2015年09月25日

VW社、排ガス不正 [The Economist]



フォルクスワーゲン社(Volkswagen)の不正(falsification)が明るみに出た。

The German carmaker has admitted that it installed software on 11m of its diesel cars worldwide, which allowed them to pass America's stringent NOx-emissions test.

ドイツの自動車メーカー(フォルクスワーゲン)は、アメリカの厳しい窒素酸化物(NOx)排出規制を回避するためのソフトウェアを、世界中の1,100万台のディーゼル車に搭載していたことを認めた。

But once the cars were out of the laboratory the software deactivated their emission controls, and they began to spew out fumes at up to 40 times the permitted level.

ひとたび試験場を出た車は、排ガスを制御するソフトウェアの動作を停止し、最大で基準の40倍の有毒ガス(fumes)が放出される。






窒素酸化物(NOx)をはじめとする有毒ガスは、早期死亡(early deaths)の原因とされており、アメリカだけで年間5万8,000人が死亡しているという。フォルクスワーゲン社の不正は決して犠牲なき犯罪(victimless crime)ではない。

同社のマルティン・ウィンターコルン(Martin Winterkorn)最高経営責任者は辞意を表明。また、スキャンダル発覚後の4日間で、株価はその3分の1が吹き飛んだ(約260億ユーロ、およそ3兆5,000億円)。

フォルクスワーゲン社にとってのクリーン・ディーゼル(Clearn Diesels)は、アメリカ市場の弱点(weak point)を突いた重要な戦略の一つであり、世界一のトヨタを凌がんとする一手でもあった。がしかし、いまや画餅に帰した。



アメリカのゼネラル・モーターズ社(General Motors)にも、点火スイッチ(ignition-switch)の欠陥問題があった。その不具合から少なくとも124人が死亡し、275人が傷害を負ったとされている。

独フォルクスワーゲン社の不正が意図的(deliberate)なものと見られているのと同様、米ゼネラル・モーターズ社もまた、事前に不具合を知ってたのではないかと疑われている。両社とも、安全よりも利益を優先させた(put profit before safety)のではなかろうか。

米ゼネラル・モーターズ社の場合、法廷で真相を追求されることなく、9億ドル(約1,000億円)の罰金で和解しているが、アメリカではそうした多額の罰金がビジネス化している(fining business)との問題がもちあがっている。



アメリカに比べ、ヨーロッパの排ガス規制はゆるいという。

In Europe, emissions-testing is a farce. The carmakers commission their own tests, and regulators let them indulge in all sorts of shenanigans.

ヨーロッパの排ガス試験はまるで茶番(farce)だ。自動車メーカーは自社でテストを行う権限が与えられており、規制当局はあらゆる種類の不正行為(shenanigan)をさせるがままにさせている。

Such as removing wing mirrors during testing, and taping up the cracks around doors and windows, to reduce drag and thus make cars burn less fuel.

たとえば燃費を向上させるために、テストの間はドアミラー(wing mirrors)を取り外し、ドアや窓の隙間はすべてテープでふさがれる。そうすることで空力抵抗(drag)を減らすのである。

その結果、自動車メーカーが公表する燃費(fuel efficiency)は実地の運転(realistic driving conditions)とは掛け離れる。

This is why the fuel efficiency European motorists achieve on the road is around 40% short of carmakers' promises.

だからヨーローパのドライバーは、自動車メーカーの保証する燃費に40%ほども届かないのである。

ディーゼル車はガソリン車に比べて、二酸化炭素(carbon dioxide)の排出量が少ない。だが窒素酸化物(NOx)の排出は増える。ヨーロッパの窒素酸化物(NOx)排出基準が甘いため、ディーゼル車が好まれることになった。



Some fear that this may be the "death of diesel".

今回のスキャンダルによって「ディーゼル車の死(death of diesel)」を懸念する人がいる。

So be it.

それならそれで良い。

There is still scope to switch to cleaner cars that run on methane, hydrogen and electricity, or are hybrids.

よりクリーンな車に切り替える余地はまだある。メタンガスや水素ガス、電気自動車やハイブリッド車。

If VW's behaviour hastens diesel's death, it may lead at last to the beginning of the electric-car age.

もしフォルクスワーゲン社の行いがディーゼル車の死を早めるのなら、ようやく電気自動車の時代がはじまるのかもしれない。






(了)






出典:
The Economist, Sep 26th 2015
A scandal in the motor industry「Dirty secrets」




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2015年08月14日

特許、正すべし。







特許制度(patent system)を強化することが、必ずしも進歩を促進するとはかぎらない。

たとえば1970年、アメリカは農業分野の特許の範囲(the scope of patents)を拡大し、その保護を手厚くした。だが、期待された作物学(crop science)の活性化は見られることなく、その後、小麦の収穫が増加することもなかった。



本来、特許とは知識を広めるためにある。それゆえ、特許の保有者(patent-holders)はその内容を誰もが見られるよう、その詳細を提示することが義務付けられている。しかしながら、多くの特許内容は専門弁護士らによって不明瞭(obfuscation)にされてしまっている。

ちなみに、特許制度を悪用する人々をパテント・トロール(patent trolls)と呼ぶが、彼らが目論むのは、イノベーションを邪魔して、大企業などから戦利品の分け前(a share of the spoils)をくすねることである。

たとえば半導体ビジネスの新規参入者(newcomers)は、既存事業者(incumbents)からライセンスを購入しなければならず、そのための費用は2億ドル(約250億円)にも上ったという。






発明はイノベーションの爆発(bursts of innovation)をもたらすものであろう。しかしながら現在の特許制度は、既存事業者の優位性(advantages)を固定化(lock in)するために利用されているケースが少なくない。

特許をとるのには、ただでさえ金がかかる。それでも、その特許がイノベーションと繁栄をもたらすのであれば、高額な出費にも価値はあるだろう。だが残念ながら、そうはなっていないようだ。

たとえば2005年、アメリカで処方薬(prescription drugs)に支払われた2100億ドル(約26兆円)のうち、その4分の3は節約できた可能性があるそうだ。もし特許制度による一時的な独占状態(the temporary monopoly)がなければ。



英国エコノミスト誌は言う。

「欠陥のある特許制度(the flowed patent system)のせいで実現しないイノベーションがもたらす損害は、計り知れないほど大きい(incalculable)。現在の特許制度はアイディアに報いる方法として、あまりにも酷い」

特許保護(patent protection)は現在、TPP(環太平洋経済連携協定)などを通じて世界に広まる傾向がある。だが、この現実に対して同誌はこう意見する。

「目指すべきは特許制度の改善(to fix)であり、制度を広げることではない」



19世紀のイギリスで、エコノミスト誌は特許制度の完全廃止(abolition)を支持していた。仮に特許制度が廃止されたとしたら、薬や機械を発明しても自分のアイディアが他人に盗まれるのを指をくわえて見ているほかない。

「招いてもいない誰か(someone uninvited)が自分のリビングルームに引っ越してきたら、権利を侵害されたと感じるのは当然だろう」

特許の廃止は極端な例だが、個人の権利(the claim of the individual)と社会の利益(the interests of society)の折り合いをつける(striking the balance)のは、それほどに困難だ。



特許という知的財産(intellectual property)は、現在の知識経済(knowledge economy)にあって重要な位置を占める。それでも、財産権(property rights)は絶対でない。

たとえば政府は、個人の財産権を覆す(override)することが少なくない。課税による金銭の徴収、道路建設のための家屋撤去、土地の利用に関する規制…。むしろ知的財産という無形の権利は、実体のある財産(physical property)よりも社会的な共有が容易である。

英国エコノミスト誌は言う。

「二人の農民が同じ作物を収穫することはできないが、アイディアの場合は、元の所有者から略奪しなくても(without depriving)、模倣者がアイディアを再現することができる」



アイディアの共有(sharing)は、社会に大きな恩恵(huge benefits)をもたらす。

「ブルースがなければ、ジャズは生まれなかった(There would be no jazz without blues)」

そして、さらなるイノベーション(extra innovation)を生む。

「タッチスクリーン技術がなかったら、iPhoneは生まれなかっただろう(No iPhone without touchscreens)」





iPhoneに代表されるように、現代のイノベーションは既存のアイディア(existing ideas)の巧みな組み合わせ(the clever combination)であることが多い。アイディアが重なり合う(overlap)ことで、イノベーションの連鎖反応が起きる。アイディアこそが経済を動かす燃料だ。

だが、肝心の特許制度がアイディアに報いるどころか、阻害しているとしたら…。

エコノミスト誌は言う。

「資金や人手が足りない特許庁の役人たち(under-resourced patent-officers)は、裕福な特許専門の弁護士(well-heeled patent-lawyers)を相手に常に苦戦することになる」






アイディアには実体がない(intangible)。そしてイノベーションは複雑だ(complex)。ゆえに、発明において単純さは強みとなる(simplicity is a strength)。

エコノミスト誌は言う。

「そうした点を考えると、エレガントだが複雑な特許制度(an elegant but complex patent system)よりも、明快で大まかな制度(a clear, rough-and-ready one)のほうがいい」



政府においても同様。

「特許制度改革の狙いは、パテント・トロール(patent trolls)と、イノベーションを阻止する自己防衛的な特許保有者(defensive patent-holders)の一掃であるべきだ」とエコノミスト誌。

調査によれば、特許の40〜90%は、特許保有者による活用(exploite)やライセンス提供(license out)が一度もなされていないという。そうした特許はイノベーションを阻害する障害物にしかならない。

エコノミスト誌は言う。

「”使わなければ失う(use it or lose it)”という単純なルールを設けなければならない。成果物が市場に出ない場合には、特許が失効するような仕組みをつくる必要がある」



特許のアイディアが社会的に有用であるためには、アイディアの「非自明性(non-obvious)」が求められる。

たとえば、四隅が丸いタブレットの形に対する特許をアップル社は保有しているが、その形は果たして斬新なアイディアなのか? ツイッターは画面を下に引っ張って更新する特許(pull-to-refresh feed)をもっているが、これはどうか?

エコノミスト誌は言う。

「特許が与えられるべきなのは、壮大かつ斬新なアイディア(big, fresh ideas)に懸命に取り組む人だ。取るに足りない小さなもの(a tiddler)に書類を提出する人ではない」



特許の存続期間(20年)についても考えなければならない。

製薬業界(pharmaceutical industry)ならば、医薬品の治験を実施してから市場に出すまで10年以上を要する。ゆえに20年という保護期間は妥当かもしれない。だが、IT業界はどうか? 彼らのひらめき(brain wave)はあっという間に社会を変えていく。

エコノミスト誌は言う。

「動きの速い業界(fast-moving industries)に関しては、特許の存続期間(the length of patents)を徐々に短くしていくべきだ。そうしなければ、特許がイノベーションのペースに遅れをとってしまう」

たとえばグーグルは、ウェブサイトの検索に関する特許(検索結果をリンクしている他サイトの数を用いて順位づける手法)を1998年から独占的に保持し続けている。






現在の特許制度は、”進歩(progress)”という名のもとに運用されているはず。

しかし現実はどうか?

エコノミスト誌は言う。

「特許制度はイノベーションを進歩させるどころか、後退させている(set back)。今こそ、正すべき時だ(time to fix it)。特許はイノベーションの爆発(bursts of innovation)を促すべきだ」













(了)






出典:
The Economist「Innovation; Time to fix patents」
JB press「イノベーション:特許制度を是正せよ」

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2015年08月03日

日本企業を包みこむ変化の空気 [The Economist]



2015年初め、大塚家具の創業者が社長である自分の娘を会社から追い出そうとする光景(spectacle)に皆くぎ付けになった。娘である大塚久美子氏は社外取締役(outside directors)を起用すると言って父親に反抗したのであった。

幸い、久美子氏は社長の座にとどまることができた。彼女は言う、「コーポレートガバナンス(corporate governance)に対する姿勢が変化してきたのです」と。





日本政府は2015年6月1日、「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」の適用を開始した。その一つとして、企業に社外取締役を選任するよう求めている。現在、日本企業の多くが社外取締役を置いていないが、今回の新ルールによって、ものぐさな取締役会(slothful boards)もうかうかとしていられなくなった。

日本企業の世界的な競争力が低下した一つの原因として、不活発な取締役会(quiescent boards)が挙げられる。ジョージ・オルコット氏は言う、「会社の戦略について議論する取締役が少なすぎ、自分たちの仕事はすでに下された決断を単に承認するだけだと思っている取締役が多すぎる」と。

新たなコーポレートガバナンス・コード(corporate-governance code)によれば、企業は社外取締役(outside directors)を2人以上選任することを義務づけられる。政府が企業に対して詳細なルールを制定したのはこれが初めてで、これは安倍晋三首相によるアベノミクスの一環である。企業改革(the corporate reforms)は日銀の金融緩和(monetary easing)と並んで安倍首相の最も具体的な要素となっている。




日本では今、『ROE最貧国(the Poorest Nation)日本を変える』といったタイトルの本が飛ぶように売れている(flying off the shelves)という。

ROEとは株主資本利益率(Return on Equity)のことで、これまで日本企業はこの指標で欧米企業に遅れをとってきた(lagged behind)。日本企業は得られた利益を賢く投資して事業を拡大する代わりに、膨らむ現金の山(growing piles of cash)の上にあぐらをかいてきたのだった。

日本は世界第3位の経済大国(the world's third-largest economy)であるにも関わらず、その国民は不思議なほど起業家精神(entrepreneurship)をもっていないように見える。ロンドン・ビジネススクールの調査によると、昨年、日本で起業にたずさわったのは労働人口(the working population)に対してわずか4%だった。ちなみにアメリカでこの数値は14%、日本の3倍以上である。





日本には社内文化(internal culture)として、勤続年数の長い生え抜き(time-serving insiders)から次期社長を任命するという伝統がある。社員の給与は実績(performance)よりも勤続年数(length of service)に依存することが多い。いわゆる年功序列制度である。加えて、終身雇用(lifetime employment)という伝統も根強く残っている。

しかしアトゥル・ゴーヤル氏(証券会社ジェフリーズのアナリスト)は言う。

「考えてみてほしい(Imagine)、アップルやグーグル、アマゾンなどの世界企業が、実績ではなく勤続年数で昇格してきた人たちを経営幹部に据えたらどうなるでしょうか? そんなことをした会社がどれくらい持つと思いますか?」

戦後の日本経済は奇跡的な飛躍をとげて、ソニーやシャープのような世界企業を生み出した。しかし今や家電(consumer electronics and appliances)では、アメリカのアップル、韓国のサムスン、中国のハイアールといった企業に置いていかれてしまっている。



2008年、日立製作所は製造業として史上最大の赤字(the largest loss on record)を記録した。当時の日立は、日本有数の保守的な企業(most conservative)であった。従業員とその家族、もしくは仕入先とその家族が最優先される完全なコミュニティ企業(community firm)だった。

しかし、大赤字をくらって目の覚めた日立は改革に着手。消費者関連事業(薄型テレビ、携帯電話、コンピューターなど)を切り離し、発電所や鉄道システムなどに販売の焦点を定め直した。と同時に、古き日本的な社内文化にもメスを入れ、年功序列制度(the seniority-wage system)をほぼ捨て去った。

その成果は素晴らしかった。2015年3月期に営業利益(operating profits)が12%増加して6,000億円になった。





 「誰もが次の日立(the next Hitachi)を探しています」と、キャシー・松井氏(ゴールドマン・サックス)は言う。

日本ではこれまで、外国の”物言う株主たち(activist shareholders)”はガーデンパーティーのスカンク(skunk at a garden party)ほどにしか歓迎されてこなかった。ゆえに過去に相次いで押し寄せた投資家たちは、たいていは損を出して敗退する結果に終わっていた。



しかし近年、変化の風(winds of change)が吹きはじめている。

その風穴の一つをアメリカの最も好戦的な投資家、ダニエル・ローブ氏が開いた。彼は安倍総理、麻生財務大臣、黒田日銀総裁らと私的な会合(private meetings)をもった。

「彼がキャメロン英首相、メルケル独首相らと会うなんて、想像できますか?」



さらにローブ氏は、日本のロボットメーカーであるファナックの株式を取得し、社長である稲葉善治氏と富士山麓の本社でお茶を飲んだ。

ファナックはこれまで秘密主義をまもって、投資家と直接的な関わりをもつことを避けてきた。株主に還元するよりも現金の山を貯め込むことに熱心だった企業だ。そのファナックが2015年3月、現金の一部を投資家に還元するというニュースが世界の投資家たちを驚かせた。

いまやローブ氏は日本に第2の故郷(a second home)を見出している。





日本における企業改革は、国民のムード(the public mood)をつかみつつある。日本人経営者にとって「空気を読む(read the air)」ことは大切な能力である。

「現在その空気(the air)の中にあるのは、株主と株主利益に対する企業姿勢の改革(a revolution in companies' attitude)にほかならない」と国内外の投資家は考えている。日本の上場企業では外国人の持ち株比率(proportion of shares)が高まっており、それが日本企業に変化の圧力をかけている。

しかし社内革命の準備がまだできていない企業も多く、そうした企業は自社株買い(buying-backs)などによってその場をしのごうとしている。自社株買いの総額が2014年、3兆7000億円というリーマンショック以来の最高水準にまで達している。

サントリーの新浪氏は言う、「日本企業が業績不振(poor performance)の根本的な原因に対処しないまま、単に自社株買いのようなやり方でバランスシートを再構成するのだとしたら非常に残念だ」と。



それでも、改革を迫る空気は待ったなし。

日本政府が新たに定めたコーポレートガバナンス・コードに加え、投資家向けにもガバナンス・コード(スチュワードシップ・コード)が昨年すでに導入されている。企業経営者のみならず機関投資家(institutional investors)にも、無関心な不労所得者(supine rentiers)から責任ある管理者(responsible stewards)になることが求められている。

ISS(インスティチューショナル・シェアホルダー・サービシズ)はさらに厳しく迫る。「過去5年間で5%以上のROE(株主資本利益率)を達成できなかった日本企業の経営者には不信任票を投じてしまえ」とまで言うのだ。ちなみに現在、東証株価指数(TOPIX)を構成する1891社のうちの約4分の1の企業が、この基準を満たすことができない。

「空気を読むこと」を非常に気にかける日本人経営者に対して、東京証券取引所は昨年、「不名誉指数(shame index)」を導入している。この指数から外されるというバツの悪さ(the embarrassment)を嫌って、大慌てで改革を断行しようとする大企業の経営者もでてきている。





日本企業伝統の終身雇用(lifetime employment)や年功序列(the seniority-wage system)にしがみつきたがるのは40代後半の人々であって、若い労働者たちはむしろ新しい風を歓迎している。彼らは最近大ヒットしたテレビドラマ、半沢直樹に強い共感を抱いているのだ。

従来、日本の経営者の報酬体系は成果との連動性がが低いうえに、海外先進国と比べて報酬額も低かった。それはトップまで上り詰めた人たちが保守的で偏狭(narrow-minded)になってしまうためだった。野心的な若者でさえ、そうした硬いヒエラルキーの階層(the layers of hierarchy)を押し分けていくのは至難の技だった。

いまやパナソニック、ソニー、トヨタなども成果連動型の賃金・昇給システム(performance-related pay and promotion)に移行している。社内での出世(the ascent of the corpotate ladder)が勤続年数から実績へと移行していけば、出身大学による差別もなくなると若い人たちは喜んでいる。





ある改革はの経営者は言う。

「優良大企業(large blue-chip firms)の現在のトップのざっと半分は退任させるべきだ(should be turfed out)」と。

改革の風は吹いてきたとはいえ、まだまだ日本株式会社(Japan Inc)は昔ながらの伝統で出世した終身サラリーマン(lifetime salarymen)でひしめき合っている。



ドラスチックな対策を講じる意志が企業側にあるかどうか。

エコノミスト誌は言う。

「それを決めるのは外国人アクティビスト(物言う投資家)ではない。日本人自身(locals)なのだ。日本企業はかつてないほど自らが目覚めようとしはじめている」






出典:
The Economist「Japanese companies; Winds of change」
JB press「日本企業:大きな変化の風」



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2013年05月27日

海外ファンドに狙われたソニー。立ってるものは棒でも…



狙われたソニー
Sony under fire

さよなら、ジェームズ・ボンド?
Goodbye, Mr Bond?



アメリカのヘッジファンドが、ソニーに挑む(take on)。

英国エコノミスト誌 2013年5月18日号より



「アメリカ資本主義の欠点(the flaw in American capitalism)」

かつてソニーの共同経営者「盛田昭夫」氏は、アメリカ資本主義(capitalism)の欠点(flaws)の一つとして、短期的な金銭的成果(short-term financial results)への執着を挙げていました。

それはちょうど、ソニーの携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」がライバル企業を踏み倒していた頃(trampling underfoot)のことです(1980年代)。







「6.5%のソニー株(a 6.5% stake in the firm)」

そんな盛田昭夫氏が、ソニー株の6.5%をアメリカのヘッジファンドに取得されると聞いたら、さぞかし墓の下で嘆いている(bewail)かもしれません。

今年(2013)5月、ヘッジファンド「サード・ポイント(Third Point)」の代表、ダニエル・ローブ(Daniel Loeb)氏は、株式取得と同時に、ソニーの将来計画まで提示しています。



「外国の野蛮人(the gaijin barbarian)」

将来計画を語ったローブ氏は、ソニーの映画・音楽事業を「王冠の宝石(gems in its crown)」と認めた上で、そのの大部分を売却すべきだ、と提案しました。

その売却によって、ソニーの株価(share price)は60%上昇すると、ローブ氏は言うのです。



「45°のお辞儀(45-degree bow)」

ローブ氏のこの提案は、彼の日頃の振る舞い(usual standards)からすれば、45°のお辞儀(45-degree bow)に等しいとのことです。

なにせローブ氏は、米国ヤフーの取締役会を「バカげている(nonsensical)」と断じ、同社トップを解任に追い込んだ(sacked)ことがあるのです(学位詐称の暴露)。



「日本の超金融緩和(Japan's ultra-loose monetary policy)」

ちなみにローブ氏のヘッジファンドは、アベノミクスの一環として行われた超金融緩和(ultra-loose monetary policy)によって、すでに多額の利益を手にしています。

ローブ氏は円を空売り(shorting the yen)することで、超円安の恩恵に存分に身を浸しているのだそうです。



「不透明(unclear)」

しかしながら、なぜソニーが映画・音楽事業を売却することで、ソニー株が上昇するのかは、ローブ氏の説明ではまったく不透明(unclear)です。

ソニーの同事業は、いま最も同社にとって好調な事業(best performing businesses)の一つで、売却するどころかむしろ、数々の買収(
a series of acquisitions)を行なっているのです。



「映画・音楽事業(film and music businesses)」

ソニーの映画・音楽事業(film and music businesses)は2013年の3月期、9億ドル(約900億円)以上の営業利益(operating income)を上げています。

逆に、家庭用娯楽機器(携帯電話・パソコン・テレビなど)は、合計で19億ドル(約1900億円)の赤字(combined lossses)です。ソニーのエレクトロニクス事業は全体で(overall)、14億ドル(1400億ドル)の赤字を計上しました。







「相乗効果(synergy)」

ソニーは長年、コンテンツを製作するソフト部門と、ハードウェアを生産する部門の相乗効果(synergy)を見出すのに、悪戦苦闘してきました(struggled)。

ですが今、その相乗効果うんぬん以前に、採算性の高い音楽・映画部門(profitable tunes and flicks)ならびに金融サービス事業が、ソニーを破綻から守っている(keeping Sony afloat)というシンプルな構図になっています(simpler)。



「クールで画期的な新製品(cool and groundbreaking new products)」

ソニーはかつてのウォークマンのように、クールで画期的な新製品(groundbreaking new products)を生み出す方法を忘れてしまったのでしょうか?

あれほど膨大な量の音楽カタログ(huge music calatog)を持ち、ハードウェアに関する底なしの専門知識(bottomless expertise)を持ちながら、なぜソニーは「iPod」を生み出せなかったのでしょう?

それはソニーだけに限らず、日本株式会社(Japan Inc)全体の問題なのでしょうか?







「ソニーの創造的なセンス(the firm's creative flair)」

ソニーの平井社長は、ソニーの創造的なセンス(creative flair)を取り戻す(restore)と宣言しました。

コンテンツ畑(content side)出身の平井氏は、若いエンジニアたちを奮い立たせるべく(try to inspire)研究開発センターや工場にも足を運び、その結果生まれたスマートフォンの「エクスペリアZ」などは好評を博しています(favourable buzz)。



「モノ言う投資家(activist investors)」

これまで日本に押し入ろうとしたアクティビスト投資家(activist investors)は、たいした成果を上げることができませんでした。

地元日本の人たちは、そうした海外のアクティビストたちの目的が、経営の改善(better management)にあるのではなく、短期的な利益(short-term profit)を掠め取ろうとしていると考えていたのです(かつてソニーの盛田昭夫氏がそう言っていたように)。



「16世紀のキリスト宣教師(the Christian missionaries)」

まるで16世紀のキリスト宣教師たち(the Christian missionaries)のように、海外のファンドなどは日本で成果を上げられませんでした。

たとえばスチール・パートナーズ(米国ファンド)は、サッポロビールの企業統治(corporate governance)の改革に失敗しています(failed)。西武に投資するサーベラス・キャピタル・マネジメントは今も、2006年からずっとそうした努力を続けてるそうです。



「世界志向の強いソニー(a globally minded Sony)」

もしかしたら、世界志向の強いソニー(a globally minded Sony)ならば、部外者(outsiders)の意見に耳を傾けるかもしれません。もちろん「モノ言うヘッジファンド(activist fund)」の意見でも。

ローブ氏の提案する映画・音楽事業の売却予定はないものの、株主との対話(dialogue with shareholders)は歓迎すると同社は述べています。



「便利な道具(useful tool)」

たとえ創業者の想いとの異なれど、ローブ氏の圧力(pressure)は同社の変革を促す便利な道具(useful tool)として使えるかもしれません。

ソニーを世界の大海原に再浮上させるためには、野蛮人(barbarian)の持っている棒でも「短期的には(in short-term)」役に立つでしょうから…。







(了)






英語原文:
Sony under fire: Goodbey, Mr Bond? | The Economist

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2013年03月29日

中国企業アリババのもつ可能性、そして危険性。


中国の電子商取引
E-commerce in China

アリババ現象
The Alibaba phenomenon



中国の巨大企業は莫大な利益(enormous wealth)を生み出すかもしれない。中国の指導者たちが手出ししなければ(leave it alone)…。

英国エコノミスト誌 2013年3月23日号より



「世界一の電子商取引企業(the world's largest e-commerce company)」

一部の指標によれば(by some measures)、中国のアリババ(Alibaba)という企業は、いまや世界一の電子商取引企業(e-commerce company)だそうです。

ちなみに、中国の電子商取引市場はもうすでに、アメリカのそれを追い抜こうとしています。



「イーベイとアマゾンを足した以上(more than eBay and Amazon combined)」

アリババは昨年、合計で1兆1,000億元(約15兆5,000億円)の商取引(transactions)を処理しています。

この数字はなんと、アメリカ大手のイーベイ(eBay)とアマゾン(Amazon)を足した数字よりも巨額なのです。とんでもない成功(extraordinary success)といえるでしょう。



「元英語教師(a former English teacher)」

この巨大企業の創業者(founder)は、ジャック・マー(馬雲)氏。元英語教師(a former English teacher)だそうです。

その彼は今年5月に、CEO(最高経営責任者)の座を腹心の一人(a trusted insider)であるジョナサン・ルー(陸兆禧)氏に譲る(hand over)と発表しています。







「新規株式公開(IPO, Initial Public Offering)」

もし、CEO交代とともに新規株式公開(IPO)が発表されれば、それはフェイスブックの上場(Facebook's listing)以上の激震を市場にもたらす可能性があります。

上場当時、フェイスブックはその企業価値を1,040億ドル(約9兆7,000億円)と評価されましたが、アリババの評価額(valuation)はそれ以上という試算(estimates)も一部にあるそうです。



「フェイスブックのような失敗(a Facebook-like fumble)」

フェイスブックは上場以後、その評価額が630億ドル(約6兆円)と大きく後退してしまいました(slipped back)。もしアリババがそのような失敗(fumble)をしないのであれば、アリババは数年以内に世界一時価総額の大きい企業群の仲間入りをするかもしれません。

現在トップのアップルでさえ、2009年当時の価値はたったの900億ドル(約8兆5,000億円)だったのです(現在のアップルの時価総額は約40兆円)。



「揚子江のワニ(the crocodile in the Yangzi river)」

アリババの創業者であるマー氏は、かつてこう言っていました。

「イーベイは海のサメ(shark in the ocean)かもしれないが、私は揚子江のワニ(the crocodile in the Yangzi river)だ。海で戦えば負けてしまうが、川で戦えば勝つ」と。



「企業間のBtoBポータル(a business-to-business portal)」

アリババの創業は今から14年前の1999年。

そのスタートはアリババ・ドット・コム(Alibaba.com)という企業間のBtoBポータルサイトで、小さな中国製造業者(Chinese manufactures)と海外のバイヤー(buyers overseas)をつなぐのがその仕事でした。



「淘宝網(Taobao)と天猫(T mall)」

次に立ち上げたのが淘宝網(タオバオ)。これはイーベイとほとんど変わらない(not unlike eBay)消費者間のCtoCポータル。現在の取扱商品点数は10億近くで、世界で最もアクセス数の多いサイト上位20の一つとなっています。

また、アマゾンと似た天猫(Tモール)はBtoCポータルであり、世界企業であるディズニーやリーバイスなどのブランド企業(global brands)を、中国の中流階級(middle classes)につなぐ架け橋となっています。







「予想(forecast)」

中国の電子商取引の市場規模は、今後2020年までにアメリカ・イギリス・日本・ドイツ・フランスの合計(combined)を上回ると予想されています。

その旗頭であるアリババは目下、新興国(emerging economies)に進出しながら、海外に居住する中国人(Chinese overseas)の消費を取り込みつつ、世界的な拡大を続けているのです。



「斬新なオンライン決済システム(novel online-payments system)」

アリババによる支付宝(アリペイ)というオンライン決済システムは、顧客が商品に満足したことを確認した上で、販売元に代金を支払う仕組み(エクスクロー)になっています。

国家の法の支配(the rule of law)が弱い中国ですが、アリババはこの方法によって独自の信頼を築くことに成功しました。



「まだ活用されていない資源(untapped resource)」

決済システム・アリペイ(Alipay)によって得られた膨大な顧客情報(customer data)は、アリババの持つ最大の資源(greatest resource)ともなり得ます。

アリババは中国の中流階級の信用力(creditworthiness)、および消費性向(the spending habits)を誰よりも熟知・把握しているのです。



「金融部門アリファイナンス(Alifinance)」

アリババの金融部門であるアリファイナンス(Alifinance)は、すでに中国の大手金融機関にノシ上がっています。

中小企業向けの小口融資(microlender)から一歩踏み込んで、今後は一般消費者向けの融資を行う計画もあるそうです。アリファイナンスは実質的に、中国における金融自由化(liberalise)に一役買っているのです。



「竹の資本主義(bamboo capitalism)」

国営企業(state-owned enterprises)の居並ぶ中国経済。そしてその合間を縫うように無秩序に混在する民間企業(private-setor)。それが中国独自の「竹の資本主義(bamboo capitalism)」です。

国営企業の非効率さ(inefficiency)は嘆かわしいほどですが(woefully)、アリババなどの民間の台頭により、中国の小売・物流セクター(retail and logistics sectors)の生産性は上向きつつあるようです(boosting)。



「中国が大いに必要とする変化(the country's much-needed shift)」

国営企業主体の発展は、どうしても投資過多のモデル(an investment-heavy model)に陥ってしまいがちですが、アリババなどの民間力は、中国の消費力(consumption)を大いに掘り起こします。

この消費主導の成長モデルは、今後の中国が大いに必要とするもの(much-needed shift)に他なりません。



「危険水域(in dangerous water)」

中国におけるアリババの動きは本来、国家にとっても好ましいものであるはずです。ところが、アリババはある意味、危険水域(dangerous water)に入ってしまったのかもしれません。国内においても、海外においても…。

ややもすると、揚子江のワニが絶滅の危機に瀕している(endangered)、その様にまで倣ってしまうかもしれません。



「敏腕創業者の退任(the stepping aside of a formidable founder)」

揚子江のワニと讃えられた敏腕創業者(a formidable founder)の退任(the stepping aside)は、同社にどんな影響を与えるでしょうか。

まず、手を広げすぎた(overreached)アリババが躓いてしまう(stumble)という明白なリスクがあります。



「不透明なやり方(the murky way)」

数年前、親会社から分離独立(spin-out)させたアリペイは、その際の不透明なやり方(the murky way)に疑念を抱かれています。

同社の取扱い製品も然り。淘宝網(タオバオ)では、いとも簡単に模造品(knock-offs)を見つけることができます。



「海外からの胡散臭い目(with suspicion abroad)」

アリババは中国企業だというだけでも、海外から胡散臭い目で見られてしまいます(with suspicion abroad)。

中国の国営企業はアフリカで反感(a backlash)を買っていますし、中国の通信大手である華為(ファーウェイ)はアメリカで国家の敵(an enemy of the state)という烙印を押されてしまっています(branded)。



「嫉妬(jealousy)」

アリババにとっての最大の脅威(the greatest threat)は、じつは中国国内の嫉妬(jealousy)かもしれません。

中国の大手銀行は、アリババの金融部門に反対するロビー活動を展開しており、中国共産党はアリババの保有するあまりにも膨大な国民データに不安を募らせています。



「アリババの翼(Alibaba's wings)」

アリババの秘めるポテンシャルが発揮されれば、世界最高の企業も夢ではないでしょう。

しかし、正当な理由もなく(without good cause)その翼を抑えつけようとする力も確実にあります。

たとえアリババの進む道が、中国を良い方向へと向け得るとしても…。







英語原文:
E-commerce in China: The Alibaba phenomenon | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 18:09| Comment(2) | 企業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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