2013年05月31日

もたもたしていたヨーロッパ。アメリカはずっと先に



アメリカの後ろで、もたつくヨーロッパ
Hobbling behind America



ユーロ圏の歩む長い道のりは、回復(recovery)か、衰退(decline)か。

英国エコノミスト誌 2013年5月25日号より



「アメリカのせい(blame America)」

ヨーロッパ人たちはとかく、欧州の危機をアメリカのせいにしたがる(like to blame)ようです。

でも数字を見てみると、ユーロ圏が危機対応(response)を誤ったこと(mishandle)は明白なようですが…。



「成長率(growth)」

たとえば成長率(growth)という数字を見てみましょう。

アメリカの経済生産(output)は、すでに危機前のピーク(pre-crisis peak)を超えてさらに成長しています。ところが、ユーロ圏はまだ失地(the lost ground)を回復できず、逆に縮小してしまっている(shrinking)のです。



「失業率(joblessness)」

失業率(joblessness)はどうでしょう。2008年の金融危機後は、欧州・アメリカともに10%を超えていました。

現在、アメリカの失業率は8%を下回るところまで低下してます。それに対して(whereas)、ユーロ圏では逆に12%にまで跳ね上がってしまいました。



「医療過誤(malpractice)」

もしヨーロッパのリーダーたちが医者だったら、今ごろ医療過誤(malpractice)で訴えられているかもしれません(might be sued)。

欧州経済という患者(patient)は、各国の緊縮財政(austerity)が厳しすぎたせいか、その病状が悪化しています。そして、そのしわ寄せで若い失業者たち(young unemployed)が路頭で苦しむことになってしまいました。



「大言壮語(bombastic talk)」

もはや、ユーロがドルと肩を並べる(rivalling)という大言壮語(bombastic talk)は立ち消えてしまったようです。

なんとかヨーロッパの衰退(the decline)を食い止めねばなりません。さもなくばヨーロッパは1980年代の中南米諸国のようにモロモロと崩れてしまうかもしれません。



「問題(issues)」

アメリカがシェールガス革命の恩恵を享受している(benefiting)その一方で、ヨーロッパはいかにエネルギー価格を引き下げるか(bringing down)に頭を悩ませています。

また、通常はもっと貧しい国を悩ますような問題、たとえば、どうやって銀行の秘密口座(secret bank accounts)に隠された資金を見つけ出すか、もしくは、どうやって多国籍企業(multinationals)に税金を払わせるか、といった問題に今のヨーロッパはかかりっきりになってしまっています。



「経済改革(economic reform)」

いままでドイツはしきりに財政規律(fiscal discipline)を唱えてきましたが、最近は経済改革(economic reform)のほうに重点が移っているようです。

1999年以降、ヨーロッパの赤字国(deficit country)では、労働者の賃金(wages)が生産性(productivity)をはるかに上回るペースで上昇していますが、そこに、ドイツの首相・メルケル氏は、改革の必要性を指摘しています。



「生産性と賃金(productivity and wages)」

イタリアでは、生産性(productivitiy)が向上していない(static)にも関わらず、労働者の賃金ばかりが上昇を続けました。まるで債務危機に陥ったスペインやポルトガルのように。

また、フランスの借り入れコスト(borrowing cost)はドイツ並みに低いのに、その実態はドイツよりも南ヨーロッパの債務国(debtor)によく似ているのです。



「正しい政策(the proper response)」

正しい政策(the proper response)は、生産性を引き上げ、賃金を引き下げる構造改革(structural reform)だと、ドイツは考えます。

ですが、賃金の引き下げは経済的な痛み(economic pain)を伴い、こうした改革は短期的に成果を上げるのが難しく(hard in the short term)、社会的不安(social strife)を招く恐れもあります。



「問題を抱えた国(troubled countries)」

ギリシャなど、問題を抱えた国(troubled countries)では、それでも調整が進められています。

救済(bail-out)を受ける条件として、労働・製品市場の自由化(liberalisation)が求められたり、失業(unemployment)によって賃金が容赦なくカットされているのです。



「より大きな難問(a bigger conundrum)」

さらに大きな難問(conundrum)はフランスです。まだ国債の金利高騰などの市場圧力(pressure from markets)は受けていませんが、いずれにせよ同国は規模が大き過ぎます(too big)。

もしフランスが衰退するようなことがあれば、ユーロを沈没させる恐れがあります。にも関わらず、フランスはドイツにとって極めて重要な国のため、ドイツは声高に非難することができません。



「赤字削減目標(deficit target)」

欧州委員会が各国ごとの勧告(country- specific recommendation)を公表する際、フランスには赤字削減目標(deficit target)の達成に2年の猶予期間(two extra year)が与えられる見通しです。その間に構造改革(structural reforms)をするようにと。

ですが、フランス大統領のオランド氏は、フランスの競争力(competitiveness)の問題を解決するのに、他国の人件費と福祉費用(labour and welfare costs)を引き上げることを求めています。なんと安易な抜け道を通ろうとしている(an easy way out)のでしょうか。



「ドイツを激怒させる考え(a mindset that infuriates Germany)」

フランスのオランド大統領の目論見は、ドイツを激怒させる考え方(a mindset)です。

ドイツが願うのは、ヨーロッパの他国がドイツに追いつくこと(catch up)ではなくて、どうすればヨーロッパが世界と競えるようになるかを考えているのです。だから、フランスにもグローバル化(globalisasion)をチャンスとして受け入れてほしいのです。



「硬直化した労働市場(rigid labour markets)」

ドイツの見解(view)によれば、ヨーロッパの硬直化した労働市場(rigid labour markets)が経済的に苦しんでいる国々(struggling countries)の高失業率(high unemployment)を招いている、ということになります。

守られすぎた労働者がグローバル化の妨げとなり、ヨーロッパ企業がなかなか世界的に成功できない(struggle to be globally successful)、というのです。



「構造改革(structural reforms)」

構造改革(structural reforms)に重点が移るまで、少々時間がかかりすぎたかもしれません(come late)。

欧州の各国政府はすでに、緊縮財政(austerity)に莫大な政治資本(political capital)を費やしてしまったため、自国経済を自由化する力はもうないかもしれません。



「負担(liabilities)」

ユーロ危機への対応の遅れ(delay)は、ドイツが自国への負担(liabilities)を限定したいと考えたからでもありました。

またフランスなど他の国々が、条約改正(modify the treaties)に消極的だったこと(reluctance)も影響しています。イギリスもEUの加盟条件を再交渉(renegotiation)を求めるなど、不快な行動をとりました。



「リスクの共有(risk sharing)」

ユーロ加盟国がそれぞれリスクを共有(share)しなくても、ユーロが存続できると考えるのは現実的ではありません。

フランスのオランド大統領は、ユーロを強化するために政治同盟(political union)を受け入れる用意があると言います。「何もしなければ欧州は倒れる(fall over)。あるいは世界地図から消えてなくなる(disappear)」とも言っています。




「銀行同盟(a banking union)」

ECB(ヨーロッパ中央銀行)は、ユーロ危機に陥った諸国に対して、ある程度まで(up to a point)「最後の貸し手(lender of last resort)」として介入しました(stepped in)。

そして、ゆっくりとしてペースではありましたが、金融セクターは銀行同盟(a banking union)の創設によって安定化しました。



「国家ではない(is not a state)」

ヨーロッパは一つの国家ではありません(is not a state)。それゆえ、一つの国家であるアメリカほど迅速に対応できない(cannot respond quickly)ともいわれます。

ある観測筋(observer)はこう言います。「ユーロは誰も止められない時限爆弾(infernal machine)と化した」。そして身動きが取れなくなった(trapped in it)と。










英語原文:
Hobbling behind America | The Economist

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2013年05月27日

海外ファンドに狙われたソニー。立ってるものは棒でも…



狙われたソニー
Sony under fire

さよなら、ジェームズ・ボンド?
Goodbye, Mr Bond?



アメリカのヘッジファンドが、ソニーに挑む(take on)。

英国エコノミスト誌 2013年5月18日号より



「アメリカ資本主義の欠点(the flaw in American capitalism)」

かつてソニーの共同経営者「盛田昭夫」氏は、アメリカ資本主義(capitalism)の欠点(flaws)の一つとして、短期的な金銭的成果(short-term financial results)への執着を挙げていました。

それはちょうど、ソニーの携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」がライバル企業を踏み倒していた頃(trampling underfoot)のことです(1980年代)。







「6.5%のソニー株(a 6.5% stake in the firm)」

そんな盛田昭夫氏が、ソニー株の6.5%をアメリカのヘッジファンドに取得されると聞いたら、さぞかし墓の下で嘆いている(bewail)かもしれません。

今年(2013)5月、ヘッジファンド「サード・ポイント(Third Point)」の代表、ダニエル・ローブ(Daniel Loeb)氏は、株式取得と同時に、ソニーの将来計画まで提示しています。



「外国の野蛮人(the gaijin barbarian)」

将来計画を語ったローブ氏は、ソニーの映画・音楽事業を「王冠の宝石(gems in its crown)」と認めた上で、そのの大部分を売却すべきだ、と提案しました。

その売却によって、ソニーの株価(share price)は60%上昇すると、ローブ氏は言うのです。



「45°のお辞儀(45-degree bow)」

ローブ氏のこの提案は、彼の日頃の振る舞い(usual standards)からすれば、45°のお辞儀(45-degree bow)に等しいとのことです。

なにせローブ氏は、米国ヤフーの取締役会を「バカげている(nonsensical)」と断じ、同社トップを解任に追い込んだ(sacked)ことがあるのです(学位詐称の暴露)。



「日本の超金融緩和(Japan's ultra-loose monetary policy)」

ちなみにローブ氏のヘッジファンドは、アベノミクスの一環として行われた超金融緩和(ultra-loose monetary policy)によって、すでに多額の利益を手にしています。

ローブ氏は円を空売り(shorting the yen)することで、超円安の恩恵に存分に身を浸しているのだそうです。



「不透明(unclear)」

しかしながら、なぜソニーが映画・音楽事業を売却することで、ソニー株が上昇するのかは、ローブ氏の説明ではまったく不透明(unclear)です。

ソニーの同事業は、いま最も同社にとって好調な事業(best performing businesses)の一つで、売却するどころかむしろ、数々の買収(
a series of acquisitions)を行なっているのです。



「映画・音楽事業(film and music businesses)」

ソニーの映画・音楽事業(film and music businesses)は2013年の3月期、9億ドル(約900億円)以上の営業利益(operating income)を上げています。

逆に、家庭用娯楽機器(携帯電話・パソコン・テレビなど)は、合計で19億ドル(約1900億円)の赤字(combined lossses)です。ソニーのエレクトロニクス事業は全体で(overall)、14億ドル(1400億ドル)の赤字を計上しました。







「相乗効果(synergy)」

ソニーは長年、コンテンツを製作するソフト部門と、ハードウェアを生産する部門の相乗効果(synergy)を見出すのに、悪戦苦闘してきました(struggled)。

ですが今、その相乗効果うんぬん以前に、採算性の高い音楽・映画部門(profitable tunes and flicks)ならびに金融サービス事業が、ソニーを破綻から守っている(keeping Sony afloat)というシンプルな構図になっています(simpler)。



「クールで画期的な新製品(cool and groundbreaking new products)」

ソニーはかつてのウォークマンのように、クールで画期的な新製品(groundbreaking new products)を生み出す方法を忘れてしまったのでしょうか?

あれほど膨大な量の音楽カタログ(huge music calatog)を持ち、ハードウェアに関する底なしの専門知識(bottomless expertise)を持ちながら、なぜソニーは「iPod」を生み出せなかったのでしょう?

それはソニーだけに限らず、日本株式会社(Japan Inc)全体の問題なのでしょうか?







「ソニーの創造的なセンス(the firm's creative flair)」

ソニーの平井社長は、ソニーの創造的なセンス(creative flair)を取り戻す(restore)と宣言しました。

コンテンツ畑(content side)出身の平井氏は、若いエンジニアたちを奮い立たせるべく(try to inspire)研究開発センターや工場にも足を運び、その結果生まれたスマートフォンの「エクスペリアZ」などは好評を博しています(favourable buzz)。



「モノ言う投資家(activist investors)」

これまで日本に押し入ろうとしたアクティビスト投資家(activist investors)は、たいした成果を上げることができませんでした。

地元日本の人たちは、そうした海外のアクティビストたちの目的が、経営の改善(better management)にあるのではなく、短期的な利益(short-term profit)を掠め取ろうとしていると考えていたのです(かつてソニーの盛田昭夫氏がそう言っていたように)。



「16世紀のキリスト宣教師(the Christian missionaries)」

まるで16世紀のキリスト宣教師たち(the Christian missionaries)のように、海外のファンドなどは日本で成果を上げられませんでした。

たとえばスチール・パートナーズ(米国ファンド)は、サッポロビールの企業統治(corporate governance)の改革に失敗しています(failed)。西武に投資するサーベラス・キャピタル・マネジメントは今も、2006年からずっとそうした努力を続けてるそうです。



「世界志向の強いソニー(a globally minded Sony)」

もしかしたら、世界志向の強いソニー(a globally minded Sony)ならば、部外者(outsiders)の意見に耳を傾けるかもしれません。もちろん「モノ言うヘッジファンド(activist fund)」の意見でも。

ローブ氏の提案する映画・音楽事業の売却予定はないものの、株主との対話(dialogue with shareholders)は歓迎すると同社は述べています。



「便利な道具(useful tool)」

たとえ創業者の想いとの異なれど、ローブ氏の圧力(pressure)は同社の変革を促す便利な道具(useful tool)として使えるかもしれません。

ソニーを世界の大海原に再浮上させるためには、野蛮人(barbarian)の持っている棒でも「短期的には(in short-term)」役に立つでしょうから…。







(了)






英語原文:
Sony under fire: Goodbey, Mr Bond? | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 13:36| Comment(0) | 企業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月20日

海外に軍国主義を懸念される安倍政権



安倍首相のマスタープラン(全体計画)
Abe's master plan



安倍晋三首相は、豊かで(prosperous)愛国主義的な(patriotic)日本を思い描いている。

英国エコノミスト誌 2013年5月18日号より



久々に、エコノミスト誌の表紙、およびトップ記事が日本!
とはいえ、スーパーマンに扮された安倍氏は、哀しいほどに間抜けですが…(スーパーマンの胸の「Sマーク」は「円マーク」)。



「惨憺たる一期目(first disastrous term)」

思えば5年前(2007)、小泉純一郎氏の跡を継いだ安倍晋三氏は、一度国政のトップに立っていました。

しかし、持病の腹痛、慢性疾患(chronic illness)によって、もう立っていられなくなり、その舞台をわずか一年で降りてしまいました。



「まったくの別人(a new man)」

そして2期目の今回、まだ首相就任から5ヶ月足らずとはいえ、前回とはまるで別人のように、安倍首相は生き生きとしております。

アベノミクス(Abenomics)を鳴り物に、20年以上にわたり仮死状態(the suspended animation)にあった日本を、ブルブルと振るい起こそうとしているのです。



「本来あるべき地位(its rightful place)」

自身の健康を取り戻した安倍氏の意図するところは、日本もまた、本来あるべき地位(its rightful place)に戻すこと。

官僚組織(bureaucracy)に目いっぱいエネルギーを注入し(supercharge)、地政学的な日本ブランドを再生させ(rebrand)、憲法を改正する。と、今回の安倍氏は元気一杯です。



「成長戦略(a growth strategy)」

日本経済はアベノクミスに電気ショックを食らったように、目を覚ましました(electrify)。

安倍氏の首相就任以来、日経平均株価は55%の急回復。円は目論見通りの急降下。トヨタら輸出企業はバンバンザイ。今年第1四半期(1〜3月)のGDP成長率は3.5%にまで押し上げられ(年率換算)、安倍氏の支持率(approbal rating)も70%と絶好調。



「衆参両院での過半数(a majority in both chambers)」

この勢いのままであれば、与党・自民党(LDP)による衆参両院(both chambers)での過半数(majority)も夢ではありません。

7月に行わる参議院(the upper house)を制することができれば、安倍氏は自由に法案(legislation)を通すことも可能になり、憲法改正への道も拓けるかもしれません。



「失われた20年(two lost decades)」

日本の名目国内総生産(nominal GDP)が、1991年と同じ水準で足踏みしていることから、この間の期間は失われた20年(two lost decades)と呼ばれています。たとえば、最近の日経平均株価の急騰(the recent surge)ですら、まだピーク時の3分の1程度にすぎません。

減り続ける労働力人口(shrinking workforce)に、増え続ける高齢者人口(growing number of the elderly)。おんぶする人が減っているのに、おんぶされる人ばかりが増えていく。ここ20年間の日本は、そんなジリ貧状態にあったのです。



「日出づる国(the land of the rising sun)」

われわれは今、安倍首相のもとに、日出づる国(the land of the rising sun)に戻れるのでしょうか?

それとも、その夜明けは偽物(false dawn)でしょうか?



「切迫感(urgency)」

日本の債務の山はGDP(国内総生産)比で240%という、世界一巨大なものです。その巨獣に追い立てられる安倍政権、その切迫感(urgency)は相当なものでしょう。

それでもあえて、緊急に10兆3,000億円もの経済対策費を盛り込んだ補正予算案(extra government spending)。さらには日銀の新総裁に、さらなる紙幣増刷(printing money)を約束した人物(黒田東彦氏)を指名しました。



「長期的な経済の潜在能力(the economy's long-run potential)」

長期的(long-run)には、デフレ見通し(the spectre of deflation)を払拭したい安倍政権。

TPP(環太平洋経済連携協定・Trans-Pacific Partnership)への交渉参加をも表明し、農業などの保護産業(protected industries)への自由化にも着手しています。







「日本を押しのける中国(China elbowed Japan aside)」

日本経済が衰退しているうちに、中国はヒジで日本を押しのけ(elbow aside)、世界第2位の経済大国(the world's second-largest economy)へと昇進を果たしました(2010)。

それに自信(confidence)を強めたかのように、最近の中国はしきりと尖閣諸島を突っついてくるようにもなりました。あまつさえ、沖縄に対する日本の領有権(sovereignty)にさえ疑問を投げかけはじめているのです(人民日報)。



「富国強兵(fukoku kyohei)」

力には力を。安倍首相の掲げるスローガンは、明治以来の「富国強兵(fukoku kyohei)」。国が富んではじめて(enrich the country)、自衛ができる(strengthen the army)。

富める日本(a wealthy Japan)こそが、中国に立ち向かうことができる(stand up to China)。そしてさらに、アメリカへの隷属(vassal)からも抜け出せる、というわけです。



「安全保障(national security)」

アベノミクスの大義は、財政刺激策(fiscal stimulus)と金融緩和(monetary easing)、つまり経済政策(an economic doctrine)にあります。

その一方で、憲法改正(constitutional change)をも視野に入れる安倍首相の鷹のような眼は、確かな安全保障(national security)をも見据えているかのようです。



「愛国主義的な日本(a patriotic Japan)」

もし、日本の自衛隊(self-defense forces)が、他国が普通に保有するような正規軍(standing army)になれば、北東アジア地域の安全保障も強化されることになるでしょう。

しかし、そうした愛国主義(patriotism)は、国の誇り(national pride)を高める一方で、破壊的なナショナリズム(destructive nationalism)を醸成してしまうという負の側面も同時に併せ持っています。



「戦後の屈辱(post-war humiliation)」

安倍晋三氏の母方の祖父が(満州の統治にも携わったこともある)岸信介元首相であるため、安倍氏が危険な軍国主義に傾倒していくのではないか、との懸念は海外に根強く存在します。

第二次世界大戦のA級戦犯(high-ranking war criminals)が祀られているということで、海外の理解が得られることの薄い靖国神社(Yasukuni shrine)。その参拝を閣僚(his deputy)に許したということで、中韓は安倍政権に猛烈な抗議をしています。



「東アジア地域の対立(regional rivalries)」

東アジア諸国(とくに中韓)に第二次世界大戦の侵略者(an aggressor)とみなされている日本。その戦時中の罪(wartime guilts)を安倍首相が過小化しようとするほどに、地域の対立(regional rivalries)は激化するようです。

その対立が深まれば、各国間の貿易が脅かされ、日本の経済成長も鈍化する恐れが高まってしまいます。







「強硬姿勢とソフト路線(hard or soft line)」

どうやら、安倍政権に対する海外の期待は、外に柔らかく内には強く、ということのようです。

もし、国内への姿勢を軟化させてしまえば(go soft)、競争(competition)の導入を必要とする農業、製薬、電力などの業界を改革できずに終わってしまうかもしれません。また、債務削減の中期計画を担うはずの消費税(consumption-tax)の増税も延期される可能性もあります(postpone)。



「要らぬ争い(a needless war)」

当面の安倍政権に求められているのは、経済の再活性化(reinvigorating the economy)の方でしょう。それが、日本復活(restore Japan)への近道のようにも思われます。

まさか、中韓との要らぬイザコザが道を開くとは思えません。

ただ、海外の眼は思った以上に、安倍政権と日本の軍国主義を重ね合わせたがる傾向があることだけは、知っておいたほうが良いかもしれません。













(了)






英語原文:
Japan: Abe’s master plan | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 12:17| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月11日

夢見る中国。おろそかにされる法の支配



中国の未来
China's future

習近平のチャイニーズ・ドリーム
Xi Jinping and the Chinese dream



中国の新国家主席(習近平)のビジョンは、国家にではなく、国民に利するべきである。

英国エコノミスト誌 2013年5月4日号より



「謙虚さ(humility)」

1793年、産業革命を成したばかりのイギリスは、中国に大使館(embassy)を開設しようと、時の王朝「清国」を訪れました。

イギリスのマカートニー卿は、謙虚(humility)かつ従順(obedience)に、時の皇帝・乾隆帝に贈り物をしたといいますが、大使館開設の申し出は一蹴されてしまいます(swat away)。



「屈辱(humiliation)」

中国に屈辱(humiliation)を味わわされたイギリス国王ジョージ3世。1830年代には、軍艦(gunboats)で清国に迫り、力づくで貿易の扉を開くことになります。

当時、中国のGDP(国内総生産)は全世界の3分の1をも占めていたといいますが、イギリスの産業革命の成果は、その巨大な中国をも覆すものでした。



「偉大な国へと戻る旅路(the road back to greatness)」

現在の中国は、ふたたび偉大な国(greatness)へと戻る旅路にあるようで、ここ数十年の成果には目覚ましいものがあります(extraordinary journey)。

数億の国民が貧困(poverty)から抜け出し、さらに数億人が新たな中流階級(middle class)へと昇進しています。



「本来あるべき地位(rightful position)」

歴史上、世界最大国家でない時期のほうが少ない中国。いよいよ、本来あるべき地位(rightful position)に返り咲こうとしているようです。

あと10年もすれば(within a decade)、世界一の経済大国アメリカを追い越す(overtake)と見込まれています。



「チャイニーズ・ドリーム(Chinese dream)」

中国の新たな指導者、習近平(Xi Jinping)氏の掲げるスローガン(slogan)は「チャイニーズ・ドリーム(Chinese dream)」。

これは明らかに「アメリカン・ドリーム」のパクリです(American equivalent)。



「アメリカ風の野心(American-style aspiration)」

習近平氏の見る夢は、はたしてどんな夢(vision)なのか。

どうも、そこにはアメリカ風の野心(American-style aspiration)、世界一の軍事大国になるという不穏な気配(troubling whiff)も漂っているようですが…。



「富と強さ(wealth and strength)」

イギリスに屈辱(humiliations)を喫した19世紀以来、中国の追い求めるものは、一貫して富と強さ(wealth and strength)にありました。

毛沢東(Mao Zedong)はマルクス主義(Marxism)を通して、それを手に入れようとし、ケ小平(Deng Xiaoping)は多少軟化したとはいえ(more flexible)、共産党(the Communist Party)による支配は絶対的でした(absolute)。



「貧富の格差(wealth gap)」

江沢民(Jiang Zemin)の時代、中国共産党は民間ビジネスマンの入党を許し(allow)、変化した社会に適応する姿勢を見せ始めます。

しかし、中国の豊かになる道は、金持ちになれる奴からなれ、という熾烈なものだったため、国のGDPが大きくなるに連れ、貧富の格差(wealth gap)も大きくなってしまったのでした。



「和諧社会(harmonious development)」

そこで胡錦濤(Hu Jintao)氏は、貧富の格差が生む不協和音(the disharmony)を和らげようと、和諧社会(harmonious development)というスローガンを掲げ、格差解消を推し進めました。

そして、その後を継いだのが、現国家主席・習近平氏ということになります。



「傲慢な18世紀の君主(the dynasts of the 18th century)」

習近平氏の新しいスタイルには、以前の指導者たち(predecessors)に見られたような格式ばったイデオロギー(stody ideologies)とは異なるようです。

写真映えのする妻(photogenic wife)をはべらせる習近平氏は、どちらかと言うと乾隆帝など18世紀の傲慢な君主たち(the dynasts)に近いような…。



「中華民族の偉大なる復興(the great revival of the Chinese nation)」

昨年11月、習近平氏が天安門広場で語った夢が、「中華民族の偉大なる復興(the great revival)」。

その愛国的な基本方針(patriotic doctrine)は、経済成長が減速しつつある中にあっても、中国共産党の正当性(legitimacy)を印象付けようとしているかのようでした。



「明らかな危険(clear deniers)」

国家の復興(resurgent nation)というスローガンは、歴史的な被害妄想(historical victimhood)と合わさった時に、危険な思想に変質する危険性があります(turn nasty)。

近隣海域で小競り合い(skirmishes)や挑発行為(provocations)が続発する中、日本に屈辱(humiliation)を味わわせろと愛国ブロガーたち(patriotic bloggers)が騒ぎ立てるのは、その悪しき一例でしょう。



「強い軍隊の夢(strong-army dream)」

強い軍隊(strong-army)を持つというのもまた、習近平氏の夢の一つです。

軍部(armed forces)の喜ぶその夢は、タカ派的な彼ら(hawks)を味方につけるために有効であると同時に、中国がより好戦的な姿勢(more belligerent stance)に傾いてしまう危険性もあります。



「暴れん坊国家(a bully itching)」

かつて植民地支配の犠牲者(a colonial victim)であった中国。その解放直後の毛沢東は、帝国主義時代の過去(imperial past)を抹消しようと躍起になりました。

そして十分に力をつけた今、もし日本に仕返しをしたい(settle scores)と考えているのならば、中国は暴れん坊国家(a bully itching)に変容してしまう(transform)のかもしれません。



「共産党の絶対的な権力(the party's absolute claim on power)」

習近平氏の掲げるチャイニーズ・ドリームの結果は、国民の幸福なのでしょうか。それとも、共産党の絶対的な権力(absolute claim on power)を強化することなのでしょうか。

中国国民が幸福な暮らし(happy life)を求める気持ち(desire)は、アメリカ国民以上のものかもしれません。ですが、その実現のために他を押しのけてまで、というのもどうでしょう。



「より高い理想(a higher ideal)」

習近平氏は、こう語っています。

「チャイニーズ・ドリームは一つの理想(ideal)だ。そして、それより高い理想が共産主義(Communism)だ」と。

ソビエト連邦が崩壊したのは、共産主義ゆえではなく、その正当性(orthodoxy)と規律(discipline)から外れたためだと習近平氏は言います。



「法の支配(the rule of law)」

夢を見るのは大変結構ですが、無法(no rule)では困ります。中国の幸福が他国の不幸では目も当てられません。すなわち、共産党の力よりも、法の力(constitution)の方が大きくなくてはなりません。

ある改革派の新聞は、そのことを社説(editorial)に論じていましたが、なぜか発行直前に(at the last minute)骨抜きにされてしまったようです。要するに共産党による検閲(the censors)に引っかかったのです。



「これから先の長い道のり(a long journey ahead)」

中国が先進他国と大きく異なるのは、法の重みでしょう。アメリカでも日本でも、憲法(the constitution)は絶対です。

ところが中国では、法の上に共産党が位置しているかのようです。欧米諸国の懸念はここにあります。法の支配を受けない自由は、じつに身勝手なものと堕してしまいかねません。

法の道筋に沿っていない限り、習近平氏の夢は、国家復興への道のり(journey)をますます遠いものとしてしまうかもしれません…







英語原文:
China's future: Xi Jinping and the Chinese dream | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 17:25| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月08日

とりあえず莫大な借金を棚上げした安倍政権


日本の公的債務
Japan's public debt

借金には触れてくれるな
Don't mention the debt



安倍晋三政権の財政再建(fiscal consolidation)には、失望させられそうだ。

英国エコノミスト誌 2013年 5月4日号より



「3本の矢(three arrows)」

日本経済を復活させるため(to revive)、安倍晋三首相の放った3本の矢(three arrows)。

それは財政出動(fiscal stimulus)、金融緩和(monetary easing)、構造改革(structural reform)。総称してアベノミクス(Abenomics)。



「4本目の矢(a fourth dart)」

しかし、その3本の矢だけでは不足していると考える識者たちは多いといいます。さらなる4本目の矢(a fourth dart)も必要だ、と。

それが財政再建策(fiscal consolidation)。来年にはGDP(国内総生産)の240%にまで膨らんでいるであろう、日本政府の膨大な公的債務(vast public debt)を何とかしろ、というわけです。



「財政の軌道(fiscal track)」

ここ20年というもの、日本政府は財政の軌道(fiscal track)からすっかり外れてしまっていたようです。1990年代後半からその債務はウナギ上りに右肩上がり。

それを正さんとしたのが民主党の野田政権。その戦いの総仕上げ(the end of a crusade)が、消費税(the consumption tax)の増税という道でした。



「消費税(the consumption tax)」

野田元首相の描いた道筋は、来年4月に5%から8%、さらに再来年10月には10%まで消費税(the consumption tax)を段階的に上げていく、というもの。

その道程で期待される13兆5,000億円という税収増加(extra tax revenue)によって、政府のプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)をGDP比3.2%の赤字まで半減させよう(halving)という計画でした。



「正しい方向(the right direction)」

しかしながら、野田元首相の示した控えめな目標(modest target)では、日本の莫大な債務は減少しないだろう(not reduce)と思われました。

それでも、彼の増税法案は、正しい方向への小さな一歩(small step)だと評価されました。



「追加支出(extra spending)」

さて、その後を継いだ安倍首相。1本目に放った矢は、低迷する日本の景気を刺激するという名目の10兆3,000億円におよぶ追加支出(extra spending)。

この膨大な支出により、野田首相の示したGDP比3.2%という債務目標は、ほぼ達成不可能(well-nigh impossible)となってしまいました。



「経済活動の活性化(boost economic activity)」

債務状況を悪化させてまで安倍首相が目論んだのは、経済活動(economic activity)を活性化させることによって、政府の税収を増加させよう、というものでした。

景気さえ回復してしまえば、その後に消費税も引き上げやすくなるだろう(easier to raise)ということです。



「物議をかもす消費税(contentious tax)」

しかし、消費税というのは、ずいぶんと議論の的になりやすい税金です(contentious tax)。

初めて導入されたのが1989年。日本の株式市場と不動産市場がバブっていた時であり、消費税導入がそのバブルを破裂させたかのように見えました。その後、1997年には5%に引き上げ。この時も景気は悪化したように思われました(seemed to start a downturn)。



「消費税引き上げ(the consumption-tax hike)」

さて、今回の引き上げ(hike)は、どう社会や経済に影響するのでしょう。

安倍首相の談によれば、何が何でも増税するのではなく(not obliged)、第2四半期(second-quarter)のGDP(国内総生産)の数字を見てから決めよう、とのことでした。



「財政健全化(financial health)」

この安倍首相のゆったりとした発言には、多くの人たちが苛立ちを隠しません。

前大臣の前原誠司氏は、「財政健全化(financial health)の強い決意を示さなければならない」と訴えました(protest)。ある財務省の高官はこう言います。消費税増税は、日本が債務をコントロールする最後のチャンスなんだ、と。



「差し迫った脅威ではない(no imminent threat)」

どうやら安倍首相には日本の債務危機(debt crisis)への危機感が薄く、それは差し迫った危機ではない(no imminent threat)と考えているかのようです。まだ時間がある、と。

それもそのはず、日本国債(JGBs, Japanese Government Bonds)の利回りは、歴史上ないくらいに低い水準にあり(as low as ever)、それがいきなり高騰するとは考えにくいのです。



「忠実な日本の預金者(loyal Japanese servers)」

しかも、日本国債の保有者のほとんどは、移り気な外国人投資家(flighty foreigners)ではなく、忠実な日本の預金者(servers)と機関投資家(institutions)なのです。

それが、安定性随一といわれる所以でもあるでしょう(今のところは…)。



「新しく巨大な買い手(new big buyer)」

さらにこの度、日本国債に新たな買い手(buyer)も登場しました。日銀(BoJ, the Bank of Japan)です。

日銀の発表によれば、年間発行額(annual issuance)のじつに70%に相当する国債を買い入れるとのことです。なるほど、この後ろ盾があれば、安倍首相は気前よく税金を使えるわけです。



「マネタイズではない(not monetise)」

日銀は気前の良い政府債務の引き受けを、マネタイズではない(not monetise)と言っています。マネタイズというのは、悪い意味で、無闇に紙幣を印刷することです。

その目的は、根強いデフレの克服だ(to banish deflation)、と日銀は言います。デフレとは物価下落、お金を刷れば刷るほどお金の価値は下がり、モノの価値は上がるというわけです。



「1,000兆円を超える債務(over 1,000 trillion yen of the debt)」

現在、日本の税収(tax revenues)の半分以上が、借金の利払いに消えています。さらに、原発がほぼ全停止している今、エネルギー輸入(importing energy)のコストもかなり高額になってきています。

ややもすると、政府は海外資金(foreign money)に依存しなければならなくなってしまうかもしれません。OECD(経済協力開発機構)は先月、日本に債務を削減しろとの警告を発しました。



「国民の高齢化(an ageing population)」

今のところ、日本の預金者には日本国債の吸収力があります。しかし、それは国民の高齢化(an ageing population)とともに、将来低下していくだろう(start dwindling)と懸念されています。

退職する人々は収入の道を失い、貯蓄が切り崩されていくからです(falling savings)。



「企業の余剰資金(corporate cash surpluses)」

国民による国債購入力の低下は、すでに始まっています。それでも、企業の余剰資金(cash surpluses)がそれを今まで補ってきました(offset)。

銀行を経由して日本国債に還流していたのです(resycled into JGBs)。



「民間部門の黒字(private sector surplus)」

日本政府は赤字でも、家計や企業などの民間部門(private sector)が黒字(surplus)だったおかげで、何とか政府は大借金を繰り返すことができていました。

それを逆に考えると(counter-argument)、民間部門に黒字が多すぎて、政府が多額の財政赤字を出さなければならなかった、ともなります。いずれにせよ、政府と民間部門はそれぞれが天秤の皿に乗せられたように、あっちが下がれば、こっちが上がると考えられているようです。



「来年度の予算(next year's budget)」

来月には、来年度予算(next year's budget)の概要(outline)が提案されます。

その時期は参院選(election for the upper house of parliament)を前にした重要な時期であるため、その提案には大胆な対策(big step)は打ち出されないと目されています。

その時かもしれません。投資家たちがポートフォリオ(資産の運用状況)を見直すのは…。そしてそれは、日本国債の利回りに変化をもたらすのかもしれません。







英語原文:
Japan’s public debt: Don’t mention the debt | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 13:42| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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