2013年05月27日

海外ファンドに狙われたソニー。立ってるものは棒でも…



狙われたソニー
Sony under fire

さよなら、ジェームズ・ボンド?
Goodbye, Mr Bond?



アメリカのヘッジファンドが、ソニーに挑む(take on)。

英国エコノミスト誌 2013年5月18日号より



「アメリカ資本主義の欠点(the flaw in American capitalism)」

かつてソニーの共同経営者「盛田昭夫」氏は、アメリカ資本主義(capitalism)の欠点(flaws)の一つとして、短期的な金銭的成果(short-term financial results)への執着を挙げていました。

それはちょうど、ソニーの携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」がライバル企業を踏み倒していた頃(trampling underfoot)のことです(1980年代)。







「6.5%のソニー株(a 6.5% stake in the firm)」

そんな盛田昭夫氏が、ソニー株の6.5%をアメリカのヘッジファンドに取得されると聞いたら、さぞかし墓の下で嘆いている(bewail)かもしれません。

今年(2013)5月、ヘッジファンド「サード・ポイント(Third Point)」の代表、ダニエル・ローブ(Daniel Loeb)氏は、株式取得と同時に、ソニーの将来計画まで提示しています。



「外国の野蛮人(the gaijin barbarian)」

将来計画を語ったローブ氏は、ソニーの映画・音楽事業を「王冠の宝石(gems in its crown)」と認めた上で、そのの大部分を売却すべきだ、と提案しました。

その売却によって、ソニーの株価(share price)は60%上昇すると、ローブ氏は言うのです。



「45°のお辞儀(45-degree bow)」

ローブ氏のこの提案は、彼の日頃の振る舞い(usual standards)からすれば、45°のお辞儀(45-degree bow)に等しいとのことです。

なにせローブ氏は、米国ヤフーの取締役会を「バカげている(nonsensical)」と断じ、同社トップを解任に追い込んだ(sacked)ことがあるのです(学位詐称の暴露)。



「日本の超金融緩和(Japan's ultra-loose monetary policy)」

ちなみにローブ氏のヘッジファンドは、アベノミクスの一環として行われた超金融緩和(ultra-loose monetary policy)によって、すでに多額の利益を手にしています。

ローブ氏は円を空売り(shorting the yen)することで、超円安の恩恵に存分に身を浸しているのだそうです。



「不透明(unclear)」

しかしながら、なぜソニーが映画・音楽事業を売却することで、ソニー株が上昇するのかは、ローブ氏の説明ではまったく不透明(unclear)です。

ソニーの同事業は、いま最も同社にとって好調な事業(best performing businesses)の一つで、売却するどころかむしろ、数々の買収(
a series of acquisitions)を行なっているのです。



「映画・音楽事業(film and music businesses)」

ソニーの映画・音楽事業(film and music businesses)は2013年の3月期、9億ドル(約900億円)以上の営業利益(operating income)を上げています。

逆に、家庭用娯楽機器(携帯電話・パソコン・テレビなど)は、合計で19億ドル(約1900億円)の赤字(combined lossses)です。ソニーのエレクトロニクス事業は全体で(overall)、14億ドル(1400億ドル)の赤字を計上しました。







「相乗効果(synergy)」

ソニーは長年、コンテンツを製作するソフト部門と、ハードウェアを生産する部門の相乗効果(synergy)を見出すのに、悪戦苦闘してきました(struggled)。

ですが今、その相乗効果うんぬん以前に、採算性の高い音楽・映画部門(profitable tunes and flicks)ならびに金融サービス事業が、ソニーを破綻から守っている(keeping Sony afloat)というシンプルな構図になっています(simpler)。



「クールで画期的な新製品(cool and groundbreaking new products)」

ソニーはかつてのウォークマンのように、クールで画期的な新製品(groundbreaking new products)を生み出す方法を忘れてしまったのでしょうか?

あれほど膨大な量の音楽カタログ(huge music calatog)を持ち、ハードウェアに関する底なしの専門知識(bottomless expertise)を持ちながら、なぜソニーは「iPod」を生み出せなかったのでしょう?

それはソニーだけに限らず、日本株式会社(Japan Inc)全体の問題なのでしょうか?







「ソニーの創造的なセンス(the firm's creative flair)」

ソニーの平井社長は、ソニーの創造的なセンス(creative flair)を取り戻す(restore)と宣言しました。

コンテンツ畑(content side)出身の平井氏は、若いエンジニアたちを奮い立たせるべく(try to inspire)研究開発センターや工場にも足を運び、その結果生まれたスマートフォンの「エクスペリアZ」などは好評を博しています(favourable buzz)。



「モノ言う投資家(activist investors)」

これまで日本に押し入ろうとしたアクティビスト投資家(activist investors)は、たいした成果を上げることができませんでした。

地元日本の人たちは、そうした海外のアクティビストたちの目的が、経営の改善(better management)にあるのではなく、短期的な利益(short-term profit)を掠め取ろうとしていると考えていたのです(かつてソニーの盛田昭夫氏がそう言っていたように)。



「16世紀のキリスト宣教師(the Christian missionaries)」

まるで16世紀のキリスト宣教師たち(the Christian missionaries)のように、海外のファンドなどは日本で成果を上げられませんでした。

たとえばスチール・パートナーズ(米国ファンド)は、サッポロビールの企業統治(corporate governance)の改革に失敗しています(failed)。西武に投資するサーベラス・キャピタル・マネジメントは今も、2006年からずっとそうした努力を続けてるそうです。



「世界志向の強いソニー(a globally minded Sony)」

もしかしたら、世界志向の強いソニー(a globally minded Sony)ならば、部外者(outsiders)の意見に耳を傾けるかもしれません。もちろん「モノ言うヘッジファンド(activist fund)」の意見でも。

ローブ氏の提案する映画・音楽事業の売却予定はないものの、株主との対話(dialogue with shareholders)は歓迎すると同社は述べています。



「便利な道具(useful tool)」

たとえ創業者の想いとの異なれど、ローブ氏の圧力(pressure)は同社の変革を促す便利な道具(useful tool)として使えるかもしれません。

ソニーを世界の大海原に再浮上させるためには、野蛮人(barbarian)の持っている棒でも「短期的には(in short-term)」役に立つでしょうから…。







(了)






英語原文:
Sony under fire: Goodbey, Mr Bond? | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 13:36| Comment(0) | 企業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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