2015年09月01日

戦後70年の安倍談話、アジアへの反響 [The Economist]



第二次世界大戦の終戦から70年、台湾では李登輝(Lee Teng-hui)元総統の発言が物議をかもし出していた。

The 70th anniversary this year of Japan's second-world-war surrender as meant to "harass Japan and curry favor with China".

抗日戦70周年は、日本をいじめて中国に媚を売る(curry favor)ものだ。

台湾では7月4日に抗日戦争勝利70年を記念する式典が行われ、台湾軍の特殊部隊などが戦闘技術などのデモンストレーションや軍事パレードを行った。李登輝氏はそれを批判したのであった。





92歳になってなお気骨あふれる李登輝氏は、世に知れた親日派(fondness for Japan)だ。彼は言う。

Taiwan had been part of Japan.
台湾はかつて日本の一部だった。

日本統治時代の台湾に生まれた彼は、その流暢な日本語で「21歳(終戦の1945年)まで私は日本人だった」と言ってはばからない。戦時中は京都帝国大学に在学しており、学徒として出陣、名古屋で終戦をむかえた。彼にとって日本は "motherland(祖国)" なのである(本人弁)。



しかし、台湾においても中国においても、李登輝氏のような親日派は少ない。

Mr Lee's views are not uncommon in Taiwan. Nor, across Asia.

中国のメディアは李氏の批判を、"absurd remarks(ばかげた発言)" と一蹴した。中国本土では9月3日、抗日戦70周年を大々的な軍事パレードで祝うことになっている。『人民日報』はパレードの目的を「日本を震え上がらせ、戦後の世界秩序を維持する中国の断固とした決意を世界に向けて宣言すること」と書いている。



しかしエコノミスト誌は言う。

The angry derision was perhaps all the more intense because, historically, Mr Lee had a point. 

怒れる嘲笑はいよいよ激しくなるだろう。というのも、歴史的にみると李氏は的を得ている(has a point)からだ。




日本の安部政権は8月14日、戦後70年の談話を発表した。

それをエコノミスト誌は以下のように評する。

His "apology" itself, issued as a formal statement by his cabinet, was also seen as inadequate. It had all the right words, but glossed over some crimes, such as the imperial army's sexual enslavement of women.

内閣の公式声明として出された安部首相の”謝罪(apology)”は、不十分(inadequate)なように思われる。まったく正しい言葉で綴られているのだが、いくつかの戦争犯罪、たとえば帝国陸軍による従軍慰安婦(sexual enslavement of women)などに関して、うまく言い抜けてしまっている(glossed over)

This hints at the rosy version of Japan's imperialist past with which the country's far right likes to delude itself: Japan as liberator rather than coloniser and, in second world war, as victim rather than aggressor.

この談話は、日本の帝国主義を美化した見解(the rosy version)である。日本を植民地への入植者(coloniser)ではなく解放者(liberator)として、第二次世界大戦における侵略者(aggressor)というよりはむしろ犠牲者(victim)として記されており、これは日本の極右思想(far right)を正当化するものである。



当然のごとく、中国と韓国はこの談話に反発した。

China's official news agency dismissed it as "lacking sincerity". South Korea's president, Park Geun-hye, complained more soberly that it "did not quite live up to our expectations".

中国の国営放送は「誠意に欠ける(lacking sincerity)」とはねつけ、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領はもっと大真面目に「われわれの期待にまったく応えていない(did not quite live up to our expectations)」と不平を鳴らした。



両国に対して、安部首相の覚えは極めて悪い。

In China and  South Korea he is seen as a revisionist intent on whitewashing Japan's war record, jettisoning its pacifist constitution and making Japan strong and proud again.

中国と韓国では、安倍氏は戦争の歴史を歪曲(whitewash)しようと目論む修正主義者(revisionist)であり、平和憲法(pacifist constitution)を投げ捨て、日本にふたたび強さと誇りを取り戻そうとしている、と思われている。



エコノミスト誌は中韓両国の反応をこう評する。

In China the Communist party seeks to exploit the struggle against Japan to bolster its own legitimacy. South Korean nationalism, too, is founded in opposition to Japan. For South Korea, as for China, almost any apology would be unacceptable.

中国では、共産党が日本とやり合うことによって自身の正当性(own legitimacy)を高められる。韓国でも同様、日本と反対の立場をとることが自国の存立基盤となっている。 韓国にしろ中国にしろ、およそどのような謝罪であれ受け入れられるものではないだろう。



一方、東南アジア(South-East Asia)においては事情が異なる。

In South-East Asia, Japan's war guilt and perceived remorse seem to matter less to government and citizens. That is partly for historical reasons: Japan's invasion and colonial rule in South-East Asia were harsh but also comparatively short.

東南アジアにおいて日本の戦争犯罪に対する反省は、政府にとっても市民にとってもさほど重要ではない(matter less)。というのも、東南アジアにおける日本の侵略(invasion)と植民地支配(colonial rule)は歴史的にみて厳しかった(harsh)かもしれないが、比較的短い期間で終わっているからだ。

But most of all, South-East Asia has many other reasons to get on with a country that has been an important donor, trading partner, investor and, recently, potential ally against a rising China.

しかし何といっても、いまや日本は東南アジアにとって重要な援助者(donor)であり、貿易相手国であり、投資者である。そして最近では、台頭する中国に対抗する影の同盟者(potential ally)でもある。

A proper apology would be welcome, but it is less important.

然るべき謝罪(a proper apology)は大歓迎だが、それほど重要ではない。



確かに、日本は悪一面とは言い切れない。

Asian views of Japan's 20th-century expansionism are not all negative.

20世紀における日本の領土拡張政策(expansionism)に対するアジアの人々の考えは、否定的なものだけとはかぎらない(not all negative)



それでもエコノミスト誌は最後に、こう釘をさす。

But that is no reason why they should not be offered a better one.

そうは言っても、日本がもっとましな談話(a better one)を提示しなくていいという理由にはならない。






(了)






出典:
The Economist, Aug 29th 2015
Asia, Banyan「The uses of history」


posted by エコノミストを読む人 at 08:10| Comment(0) | アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。