2013年03月13日

在宅勤務を禁じたヤフー。その是非。


ヤフー
Yahoo
メイヤーCEOの愚策
Mayer culpa



社員に対する出社の強要(Forcing workers to come into the office)は、ヤフーが抱える問題の症状であって、解決策ではない。

英国エコノミスト誌 2013年3月2日号より



「ガリバー旅行記(Gulliver's Travels)」

ガリバー旅行記(Gulliver's Travels)という小説に登場するヤフー(the Yahoos)は、馬の姿をした支配者によって畜舎(stalls)につながれた獣人のことです。

果たして、社員に在宅勤務を禁じたメイヤーCEOは、その馬の姿をした支配者(equine captors)なのでしょうか。だとすれば、出社を強要されているヤフーの社員は、畜舎につながれた獣人(humanoids)なのでしょうか?







「気まずい挨拶(the toe-curling salutation)」

最近漏洩した人事責任者(human-resources manager)のメモは、「ヤフーたちへ(Yahoos)」という気まずい挨拶(the toe-curling salutation)で始まっていました。

ヤフー社内では、管理職の人々が部下(underlings)を呼ぶときには、普通に「ヤフーたち(Yahoos)」と言っていたようですが…。



「活気と興奮(the energy and buzz)」

このメモは、職場は活気と興奮(the energy and buzz)に満ちている、と書かれています。

それはまるで、在宅勤務をしている社員が、自宅でパジャマ姿のままダラダラしている(lounging around)と言わんばかりに…。



「出社の義務づけ(required to turn up in the office)」

そして、このメモの最も言わんとするところは、6月以降、正当な理由(a good excuse)がない限り、出社を義務づけるということ。

つまり、在宅勤務(home-work)を禁ずるということでした。



「最盛期はこれからだ(the best is yet to come)」

最後にこのメモは、最盛期はこれからだ(the best is yet to come)と結ばれています。

ちなみに、2000年に1,250億ドル(約12兆円)という時価総額(market capitalisation)をつけたヤフーのそれは現在、250億ドル(約2兆4千億円)にまで落ち込んでおります(最盛期の5分の1)。



「新CEO、マリッサ・メイヤー(Marissa Mayer)」

最近ヤフーのCEO(最高経営責任者)に任命された女性、マリッサ・メイヤー(Marissa Mayer)は、彼女の率いるヤフーたち(the humanoids)から少しでも価値を引き出したいのかもしれません。

なにせ、グーグルの社員は一人あたり93万1,657ドル(約9,000万円)もの売り上げを稼ぎ上げているというのに、自社のヤフーたちは35万3,657ドル(約3,400万円)しか稼げていないのですから(グーグルのたった38%の働き)。



「より生産性を高く(more productive)」

ヤフーが社員にフリーランス(freelances)のような振る舞いを控えるように求めるのは妥当かもしれません。

そもそも、人間は他の人と一緒に働いたほうが(together than apart)、生産性が上がる(more productive)とも言われており、それが企業の存在する理由でもあるのです。



「縛りつけておくこと(tethering)」

しかし、ヤフーたちを社内(in stalls)に縛りつけておくこと(tethering)は、本当に生産性を高めること(boosting their output)につながるのでしょうか?

逆に、社員たちに在宅勤務(work from home)を認めることのほうが、生産性の向上に寄与する(good for productivity)という証拠もたくさん出ています。



「企業のコスト(companies' cost)」

シスコという企業は2009年、社員に在宅勤務(to telecommute)を認めることで、年間2億7,700万ドル(約260億円)節約できる(saving)と主張しました。

その方が、社員の時間は効率的に使えます(efficiently)。より多くの時間を家族と過ごせるようになり(more)、交通渋滞に苛立ったり、電車でスシ詰めにされる時間は確実に減る(less)のです。



「在宅勤務の社員(the home-workers)」

スタンフォード大学と北京大学の研究員は、中国の大手旅行会社を対象にした調査結果を発表しました。

それによると、社内に縛りつけられた社員(still in the office)よりも、在宅勤務の社員(the home-workers)のほうが、仕事に対する満足度(satisfaction)が向上し、離職率(turnover)は半減、生産性は13%向上したとのことでした。



「ユーチューブ動画(YouTube videos)」

在宅勤務の社員のほうが良く働くという事実は、なにも驚くことではないのかもしれません(hardly surprising)。社員は会社にいるからといって、働いているとは限らないのですから。

昨年、アメリカの小売業者(retailer)JCペニーでは、本社の電話回線(bandwidth)の3分の1が、社内の社員たちによるユーチューブ動画の閲覧に費やされていたことが発覚しています。



「寿命を縮める(nail in the coffin)」

はたして、ヤフーが在宅勤務を禁じたことは、自分のクビを締めて、寿命を縮めること(nail in the coffin)になるのでしょうか?

新CEOメイヤー氏の策(move)は、もしかしたら自らのハシゴを数段叩き落とすことになる(knock out a few rungs)のかもしれません。



「硬直化した労働環境(rigid working practices)」

在宅勤務を禁じることは、労働環境(working practices)を硬直化させることにもなり、女性が仕事と家庭を両立すること(combining the two)を難しくしてしまいます。

柔軟性のある雇用主(flexible employers)は、女性が家庭と仕事(families and jobs)を両立するのを手助けするものなのですが…。



「子供と離れて過ごす辛さ(the pain of separation from her baby)」

新CEOのメイヤー氏は、就任直後、出産のために2週間休職しました。

母親としての彼女は、子供と離れて過ごす辛さ(the pain)をよく知っています。だからこそ、自分のオフィスの隣りに保育室(nursery)を設けたのでしょう。



「特権(privilege)」

CEO室の隣りの保育室は、残念ながらみんなのためのものではありません。

メイヤー氏ほどの特権(privilege)をもつ女性社員はそう多くはありません。むしろ、彼女よりも生産性の高くない社員(less Stakhanovite women)のほうが、圧倒的多数なのです。



「拘束(shackle)」

CEOが命じれば、社員を社内に拘束すること(shackle)はできます。しかし、デスクに縛り付けられた社員は、仕事に興奮(the buzz)を感じるでしょうか?

ガリバー旅行記のヤフーたち(the Yahoos)は畜舎につながれたままだったかもしれません。しかし、現代のヤフーたちには、より友好的な企業(a friendlier organisasion)に移るという選択肢もあるのです…。







英語原文:Yahoo: Mayer culpa | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 14:02| Comment(0) | 企業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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