クルマの未来
The future of the car
クリーンで安全な自律走行車
Clean, safe and it drives itself
自動車はすでに人間の生活スタイルを一変させた(changed the way we live)。そしてまた、それが起こりそうだ(likely to do so again)。
英国エコノミスト誌 2013年4月20日号より
「周期的な大跳躍(periodic leaps)」
生物がそうであるように、発明(inventions)の中には周期的な大跳躍(periodic leaps)を遂げるものがあります。
どうやら、自動車という発明品は、その一つのようです。
「大躍進(breakthrough)」
自動車が最初の大躍進(breakthrough)を遂げたのは、その発明から25年ほど経った時のことでした。
カール・ベンツ(Karl Benz)が最初のモートルヴァーゲン(Motorwagen)の生産をはじめてから25年後、アメリカのヘンリー・フォード(Henry Ford)は、T型フォード(the Model T)でその業界にブレークスルー(breakthrough)をもたらしたのです。
「流れ作業の組み立てライン(moving assembly lines)」
フォードがデトロイトの工場に導入した、流れ作業の組み立てライン(moving assembly lines)。
それが自動車製造の所要時間を劇的に短縮し(drastically cut the time)、結果的に大幅な製造コスト削減につながりました(1913)。
「ありふれた大量生産品(the ubiquitous, mass-market item)」
より安価になった自動車はその後、ありふれた大量生産品(the ubiquitous, mass-market item)となり、個人の移動手段(personal mobility)に革命が起きたのです。
大衆品となった自動車が都市の風景(urban landscape)を一変させ、そして現在、およそ10億台近い自動車(almost a billion cars)が、世界中の高速道路を駆け巡るようになっています。
「自動車保有率(car ownership)」
先進国が先駆けた自動車革命ですが、現在では新興国(emerging markets)も猛烈に自動車の所有台数を増大させています。
もし、全世界の自動車保有率(car ownership)がアメリカ並みになれば、世界の自動車台数は現在の4倍(quadruple)に跳ね上がることになります。
「排気ガス(its emissions)」
すでに中国では主要都市がスモッグに包まれていますが(choked in smog)、世界に自動車が増え続ければ、その排ガス(its emissions)はどれほどのものになるのでしょう。
そうした環境汚染(pollutions)にとどまらず、都市部の渋滞(congestion)、燃料価格の高騰、さらには地球温暖化(global warming)なども頭の痛い問題です。
「規制強化と技術向上(stricter regulations and smarter technology)」
幸いにも、近年の規制強化(stricter regulations)や技術の向上(smarter technology)は、新しい自動車をよりクリーンに、より安全に、燃費の良い乗り物にしてくれました(more fuel-efficient)。
あの中国も、ヨーロッパの例にならい、有害な窒素酸化物(noxious nitrogen)と微細なスス粒子(fine soot particles)の排出規制に乗り出しています。
「電気自動車(battery-powered cars)」
期待の大きかった電気自動車(battery-powers cars)は、今のところ大きな期待には応えきれていないようです。
車両価格は依然として高額で、走行可能距離も短いままです(lack range)。また、石炭を燃料とする発電所(coal-fired power stations)の電力で走る場合などは、見た目ほどに環境に優しいとは言えません(dirtyer than they look)。
「広がる選択肢(widening choice)」
電気と内燃機関(internal-combustion)を組み合わせたハイブリッド車(hybrids)をはじめ、自動車メーカーは電気以外のクリーンな技術に大々的に投資しています(investing heavily)。
超低燃費(super-efficient)のガソリン車やディーゼル車、さらには天然ガスや水素(hydrogen)を動力とする自動車など、将来的な選択肢はその幅を広げています(widening choice)。
「運転支援技術(driver assistance technologies)」
新しい自動車には、さまざまな運転支援(driver assistance)技術を搭載したものもあります。
たとえば、縦列駐車(reverse-park)、標識(traffic signs)の読み取り、安全な車間距離(safe distance)の維持、自動ブレーキ(break automatically)による事故回避などなど。
「運転手のいない車(the driverless car)」
グーグルは、5年以内に運転手のいない車(the driverless car)を一般向けに販売しようと、その開発に力を注いでいます。
同社はまったく新しい自律自動車を一から開発して(build from scratch)、世界に販売しようと考えています。カリフォルニアのフリーウェイを走るその試作車(the prototypes)はすでにかなりの完成度のようです。
「飲酒運転やメールを打ちながらの運転(drive drunk or while texting)」
人は時として、飲酒運転(drive drunk)やメールを打ちながらの運転(while texting)をしてしまいますが、コンピューター制御された自律自動車なら、絶対にそんなことをしません。
もし、コンピューターによる自律走行の運転データを、人間の運転するそれと照らし合わせてみれば、きっと自律走行の車(the car on autopilot)の方が安全だと証明されることでしょう。
「不注意な手や足(reckless hands and feet)」
人間の手足はじつに不注意なもので、その手足がハンドルやアクセルを操らないだけで、多くの事故を回避できる可能性があります。
高齢者(elderly)や身体の不自由な人たち(disabled)も、自律走行車に乗れば、自分一人での移動手段(personal mobility)を取り戻せるはずです。グーグルは実際、目の見えない人(a blind man)を自律走行車に乗せて、テイクアウトのタコス(takeaway tacos)を買いにいけることを実証しています。
「膨大な数の交通事故死傷者(the colossal toll of deaths and injuries)」
人間が運転することの危うさは、その膨大な数(the colossal toll)の交通事故による死傷者(deaths and injuries)が証明しています。
全世界では年間120万人が交通事故で死亡し、病院送りになる負傷者は、アメリカだけでも200万人にのぼります。
「医療や保険のコスト(the costs to health system and insurers)」
もし、コンピューターに自動車の運転を任せて、交通事故の死傷者数が減るのであれば、それは医療や保険(insurers)のコストの軽減にもつながるはずです。
若いドライバーたちも、多額の自動車保険(crippling motor insurance)を支払う必要がなくなるかもしれません。
「渋滞緩和と燃料節約(ease congestion and save fuel)」
自律走行車(driverless cars)は、人間が運転するよりも前の車との車間を詰められるので、それは渋滞(congestion)の緩和につながるでしょう。
また、前の車との車間が詰まると、それは空気抵抗を減らすスリップ・ストリームのような状態(road trains)になり、より燃費が向上するはずです。
「たわごと(bunk)」
グーグルの自律走行車が見せる夢は、あまりにも突拍子もないため、それを戯言(bunk)と考えている自動車メーカーもあります。
なぜなら、コンピューターはクラッシュするものであり、そんな車で高速道路を突っ走るなんて恐ろしくてできない、と言うのです。
「破滅的な訴訟費用(ruinously expensive lawsuits)」
もし、自社の自律自動車が事故でも起こせば、その訴訟費用は破滅的な額(ruinously expensive)にのぼる恐れもあります。
そうなってしまうと、もはや技術開発を継続する意欲は失われてしまうかもしれません。
「人による運転を必要としない飛行機(planes that no longer need human drivers)」
自動車の運転をコンピューターに任せるのを恐ろしいという人でも、人間が運転していない飛行機や電車には平気で乗っているかもしれません。それとは気づかずに(unwittingly)。
自律自動車への移行(shift)も、そのように徐々に進んでいく可能性は高いとみられています。
「グーグルの自律走行車(Google's self-driving cars)」
グーグルの自律走行車(self-driving cars)の走行距離は、すでに70万kmに達しています(大抵の人よりもずっと長いはずです)。
その培った経験(データ)は、同じソフトウェアを使うほかの車に活かされ、いずれは、人間が無意識に使っている勘や技(tricks)にも匹敵するようになるでしょう。たとえば、道路にボールが転がってきたら、その後を子供が追いかけてくるかもしれないと予測してブレーキを踏む、など。
「ありそうもない?(far-fetched)」
しかし、まだ実際に自律走行車を目にしたことのない人々にとって、その実現が間近に迫っている(round the corner)などとは、にわかに信じられません(far-fetched)。
ここで思うのは、テレビがない時代に初めてテレビを目にした人々、もしくは、空気より重いはずの飛行機が空を飛ぶのを目の当たりにした人々のことです。
「当てにならない運転者(fallible operators)」
もし、未来にとって自律走行車が当たり前であったとしたら、未来の人々はこう思うかもしれません。
いったいなぜ昔の人たちは、人間のように当てにならない運転者(fallible operators)に、自動車のように危険な乗り物の運転を任せていたのだろう、と。
英語原文:
The future of the car: Clean, safe and it drives itself | The Economist