2015年09月05日

ドナルド・トランプのアメリカ [The Economist]



ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は訴える。

”This country is a hellhole. We are going down fast. We can't do anything right. We're a laughing-stock all over the world. The American dream is dead." 

アメリカは最低の国(hellhole)になった。われわれは急降下している。正しいことは何もできていない。まったく世界の笑い草(laughing-stock)だ。アメリカン・ドリームは死んでしまった。

トランプ氏がアメリカの大統領を目指すと言ったとき、悪い冗談(joke)かと思われた。彼は実業界でこそヤリ手(wheeler-dealer)であったが、まさか国の最高司令官(commander-in-chief)に、とは誰も思っていなかった。


No one could want this erratic tycoon's fingers anywhere near the nuclear button.

核兵器のボタンの近くに、この風変わりな大物(erratic tycoon)の指が置かれることを誰が望むのか。

ところが数週間後、トランプ氏は瞬く間に共和党員の支持を集めていた。





それにしても、トランプ氏の言うことには一貫性(consistency)がない。

On abortion, he has said both "I'm very pro-choice" and "I'm pro-life". On guns, he has said "Look, there's nothing I like better than nobody has them" and "I fully support and back up the Second Amendment" (which guarantees the right to bear arms).

妊娠中絶(abortion)に関して、彼は「その選択に賛成する(pro-choice)」と言いつつ、「私は生命を尊重する(pro-life)」とも言う。銃に関しては、「誰も銃をもたないのが何よりじゃないか」と言いながら、「(銃の所持を保証する)憲法修正第2条(the Second Amendment)を完全に支持、応援する」と言う。

10年前は自らを民主党(Democrat)と言っていながら、大統領選にでるのは共和党(Republican)からである。



一方、メキシコ移民に対しては頑なだ。

He wants to build a wall on the Mexican border and somehow make Mexico pay for it. He would deport all 11m immigrants currently thought to be in America illegally.

トランプ氏はメキシコとの国境に壁(wall)を建設して、その費用をメキシコにもいくらか負担させようとしている。そして現在アメリカに不法入国している1千100万人の移民(immigrants)すべてを国外に追放しようとしている。

そのような国境壁の建設には2,850億ドル(約430兆円)かかるという推計がある。国民一人当たり900ドル(約11万円)という、とんでもない負担額である。だが、そこまでして壁をつくる必要がトランプ氏にはある。

This is necessary, he argues, because Mexican illegal immigrants are "bringing drugs.They're bringing crime. They're rapists."

トランプ氏は主張する、なぜなら不法なメキシコ移民はドラッグ(drugs)を持ち込んでいる。犯罪(crime)を持ち込んでいる。彼らはレイプ犯(rapists)なんだ。

苛烈なトランプ氏は、不法移民(illegal immigrants)のみならず、そのアメリカで生まれた子供たちをも追放しようとしている。彼らがアメリカ国籍をもっているのもお構いなしに。






外交もまた、いい加減である。

He would crush Islamic State and send American troops to "take the oil". He would "Make America great again", both militarily and economically, by being a better negotiator than all the "dummies" who represent the country today.

トランプ氏はIS(イスラム国)をブッ潰し、アメリカの兵士をオイル取りに行かせるという。アメリカの偉大さを軍事・経済の両面で取り戻すため、現在のダミーのごとき面々が国を代表するのでなしに、もっと優れた対外交渉を行う。

巨富を築いたトランプ氏にとっては、不動産を売るよりも地政学(geopolitics)は簡単らしい。彼独自の世界観(world view)はもはや妄想(paranoia)に近い。

"Every single country that does business with us" is ripping America off, he says. "The money [China] took out of the United States is the greatest theft in the history of our country.

トランプ氏は言う、われわれとビジネスする国はいずれも、アメリカを食い物にしようとしている。中国がアメリカから金をもっていくのは、同国史上、最大の強盗(theft)と言っていい。

中国の為替操作(currency manipulation)を非難し、日本や韓国などの同盟国(allies)との関係も見直そうとしている。

"If we step back, they will protect themselves very well. Remember when Japan used to beat China routinely in wars?"

もしアメリカが軍を退いても、日本や韓国は自分らでうまく国を守れるだろう。忘れたのか、日本はいとも簡単に中国を戦争で打ち負かしたじゃないか。





これほどトランプ氏は粗暴であるにもかかわらず、国内の人気は高い。

His supporters think his boorishness is a sign of authenticity. There are tens of millions of such people in America.

彼を支持する人たちは、トランプ氏のがさつさ(boorishness)には、かえって信用がおけると考える。そう考える人々がアメリカには何千万人もいるのだ。

かつて、こうしたポピュリスト(populists)がアメリカの政界にはいた。1908年のウィリアム・ジェニング・ブライン(William Jennings Bryan)、そして1966年のパット・ブキャナン(Pat Buchanan)。パットのスローガンは「The peasants are coming with pitchforks(農民が鍬をもってやって来た)」。いずれも民衆を焚きつける扇動者(firebrand)であった。

ある意味、トランプ氏はパット・ブキャナンよりも危険な人物である。まず何より、彼は大金持ち(billionaire)だ。

He has "a net worth of much more than $10 billion" and "some greatest assets in the world", including the Trump Tower, the Trump Turnberry golf resort, and so on.

トランプ氏の純資産は100億ドル(約1.2兆円)を軽く超える。そして世界中にとんでもない資産をもつ。トランプ・タワー(ニューヨーク)、ターンベリー・ゴルフリゾート(スコットランド)などなど。

選挙資金は無尽蔵。

"It's very possible", he once boasted, "that I could be the first presidential candidate to run and make money on it."

かつてトランプ氏は豪語した、私は大統領選に出馬して金儲けをする初めての候補者となりうるだろう、と。



他国において、こうした自己宣伝(self-promotion)のたくみな民衆扇動家(demagogue)が選挙に勝つことが時折ある。アメリカだけがその例外となりつづけることもないだろう。

最後にエコノミスト誌は、こう締める。

Fortunately, the Donald's own words provide a useful guide. Republicans should listen carefully to Mr Trump, and vote for someone else.

幸いにもトランプ氏の言葉は指針として役立つ。共和党員は彼の言うことをよく聞くべきだ。そして他の誰かに投票しろ。










(了)






出典:
The Economist, September 5th 2015
American politics "Trump's America




posted by エコノミストを読む人 at 17:37| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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