2013年02月27日

なぜ干ばつを受けてなお、アメリカの農家の収入は上昇したのか?


黄金の畑
Fields of gold
アメリカの農業
Agriculture



アメリカの農家は、価格高騰(soaring prices)の恩恵を受けている。

英国エコノミスト誌 2013年2月23日号より



「記録的な干ばつ(the record-breaking drought)」

アメリカは昨年(2012)、記録的な干ばつ(the record-breaking drought)に襲われました。枯れる作物(withered crops)、干上がる土壌(sun-baked soil)、そして野火(wildfires)…。

USDA(アメリカ農務省)は、26州にまたがる1,000以上の郡を自然災害被災地域(natural-disaster areas)に指定しましたが、これは過去最大の大規模被害でした。



「新たな黄金期(another golden age)」

確かに、農地や農作物への被害は甚大でした。しかし、不思議なことに、アメリカの農家の収入は逆に上がったのです。

それは、トウモロコシの価格などを決めるコモディティー(商品)市場の好況(booming commodity markets)や、農地価格の記録的高値(record prices for farmland)のおかげだった、とエコノミスト誌は言います。



「世界的な力強い需要(strong global demand)」

記録的な干ばつによって不足した穀物は、その価格を急激に上昇させました(reised dramatically)。

トウモロコシを生産できた農家は幸いです。昨年のトウモロコシの平均価格は2010年と比べて、2割ほど上昇したのです(1ブッシェルあたり8.49ドル、すなわち約25kgあたり約780円)。



「作物収量の保険金(crop-insurance)」

トウモロコシが干ばつでやられてしまった農家も、支払われた保険金によって救われました。保険会社の支払い総額は、過去最高の142億ドル(約1兆3,000億円)に達しています(これからも増えていく見込み)。

結果的に、アメリカの農業所得は昨年比14%増の1,280億ドル(約11兆8,000億円)。実質ベース(real terms)でここ40年間の最高額を記録する可能性があります(USDA)。



「農地価格(farmland prices)」

歴史的な低金利も相まって、アメリカの農地価格は今、驚くべき速さで上昇しています(rising surprisingly fast)。

アメリカ中西部の農地価格は昨年、16%の上昇。この傾向はここ3年間連続(the third consecutive year)で続いており、累積では52%もの上昇(a cumulative 52%)となっております。



「農地バブル(the farmland boom)」

アメリカ中西部の5大農業州(アイオワ・イリノイ・インディアナ・ミシガン・ウィスコンシン)では今年も、農地価格が2割以上も高騰しており(big jump)、これは過去40年間で最大の上昇率となっています。

そのため、この異常な過熱ぶりは、1970年代の農地バブル(the farmland boom)の再来だとの声が相次いでいます。



「バブルめいた数字(frothy numbers)」

ブレント・グロイ氏(米パデュー大学)によれば、近年の地価上昇は、過去50年間で最も劇的な高騰(the most dramatic seen)だということです。

はたして、このバブルめいた数字(such frothy numbers)の行く末は?

1970年代の農地バブルの時は、その後にバブルは崩壊(bust)。農地価格は最盛期から4割も急落してしまいましたが…。



「警告の書簡(warning letters)」

事態を重く見た規制当局(regulators)、FDIC(連邦預金保険公社)は、各金融機関に警告の書簡(warning letters)を送付したとのことです。

その書簡には、農地価格の高さに油断して、融資基準(lending practices)を甘くすることがないように、との警告が記されていました。



「バブルとその崩壊(boom and bust)」

今のところ、この農地価格の高騰がバブル(boom)なのか、もしそうなら、それは崩壊するのか(bust)、誰も確たることは言えずに思い悩んでいます(now wondering)。



「農家の借金(farm debt)」

楽観主義者たち(hopeful people)は、農家の借金(farm debt)は1970年代のバブル時ほど急増していないから大丈夫だと強気です。

しかし一方で、農家の債務比率(debt-to-asset ratio)の平均は、1970年代よりもすでに高くなっていると指摘する向きもあります。



「黄金の未来?(less golden)」

どうやら、コモディティー(商品)価格の上昇にしろ、農地価格の上昇にしろ、それらは危うい橋の上に置かれているようです。

今のアメリカの農地は、黄金の畑(fields of gold)というよりも、金メッキが施されているだけなのかもしれません…。







英語原文:Agriculture: Fields of gold | The Economist

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2013年02月25日

止まらない、シリアの血…。


シリア
Syria
国家の死
The death of a country



シリアが崩壊していくにつれ、中東全域は危険にさらされていく。世界は手遅れになる前に行動しなければならない。

英国エコノミスト誌 2013年2月23日



「崩壊(disintegration)」

反目しあう軍閥(feuding warlords)、イスラム主義者(Islamists)、武装集団(gangs)…、荒れ狂う戦闘の渦中にあって、もはや崩壊寸前(disintegrating)のシリア。

もはや国家としての機能(function as a state)は失われつつあります。



「第2のソマリア(a new Somalia)」

無数の武装組織(militias)が乱立するシリアにあって、アサド大統領の政府軍はそれら武装組織の一つに過ぎないかのようです(もちろん最大規模ではありますが)。

このままでは、シリアは第2のソマリア(a new Somalia)と化してしまいます。

※アフリカの角に位置するソマリアは、すでに崩壊国家であり、周辺海域を荒らしまわる海賊たちの根城となっています。



「暴力的対立(violent rivalries)」

シリアの分裂による破滅的悪影響は、中東全域、そして地域を超えて混乱を撒き散らす危険性が多大です。すでに、暴力的対立(violent rivalries)が負の連鎖を誘発しているのです。

シリアのアサド大統領が持つといわれる化学兵器(chemical weapons)が危険人物の手(dengerous hands)に渡るかもしれませんし、聖戦(jihad)が世界中で巻き起こるかもしれません。



「行動をためらう欧米(the West's hesitancy)」

今のところ、アメリカをはじめとする世界は、手をこまねいているようです(almost nothing to help)。

欧米諸国が行動をためらう理由の一つには、アサド大統領が一貫して暴力という戦略(a strategy of violence)を取り続けているというのがあるのでしょう。



「アラブの春(the Arab spring)」

2011年、北アフリカや中東地域で民衆蜂起(the uprising)が巻き起こった時(アラブの春)、シリアのアサド大統領は、戦車と戦闘機(tanks and gunships)でデモ隊を封じ込めてしまいました。

その結果、平和なデモ隊は武装組織(armed malitias)と化してしまい、砲撃された国民は住む土地を追われてしまいました(uprooted)。



「仲間のアラウィ派(his Alawite brethren)」

少数宗派であるアサド大統領のアラウィ派は、多数派のスンニ派を虐殺。他宗派(other sects)にも忠誠を強いています。

アサド大統領は、自分が失脚したら恐ろしい報復(terrible vengeance)が待っていると、自国民に脅しをかけているのです。



「宗派間の遺恨(sectarian hatred)」

当初、反政府軍を構成する各勢力は、同盟関係(allies)にありました。

しかし、戦乱が深まるにつれ、宗派間の遺恨(sectarian hatred)などから、お互いが敵対するようになってしまいました(target each other)。政府も敵ならば、他宗派も同じく敵ということです。



「カルト的な崇拝(the cultlike devotion)」

たとえ、アサド大統領が国家の統制を失いつつあるといえども、自身のアラウィ派からはカルト的な崇拝(the cultlike devotion)を受け続けています。

また、アサド大統領失脚後の混乱を恐れる人々からも、渋々ながら支持を得ているようです(the grudging support)。



「忠実な軍隊(loyal troops)」

アサド大統領は、いまだに5万人前後の完全武装した忠実な軍隊(so loyal, well-armed troops)を保持しています。

また、それほど忠実でもなく、それほど訓練されていない兵ならば、あと数万人はいるとのことです(less loyal, less trained)。



「ずいぶん先の敗北(a log way from losing)」

アサド大統領がこの戦いに勝てないのは確実ながらも、その敗北もずいぶんと先になりそうです。

というのも、彼の背後ではロシアやイラン、イラクなどが資金や武器を提供しており、レバノン最強の武装組織ヒズボラも、シリアに戦闘員を送り込んできているのです。



「多大なる苦しみ(suffering on such a scale)」

シリアでの戦闘が長引けば長引くほどに、民の苦しみは悲惨なものとなっていきます。

シリアではこれまでに戦闘で7万人以上が死亡し(claimed)、数万人が行方不明になっています(missing)。アサド政権により投獄された人は15〜20万人。200万を超える人々がシリア国内で家を失い、およそ100万人が国外での惨めな生活を強いられているのです。



「看過すべきでない(unconscionable)」

20世紀後半、大虐殺(the genocides)や内戦(civil wars)は看過すべきでない(unconscionable)と、世界は学んだはずではなかったでしょうか?

それでもアメリカのオバマ大統領は、軍事行動(military action)を起こすのに、人命救助(saving lives)だけでは十分な理由にならない(not a sufficient ground)と主張しているようです。



「強制的な平和(to impose peace)」

オバマ大統領が軍事行動をためらう理由の一つに、アフガニスタンとイラクでの苦い失敗があるのは明らかでしょう。

アメリカほど、強制的な平和の実現がどれほど難しいかを痛感している国は、他にありません。オバマ大統領は、アサド大統領が生み出した混乱(chaos)に巻き込まれるのはコリゴリなのです。



「弱ったアメリカ(a weary America)」

そもそも、アメリカは経済的に疲弊してしまっています。

もしここで、さらなる他国の災厄(another foreign disaster)に振り回されてしまっては…、アメリカ国内でのオバマ大統領の立場はますます危うくなってしまいます。



「理解できる、しかし誤っている(understandable, but mistaken)」

アメリカの立場は理解できます。しかしそれでも、エコノミスト誌はそれを間違いだと言い切ります。

遅かれ早かれ、アメリカはシリアの混乱に巻き込まれてしまう(be sucked into)、それが世界の超大国(the world's superpower)たるアメリカの宿命だ、とエコノミスト誌は言うのです。



「アメリカの国益(his country's interests)」

もし、アメリカが傍観している間にシリアが分裂してしまったら…、その地は武装勢力の手によって無法地帯(lawless territory)と化し、混乱に混乱を重ねることになりかねません。

そうなってしまうと、アメリカが中東で成さなければならないことの大半が水泡に帰してしまいます。たとえば、テロの封じ込め(containing)、エネルギー供給の確保(ensuring)、大量破壊兵器(weapons of mass destruction)の拡散防止…。

これらの失敗はアメリカの国益(interests)を損なうことにもなるでしょう。



「イスラエル、レバノン、ヨルダン(Israel, Lebanon, Jordan)」

シリアの反政府軍の2割程度は、過激な聖戦主義者(jihadists)だといいます。もし彼らが隣国のイスラエルを脅かせば、イスラエルは猛然と反撃してくるでしょう。

もしアサド大統領が、別の隣国レバノンにいる同じアラウィ派を扇動すれば、レバノンも引き裂かれる危険性があります。また別の隣国ヨルダンも然り、ただでさえ貧しく不安定なヨルダンはすぐにひっくり返ってしまうでしょう。



「火薬庫(arsenal)」

シーア派が多数を占めるイラクは(Shia-majority Iraq)、アサド大統領のアラウィ派との騒乱(fray)に巻き込まれかねません。そこにスンニ派も加われば、イランまでもが宗派間対立を深めることになるでしょう。

シリアには危険な化学兵器(chemical weapons)があり、イランには核兵器開発(a nuclear bomb)があると言われています。ゆえに、この地域の混乱は全世界に対する脅威(threatens)でもあるのです。



「何もしない(doing nothing)」

アメリカのオバマ大統領は、シリアの戦火(conflagration)が自然に燃え尽きるのを待っているようですが、その方針は失敗に終わりそうです。

事態は悪化するばかりなのです(deteriorate further)。



「破滅的な敗北か、対話か(ruinous defeat or talks)」

アメリカはシリアの破滅的な敗北(ruinous defeat)を見守っているよりも、反政府勢力との対話(talks)を始めるべきなのかもしれません。

少なくとも、今のシリアに残されている人々の保護は図らねばなりません。そのためには、飛行禁止区域(a no-fly zone)の設定なども、アサド大統領の空軍を抑えこむには有効なのでしょう。



「暫定政府(a transitional government)」

シリアの反体制派(Syria's opposition)から、暫定政府(a transitional government)を組織することや、過激な武装勢力以外(non-jihadist)に、対空ミサイル(anti-aircraft missiles)などの武器を提供することなども必要なのでしょう。

少なくとも、イギリスとフランスは、アメリカのそうした行動を支持するはずだ、とエコノミスト誌は言います。



「解放後のシリア(a liberated Syria)」

ここで厄介なのは、ロシアの存在です。欧州とアメリカは、粘り強くロシアを説得し、アサド大統領をバックアップすることを諦めさせなければなりません。

そのための交換条件としては、解放後のシリア(a liberated Syria)におけるロシアの利権(a stake)を約束するのも一手でしょう(第二次世界大戦末期のように…)。



「シリアの穏健派(moderate Syrians)」

しかし今のところ、アメリカに明快なシグナル(bold signal)はありません。

そのため、シリア国内の穏健派(moderate Syrians)は完全に見放されていると感じてしまっています(feel utterly abandoned)。



「シリア国民の血(Syrian blood)」

はたして、アサド大統領はいつまで権力の座に留まり続けるのでしょうか?

その間、シリア国民の血(Syrian blood)は流れ続けるばかりです(flow freely)…。







英語原文:Syria: The death of a country | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 19:50| Comment(0) | 中東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月24日

カリフォルニア州を割るシェールオイル。お宝か、それとも毒か?


アメリカ西部のシェールガス
Fracking in the West
莫大な埋蔵量、大きなためらい
Big reserves, big reservations



カリフォルニア州は決断を下そうとしている、シェール革命(the shale revolution)に加わりたいかどうかの。

英国エコノミスト誌 2013年2月16日号より



「シェールガス開発(shale exploitation)」

アメリカ中西部のノースダコタ州は、シェールガスの開発(shale exploitation)によって、州民の所得を引き上げ、失業率を3.2%にまで低下させました。

いまだ高止まりする全米の失業率(7.8%)に対して、このノースダコタ州の数字は、全米で最も低い水準(the lowest level)にあります。



「全米一の貧困率(America's highest poverty rate)」

一方、カリフォルニア州は失業率が全米平均(7.8%)をゆうに上回る9.8%、その貧困率(poverty rate)は全米一という高さです。

カリフォルニアの人々が、ノースダコタのような中西部を羨むことなどほとんどないのですが、この時ばかりは、シェルガスに沸くノースダコタ州に羨望の眼差しを向けるのでした(look longingly)。



「驚くべき新事実(the revelation)」

そんなカリフォルニア州に、驚くべき新事実(the revelation)がもたらされます。

なんと、自分たちの足元、地下3,000mには全米最大のシェールオイル鉱床(deposit of shale oil)が眠っているというではありませんか!

彼らはそのシェール層(shale formation)にこそ、自分たちの救い(their salvation)があると考えるようになったのは無理なからぬことです。



「モントレーのシェール層(Monterey shale formation)」

その夢の鉱床が見つかったのは、カリフォルニア中南部のモントレー(Monterey)。その45万ヘクタールの広大なシェール層(shale formation)には、採掘可能な石油(recoverable oil)が154億2,000万バレルも埋蔵されているというのです。

この膨大な埋蔵量(big reserves)は、アメリカ全土48州の推定埋蔵量の64%にも匹敵するものでした。



「将来有望(an attractive prospect)」

これほど将来有望なもの(an attractive prospect)が足元に眠っていたとは…。

長引く財政難(fiscal woe)と高い失業率に苦しむカリフォルニア州にとって、足元のシェール鉱床は、喉から手がでるほどに渇望するものであったのです。







「環境意識(environmental scruples)」

しかし、シェールガス開発には地下水汚染(contamination)や大気汚染(air pollution)がつきまといます。

環境意識(environmental scruples)の高いカリフォルニアの人々は、その採掘にためらい(reservations)を感じずにはいられません。去年12月に州政府に提案された規制には、そんな懸念が盛り込まれていました。



「地震が活発な州(a seismically active state)」

大きな農業部門(farm sector)を抱えるカリフォルニア州にとっては、シェール岩を砕く採掘方法によって、地震が誘発されるのではないかという不安もありました。

ただでさえ、カリフォルニア州は地震活動が活発な州(a seismically active state)なのです。たとえわずかな可能性であれ、聞く耳(receptive ears)を持つ人々はシェールガス開発に反対でした。



「石油業者(the oilmen)」

一方、押せ押せの石油業者(the oilmen)は反論します。今まで何のトラブルもなくやってきた、と。

さらに彼らはこう言います。規制の緩い地域(looser regimes)から石油を運びこむよりは、規制の厳しいカリフォルニア州で石油を採掘するほうが環境に優しい、と。



「亀裂(split)」

まるで、シェールオイル採掘の時に岩に亀裂(split)を入れるように、シェールオイルというお宝は、カリフォルニア州のさまざまなところに亀裂を入れてしまいました。

失業率が高い内陸部(inland)では、シェールオイルが新しい仕事をもたらしてくれることを期待し、環境保護論者(the conservationists)は頑なに開発を拒みます。







「財政のトイレ(fiscal toilet)」

はたしてシェールオイルは、カリフォルニア州を財政のトイレ(fiscal toilet)から抜け出させる道なのか?

政治家、企業、その他の思惑もそれぞれ。論争(the row)は激化するばかり…。



「サウジアメリカ論(Saudi America talk)」

エコノミスト誌は、サウジアメリカ論(Saudi Americ talk)は大げさだ(overdone)と言います。

つまり、たとえカリフォルニア州が巨大鉱床モントレーの開発をはじめたとしても、経済的な奇跡(an economic miracle)が起こる可能性は低い(unlikely)と言うのです。



「機会損失(the opportunity costs)」

そもそもカリフォルニア州の巨大な人口は、シェールガスで成功したノースダコタ州の50倍以上もあります。

そのため、カリフォルニア州で所有地をシェールオイル採掘に差し出すのは、他の州よりも機会損失(the opportunity costs)がずっと大きいと指摘する人もいるのです。



「不確定要素(uncertainties)」

地質や規制など、さまざまな面で不確定要素(uncertainties)の多いカリフォルニア州で、モントレーの大規模開発に乗り出している石油業者はまだいません。

それでも、複数の企業がその将来性(its future)を見込んで、大きな賭け(large bets)に出ているそうです。



「フラッキングの液体一杯(a glass of fracking fluid)」

ためらい続けるカリフォルニア州に対して、西部の他州、たとえばコロラド州などは、もっと陽気に(merrily)シェールオイル開発の計画を推し進めています。

コロラド州知事は、シェール採掘の安全性を示すために、その際に用いられるフラッキングの液体(fracking fluid)をコップ一杯飲んで見せたほどです。



「非伝統的(unconventional)?」

アメリカにおける新しい採掘方法である、シェール層の水圧破砕(フラッキング)技術は、そのブームもあいまって、ここ数年で急速に進歩しています。

真水ではなく塩水(saline)を用いるものもあれば、水すら全く使用しない技術も模索されているのです。

そのため、かつては非伝統的(unconventional)と呼ばれたシェール資源はもはや、そう呼ぶのが奇異に感じられる(seem odd)、と業界団体のダン・カーシュナー氏は述べています。







英語原文:Fracking in the West: Big reserves, big reservations | The Economist

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2013年02月22日

イギリスの高齢者は甘やかされているのだろうか…?


イギリスの高齢者に、またアメ
Another sop for elderly Britons
間違った政策
Grey squirrels



政府は老人の面倒を見ており、若者が歳出削減の矢面(the blunt of cuts)に立たされている。これは間違いだ。

英国エコノミスト誌 2013年2月16日号より



「われわれは皆、一蓮托生(We're all in this together)」

イギリスの財務相(chancellor of the exchequer)、ジョージ・オズボーン氏は2009年の就任時に、そう言いました。

この言葉は、これからの財政緊縮(Fiscal austerity)は厳しいものになる、という国民への警告であり、痛みを分かち合おう(spread evenly)という訴えでもありました。



「ほつれ始め(beginning to fray)」

このキャッチフレーズ(cathphrase)は、イギリス国民に受けが良かったらしく(went down so well)、オズボーン氏はこのフレーズを繰り返しスピーチで用いました。

このフレーズはTシャツにもなり、保守党(the Conservative Party)のオンラインショップでも買うことができるそうです(10ポンド・約1,400円)。

しかし残念ながら、このTシャツは今、ほつれ始めているようです(beginning to fray)。



「退職年齢に満たない人々(Britons below retirement age)」

じつは、一蓮托生(in it together)だったのは、退職年齢に満たない人々(below retirement age)ばかりでした。

貧困層には生活保護の支給金(welfare payments)に上限(cap)が設けられ、裕福な家庭からは児童手当(child benefit)を奪われ、大学の授業料(tuition)は高騰しました(rocketed)。そして、日本の消費税にあたる付加価値税(VAT)もより多く支払うようになったのです。



「年金受給者たち(pensioners)」

一方、年金受給者たち(pensioners)は若者たちと同じ蓮の上にはおらず、不況下(in the bust)でも甘やかされてきました(coddled)。

無料のバス定期券、無料のテレビ受信権などの特典(perks)はそのまま。冬場の暖房費は、太陽が燦々とふりそそぐスペインで隠居生活を送っているイギリス人にも支給されています。



「3重のカギ(triple-locked)」

イギリスの年金には3重のカギ(triple-locked)がかけられていると言います。

年金はまず、平均所得(average earnings)によって増えるほかに、インフレ率ないしは2.5%のどちらか高いほうに合わせて増加していきます(つまり、最低でも2.5%)。そして前述したような各種特典(perks)が手つかずに残されているのです。

一方、働く人々の給与や各種手当(salaries and benefits)は、今後数年間で、なけなしの1%(a miserly 1%)しか増加しない見込みです(公的部門)。これでは、一蓮托生であると言われても、ピンと来ないでしょう。



「別の贈り物(another gift)」

先日、ただでさえ恵まれている年金受給者たちには、さらなる別の贈り物(another gift)が届けられました。自身の介護(own care)に対する支払い額が7万5,000ポンド(約1千万円)に達した段階で、それを国が引き継ぐ(take over)と発表されたのです。

それまでは、認知症(dementia)のような長期介護を必要とする高齢者でも、治療費の大部分を自分で支払わなければなりませんでした。なかには、手持ちの現金が300万円程度に減るまで、国の手当を受けられない高齢者もいたのです。



「ありきたりの介護(bog-standard care)」

高齢者に対して寛大な贈り物を施したジェレミー・ハント保健相(the health secretary)は、きっと人気を集めることでしょう。

高齢者たちは、自身の介護のために家を売るということに耐えられません(intolerable)。そして、ありきたりの介護(bog-standard care)にも満足できなくなっているのですから。



「それは間違っている(it is wrong)」

しかし、ハント保健相は間違っている、エコノミスト誌はそう断言します。

今後20年間で、85歳以上のイギリス人はおよそ2倍に増える見込みです。はたして、イギリスの働く若者たちは、かさむばかりのその負担に耐えることができるのでしょうか?



「ごく基本的な生活水準(a very basic standard of living)」

確かに、財政が逼迫した状況下では、社会福祉(welfare)もごく基本的な生活水準(a very basic standard of living)にまで縮小させる必要があるのかもしれません。

しかし今のイギリスでは、豊かな老人たち(wealthy old people)が家を売らなくても済むように、福祉が使われています。



「富を生み出す素晴らしい装置(a terrific generator of wealth)」

過去数十年間、住宅というのは富を生み出す素晴らしい装置(a terrific generator of wealth)であり続けてきました。それゆえ、家族の不動産(family estate)には格別の思い入れ(something special)があったのです。

しかし、富は富(wealth is wealth)。それが道の上にあろうが、銀行の金庫の中にあろうが、変わるところはありません。それでも人々は、自分の家を売らざるを得ないという考えには我慢がならないようです。



「貧しい若者たち(the impoverished young)」

国に納められた税金は、貧しい若者たち(the impoverished young)に使われるほうがずっといい(far better)、とエコノミスト誌は言います。

しかし現在、その血税が年金受給者たちの財産を保つために使われているのです(彼らは好況期に、住宅市場から十分な利益を上げているにも関わらず)。高齢者に対して、過度の施しをすることは、屋根裏(attic)に現金を貯めこむようなものだと、エコノミスト誌は言うのです。



「介護費用(nursing costs)」

先進国が高齢化するにつれ、介護費用(nursing costs)は右肩上がりに増えていきます。

そのため、格付け会社のフィッチは、人口の高齢化が信用格付け(credit rating)を脅かすと、イギリスを含む先進国に警告しています。



「賢明なこと(some sensible things)」

イギリスでは賢明なこと(sensible things)もいくつか行われているといいます。

たとえば、一律に給付する国の基礎年金(a universal basic pension)、年金支給開始年齢(the retirement age)の引き上げ、公的部門の労働者に拠出金を増やす要請…。



「さらに大胆に(bolder)」

さらに大胆な対策をとっている国もあります。

イタリアやポルトガルでは、年金が徹底的に削減され(radically trimmed)、スウェーデンでは他国に先駆けて、年金が拠出金(contributions)と連動する制度を導入しました。



「強力な有権者基盤(a powerful voter block)」

これから先、高齢者たちはますます強力な有権者基盤(a powerful voter block)となっていきます。それゆえ、彼らの意見を軽んずることはますます難しくなっていきます。

しかし、高齢者たちは同時に豊富な人生経験(enough experience)を持っているはずです。だからきっと、最終的には帳簿の帳尻を合わせなければならない(the book must be balanced)、ということも十分に心得ているはずです。



本当に一蓮托生(in it together)となれるのか、それはこれから次第なのでしょう。







※余談

原文の記事タイトルは「Grey squirrels」となっています。直訳すれば「灰色リス」。なぜ?

おそらく「灰色(grey)」は高齢者であることを。そして「リス(squirrels)」は、必要以上に木の実を貯めこむ性質を示しているのかもしれません。



ちなみに「リス(squirrel)」には「気ちがい」という意味もあります。それは、リスの食べる木の実(nuts)が、英語では俗に「気ちがい」の意味で使われるからです。

なるほど。毒舌で知られるエコノミスト誌なら、この記事のタイトルにそんな辛辣な意味も込めているのかもしれません。



英語原文:Another sop for elderly Britons: Grey squirrels | The Economist

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2013年02月21日

総選挙の迫るイタリア。最良の人物、最悪の人物。


誰がイタリアを救えるのか?
Who can save Italy?

英国エコノミスト誌 2013年2月16日号より



「ユーロ危機(the euro zone's crisis)」

一時に比べ、単一通貨ユーロに対する危機は薄らいだように見えます(abated)。今のところ、離脱する加盟国はなく、財政赤字も縮小し、アイルランドやスペインなどでは経済回復の兆しも見え始めています。

それでも危機が去ったとは、まだとても言えません(far from over)。言うなれば、急性期(acute)から慢性期(chronic)に移行しただけです。

財政や銀行の破綻はとりあえず避けられましたが、長期的な失業(a lack of job)や低成長(slow growth)の懸念は深まるばかりです。



「景気後退(recession)」

競争力の喪失(lost competitiveness)、高い失業率(high unemployment)、そして経済の停滞(stagnation)…。

ユーロにとっての長期リスクは、お馴染みの周縁国(the usual peripheral suspects)であるギリシャやスペイン、ポルトガルに留まらず、今や優等生だったドイツとフランスの経済をも縮小させてしまっています(2012年第4四半期)。

そして、その中でも最悪(the worst)なのが、今回の主役、イタリアです。



「イタリアの問題(Itary's failures)」

イタリアの問題(failures)は、一見みえにくいところがあります(not obvious)。

というのも、財政や銀行はおおむね健全な状態(better shape)にあり、不動産バブル(the property booms)の崩壊も回避しました。



「一人あたりの実質GDP(real GDP per head)」

しかし、一人あたりの実質GDP(real GDP per head)という切り口からイタリアを見てみると、その問題は明らかです。ユーロ創設時よりも一人あたりの実質GDPが下がった国は、イタリアともう一カ国しかありません。

全世界のランキングを見ても、2000年以降の一人あたりGDP成長率は、179カ国中169位であり、イタリアの下にはハイチ、エリトリア、ジンバブエなど極度の貧困国(basket-cases)しかいないのです。



「単位労働コスト(unit labour costs)」

ユーロ危機がはじまって以降、大半の地中海諸国(Mediterranean countries)では、単位労働コスト(unit labour costs)が急激に低下しました。

しかし、イタリアの製造業をみてみると、2008年以降、ユーロ圏のどの国よりも単位労働コストが上昇しているのです(フィンランドを除く)。つまり、危機を経てもイタリアでは効率化が行われなかったということです。



「イタリアの総選挙(the Italian election)」

イタリアの総選挙は2月24〜25日に実施されることになっていますが、その結果いかんによって、その影響がアルプス山脈(the Alps)を超えることになるかもしれません。

低迷しているとはいえ、イタリアはユーロ圏3位の経済規模を誇ります。しかし、その公的債務はこの地域で最大であり(GDP比130%)、この国が再び成長に転じられるのか、新たな雇用を創出できるのかは、ユーロ圏にとって小さからぬ問題なのであります。



「規制の多すぎる経済(over-regulated economy)」

幸い、イタリアが進むべき道(a way forward for Italy)は十分にあります。エコノミスト誌によれば、それは規制の多すぎる経済(over-regulated economy)を広く深く改革することです。

実際、マリオ・モンティ氏が率いる現在の実務家内閣(technocratic government)は、去年11月の就任以来この道を進んで、年金や規制、労働市場の改革を実行しています。



「実務家内閣(technocratic government)」

実務家内閣(technocratic government)というのは、選挙で選ばれていない内閣であり、極端な危機に陥ったイタリアを救済するのが、その使命でした。

前政権のシルビオ・ベルルスコーニ氏の治世は惨憺たるもので、国の信用を映し出す国債の利回りは、国家崩壊寸前にまで上昇していました(7%超)。その危機を救ったのが現政権、マリオ・モンティ首相の実務家内閣だったのです。



「経済的権益(economic interests)」

どうやら、イタリアの経済的権益(economic interests)は守られすぎているようです。公証人(natories)から薬剤師、タクシー業からエネルギー供給業者まで、保護の対象は多岐にわたります。

また、行政システムは幾重にも重なりすぎています(too many layers)。州、県、自治体の行政は重複しているケースが幾多とあるのです(duplicate)。



「硬直化した司法制度(a constipated judicial system)」

司法制度(judicial system)も硬直化しているので(constipated)、イタリアの裁判はあり得ないほどに長引きます(impossibly long)。

フランスでは平均331日で終る民事裁判(civil trial)も、イタリアではその4倍近い1,200日を要するほどです。時間もかさめば、費用もかさんでしまいます(costly)。



「改革の余地(an opportunity)」

問題が多いということは、裏返せば改革の余地(an opportunity)がふんだんに残されているということでもあります。

IMF(国際通貨基金)によれば、イタリアが製品市場と労働市場を改革すれば、一人あたりのGDPを5年間で5.7%、10年間で10.5%引き上げられる余地があると、結論づけられています。



「理にかなった財政改革(sensible fiscal reforms)」

もし、理にかなった財政改革(sensible fiscal reforms)がイタリアで行わるのであれば、10年後のGDPは20%以上の大幅成長を遂げる可能性もあると言われています。

しかし、イタリアの秘めるその可能性を引き出せるかどうかは、今月の総選挙の結果次第、次期政権(the next government)次第ということになるのでしょう。



「最良の道(the best)」

エコノミスト誌によれば、最良の選択(the best)は現在のマリオ・モンティ氏が政権の座にとどまることです。

しかし残念ながら、学者(the professor)であるモンティ氏は、その実務能力の高さとは裏腹に、選挙活動(campaingning)は少々苦手のようです。

世論調査によれば、モンティ氏は立候補者中4位に甘んじてしまっています。悲しいことに、支持率(poll ratings)は15%を超えることがありません。



「最悪の結果(the worst outcome)」

エコノミスト誌が言う最悪の結果(the worst outcome)は、一度失脚したベルルスコーニ氏が蘇ってしまうことです。

メディア王(the media tycoon)であるベルルスコーニ氏は、かつて8年以上もイタリア政権のトップにありながら、イタリアを改革することはできず、むしろイタリアを下り坂へと転落させてしまったのですから。



「国の犠牲(the expense of country)」

元首相のベルルスコーニ氏は、国を犠牲(the expense)にして、自らの利益(own interests)を優先してはばからない人物であると、エコノミスト誌は訴えます。

いまだに多くのイタリア国民が彼を支持することが信じられない、とまで同誌は言います(毎度毎度のことですが、エコノミスト誌はベルルスコーニ氏を蛇蝎のごとく嫌っているようです)。



「勝利の可能性(a chance of winning)」

どれほどエコノミスト誌がベルルスコーニ氏を嫌っていても、彼の追い上げには勢いがあり、この勢いを保てれたとしたら、代議員(下院・the Chamber of Deputies)で多数派(a majority)となる可能性があります。

しかし、エコノミスト誌には幸いなことに、元老院(上院・the Senate)での多数派確保はベルルスコーニ氏にとって難しそうです(政治を麻痺状態に追い込むことは出来るかもしれませんが…)。



「残る選択肢(the rest)」

残る選択肢(the rest)はベルサニ氏。彼は世論調査でトップを走り続けています。ベルサニ氏は過去の政権で、改革者(reformer)としてのそれなりの実績も残している有望株です。

ただ、元老院(the Senate)での多数派獲得に至らなければ、エコノミスト誌のイチ押しであるモンティ氏と連立(an alliance)を組むことになるかもしれません。



「まずまずの結果(a decent outcome)」

もし、エコノミスト誌のシナリオ通り、人気のベルサニ氏がトップに立ち、選挙が苦手なモンティ氏がその協力者として経済を担当することになれば、イタリアにとってはまずまずの結果(a decent outcome)だと、同誌は言います。

だがもし、ベルルスコーニ氏が顔を出してきたら…?

イタリアは破綻し(collapse)、ユーロも道連れになるだろう(drag down)…、エコノミスト誌はこの記事をそう締めくくっています(よっぽど彼を嫌っているようです…)。










英語原文:The Italian election: Who can save Italy? | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 15:59| Comment(0) | ヨーロッパ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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