill-informed)に聞こえます。戦争に敗れてから70年近くが経った日本は、世界でも抜群に安定した民主主義国家です。ファシズムにつながるかもしれない右派の国家主義者(nationalist right wing)もごくわずかしかいません。

しかし、第二次世界大戦の日本軍の占領(occupation)や残虐行為(atrocities)は、一部の中国人たちにとっては未だ鮮明であるようです。それでも、その見解は不合理に思えてなりません(seems preposterous)。



「中国の強硬路線(China's hard line)」

中国の強硬路線(hard line)を主張する人々は、日本とアメリカの同盟の強さ(the strength of alliance)を試しているのかもしれません。衰退した日本へのアメリカの関心は薄くなっています。

もしかしたら中国軍の強硬派(hardliners in the army)は、指導部交代の機に乗じて、政策を混乱させている(confuse policy)のかもしれません。



「一貫性(consistent)」

中国は指導部交代(the transition)という不安定な時期にありながら、その言動には一貫性があり(consistent)、十分に調整されているようでもあります(well co-ordinated)。そこに混乱や分裂の兆し(sign of confusion or division)はありません。

ということは、中国の報道官らの発言に裏はなく、本気で日本の右傾化を懸念しているのかもしれません。



「暗黙の妥協(unacknowledged compromise)」

ある消息通(well-informed)の中国人アナリストは、日中間に非公式ながら暗黙の妥協(unacknowledged compromise)がすでに存在していると考えています。中国は中国で、日本の国有化を暗に認め、日本は日本で、中国船の接近を認めたというのです。

仮りにもしそうなら、日本と中国は見せかけのゲーム(a geme of make-believe)をしていることになります。しかし、これほど誤解や誤算(mistake and miscalculation)を招きやすい状況もないでしょう。そんなフリ(the pretence)をし続けるのは容易なからぬことです。



いったい、何が見せかけで、何が本当なのか?

両国のハラの探り合いは、まだまだ続きそうです。

その間に、誤解や誤算がないといいのですが…。







英語原文:
Banyan: Blunt words and keen swords | The Economist

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2012年11月12日

再選を果たしたオバマ大統領、今度こそチェンジは成るのか


再選されたオバマ大統領
Barack Obama's second term

英国エコノミスト誌 2012年11月10日号より



「あり得ない(could not happen)」

アメリカ大統領選挙前、オバマ氏の再選はあり得ないと言う人も多くいました。それは8%前後の高い失業率(unemployment)のままで再選を果たした大統領は、フランクリン・ルーズベルトくらいしかいなかったからです。

こうした厳しい経済問題もさることながら、人種の問題(racial ground)でもアメリカはどうしようもなく分裂していました(bitterly divided)。



「完勝(a solid victory)」

ところが、フタを開けてみればオバマ大統領の完勝(a solid victory)。4年前に勝利したほぼ全ての州で勝つことができました(例外はインディアナ州とノースカロライナ州)。

獲得選挙人数(electoral-college)はオバマ大統領が332人に対して、対抗馬のミット・ロムニー氏はわずか206人(過半数は270)。と同時に、オバマ大統領の属する民主党は上院(Senate)での議席数も改選前より増やすこともできました(事前予想では、過半数を失うことも懸念されていました)。



「高尚な言葉(lofty words)」

勝ったオバマ大統領は、ここ数年で最高の演説(best speech)をかましましたが、果たして、この二期目は彼の高尚な言葉(lofty words)を実現することができるのでしょうか。

対立を深める野党・共和党、いよいよ迫る財政の崖…、いくたの困難がその前途には今や遅しと待ち構えております。



「幸運な男(lucky man)」

オバマ大統領は幸運でもありました。

対抗馬となったミット・ロムニー氏はさほど雄弁な相手でもなく(less fluent)、アメリカの失業率は大統領選挙直前に少しだけ改善しました(perked up, a little)。さらには、ニューヨークなどの大都市を襲ったハリケーン「サンディ」までもが味方につきました。

獲得した選挙人数では大差をつけたオバマ大統領ですが、得票総数を見てみると、その差はわずか2.4%という僅差。再選を果たした大統領としては最低の数字です。



「滑稽なほどの過激主義者(tragicomic extremism)」

オバマ大統領の民主党が上院(the Sanete)を制することができたのも、共和党が立てた候補者の多くが過激主義者(extremism)だったことが幸いしました。まるでトム・ウルフの小説に出てきそうな滑稽な人物ばかりだったのです。

それでも、下院は共和党に過半数を支配されているため、いわゆる「ねじれ」の状態にあります。そのため、大統領選挙で敗れた共和党は、オバマ大統領にケンカを仕掛けたくてウズウズしているようです(spoiling for a fight)。



「オバマ氏の業績(his achievements)」

第一期目のオバマ大統領の大きな業績(achievements)として、医療保険改革(health reform)がありますが、これは民主党が両院(both chambers)を支配していた時に成されたものです。

しかし、中間選挙で下院を共和党に奪われて以降は、現状維持(the status quo)が手一杯で、党の垣根を超えた業績(record of reaching across the aile)を残すことはできませんでした。



「ボロボロの財政(rotten finances)」

今回の選挙戦で、オバマ氏の最大の弱点(weak spot)となったのは、ボロボロになっているアメリカの財政を立て直す道筋を見い出せなかったことです。

その割には、対抗馬のロムニー氏の財政計画をしつこく攻め立てていました(hammering away)。確かにロムニー氏の数字はおかしかったのですが…(barmy numbers)。



「期待ハズレな付録(a disappointing addendum)」

エコノミスト誌に言わせれば、オバマ大統領の一期目は「期待はずれの付録(a disappointing addendum)」に終わったということになります。それは野党・共和党と協力することができなかったからでもあります。

もし、オバマ大統領が共和党に手を差し伸べることができれば、この2期目(second term)は変えられない男(unable to alter)の汚名を返上することにつながるかもしれません。



「共和党の復権(electoral rehabilitation)」

一方の共和党も、分別さえあれば(sensible)、民主党との合意(dealing)は理に適ったものです。

オバマ大統領はもう次の選挙には出馬できないのであり、何よりも合意がまとまらなければ、あと2ヶ月もしないうちにアメリカは「財政の崖(fiscal cliff)」から落っこちてしまうのです(fall off)。



「差し迫った期限(an urgent prompt)」

「財政の崖」と呼ばれるのは、自動的な増税(tax rises)と歳出削減(spending cuts)の合わせ技により、アメリカのGDPが5%も縮小してしまう大惨事のことです。

現在、アメリカの年間成長率が2%程度であることを考えれば、マイナス5%という数字はまったくもって破滅的です(a disaster)。間違いなく景気後退(リセッション)入りでしょう。その差し迫った期限(an urgent prompt)まであと2ヶ月もありません。



「小国のような税収で大国のような出費(taxes like a small state, spends like a big state)」

アメリカの税金は小さな国のように少ない割りに、その使いっぷりはまさに大国のそれです。さらに、そこに国民の高齢化(ageing population)が加わるのなら、アメリカの進む道は破産ということです(going broke)。

もし、2期目のオバマ大統領が変えられない男のままであれば、彼は間違いなく歴史に汚名を残すこととなります(pilloried by history)。



「増税と歳出削減(tax rises and spending cuts)」

アメリカの財政を立て直すには、増税(tax rises)と歳出削減(spending cuts)は避けて通れない道です。

しかし困ったことに、増税は共和党が目のカタキにするものであり(Republicans hate)、歳出削減は民主党が毛嫌いしているものでもあります(Democrats loathe)。

そして悪いことには、共和党の協力を取り付けるという点で、オバマ大統領は惨めな失敗を続けてきたのです(has been woeful)。



「より超党派に(more bipartisan)」

アメリカの財政を立ち往生させている原因が、民主・共和両党のしがらみにあるのだとしたら、オバマ大統領の成すべきことは、その垣根を超えること、つまり超党派(bipartisan)になることでしょう。

たとえば、共和党が好みそうな企業寄りの人物(pro-business)を財務長官(treasury secretary)に任命したり…。カナダとメキシコを結ぶパイプライン(キーストーンXL)を承認したり…。



「破壊的な舌戦(a destructive war of words)」

どうも、オバマ大統領には貧困層を助けたいと思うあまり、富裕層や経済界を敵に回してしまうところがあるようです。ホワイトハウスは経済界に対して、さかんに舌戦(war of words)を仕掛けてきました。

最も困窮している人々を救うには、税制を立て直す必要もあるでしょうし(reforming taxes)、政府を改革する必要もあるでしょう(reforming government)。少なくとも、ケンカ腰で解決しないことだけは一期目でも充分に証明されています。



「真の保守派(a genuine conservative)」

さて、オバマ大統領に楯突いてばかりの共和党は、今回の敗戦をどう思っているのでしょうか。エコノミスト誌は、彼らの脚本(script)はうんざりするほど分かっている(depressingly easy)と断言しています。

そのありきたりの脚本によれば、負けた原因は党の擁立した大統領候補者(candidate)が「真の保守派(a genuine conservative)」ではなかったからだということになります。つまり、過激さが足りなかったというのです。



「背信行為(treason)」

もし、共和党が本当にそう思っているのならば、オバマ大統領への歩み寄り(compromise)は最大の背信行為(treason)となってしまいます。言い換えれば、オバマ氏が妥協しようとすればするほど、相手の共和党は離れていくということにもなります。

つまり、党派間の垣根は高くなる一方です。



「古臭い過ち(old chestnut)」

やれやれ、共和党の脚本通りに話が進むのであれば、アメリカは財政の崖を真っ逆さまです。これは、まさに古臭い過ち(old chestnut)を繰り返すばかり。共和党はあらゆる増税を一切認めず、妊娠中絶(abortion)と同性婚(gay marriage)も断固拒否。不法移民(illegal immigrants)など決して許しません。

はたして、そうした執念(obsession)が票に結びつくのでしょうか。今回、票を失ったのは、頑固さが足りなかったからなのでしょうか。アメリカにはリベラル派よりも保守派がはるかに多い(outnumber)というのに…。



「無党派層(independent voters)」

無党派層(independent voters)の多くは、もっと現実的な共和党(more pragmatic Republican Party)を切望しています。

妊娠中絶や同性婚を認めない共和党からは、女性や若者たちが離れていきました。不法移民への厳しさ(harshness)はラテン票をオバマ氏に献上する結果となりました(ラテン系の71%はオバマ氏に投票)。



「超党派合意(a bipartisan deal)」

なるほど、共和党が頑なであってくれたお陰で、オバマ大統領は再選を果たすことができました。しかし、これからとなると話はまったく別です。両党の合意なくして、アメリカの進む道は用意されていないのです。

その再生(rebirth)への最大のカギは、党を超えた超党派合意(a bipartisan deal)。それはアメリカのためでもあり、世界のためでもあります(good for America and the world)。



「いがみ合いの停滞(angry stasis)」

もし、アメリカがもう4年間、党同士のいがみ合いを続けるのであれば、それほどの悲劇もありません。アメリカにとっても、世界にとっても…。

その最初の試金石となるのが、あと2ヶ月以内にアメリカが財政の崖を回避できるかどうか。リベンジしたくてウズウズしている共和党はどう出てくるのか。

新生オバマ大統領の力量やいかに?







英語原文:
Barack Obama's second term: Now, hug a Republican | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 14:37| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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