2013年03月29日

中国企業アリババのもつ可能性、そして危険性。


中国の電子商取引
E-commerce in China

アリババ現象
The Alibaba phenomenon



中国の巨大企業は莫大な利益(enormous wealth)を生み出すかもしれない。中国の指導者たちが手出ししなければ(leave it alone)…。

英国エコノミスト誌 2013年3月23日号より



「世界一の電子商取引企業(the world's largest e-commerce company)」

一部の指標によれば(by some measures)、中国のアリババ(Alibaba)という企業は、いまや世界一の電子商取引企業(e-commerce company)だそうです。

ちなみに、中国の電子商取引市場はもうすでに、アメリカのそれを追い抜こうとしています。



「イーベイとアマゾンを足した以上(more than eBay and Amazon combined)」

アリババは昨年、合計で1兆1,000億元(約15兆5,000億円)の商取引(transactions)を処理しています。

この数字はなんと、アメリカ大手のイーベイ(eBay)とアマゾン(Amazon)を足した数字よりも巨額なのです。とんでもない成功(extraordinary success)といえるでしょう。



「元英語教師(a former English teacher)」

この巨大企業の創業者(founder)は、ジャック・マー(馬雲)氏。元英語教師(a former English teacher)だそうです。

その彼は今年5月に、CEO(最高経営責任者)の座を腹心の一人(a trusted insider)であるジョナサン・ルー(陸兆禧)氏に譲る(hand over)と発表しています。







「新規株式公開(IPO, Initial Public Offering)」

もし、CEO交代とともに新規株式公開(IPO)が発表されれば、それはフェイスブックの上場(Facebook's listing)以上の激震を市場にもたらす可能性があります。

上場当時、フェイスブックはその企業価値を1,040億ドル(約9兆7,000億円)と評価されましたが、アリババの評価額(valuation)はそれ以上という試算(estimates)も一部にあるそうです。



「フェイスブックのような失敗(a Facebook-like fumble)」

フェイスブックは上場以後、その評価額が630億ドル(約6兆円)と大きく後退してしまいました(slipped back)。もしアリババがそのような失敗(fumble)をしないのであれば、アリババは数年以内に世界一時価総額の大きい企業群の仲間入りをするかもしれません。

現在トップのアップルでさえ、2009年当時の価値はたったの900億ドル(約8兆5,000億円)だったのです(現在のアップルの時価総額は約40兆円)。



「揚子江のワニ(the crocodile in the Yangzi river)」

アリババの創業者であるマー氏は、かつてこう言っていました。

「イーベイは海のサメ(shark in the ocean)かもしれないが、私は揚子江のワニ(the crocodile in the Yangzi river)だ。海で戦えば負けてしまうが、川で戦えば勝つ」と。



「企業間のBtoBポータル(a business-to-business portal)」

アリババの創業は今から14年前の1999年。

そのスタートはアリババ・ドット・コム(Alibaba.com)という企業間のBtoBポータルサイトで、小さな中国製造業者(Chinese manufactures)と海外のバイヤー(buyers overseas)をつなぐのがその仕事でした。



「淘宝網(Taobao)と天猫(T mall)」

次に立ち上げたのが淘宝網(タオバオ)。これはイーベイとほとんど変わらない(not unlike eBay)消費者間のCtoCポータル。現在の取扱商品点数は10億近くで、世界で最もアクセス数の多いサイト上位20の一つとなっています。

また、アマゾンと似た天猫(Tモール)はBtoCポータルであり、世界企業であるディズニーやリーバイスなどのブランド企業(global brands)を、中国の中流階級(middle classes)につなぐ架け橋となっています。







「予想(forecast)」

中国の電子商取引の市場規模は、今後2020年までにアメリカ・イギリス・日本・ドイツ・フランスの合計(combined)を上回ると予想されています。

その旗頭であるアリババは目下、新興国(emerging economies)に進出しながら、海外に居住する中国人(Chinese overseas)の消費を取り込みつつ、世界的な拡大を続けているのです。



「斬新なオンライン決済システム(novel online-payments system)」

アリババによる支付宝(アリペイ)というオンライン決済システムは、顧客が商品に満足したことを確認した上で、販売元に代金を支払う仕組み(エクスクロー)になっています。

国家の法の支配(the rule of law)が弱い中国ですが、アリババはこの方法によって独自の信頼を築くことに成功しました。



「まだ活用されていない資源(untapped resource)」

決済システム・アリペイ(Alipay)によって得られた膨大な顧客情報(customer data)は、アリババの持つ最大の資源(greatest resource)ともなり得ます。

アリババは中国の中流階級の信用力(creditworthiness)、および消費性向(the spending habits)を誰よりも熟知・把握しているのです。



「金融部門アリファイナンス(Alifinance)」

アリババの金融部門であるアリファイナンス(Alifinance)は、すでに中国の大手金融機関にノシ上がっています。

中小企業向けの小口融資(microlender)から一歩踏み込んで、今後は一般消費者向けの融資を行う計画もあるそうです。アリファイナンスは実質的に、中国における金融自由化(liberalise)に一役買っているのです。



「竹の資本主義(bamboo capitalism)」

国営企業(state-owned enterprises)の居並ぶ中国経済。そしてその合間を縫うように無秩序に混在する民間企業(private-setor)。それが中国独自の「竹の資本主義(bamboo capitalism)」です。

国営企業の非効率さ(inefficiency)は嘆かわしいほどですが(woefully)、アリババなどの民間の台頭により、中国の小売・物流セクター(retail and logistics sectors)の生産性は上向きつつあるようです(boosting)。



「中国が大いに必要とする変化(the country's much-needed shift)」

国営企業主体の発展は、どうしても投資過多のモデル(an investment-heavy model)に陥ってしまいがちですが、アリババなどの民間力は、中国の消費力(consumption)を大いに掘り起こします。

この消費主導の成長モデルは、今後の中国が大いに必要とするもの(much-needed shift)に他なりません。



「危険水域(in dangerous water)」

中国におけるアリババの動きは本来、国家にとっても好ましいものであるはずです。ところが、アリババはある意味、危険水域(dangerous water)に入ってしまったのかもしれません。国内においても、海外においても…。

ややもすると、揚子江のワニが絶滅の危機に瀕している(endangered)、その様にまで倣ってしまうかもしれません。



「敏腕創業者の退任(the stepping aside of a formidable founder)」

揚子江のワニと讃えられた敏腕創業者(a formidable founder)の退任(the stepping aside)は、同社にどんな影響を与えるでしょうか。

まず、手を広げすぎた(overreached)アリババが躓いてしまう(stumble)という明白なリスクがあります。



「不透明なやり方(the murky way)」

数年前、親会社から分離独立(spin-out)させたアリペイは、その際の不透明なやり方(the murky way)に疑念を抱かれています。

同社の取扱い製品も然り。淘宝網(タオバオ)では、いとも簡単に模造品(knock-offs)を見つけることができます。



「海外からの胡散臭い目(with suspicion abroad)」

アリババは中国企業だというだけでも、海外から胡散臭い目で見られてしまいます(with suspicion abroad)。

中国の国営企業はアフリカで反感(a backlash)を買っていますし、中国の通信大手である華為(ファーウェイ)はアメリカで国家の敵(an enemy of the state)という烙印を押されてしまっています(branded)。



「嫉妬(jealousy)」

アリババにとっての最大の脅威(the greatest threat)は、じつは中国国内の嫉妬(jealousy)かもしれません。

中国の大手銀行は、アリババの金融部門に反対するロビー活動を展開しており、中国共産党はアリババの保有するあまりにも膨大な国民データに不安を募らせています。



「アリババの翼(Alibaba's wings)」

アリババの秘めるポテンシャルが発揮されれば、世界最高の企業も夢ではないでしょう。

しかし、正当な理由もなく(without good cause)その翼を抑えつけようとする力も確実にあります。

たとえアリババの進む道が、中国を良い方向へと向け得るとしても…。







英語原文:
E-commerce in China: The Alibaba phenomenon | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 18:09| Comment(2) | 企業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
gucci 偽物
Posted by christian louboutin 日本 at 2013年07月16日 23:00
中国企業アリババのもつ可能性、そして危険性。: 英語で読み解く「The Economist」
Posted by ティファニー キー at 2013年07月21日 17:01
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