2013年04月25日

本当は危険な人間の運転。自律自動車の話


クルマの未来
The future of the car

クリーンで安全な自律走行車
Clean, safe and it drives itself



自動車はすでに人間の生活スタイルを一変させた(changed the way we live)。そしてまた、それが起こりそうだ(likely to do so again)。

英国エコノミスト誌 2013年4月20日号より



「周期的な大跳躍(periodic leaps)」

生物がそうであるように、発明(inventions)の中には周期的な大跳躍(periodic leaps)を遂げるものがあります。

どうやら、自動車という発明品は、その一つのようです。



「大躍進(breakthrough)」

自動車が最初の大躍進(breakthrough)を遂げたのは、その発明から25年ほど経った時のことでした。

カール・ベンツ(Karl Benz)が最初のモートルヴァーゲン(Motorwagen)の生産をはじめてから25年後、アメリカのヘンリー・フォード(Henry Ford)は、T型フォード(the Model T)でその業界にブレークスルー(breakthrough)をもたらしたのです。



「流れ作業の組み立てライン(moving assembly lines)」

フォードがデトロイトの工場に導入した、流れ作業の組み立てライン(moving assembly lines)。

それが自動車製造の所要時間を劇的に短縮し(drastically cut the time)、結果的に大幅な製造コスト削減につながりました(1913)。



「ありふれた大量生産品(the ubiquitous, mass-market item)」

より安価になった自動車はその後、ありふれた大量生産品(the ubiquitous, mass-market item)となり、個人の移動手段(personal mobility)に革命が起きたのです。

大衆品となった自動車が都市の風景(urban landscape)を一変させ、そして現在、およそ10億台近い自動車(almost a billion cars)が、世界中の高速道路を駆け巡るようになっています。



「自動車保有率(car ownership)」

先進国が先駆けた自動車革命ですが、現在では新興国(emerging markets)も猛烈に自動車の所有台数を増大させています。

もし、全世界の自動車保有率(car ownership)がアメリカ並みになれば、世界の自動車台数は現在の4倍(quadruple)に跳ね上がることになります。



「排気ガス(its emissions)」

すでに中国では主要都市がスモッグに包まれていますが(choked in smog)、世界に自動車が増え続ければ、その排ガス(its emissions)はどれほどのものになるのでしょう。

そうした環境汚染(pollutions)にとどまらず、都市部の渋滞(congestion)、燃料価格の高騰、さらには地球温暖化(global warming)なども頭の痛い問題です。



「規制強化と技術向上(stricter regulations and smarter technology)」

幸いにも、近年の規制強化(stricter regulations)や技術の向上(smarter technology)は、新しい自動車をよりクリーンに、より安全に、燃費の良い乗り物にしてくれました(more fuel-efficient)。

あの中国も、ヨーロッパの例にならい、有害な窒素酸化物(noxious nitrogen)と微細なスス粒子(fine soot particles)の排出規制に乗り出しています。



「電気自動車(battery-powered cars)」

期待の大きかった電気自動車(battery-powers cars)は、今のところ大きな期待には応えきれていないようです。

車両価格は依然として高額で、走行可能距離も短いままです(lack range)。また、石炭を燃料とする発電所(coal-fired power stations)の電力で走る場合などは、見た目ほどに環境に優しいとは言えません(dirtyer than they look)。



「広がる選択肢(widening choice)」

電気と内燃機関(internal-combustion)を組み合わせたハイブリッド車(hybrids)をはじめ、自動車メーカーは電気以外のクリーンな技術に大々的に投資しています(investing heavily)。

超低燃費(super-efficient)のガソリン車やディーゼル車、さらには天然ガスや水素(hydrogen)を動力とする自動車など、将来的な選択肢はその幅を広げています(widening choice)。



「運転支援技術(driver assistance technologies)」

新しい自動車には、さまざまな運転支援(driver assistance)技術を搭載したものもあります。

たとえば、縦列駐車(reverse-park)、標識(traffic signs)の読み取り、安全な車間距離(safe distance)の維持、自動ブレーキ(break automatically)による事故回避などなど。



「運転手のいない車(the driverless car)」

グーグルは、5年以内に運転手のいない車(the driverless car)を一般向けに販売しようと、その開発に力を注いでいます。

同社はまったく新しい自律自動車を一から開発して(build from scratch)、世界に販売しようと考えています。カリフォルニアのフリーウェイを走るその試作車(the prototypes)はすでにかなりの完成度のようです。



「飲酒運転やメールを打ちながらの運転(drive drunk or while texting)」

人は時として、飲酒運転(drive drunk)やメールを打ちながらの運転(while texting)をしてしまいますが、コンピューター制御された自律自動車なら、絶対にそんなことをしません。

もし、コンピューターによる自律走行の運転データを、人間の運転するそれと照らし合わせてみれば、きっと自律走行の車(the car on autopilot)の方が安全だと証明されることでしょう。



「不注意な手や足(reckless hands and feet)」

人間の手足はじつに不注意なもので、その手足がハンドルやアクセルを操らないだけで、多くの事故を回避できる可能性があります。

高齢者(elderly)や身体の不自由な人たち(disabled)も、自律走行車に乗れば、自分一人での移動手段(personal mobility)を取り戻せるはずです。グーグルは実際、目の見えない人(a blind man)を自律走行車に乗せて、テイクアウトのタコス(takeaway tacos)を買いにいけることを実証しています。




「膨大な数の交通事故死傷者(the colossal toll of deaths and injuries)」

人間が運転することの危うさは、その膨大な数(the colossal toll)の交通事故による死傷者(deaths and injuries)が証明しています。

全世界では年間120万人が交通事故で死亡し、病院送りになる負傷者は、アメリカだけでも200万人にのぼります。



「医療や保険のコスト(the costs to health system and insurers)」

もし、コンピューターに自動車の運転を任せて、交通事故の死傷者数が減るのであれば、それは医療や保険(insurers)のコストの軽減にもつながるはずです。

若いドライバーたちも、多額の自動車保険(crippling motor insurance)を支払う必要がなくなるかもしれません。



「渋滞緩和と燃料節約(ease congestion and save fuel)」

自律走行車(driverless cars)は、人間が運転するよりも前の車との車間を詰められるので、それは渋滞(congestion)の緩和につながるでしょう。

また、前の車との車間が詰まると、それは空気抵抗を減らすスリップ・ストリームのような状態(road trains)になり、より燃費が向上するはずです。



「たわごと(bunk)」

グーグルの自律走行車が見せる夢は、あまりにも突拍子もないため、それを戯言(bunk)と考えている自動車メーカーもあります。

なぜなら、コンピューターはクラッシュするものであり、そんな車で高速道路を突っ走るなんて恐ろしくてできない、と言うのです。



「破滅的な訴訟費用(ruinously expensive lawsuits)」

もし、自社の自律自動車が事故でも起こせば、その訴訟費用は破滅的な額(ruinously expensive)にのぼる恐れもあります。

そうなってしまうと、もはや技術開発を継続する意欲は失われてしまうかもしれません。



「人による運転を必要としない飛行機(planes that no longer need human drivers)」

自動車の運転をコンピューターに任せるのを恐ろしいという人でも、人間が運転していない飛行機や電車には平気で乗っているかもしれません。それとは気づかずに(unwittingly)。

自律自動車への移行(shift)も、そのように徐々に進んでいく可能性は高いとみられています。



「グーグルの自律走行車(Google's self-driving cars)」

グーグルの自律走行車(self-driving cars)の走行距離は、すでに70万kmに達しています(大抵の人よりもずっと長いはずです)。

その培った経験(データ)は、同じソフトウェアを使うほかの車に活かされ、いずれは、人間が無意識に使っている勘や技(tricks)にも匹敵するようになるでしょう。たとえば、道路にボールが転がってきたら、その後を子供が追いかけてくるかもしれないと予測してブレーキを踏む、など。



「ありそうもない?(far-fetched)」

しかし、まだ実際に自律走行車を目にしたことのない人々にとって、その実現が間近に迫っている(round the corner)などとは、にわかに信じられません(far-fetched)。

ここで思うのは、テレビがない時代に初めてテレビを目にした人々、もしくは、空気より重いはずの飛行機が空を飛ぶのを目の当たりにした人々のことです。



「当てにならない運転者(fallible operators)」

もし、未来にとって自律走行車が当たり前であったとしたら、未来の人々はこう思うかもしれません。

いったいなぜ昔の人たちは、人間のように当てにならない運転者(fallible operators)に、自動車のように危険な乗り物の運転を任せていたのだろう、と。







英語原文:
The future of the car: Clean, safe and it drives itself | The Economist

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2013年04月17日

鳴かぬなら、いつまで待つか、TPP


日本の農業
Farming in Japan

農協とTPP



兼業農家をより少なく(fewer part-time)、農地をより大きく(bigger plots)。

英国エコノミスト誌 2013年4月13日号



「モザイク模様の水田(a mosaic of plots)」

日本の農家の水田は、まるでモザイク模様(mosaic)。ひとまとまりに見える水田地帯でも、その区画(plot)一つ一つの所有者がバラバラであることが普通です。

その非効率な様は、合理的な欧米人たちに随分と奇妙なことのように思われるようです。



「専業農家(a full-time farmer)」

他人の土地が複雑に入り組んだ水田地帯にあっては、お互いの農家が協力しあわなければ、自分の田んぼに水を引くこともできません。

たとえば、熱心な専業農家(a full-time farmer)が毎日田んぼに水をやりたいとしても、エアコンの効いた家の中にいる兼業農家(part-time farmers)も協力してくれなければ、みんなの田んぼが乾いて干からびてしまうのです(dry out and crack)。



「販売用のコメ(the crop for sale)」

熱心な専業農家の残念なことには、自分たちが丹精込めて育て上げた作物が、片手間につくられた兼業農家たちのそれと一緒くたにされてしまうことです。

地元の農協(the local co-op)が集めるコメは、専業農家のコメと兼業農家のそれとを区別することなく、すべてを混ぜ合わせて販売用のコメ(for sale)とするのです。



「兼業農家(part-time farmers)」

勤めに出ていたりする兼業農家は、空いた時間(spare hours)を利用してトラクターにまたがります。

日本の農業従事者150万人のうち、じつに100万人以上がそうした農業以外に収入のある兼業農家であり、農業一本やりの専業農家は42万人にすぎません(30%以下)。



「日本で最も影響力のある圧力団体(Japan's most powerful lobby)」

日本の農家を束ねる農協(JA)は、おそらく国内で最も影響力のある圧力団体(lobby)です。

全国で24万人という驚くべき職員を抱える農協(JA)。与党・自民党(LDP)や農林水産省(the agriculture ministry)とのつながりも強く、その政治的影響力(political influence)はとても看過できるものではありません。



「高い輸入関税(high import tariffs)」

農協による政治的働きかけにより、日本の輸入関税(import tariffs)は極めて高い状態に置かれています。

たとえば、大本命のコメは777.7%(関税分だけで値段がおよそ7.7倍に)。バターは360%、砂糖は328%です。



「自由貿易圏(a free-trade grouping)」

農協が長年頑なに守り続けている農産物の牙城。それは自民党と結託して墨守してきたものでした。

ところがなんと、自民党の新しい親方、安倍晋三氏は自由貿易圏(a free-trade grouping)であるTPPに日本を加盟させようとしているではないですか…! その発表(the announcement)は当然、農協(JA)に衝撃を与えずにはおきませんでした。



「反発(a backlash)」

半ば裏切り行為に走った自民党。農協からの反発(a backlash)は覚悟の上でした。

案の定、新政府は農林水産省とも敵対(also object)。TPPに参加すれば日本のコメ生産高は10分の1にまで激減し、340万人の雇用が失われるとの、猛反撃を食らってしまいました。



「安い外国産米(cheap foreign rice)」

もし日本のモザイク農業が、飛行機でタネを蒔くようなアメリカ型のビジネス農業(agribusinesses)と対決したならば、日本の農家は崩壊する(collapse)、と渡部恒三氏は訴えます。

彼は長らく国会で農協(JA)の利益(interests)を代弁してきた人物であり、コメは日本の「精神的土台(spiritual cornerstone)」であると述べています。日本の文化はコメの上に成り立っているのだ、と。



「ひどい取り決め(a lousy deal)」

日本農業のコメ政策は、農協や農家にはありがたい話だったが、消費者にとってはひどい取り決め(a lousy deal)だったとエコノミスト誌は言います。

農家は生産量を減らせば補助金がもらえます(paid to grow less)。そうやって生産量を制限することで(by restricting production)、日本のコメ価格(domestic price)は高く保たれてきたのです。いわば、税金による米価カサ上げです。



「稲作(rice cultivation)」

日本の農家で最も兼業農家率が高い(highest concentration)のが、稲作(rice cultivation)です。

稲作以外の農業、たとえば野菜(gardening)や畜産(livestock)などでは、ずっと専業農家が多く(professionals dominate)、多様化が進んでいます(dyversify)。それは、補助金という財政的支援がなかったからでもあります。

しかしながら、農地規模の平均(畜産以外)はわずか1.5ヘクタール。その小ささは苦しさの裏返しです。



「小さな田畑(tiny farms)」

日本の田畑の狭さ(tiny)は、日本の歴史と山がちの地形(mountainous landscape)から生じた必然だ(a natural result)と農協は主張します。

戦後に行われた抜本的な農地改革(a crucial land reform)によって、農地は大地主(landlords)から小作人(tenants)に払い下げられました(平均面積は3ヘクタール)。

土地を手に入れた多くの小さな農家は、最善の手を尽くして(the devoted care)、農業の生産高(yields)を急増させた(shot up)のです。



「規模と効率化(scale and efficiency)」

小さく切り刻まれた農地では、規模(scale)と効率化(efficiency)のメリットを享受できません。そのため、いずれは小さな農家が土地を手放し、大きな農家に集約していくものと思われていました。

ところが、日本経済にはバブル(bubble era)が到来。土地の価値(the value of land)が高騰(soared)。自分の農地が高く売れるのではと夢を見た農家たちは、その小さな農地にしがみつくこととなってしまいました(hang on)。



「過疎化(depopulation)」

しかし、夢ははかなくも弾けてしまいました。そして、地価の下落とともに、無数の小さな農家はズルズルと高齢化(2010年時点の平均年齢は70歳)。

地方では過疎化(depopulation)が進み、耕作地の10分の1ほどが耕作放棄され(abandoned)、雑草ばかりが喜ぶ顛末となってしまいました。



「子孫(offsprings)」

目に見えて衰退していく農地。その様を見て後を継ごうとする子供や孫(offsprings)はほとんどいません。かといって、農地法(land lows)が厳しすぎるあまり、一般人が農地を買い取ることはまず不可能。

日本の農業は今、改革(improvement)か衰退(decline)かの岐路に立たされている。農水省のある高官はそう話していました。



「薬のようなもの(just the medicine)」

ある農家の方は、自由貿易圏のTPPに参加して農産物の関税を下げるのは、老衰する日本農業にとって、薬のようなものだ(just the medicine)と語ります。

そしてまた彼は、「力のある農家(strong farmers)はTPPを恐れていない(not afraid)」と力を込めます。



「74歳の隣人(a 74-year-old neighbor)」

ある74歳の小さな農家の方は、日本がTPPに加盟してアメリカの安いコメが入ってきたら、農家を止める(quit)と言っています。そして、より力のある農家に土地を貸そう(lease)とも考えています。

力のある農家の中にはすでに、漁業会社と提携して冷凍寿司(frozen sushi)をカリフォルニアに売り込もう、と計画を立てている人までいます。



「抜本的な一歩(radical step)」

日本のTPP交渉(trade negotiations)への参加により、農業改革へ向けた抜本的な一歩(radical step)が踏み出される可能性があります。

日本の農政は、力のある農家(capable farmers)に農地を集中させるべきだ(concentrate farmland)とエコノミスト誌は言います。そして、企業を含む新規参入者(newcomers)にも農地を購入できるようにするべきだ、と。



「農業改革の進め方(options for agricultural reform)」

もし日本がTPPに加盟しても、現在コメ農家に対して行われているような保護が廃止されるまでには、なお数年間の猶予が必要とされるかもしれません。

そして、国内農家の競争力(competitiveness)を高めないままに輸入関税(tariffs)を下げてしまうと、悲惨な結果(disastrous)にもなりかねません。



「最大の障害(the main hurdle)」

政治的にも難しい農業改革。そこに大きく分厚い顔を効かせてくるのが、やはり農協(JA)。

ケタ違いの会員数を誇るJAは、現在の小さく多数の農地配分(the current distribution)を維持するほうが、ずっと得なのです(たとえ産業としては非効率だとしても)。



「失われる権力(losing its potency)」

しかしながら、JA会員の極端な高齢化は、時とともにその力を弱めていくことを意味しています。すでに、消費者の新しい要求に応える新しいタイプの農協(new co-ops)も、JAのその老体から芽生えようとしています。

時が経つほどに、確実に力を弱めていく従来の農協(JA)。衰退か改革かの岐路に立たされているのは、農協組織そのものでもあるのです。

「鳴かぬなら鳴くまで待とう…」、それもまた政治的選択です。ただ、待ちすぎて共倒れに巻き込まれることだけは、誰しも望むところではないでしょう…。







(了)





英語原文:
Farming in Japan: Field work | The Economist

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2013年04月14日

かつての自民党の遺産に阻まれるアベノミクス


日本経済
Business in Japan

アベノミクスの評価
Appraising Abenomics



新首相のもと、物事は上向き始めている(looking up)。

英国エコノミスト誌 2013年4月6日号より



「目ン玉が飛び出るほどの刺激策(an eye-popping stimulus package)」

安倍首相の率いる自民党は、権力に返り咲くや(return to power)、10兆円という目ン玉が飛び出るほどの(eye-popping)財政刺激策(fiscal-stimulus package)を打ち出しました。

お陰さまで、日本の建設会社(construction firms)は大喜び。日本の株式市場(stockmarket)も活況を呈しており、自民党の権力奪還以来、40%以上もの上昇局面が続いております。



「マネタリーベースを2倍に(double the monetary base)」

大胆不敵な安倍政権に呼応するかのように、日銀もしぶといデフレ(deflation)にサヨナラを告げるべく(once and for all)、2年以内にマネタリーベースを2倍にすると宣言しました。

マネタリーベース(monetary base)というのは、国家の中央銀行たる日銀が印刷する現金のことですから、今後2年間で、国内の円紙幣の量が2倍になるということです。



「円安(a weaker yen)」

政府と日銀による協調的な緩和姿勢は、通貨「円(yen)」の価値を下げずにはおきませんでした。円は安倍首相、そして日銀の大胆発言により大幅に急落。かつての80円台近辺から急転直下。一気に100円の大台を突破してしまいかねない猛烈果敢な勢いです。

いきなりの円安は、苦境にあった製造業(struggling manufactures)の救いにはなりました。しかし今後、原油などの輸入品の価格が上昇するであろうことに関しては、さほど政府は気に止めていないかのようです。



「アニマル・スピリッツ(the animal spirits)」

はたして、安倍首相が旗を振るアベノミクスは、日本企業に長らく欠けていたアニマル・スピリッツ(the animal spirits)を喚起することができるのでしょうか。

3月の日銀短観(Bank of Japan Tankan)では、製造業の景況感(business sentiment)が3四半期ぶりに改善しました。しかしながら、より長いスパンにおいて、大半の企業はおおむね悲観的でした(still pessimistic)。



「手取り収入(take-home pay)」

ロイターの調査によれば、85%の企業が年内の給与を据え置く(keep static)か削減する(cut)と回答していました。

手取り収入(take-home pay)として最も重要なボーナス(bonuses)に関しては、統計が始まった1990年以降、最低の水準にあります(at the lowest)。



「消極的な企業(corporate reluctance)」

笛吹けど踊らず。安倍首相の威勢のよい笛の音を聞きながらも、多くの企業は設備投資や昇給に消極的です(reluctance)。

2月の鉱工業生産指数は、予想外の停滞(unexpectedly slowing)。その主な原因は、低迷する中国経済(sluggish Chinese economy)の需要減少に求められました。



「国外情勢への無力さ(little control beyond Japan)」

安倍首相による円安政策(yen-bashing)は確かに奏功し、日本の輸出企業はとりあえずの小康を得ることはできました。しかし、安倍首相も国外の情勢(beyond Japan)へはどうすることもできない(little control)、と西島寛氏(自動車の精密機械企業)は指摘します。

新政府に対する期待は大きいものの(a lot of expectation)、景気回復が自律的(self-sustaining)になるまでは、これまでの同社(西島)の計画を変更しないつもりだ(unchanged)、と同氏は述べています。



「電力産業の改革(to reform power industry)」

安倍内閣の大胆な計画(an ambitious plan)には、長らくタブー視されてきた電力産業(power industy)に対する改革も含まれています。

現在、地域ごとの独占(regional monopolies)になっている日本の電力会社。そのせいで、日本の電気料金は高止まりしている(keep high)と言われており、お隣り韓国の3倍の電気料金を日本国民は支払っています。



「電力小売りの競争(competition in retail sales of electricity)」

今は一体となっている電力会社の発電部門(generating arms)と送電部門(transmission arms)。その2つの部門を安倍首相は分離したい考えです(hope to split)。

もし、この改革案が国会(the Diet)の承認を得られるのであれば、電力部門では1950年代以来、初の重大な改革となるでしょう(would be)。しかし案の定、憤る電力会社は激しい圧力を政界にかけてきているようですが…(lobby hard)。



「バラバラの方向に引っ張られる議会(parliament pulling in different directions)」

安倍首相にとっての気がかり(worrying)は、7月に予定されている参議院選挙(an upper-house election)にもあります。

選挙において、与党・自民党(LDP)は衆参両院を掌握する可能性がありますが、それが確定するまでは、企業側も本腰を入れるわけにはいきません。議会(parliament)がバラバラの方向(different directions)に引っ張られているままでは、安倍首相の構想も絵に描いた餅に終わってしまうでしょうから…。



「有力な支持基盤、農家(Farmers, a key voting block)」

たとえ自民党が衆参両院を支配下に収めたとしても、内部分裂を誘うであろうタネは幾多とあります。

たとえば、自由貿易圏(a free-trade zone)を目指すTPP(環太平洋経済連携協定)。これに反対する自民党議員は200人以上ともいわれ、その反対派を後押しするのは、自民党の有力な支持基盤(voting block)である農家、そしてロビー団体たる農協です。



「反対活動(the farm lobby)」

農業団体による反対活動(the farm lobby)に打ち勝つことなくして、アベノミクスの定着(here to stay)はおぼつかないかもしれません。

内閣府(cabinet office)のまとめによれば、自由貿易TPPへの参加により、10年間でGDP(国内総生産)を3.2兆円、率にして0.7%押し上げることが可能だともいうのですが…。



「国家成長戦略(national growth strategy)」

国内最大ネット小売(online retailer)の楽天、その社長の三木谷浩史氏は、安倍首相の政策を高く評価しているものの、本当の試金石(the real test)は国家成長戦略(national growth strategy)を生み出せるか否かにあると踏んでいます。

楽天・三木谷氏の考える国家成長戦略とは、改革と規制緩和(deregulation)、そして政府主導による産業政策(government-led industrial policy)を意味するとのことです。



「とてつもない効率性(huge efficiencies)」

もし、医薬品(drugs)の販売などがオンラインでも認められれば、それは途轍もない効率性(huge efficiencies)を生み出す、と三木谷氏(楽天)は確信しています。

しかし残念ながら、ここにも障壁(obstacle)は立ち塞がります。医療系団体のかけてくる圧力は尋常ならざるものがあるのです。さらに悪いことには、その医療系団体(medical lobby)もまた、自民党の古くも大切な支持基盤(traditional supporter)なのです。



「筋金入りの国家主義者(a staunch nationalist)」

海外メディアは、安倍首相のことを筋金入りの国家主義者(a staunch nationalist)と盛んに報じます。

安倍首相が戦争責任の謝罪(war apologies)を撤回し(backtrack)、戦犯(war criminals)が祀られている靖国神社に参拝しようと企んでいることを、海外メディアは必要以上に囃し立てるのです(とりわけ中国が)。



「妥協(compromises)」

どんな場合も妥協(compromises)はつきものだ、と楽天の三木谷社長は言います。

電力会社、農業団体、医療系団体…、さらには海外に対するイメージ。これから安倍首相が妥協していかなければならない障壁は、その眼前に山と積まれているようです。

皮肉にも、それらの聳える山々はかつての自民党が築きあげてきた既得権益だったりもするのですが…。







(了)






英語原文:
Business in Japan: Appraising Abenomics | The Economist

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2013年04月08日

ワケもなく強気に見える北朝鮮(金正恩)


北朝鮮への対処
Coping with North Korea

コリアン・ルーレット
Korean roulette



金正恩が危険度(the stakes)を高めた。今こそ、世界で最も厄介な政権(the nastiest regime)に一段と厳しく対応すべき時。

英国エコノミスト誌 2013年4月6日号より



「戦争状態(a state of war)」

1950年に始まった朝鮮戦争。公式には1953年以来、北朝鮮と韓国は長らく「休戦状態」にありました。

ところが、北朝鮮の金正恩氏は突然、戦時状況(a state of war)入りを宣言したのでした(3月30日)。



「ミサイルの雨(to rain missiles)」

さらに韓国と同盟国のアメリカに対しても、米国本土とハワイやグアムの軍事基地(military bases)に、ミサイルの雨を降らせると北朝鮮は断言しました。

あまつさえ、核攻撃(nuclear Armageddon)の脅しまでかけてきたのですから、さすがに異常事態です(extraordinary)。



「さらなる核兵器(more nuclear weapons)」

2007年の合意以来、停止させていたはずの寧辺の原子炉(reactor)を再稼働させるのは、ウランを濃縮させて(enriching uranium)、さらなる核兵器をつくるためでしょうか?

同核施設は、プルトニウムを抽出できる能力まで有しています(plutonium-producing)。



「戦争の一歩手前(a hair's breadth from war)」

北朝鮮の金政権による3度目の核実験(nuclear test)を行なってからというもの、朝鮮半島の緊張(tensions)は一気に高まっています。

これは、北朝鮮とアメリカが戦争の一歩手前(a hair's breadth)までいった1994年以降、最悪の状態(the worst)といえるでしょう。



「虚勢(bluster)」

北朝鮮の攻撃的な姿勢(the aggression)は単なる虚勢(bluster)なのでしょうか?

たとえば、アメリカ本土に対する核攻撃はそうかもしれません。どう考えても、北朝鮮の核弾頭つきミサイル(nuclear-tipped missiles)はアメリカ本土までは届きません(日本列島には届きますが…)。また、北朝鮮は110万人規模の軍隊に対して、まだ動員命令(mobilisation)も出していません。



「挑発と抑止のサイクル(the cycle of provocation and deterrence)」

挑発(provocation)と抑止(deterrence)を繰り返す北朝鮮。今回の挑発は、どこまでエスカレートするのでしょうか?

傾きかけている北朝鮮(decrepit North Korea)の軍事力は、明らかに韓国とアメリカのそれには及びません。若き金正恩氏の眼には、現実が写っていないのでしょうか?



「カルトじみた献身(the cult-like commitment)」

戦力は劣れども、北朝鮮国民によるカルトじみた献身(the cult-like commitment)は侮れません。

もし人口密集地である朝鮮半島(the crowded Korean peninsula)で戦闘がおきれば? それは熾烈なものとなるでしょう(would be savage)。アメリカ軍の推定によれば、100万人以上の死傷は免れません。



「虐げられた自国民(its own brutalized people)」

政治犯(political prisoners)として強制収容所(gulag)に押し込められている北朝鮮国民は、15〜20万人にも上るとのことです。

集団農場に囲い込まれた農民たちは、厳しい肉体労働(manual labour)を強いられ、中国との国境で難民(resugees)を逃がす女性は、銃で撃たれる危険に晒されています。



「新しい支配者(new ruler)」

2011年に金正日氏が死去したあと、その跡を継いだ若き金正恩氏。当初は、この若き支配者が新たな変化をもたらすかもしれないとの淡い期待もありました。

ところが今、金正恩氏は父親以上に恐ろしい存在になっています(even scarier)。



「際限のない大言壮語(boundless bombast)」

核実験と際限のない大言壮語(boundless bombast)。若き変化の力(a youthful agent of change)は、あらぬ方向へと向けられてしまっています。

一説によれば、2010年に韓国海軍の哨戒艦(corvette)の撃沈と延坪島の砲撃を命じたのは、金正恩氏だったとのことです。



「青二才の息子(callow son)」

父親・金正日氏には巧妙な計算(the calibrated calculation)がありました。彼は周到な計算の上で、外の世界を揺さぶっていたのです(shaking down)。

ところが、その息子・金正恩氏は向こう見ずに(wildly)緊張を高めているいるかのようで、彼を崖っぷちから引き戻す方策は、誰にも分かりません。



「ビデオ・ゲーム(a video game)」

金正恩氏にとって、混乱(chaos)を煽るのはビデオ・ゲームのようなスリル(thrill)なのでしょうか?

現状の理解が不十分で(out of his depth)、誤算しやすい傾向(prone to miscalculation)にあるのでしょうか?



「交渉の余地なし(non-negotiable)」

父親・金正日氏が緊張を高めるのは、その目的が取引(bargain)にもありました。それゆえ、彼は支援や石油と引き換えに、核開発計画の放棄(dismantling)を巡る協議にも同意したのです。ある意味、それらは茶番(charade)でした。

ところが、息子・金正恩氏はどうでしょう? 核保有能力(nuclear capability)は譲ることができないと、いきなり宣言してしまっています。まるで交渉のテーブルにつく気がなさそうです。



「行動には結果が伴う(actions have consequences)」

この若き指導者は、行動(actions)には結果(consequences)が伴うということを知らないかのようです。

金正恩氏が交わす約束の中で、核開発の停止(suspending)は最も価値のあるものだったはずです。それを排除することには、どんな結果が伴うのでしょうか。



「ならず者政権(rogue regimes)」

北朝鮮しかり、イラン然り、危険な核拡散国(nuclear proliferators)となりそうな国家を、世界の親玉アメリカは大嫌いです。

アメリカ元大統領のブッシュ氏は、そうした国家を「ならず者(rogue)」と呼んでいたのです。



「奇襲(sneak attacks)」

もし北朝鮮が韓国を奇襲(sneak attacks)するようなことがあれば、韓国は以前よりはるかに強硬に反撃する(much firmer response)、と明言しています。

アメリカは、グアムにミサイル防衛システムを配備し、朝鮮半島上空には核を搭載できるB2爆撃機(nuclear-capable B-2 bombers)を飛行させました。



「金正恩にうんざり(sick of Mr Kim)」

金正恩氏にうんざりしてしまっているのは、同国を衛星国(satellite)とする中国も然り。中国は国連による新たな経済制裁(financial sunctions)に賛成しています。

しかし、今ひとつ煮え切らない中国(half-hearted)。北朝鮮が数億ドルを貯め込んでいるという上海の大手2つの銀行を制裁対象から外すことを主張しているようです。



「コリアン・ルーレット(Korean roulette)」

北朝鮮の金正恩氏の発言は、どれほど真に受ければよいのでしょうか? そして、どう対応すべきなのでしょうか(how to respond)? いずれにせよ、弱腰(backing off)になって得られるものはなさそうです。

ロシアン・ルーレットならぬ、コリアン・ルーレット(Korean roulette)。予測不能の金正恩氏による次なる一手は、空振りか実弾か?







英語原文:
Coping with North Korea: Korean roulette | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 10:49| Comment(0) | アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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