2013年06月18日

アベノミクス、3本目の矢はヘロヘロと。



アベノミクス、第3の矢
The third arrow of Abenomics

不発
Misfire



安倍首相の及び腰(a timid attempt)には、皆が失望している。

英国エコノミスト誌 2013年6月15日号より







「多大なる期待(great expectation)」

世界中から多大なる期待(great expectation)を寄せられていたアベノミクス。その待望の「第3の矢(the third arrow)」。

3本の矢の中でも、最も重要度が高く、熱望されていました(keenly awaited)。しかし、いざその内容が発表されると、その及び腰(its timidity)に多くの人がガッカリし、日本の株価はその失望分、下落してしまいました。



「3本の矢(the three arrow)」

1本目の矢は、日銀による金融改革(monetary revolution)という形で放たれ、新総裁に就任した黒田東彦氏が大量の現金(vast quantities of money)を市中に放出しました。

2本目の矢は、1本目の矢に負けず劣らずの劇的な財政出動(dramatic fiscal stimulus package)。その規模、なんと10兆3,000億円。

そして、3本目…。ヘロヘロと放たれたその矢は、アベノミクスそのものが早くも勢いを失った(already fizzling out)かと思わせる情けなさでした。



「日本の労働市場(Japan's labour market)」

改革派が3本目の矢に期待したことの一つは、日本の労働市場(Japan's labour market)の改革でした。

日本企業は、倒産寸前に追い込まれない限り、従業員の解雇(firing)を禁じられており、それが日本経済の長期にわたる停滞(its long slump)の原因にもなっていたからです。



「追い出し部屋(banishment rooms)」

日本の有名企業には「追い出し部屋(banishment rooms)」というのがあるそうで、厚生労働省(labour ministry)は、その悲惨な現状(the sad phenomenon)の調査に乗り出しています。

数百人の従業員は、その特別な部屋へと送り込まれ、日がな一日、仕事のない状況(little or nothing to do)を強いられていたのです。



「余剰人員(excess workers)」

解雇したくとも解雇できない余剰人員(excess workers)。それは、ほとんどの企業が抱える問題であり、追い出し部屋(banishment rooms)は彼らを自主退職(voluntary leaving)に追い込むことが目的とされていました。

そうした労働力のムダは、若手の雇用や昇給に企業が消極的(unwilling)になる理由の一つであり、その結果、日本経済の全体の給与水準も停滞していたのです。



「退職手当(severance pay)」

改革派(reformists)に言わせれば、そうした余剰人員に退職手当(severance pay)を支払うことにより、解雇への道を開くべきだということになります。

そうすれば、日本経済の長期的な成長(long-term economic performance)につながる、と。



「農地(farmland)」

農業改革も急務(urgent need)です。現状、農家の大部分は小規模(tiny plots)かつ兼業(part-time basis)で、競争力がありません(uncompetitive)。

企業が参入しようも、今の農地法のままでは農地(farmland)を借りることしかできず(only rent)、その他、厳しい規制(tight regulations)に縛られて身動き取れません。このままでは、自由貿易協定であるTPPの参加もおぼつかないのです。



「貧弱な企業統治(poor corporate governance)」

日本企業のコーポレート・ガバナンス(企業統治)は貧弱(poor)なことで知られていますが、その徹底的な見直し(overhaul)を求める声も高く上がっています。

たとえば、社外取締役(independent board directors)の起用を企業に義務づける法の整備などです。



「昔ながらの計画(the long tradition of multi-year)」

かように日本経済の課題は山積しているにも関わらず、アベノミクス「第3の矢」はそのどれにも届かない不十分なものでした(not go so far)。

その戦略は、昔ながらの計画(the long tradition of multi-year)をなぞるに終始するだけの、乏しい内容だったのです。



「解雇ルール(dismissal rules)」

改革の求められていた労働市場の解雇ルール(dismissal rules)は、なんの変更もなく、その代わりに限定正社員という第3の労働カテゴリーが設けられました。

限定正社員というのは、勤務地と労働内容をあらかじめ定められた正社員です。しかし、これは世界では一般的な形態であり、日本の正社員が今まで勤務地と労働内容を決められていなかったことの方が異例な条件でした。



「農地政策(policy on agriculture)」

農地政策(policy on agriculture)にも、ほとんど変化はありませんでした(unchanged)。

ただ、農地を引き受け企業に貸し出すことができる公共団体(public body)が新設されることは目新しいニュースでした。



「社外取締役(outside directors)」

企業に社外取締役(outside directors)を義務づけること(compulsory)も、実現しませんでした。

日本経団連は、社外からの監視(outside oversight)の強化には反対の姿勢を崩していません。ちなみに、経団連は自民党の強力な支持基盤(a strong backer)でもあります。



「野心的な目標(ambitions targets)」

それでも、なかには野心的な目標(ambitions targets)もありました。

たとえば、10年間で一人当たりの国民所得(income per person)を40%上昇させるといったものです。また、医薬品のオンライン販売(the sale of drugs online)の解禁などもそうでしょう。



「先進医療(advanced drugs)」

医薬品のオンライン販売は、日本医師会から抗議を受けたと言いますが、それでも実現に漕ぎ着けています。

また、今まで保険の適用外だった先進医療(advanced drugs)を受けてしまうと、残りの治療(the rest)までもが保険の適用外になってしまう混合医療の問題がありましたが、その範囲拡大が新たに盛り込まれました。しかし、これも医師会は猛烈に反対している(fiercely oppose)ようです。



「特区(special zones)」

規制がゆるく(deregulated)、税金の軽い特区(lightly taxed zones)の全国設置は、戦略の目玉(centerpiece)ともされました。

過去の政権において、そうした特区(special areas)は成功を収めています。たとえば、ロボット業界はロボットのテストを特区で行うことにより、その成果を上げてきました。



「極めて重要な選挙(crucial election)」

関係者(insiders)によれば、自民党内からは、安倍首相にあまり過激な発表はしないように(not too radical)とクギを刺されていたとのことです。

それは来月(7月)に極めて重要な参議院選挙(upper house of parliamento)が控えているためです。自民党は長年、農家や医師、企業などによる業界利益団体(special-interest groups)に大きく依存してきたのです。



「もっと鋭い3本目の矢(a sharper third arrow)」

田村耕太郎氏によれば、安倍首相はもっと鋭い3本目の矢(a sharper third arrow)を放つこともできた、と言います。なぜなら、対立政党(political opponents)が一様に力を失っているからです。

しかし結局、自民党は安全策をとりました。いつ気分を変えるかも分からない国民(a potentially fickle general public)を当てにするのではなく、選挙前のリスクを確実に回避してきたのです。



「選挙が終われば(after the election)」

7月の選挙で自民党が予想通りの結果を得れば、安倍政権はさらに一歩を踏み込むことができる(go much further)、と成長戦略(growth strategy)の策定に関わった人たちは口をそろえます。

とくに農業分野では、さらに抜本的な改革(more radical steps)がとられる、とあるメンバーは断言します。貿易自由化(free trade)につながるTPPは、日本経済の成長を最も後押しするものと期待されているのです。



「改革諮問会議(reform committees)」

安倍首相は成長戦略の策定に際し、いくつかの改革諮問会議(reform committees)を招集しています(日本経済再生本部や産業競争力会議)。

会議には、民間の企業経営者や経済学者、改革推進派らが名を連ね、そのメンバーの一人には竹中平蔵氏も含まれています。竹中氏は、郵政民営化への激しい反発(fierce opposition)と戦った小泉純一郎元首相の右腕だった人物(the right-hand man)です。



「アベノミクスへの熱狂(exuberance about Abenomics)」

そもそも、日本の株式市場をわずか半年足らずで80%以上も上昇させた勝因は、構造改革(structural reform)を旗頭にしたアベノミクスへの熱狂(exuberance)でした。

この点、3本目の矢がヘロヘロだったことが、株価の20%もの急落に直結したことは驚くべきことではありません。改革を成してこそのアベノミクスが、旧来の既存勢力に屈してしまったかに見えたからです。



「内閣改造(a cabinet reshuffle)」

選挙のために、ひとまず改革の手を緩めた安倍政権ですが、選挙後の9月には内閣改造(a cabinet reshuffle)も予想されています。これは転機としては十分です。

安倍氏が自民党総裁になった時、それは予想外の勝利(unexpectedly successful bid)であったため、現政権の閣僚(ministers)の中には、その勝利の見返りに(as a reward)席を与えられたような人もいます。

この点、もし内閣改造が行われれば、より熱心な改革派(keener reformer)が入閣することも考えられます。



「改革寄りの人々(pro-reformists)」

自民党の菅義偉(すが・よしひで)官房長官(chief cabinet secretary)は、改革を強力に支持しています(strongly backs reform)。

その菅官房長官は、誰よりも熱心な改革派(the most ardent advocate of change)である竹中平蔵氏とも近い関係にあります。



「既得権をもつ者(vested interests)」

しかし改革が中途半端に終わってしまうかもしれない懸念は消えません。

次の参議院選挙(upper house election)に出馬する自民党候補(candidates)の一部は、古い既得権(vested interests)をもつ人々に支えられているのです。候補者の公認条件は、郵政民営化(postal reform)を突きつけた小泉元首相ほどに厳しくはないのです。



「まだ的まで遠い(still a long way short of its target)」

アベノミクスが改革(reform)に集中できるかどうかは、依然定かでありません。その道を確かにするためには、自民党内部および既得権益者に向かっても、然るべき矢を射る必要もあるようです。

まだまだ的(its target)まで遠いアベノミクスの矢。その矢を勢いづかせるのは、改革への期待です。

その期待が潰えてしまう前に、どこかの的に当たればいいのですが…。













(了)






英語原文:
The third arrow of Abenomics: Misfire | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 11:58| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月08日

東南アジアとの関係を新たにする日本



日本と東南アジア
Japan and South-East Asia

手をとりあって
Hand in hand



安倍晋三首相には経済的(economic)にはもちろん、外交的(diplomatic)にも東南アジアに出て行かなければならない理由がある。

英国エコノミスト誌 2013年6月1日号より



「歓迎ムード(all toasts)」

ミャンマーのテイン・セイン大統領が日本の安倍首相を迎え入れた時、会談の場は歓迎ムード(all toasts)とお互いに対する敬意(effusions of mutual esteen)で満ち溢れていたそうです。

日本の首相がミャンマーを訪問するのは、じつに36年ぶり、1977年以来のことでした。







「さらなる関係強化(to cement diplomatic ties)」

ミャンマーが非人道的な軍事政権(a brutal military regime)であった時、西側諸国は同国を数十年にわたり遠ざけていましたが(shunned)、日本との外交的・経済的関係は比較的良好(relatively good)でした。

そして今、両国はさらなる関係強化(to cement diplomatic ties)を確認し合ったかのようです。



「総力を挙げた支援(all possible assistance)」

さらに安倍首相は、野党党首(opposition leader)アウンサンスーチー女史とも面会し、2011年からミャンマーで行われている改革(reform)を、総力を挙げて支援する(all possible assistance)と約束しました。

アウンサンスーチー女史もまた、ミャンマーの軍事政権によって遠ざけられていた人物ですが、近年は民主化した政権に受け入れられつつあるようです。







「立派な言葉と日本の行動(the fine words and Japanese deeds)」

日本の行動(Japanese deeds)は、安倍首相の立派な言葉(the fine words)に十分見合うものです。

日本はミャンマーの対日債務18億ドル(約1,800億円)を全額免除し(cancelled)、さらに支援のために5億ドル(約500億円)の新たな融資(aid loans)を約束したのです。



「経済特別区(a special economic zone)」

日本はミャンマーの経済特別区(a special economic zone)である「ティラワ(Thilawa)」にも、まず2億ドル(約200億円)を投じることになっています。ここは商業の中心地(the commercial capital)ヤンゴンのすぐ近くです。

ヤンゴンの港が沈泥により水深が浅くなってしまったので(silted up)、このティラワに新しい港(new port)が建設される予定です。



「日本の気前良さ(Japanese largesse)」

日本の気前の良さ(Japanese largesse)は何もミャンマーに限ったことではありません(投資額はミャンマーが最大ですが)。

安倍政権の発足以降(昨年12月)、閣僚たち(ministers)は積極的に東南アジア各国を訪れ、新たな投資や支援などの話(new investment, aid and more)をもちかけているのです。



「東南アジア諸国連合(ASEAN)」

ASEAN(東南アジア諸国連合)は今、世界でも数少ない経済が好調な地域(a rare economic bright spot)です。

その中で日本の存在感(its presence)を高めることができれば、それは日本国内の経済(own economy)を活性化すること(to perk up)にもつながります。



「こじれた日中関係(troubled relationship with China)」

日本が東南アジア諸国に歩み寄る背景には、尖閣諸島の領有権問題でこじれた日中関係(troubled relationship with China)があります。

日本が東南アジア諸国に持ち出す話題は貿易(trade)だけに限らず、外交同盟(diplomat alliances)、海洋防衛訓練(naval training)、さらには防衛装備(defense equipment)のセールスの話もあります。







「反日感情(anti-Japanese sentiment)」

中国が対立姿勢(confrontation)を強め、日中間の溝(differences)が深まるほど、その反日感情(anti-Japanese sentiment)は激しくなります。

それは経済的にまったく悪影響であり、日本のビジネスマンは中国への長期的な投資(the long-term future)に二の足を踏んでいるのです。



「中国に対するヘッジ(a hedge against China)」

ロイター通信の調査によると、日本企業の4分の1近く(almost a quarter)が中国への投資計画の延期(delaying)または撤回(reversing)を検討していることが分かりました。

その中国へ向かうはずだった投資は、いま東南アジアへと流れ込んでいます。いわば、日本企業にとっての東南アジアは、不安定な中国に対するヘッジ(リスク回避)先となっているのです。



「東南アジア内のサプライチェーン(entire supply-chain in South-East Asia)」

中国リスクを回避したい日本企業は、彼らのサプライチェーン(供給網)を東南アジア内で完結させたいとも考えています。そしてその中心となるのはタイです。

たとえばホンダは、タイで年間42万4,000台の自動車生産を見込んでいます。2011年の大洪水(appalling floods)ではタイの工場閉鎖を余儀なくされたものの、保険金(insurance payouts)を受け取ったおかげで、損失は最小限に済んでいます(minimised)。それゆえ、基本的な事業計画(business plans)は変更されることがありませんでした。



「現地通貨(local currencies)」

東南アジアにサプライチェーンを構築しようとすると、必要になるのが現地の通貨(local currencies)です。

この点、日本の財務省(finance ministry)は日本企業による現地通貨での借入れを支援する予定です。また、日本政府は新たな財政協定(financial pact)の一環として、ASEAN諸国の国債(government bonds)に投資もしています。



「地下輸送システム(underground transit system)」

インドネシアも、日本とは古くからの経済的な結びつき(long-standing economic links)をもつ国ですが、日本企業は最近、同国首都ジャカルタに地下輸送システム(underground transit system)を建設する契約(contract)を勝ち取りました(およそ370億円)。

ジャカルタという都市は湿地(marsh)の上につくられており、洪水も多いとのことです(the flood-prone capital)。これはまさに、日本のエンジニアが喜んで取り組む(relish)プロジェクトに違いありません。







「これまで結びつきの弱かった国々(countries with which it has traditionally had few ties)」

ベトナム、フィリピンなどは、これまで日本との結びつきはそれほど強くありませんでした(tradittionally few ties)。

ですが、両国ともに中国と海上で領有権を争っていることもあり(martime quarrels)、日本とは新たな協力関係(new partnerships)が芽生えつつあります。



「救済(bail-out)」

公的金融セクター(state banking sector)が経営に苦しむベトナムでは、その救済(bail-out)に日本が一役買っています。

三菱東京UFJ銀行は、ヴィエティンバンク(VietinBank)の株式の20%(約740億円)を取得。みずほ銀行もベトコムバンク(Vietcombank)の株式15%(約560億円)を買い取っています。日本からベトナムへの投資額は、前年から倍増とのことです(約5,100億円)。

さらに日本は、ベトナムの海軍力(naval capabilities)の強化にも努め、ベトナム海軍兵士(Vietnamese sailor)の訓練なども行なっています。







「中国との睨みあい(the stand-off with China)」

日本が尖閣諸島で中国と膠着しているのと同様、フィリピンはスカボロー礁(Scarborough shoal)を挟んで中国と睨み合っています(stand-off)。

この切羽詰まったフィリピンに、日本は海上援助(naval assistance)を強化しており(boosted)、巡視船(patrol vessels)を10隻提供すると約束しています(1隻およそ11億円)。







「占領の記憶(wartime occupation)」

東南アジア諸国には、第二次世界大戦における日本の占領(wartime occupation)が、いまだ根強く残っています。例外的なのは日本と同盟関係にあったタイくらいで、ベトナムでもミャンマーでもフィリピンでも、そうした記憶はまだ残っているのです(still linger)。

ですが、日本との親交が改善されるとともに、そうした影が薄らいでいくのもまた事実です。



「手をとりあって(hand in hand)」

かつてミャンマーは中国陣営(the China camp)にあったわけですが、現在は日本や西側諸国とも手をとり合うようになりました。ひと時代むかしとは、確実に利害関係が変わってきているのです。

日本は中国と少し離れたかもしれません。ですが今、東南アジアとはその歩む方向がグッと近づいているように感じられます。







英語原文:
Japan and South-East Asia, Hand in hand : The Economist」

posted by エコノミストを読む人 at 05:28| Comment(0) | アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月06日

「環境」よりも「政治寄り」になってしまった電気自動車



エコカー
Low-emission cars

切れた電気自動車のバッテリー
Flat batteries



電気自動車は未来のエコカー(the green wheels)レースでエンストした(stall)。

英国エコノミスト誌 2013年6月1日号より






「交換可能なバッテリー(swappable batteries)」

イスラエルの電気自動車メーカー「ベタープレイス(Better Place)」は、交換可能なバッテリー(swappable batteries)を搭載した電気自動車で、2007年に10億ドル(約1,000億円)の資金調達を行いました。

ところが先月(5月26日)、同社はイスラエルで会社精算(liquidation)を申請するまで追い込まれてしまいました。



「破産(bankruptcy)」

電気自動車にとって、先月5月は楽しい月(the merriest month)ではなかったようで、アメリカでも5月1日に電気自動車メーカー「コーダ(Coda)」が破産(bankruptcy)を申請しています。

さらに、アメリカの自動車メーカー「フィスカー(Fisker)」もまた、破綻の瀬戸際(on the brink of collapse)に立たされています。まだ車を一台も生産していないというのに(!)。



「販売割り当て(quotas on sales)」

大手フィアットも「フィアット500」の電気自動車バージョンを販売していますが、同社は1台販売するごとに1万ドル(約100万円)の赤字が出るといっています(車両価格は約320万円、ガソリン・バージョンの約2倍)。

それでも販売しなければならないのは、カリフォルニア州が自動車メーカーに対して「ゼロ・エミッション(zero-emission)」の販売割り当て(quotas on sales)を課しているからだそうです。



「電気スポーツカー(battery-powered sports cars)」

電気自動車各社があえぐなか、電気スポーツカー(battery-powers sports cars)を手がける「テスラ(Tesla)」ばかりは好調の風の中にいます。

同社は四半期決算で初の黒字(profit)を計上し、4億5,200億ドル(約450億円)の政府融資を前倒しで返済した(repaid early)と発表しました。



「へま(flop)」

テスラの例を除けば、電気自動車は全体的にヘマ(flop)のほうが目立ちます。それは、完全なバッテリー駆動(purely battery-powered)にしろ、補助的に(as backups)ガソリンエンジンを用いるハイブリッド車(hybrids)にしろ同様のようです。

電気自動車はやはり高価(expensive)で、走行距離も限られているのです(a limited range)。



「すべての車が環境に優しい(all cars are greener)」

電気自動車がいまいち振るわないのは、ガソリンやディーゼルなど化石燃料を用いる従来の車が、以前よりずっと環境に優しくなっている(greener)からでもあります。

排ガス基準(emission standards)がそれを後押ししました。



「バイオ燃料(biofuels)」

ガソリン(もしくはディーゼル)エンジンは、低価格(low-cost)、低炭素(low-carbon)のバイオ燃料(biofuels)でも動くようにもなり、よりクリーンで長寿命にもなっています。

一方、電気自動車の燃料であるバッテリーは、その軽量化(lighter)、低価格化(cheaper)において、一歩遅れているようであります。



「不確実性(uncertainty)」

どうやら完全な電気自動車(pure electric cars)には、不確実性(uncertainty)が付きまとっているようです。賢い政治家ならば、そのリスクは企業(businesspeople)に負わせようとするでしょう。

リスクを背負わされた企業は、ヨーロッパでもアメリカでも、日本でも中国でも一様に不満をこぼしています(grumbled)。



「よりクリーンな未来(a greener future)」

電気自動車は確かに、未来なクリーンな道路環境(tomorrow's cleaner traffic)の一員ではあるでしょう。ただ今のところ、答えのすべて(the whole answer)ではないようです。

それでも政治家たちは、電気自動車に肩入れしすぎているようです。



「政治家たち(politicians)」

アメリカのオバマ大統領は、2015年までにアメリカ国内の道路に100万台の電気自動車を走らせると話していますが、これまで(so far)その目標達成率はわずか5%にとどまっています(5% of the way)。

ドイツのメルケル首相は、2020年までにドイツ国内で100万台の電気自動車を普及させることを目標(aim)としています。しかし、昨年ドイツで販売された電気自動車は3,000台にすぎません。



「攻撃(under fire)」

オバマ大統領はその無謀な目標を議会(congress)から攻撃されて、結局、電気自動車関連の企業に対する融資を取りやめました(stopped lending)。

ちなみにアメリカ政府は、破綻の瀬戸際にいる電気自動車メーカー「フィスカー」に一部出資もしていますし(partly financed)、電気自動車用のバッテリーを生産している「A123システムズ)」にも助成金(subsidy)を出しています。



「ほとんど意味がない(little sense)」

エコノミスト誌は、そうした政府の補助金(subsidies)には、ほとんど意味が無い(little sense)と言っています。もし政府が排ガス(emissions)を削減したいのならば、国民にお金を払って住宅に断熱材を入れてもらったほうがマシだ、と。

それでも電気自動車を捨てきれないオバマ大統領はまだ、電気自動車に対する連邦税額控除の限度額(the maximum federal credit)を7,500ドル(約75万円)から1万ドル(約100万円)に引き上げたがっているようです。

さらに中国政府も、電気自動車一台につき最高6万元(約100万円)を支給するという以前実施されていた補助金制度(old subsidy scheme)を再開させる模様です。



「はかなくもカネのかかった生涯(brief, expensive life)」

多くの破綻した電気自動車メーカーは、その儚くも(brief)カネのかかった生涯(expensive life)において、何を成し得たのでしょうか?

納税者(taxpayers)の負担の割りには普及も進まず、思ったよりも環境へ貢献できていないようでもあります。

あらかじめ勝者を選ぶということ(picking winners)は、ときには愚かなこと(the folly)でもあるようです…。










英語原文:
Flat batteries : The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 05:54| Comment(2) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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