2015年08月28日

イギリス、航空ショーで墜落。


イギリスのショーハム(Shoreham)で航空ショー(an aerobatic display)の最中、1950年式のジェット機(a 1950s-vintage jet)が付近の幹線道路(major road)に激突し、すくなくとも11人が死亡した。同国の航空ショー事故では1952年以来最悪の惨事(disaster)となった。

In Britain at least 11 people died when a 1950s-vintage jet crashed into a nearby major road during an aerobatic display at Shoreham - the country's worst air-show disaster since 1952.


Politics this week
The Economist, Aug 29th 2015



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2013年03月17日

倹約の先には道がない…? 立ち往生するイギリス経済


成長宣言
A growth manifesto

もう少し速くできないのか?
A little faster, George?



イギリス経済は行き詰まっている(stuck)。

英国エコノミスト誌 2013年3月9日号より



「今回はそうではない(not so this time)」

エコノミスト誌は過去170年間の長きに渡って、イギリス経済を見て続けてきたといいます。

1857年の世界不況(the global slump)では壊滅的なショック(devastating shocks)を受け、1930年代の世界恐慌(the 1930s Depression)では大打撃を食らったイギリス経済。

それでもイギリスはこれまで、大惨事の5年以内には立ち直ってきました。2度の世界大戦のあとですらそうです。

しかしながら、今回ばかりはそうもいかぬようです(not so this time)…。



「悲惨な状態(dismal)」

イギリスの通貨ポンドは下落し、貿易収支(the balance of trade)は悲惨な状態です(dismal)。イングランド銀行によれば、2007年にピークをつけている経済生産(output)は、あと2年後の2015年まで回復しない見込みです(実質ベース)。

イギリス経済は今、辛うじて前に進んでいる(barely bumping along)という苦しい状況なのです。



「逆風(ill wind)」

痩せ細った賃金(meagre wages)に、執拗なインフレ(stubborn inflation)。そんな苦境の中、国民の購買力(spending power)は上がりようがありません。

イギリス国民の52%は、今後ともに家計が悪化すると悲観しています(pessimistic)。



「構造的財政赤字(the structural budget deficit)」

こうした成長できない状況(failure to grow)は、企業や家計の痛手であることはもちろん、国家の財政(the books)を均衡させることをも難しくしてしまっています。

イギリス財務相(Britain's chancellor)ジョージ・オズボーン氏の掲げる緊縮計画(austerity)では、2017〜2018年までにGDP(国内総生産)比3.6%の構造的財政赤字(the structural budget deficit)を削減することを目指していました。

しかし残念ながら、もはやその目標には手が届きそうにないのです(out of reach)。



「格下げ(downgrade)」

鈍い成長(sluggish growth)のせいで、給付金(benefit)の支払いが高止まりする一方、税収(tax revenues)も落ち込んでいます。

イギリス政府の債務(debt)は現在、1.1兆ポンド(約160兆円)。2008年に比べると、180%にまで膨れ上がっており、それが格下げ(downgrade)の一因ともなってしまいました。



「借り入れコスト(borrowing costs)」

イギリス政府の借り入れコスト(borrowing costs)は、今のところ低いままですが、民間銀行は企業(firms)に対して、政策金利よりもはるかに高い金利(much higher rates)を課しています。

それが、2009年以来、企業の借り入れ(borrowing by businesses)が減り続けている理由の一端とされています。



「融資用資金供給(FFL, Funding For Lending)」

イングランド銀行にはFFL(融資用資金供給)という枠が設けられていますが、それを使うと、商業銀行(commercial bank)は資金調達コスト(funding cost)を引き下げることができるそうです。そして、その引き下げ分は融資先にも還元できるのです。

しかしながら、この枠組み(scheme)はとても小さく、国内融資残高(existing stock of British loans)の5%をカバーするに過ぎません。住宅ローン(mortgage)の金利は多少低下したようですが…。



「研究集約型の中小企業(research-intensive small firms)」

イギリスの将来の成長(future growth)のためには、イノベーションを導く研究集約型の中小企業(research-intensive small firms)への投資が必要とされています。

しかし現状はといえば、目先の配当ばかりを気にする金融市場(dividend-obsessed financial markets)に、そんな余裕はないようです。



「ゾンビ企業(the undead firms)」

イギリスの激減した生産高(a colossal reduction)に対して、倒産した企業は思ったよりも少ないようです。それは、経営者が倒産の汚名(the stigma of going bust)を嫌うからであり、銀行も融資の損失を避けたいからです(unwillig to take losses)。

しかし、完全に死なないゾンビ企業(the undead firms)の存在は、より優れたアイディアをもつ企業の台頭を妨げてしまいます。この点、イギリスの破産法(the bankruptcy rules)はアメリカに未だ立ち遅れている(still lag)と言えるでしょう。



「公的サイフ(the public purse)」

鉄道や道路、橋、そしてブロードバンドなどへの歳出は、1ポンド当たりの成長促進効果が高いそうです(a bigger boost)。

ところが皮肉にも、最も歳出が削減されたのがこの分野でした。公的部門の純投資額は、485億ポンド(約70兆円)から280億ポンド(約40兆円)に減少しています(43%減)。



「今すぐできるプロジェクト("shovel-ready" projects)」

道路や鉄道、信号機の補修工事など、小規模で地味な仕事(unglamorous projects)は、すぐにでも着工できます(shovel-ready)。そして、それらのインフラ整備は成長効果も高いのです。

それでも財務相は、大型プロジェクトの予算配分を待っているかのようです。



「土地の価値(the land value)」

不思議なことに、イギリスの企業は開発用地(development land)をそのまま眠らせていることも多いようです。それは構造物の建設が始まらなければ税金がかからないからです。

もし、地価(the land value)に対して課税されるのであれば、眠らせている土地は逆に高くついてしまうため、土地活用は促進されるでしょう。それは好循環(a virtuous circle)の始まりともなり得ます。



「自傷行為(self-harm)」

イギリス政府は移民の削減(to cut immigration)に取り組んでいるようですが、それは若者や高学歴者(the young and educated)の入国を阻むものでもあります。

過去一年間の移民の減少は、その大半が学生数の減少だったそうです。そうした能力ある人材(talented people)の拒絶は、将来的な自傷行為(self-harm)ともなりかねません。



「贅肉のついた公的部門(the tabby public sector)」

緊縮論(the austere talk)が叫ばれる中、イギリスの医療費(health spending)は特別に保護されています(598億ポンドから1,214億ポンドに倍増)。また、年金生活者(pensioners)向けの燃料費補助(fuel subsidies)などは、収入の多寡にかかわらず一律に支給されています(now-universal)。

「民間企業の経営者(private-sector boss)ならば、これほど急激なコスト増加を許すであろうか?」



「長期的な成長を促すインフラ(long-term growth-promoting infrastructure)」

エコノミスト誌の主張によれば、イギリスは長期的な成長(long-term growth)を促すインフラ整備に投資すべきだとのことです。

少なくとも、生産性の低い政府事業(less productive parts of Leviathan)からは資金を移すべきであり、借り入れを増やしてでも(more borrowing)、インフラに投資すべきだと言うのです。



「倹約家(the austere)」

はたして、倹約家(the austere)のオズボーン財務相は、今後どんな決断を下していくのでしょうか?

倹約一辺倒では、現在のイギリスを成長に向かわせることは、よほどに困難なようです。

「結局のところ、成長がなければ(without growth)イギリスは完全に行き詰まるのだ(going nowhere)」







英語原文:A growth manifesto: A little faster, George? | The Economist

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2013年02月22日

イギリスの高齢者は甘やかされているのだろうか…?


イギリスの高齢者に、またアメ
Another sop for elderly Britons
間違った政策
Grey squirrels



政府は老人の面倒を見ており、若者が歳出削減の矢面(the blunt of cuts)に立たされている。これは間違いだ。

英国エコノミスト誌 2013年2月16日号より



「われわれは皆、一蓮托生(We're all in this together)」

イギリスの財務相(chancellor of the exchequer)、ジョージ・オズボーン氏は2009年の就任時に、そう言いました。

この言葉は、これからの財政緊縮(Fiscal austerity)は厳しいものになる、という国民への警告であり、痛みを分かち合おう(spread evenly)という訴えでもありました。



「ほつれ始め(beginning to fray)」

このキャッチフレーズ(cathphrase)は、イギリス国民に受けが良かったらしく(went down so well)、オズボーン氏はこのフレーズを繰り返しスピーチで用いました。

このフレーズはTシャツにもなり、保守党(the Conservative Party)のオンラインショップでも買うことができるそうです(10ポンド・約1,400円)。

しかし残念ながら、このTシャツは今、ほつれ始めているようです(beginning to fray)。



「退職年齢に満たない人々(Britons below retirement age)」

じつは、一蓮托生(in it together)だったのは、退職年齢に満たない人々(below retirement age)ばかりでした。

貧困層には生活保護の支給金(welfare payments)に上限(cap)が設けられ、裕福な家庭からは児童手当(child benefit)を奪われ、大学の授業料(tuition)は高騰しました(rocketed)。そして、日本の消費税にあたる付加価値税(VAT)もより多く支払うようになったのです。



「年金受給者たち(pensioners)」

一方、年金受給者たち(pensioners)は若者たちと同じ蓮の上にはおらず、不況下(in the bust)でも甘やかされてきました(coddled)。

無料のバス定期券、無料のテレビ受信権などの特典(perks)はそのまま。冬場の暖房費は、太陽が燦々とふりそそぐスペインで隠居生活を送っているイギリス人にも支給されています。



「3重のカギ(triple-locked)」

イギリスの年金には3重のカギ(triple-locked)がかけられていると言います。

年金はまず、平均所得(average earnings)によって増えるほかに、インフレ率ないしは2.5%のどちらか高いほうに合わせて増加していきます(つまり、最低でも2.5%)。そして前述したような各種特典(perks)が手つかずに残されているのです。

一方、働く人々の給与や各種手当(salaries and benefits)は、今後数年間で、なけなしの1%(a miserly 1%)しか増加しない見込みです(公的部門)。これでは、一蓮托生であると言われても、ピンと来ないでしょう。



「別の贈り物(another gift)」

先日、ただでさえ恵まれている年金受給者たちには、さらなる別の贈り物(another gift)が届けられました。自身の介護(own care)に対する支払い額が7万5,000ポンド(約1千万円)に達した段階で、それを国が引き継ぐ(take over)と発表されたのです。

それまでは、認知症(dementia)のような長期介護を必要とする高齢者でも、治療費の大部分を自分で支払わなければなりませんでした。なかには、手持ちの現金が300万円程度に減るまで、国の手当を受けられない高齢者もいたのです。



「ありきたりの介護(bog-standard care)」

高齢者に対して寛大な贈り物を施したジェレミー・ハント保健相(the health secretary)は、きっと人気を集めることでしょう。

高齢者たちは、自身の介護のために家を売るということに耐えられません(intolerable)。そして、ありきたりの介護(bog-standard care)にも満足できなくなっているのですから。



「それは間違っている(it is wrong)」

しかし、ハント保健相は間違っている、エコノミスト誌はそう断言します。

今後20年間で、85歳以上のイギリス人はおよそ2倍に増える見込みです。はたして、イギリスの働く若者たちは、かさむばかりのその負担に耐えることができるのでしょうか?



「ごく基本的な生活水準(a very basic standard of living)」

確かに、財政が逼迫した状況下では、社会福祉(welfare)もごく基本的な生活水準(a very basic standard of living)にまで縮小させる必要があるのかもしれません。

しかし今のイギリスでは、豊かな老人たち(wealthy old people)が家を売らなくても済むように、福祉が使われています。



「富を生み出す素晴らしい装置(a terrific generator of wealth)」

過去数十年間、住宅というのは富を生み出す素晴らしい装置(a terrific generator of wealth)であり続けてきました。それゆえ、家族の不動産(family estate)には格別の思い入れ(something special)があったのです。

しかし、富は富(wealth is wealth)。それが道の上にあろうが、銀行の金庫の中にあろうが、変わるところはありません。それでも人々は、自分の家を売らざるを得ないという考えには我慢がならないようです。



「貧しい若者たち(the impoverished young)」

国に納められた税金は、貧しい若者たち(the impoverished young)に使われるほうがずっといい(far better)、とエコノミスト誌は言います。

しかし現在、その血税が年金受給者たちの財産を保つために使われているのです(彼らは好況期に、住宅市場から十分な利益を上げているにも関わらず)。高齢者に対して、過度の施しをすることは、屋根裏(attic)に現金を貯めこむようなものだと、エコノミスト誌は言うのです。



「介護費用(nursing costs)」

先進国が高齢化するにつれ、介護費用(nursing costs)は右肩上がりに増えていきます。

そのため、格付け会社のフィッチは、人口の高齢化が信用格付け(credit rating)を脅かすと、イギリスを含む先進国に警告しています。



「賢明なこと(some sensible things)」

イギリスでは賢明なこと(sensible things)もいくつか行われているといいます。

たとえば、一律に給付する国の基礎年金(a universal basic pension)、年金支給開始年齢(the retirement age)の引き上げ、公的部門の労働者に拠出金を増やす要請…。



「さらに大胆に(bolder)」

さらに大胆な対策をとっている国もあります。

イタリアやポルトガルでは、年金が徹底的に削減され(radically trimmed)、スウェーデンでは他国に先駆けて、年金が拠出金(contributions)と連動する制度を導入しました。



「強力な有権者基盤(a powerful voter block)」

これから先、高齢者たちはますます強力な有権者基盤(a powerful voter block)となっていきます。それゆえ、彼らの意見を軽んずることはますます難しくなっていきます。

しかし、高齢者たちは同時に豊富な人生経験(enough experience)を持っているはずです。だからきっと、最終的には帳簿の帳尻を合わせなければならない(the book must be balanced)、ということも十分に心得ているはずです。



本当に一蓮托生(in it together)となれるのか、それはこれから次第なのでしょう。







※余談

原文の記事タイトルは「Grey squirrels」となっています。直訳すれば「灰色リス」。なぜ?

おそらく「灰色(grey)」は高齢者であることを。そして「リス(squirrels)」は、必要以上に木の実を貯めこむ性質を示しているのかもしれません。



ちなみに「リス(squirrel)」には「気ちがい」という意味もあります。それは、リスの食べる木の実(nuts)が、英語では俗に「気ちがい」の意味で使われるからです。

なるほど。毒舌で知られるエコノミスト誌なら、この記事のタイトルにそんな辛辣な意味も込めているのかもしれません。



英語原文:Another sop for elderly Britons: Grey squirrels | The Economist

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2012年10月22日

移民に扉を開けたがらないイギリス


イギリスの移民:保守党の最も愚かな政策
Immigration : The Tories' barmiest policy

英国エコノミスト誌 2012年10月20日号より



「かつての栄光(former glory)」

イギリスのキャメロン首相は、「イギリスは過去の栄光(former glory)を二度と取り返せないかもしれない」と演説しました。

そして、唯一の希望(only hope)は「規制を削ぎ落とし(slice regulations)、起業家たち(entrepreneurial folk)が成功を収め、盛んに貿易することだ」と。



「立入禁止(keep out)」

しかし、イギリスの移民政策(an immigration policy)を見ると、この素晴らしい発言(a thumping statement)とは逆を行っているように思えます。

国境の港には「立入禁止(keep out)」の看板を立てているかのようであり、貿易拠点を要塞(a fortress)へと変えてしまいかねない政策が次々と打ち出されています。その結果、想像力あふれる起業家たちは抑圧され(stifling)、面倒くさいお役所手続き(red tape)ばかりが増えています。





「世界に通用する人材の争奪戦(the war for global talent)」

イギリスの保守党はこの2年間で、留学生や外国人労働者への入国・定住に対する規制を格段に強化しました。そのため、今では、イギリスに来て職に就く人数よりも、イギリスを去って他国で職に就く人数の方が多くなっています。

イギリスは、世界に通用する人材(global talent)の争奪戦に敗れ去ろうとしているだけでなく、戦いに参加しようとすらしていないかのようです(scarcely competing)。



「移民労働者と留学生(migrant workers and students)」

イギリスのテレサ・メイ内相は、移民労働者(migrant workers)と留学生(students)の数を制限しました(squeezed)。その結果、留学生ビザの発給件数は1年間で21%も減少してしまっています。

これらの人々は、イギリス経済を活性化させる可能性が最も高い(most likely to boost)と同時に、すぐにイギリスを去る可能性が最も高い(the most likely to leave soon)人々でもあります。つまり、イギリスは最も得難い人々をあっさりと締め出してしまったのです。



「国際教育(international education)」

国際教育(international education)というのは、イギリスの最重要輸出産業(export industries)であり、イギリスが世界的な競争力(a huge competitive advantage)を有していた分野でもありました。

ところが今、イギリスは世界から学生たちを集められなくなろうとしているのです(being starved)。



「官僚支配(bureaucracy)」

理論上(in theory)、イギリスの扉は、金持ちや極めて高い技術をもつ労働者(the most highly skilled)には開かれていることになっています。しかし実際は(in practice)、その手続きが面倒すぎて扉はなかなか開かないのです。

ビザを取得するために、あまりにも長い時間がかかるため、大企業ならば待てるかもしれませんが、中小企業はまず無理です。ハイテク企業など、移り気な人材(a flighty)を求める業種などは最も不利です(the worst position)。



「わずかな労働ビザの割り当て(meagre allocation of work visas)」

お役所手続きという迷路(the maze)を抜けても、特別な才能を有数する人々を対象とする労働ビザ(work visas)の割り当て(allocation)は、年間の上限(annual cap)が1,000件までと定められています。

昨年(2011)、幸運にもその迷路を抜けられたのは、37件だけだったそうです。



「敵意(hostility)」

イギリス政府はまるで、外国人に敵意(hostility)を見せるのに最大限の努力をしているかのようです。実際、そのために「必要な措置をすべて(all necessary steps)」講じる方向に向かっています。

それは、イギリスの人口を7,000万人以下に抑えるためだそうです。



「移動の自由(freedom of movement)」

EU(ヨーロッパ連合)のメンバーであるイギリスは、域内諸国での移動の自由(freedom of movement)を保証しているはずですが、キャメロン首相はそれを見直そうとしています(promised to review)。

しかし、EU諸国間の移動の自由を制限するためには、イギリスはEUを脱退する必要がありますが、イギリスは脱退の意思もないようです。つまり、これはパフォーマンスに過ぎず、「イギリス立入禁止」の看板にネオン灯を付け加えたようなものでした。



「破滅的(disastrous)」

こうした拒絶的なイギリスの移民制度は、破滅的(disastorous)だと言う政治家もいます。イギリスの成長戦略(growth strategy)を蝕んでいる、と。

しかし残念ながら、イギリス政府もイギリス国民も移民規制の緩和(a relaxation)を認めないだろうと、諦めてもいます。



「移民嫌い(xenophobic)」

確かに、イギリスでは移民(immigratiton)が嫌われているようです。

イギリス人の6割以上の人々が「移民のせいで、イギリス人の職が奪われている」と考え、イギリス人の7割以上の人々が「移民が公共サービスの負担になっている」と感じています。いずれもEU全体の平均を上回る移民嫌い(xenophobic)ぶりです。



「望ましい移民(desirable arrivals)」

しかし、イギリス人は望ましい移民(desirable arrivals)に対しては、だいぶ好感を持っているようです。望ましい移民というのは、熟練労働者(skilled workers)や留学生たちのことです。

不思議とイギリス人は、こうした望ましい移民とそれ以外の移民(the rest)を敏感に区別する傾向があるのだそうです。



「イギリスにとって有用な人財(an asset to Britain)」

イギリス人が望ましい移民と考えているのは、そうした人々がイギリスにとって有用な人材(an asset)であるということを理解しているからなのでしょう。

今は政府が一律に規制している移民ですが、場合によっては、最高学府(best institutions)の留学生に対しては就労条件を緩和するという対応も取れるでしょう。



「世界的な人気(global popularity)」

現在、若く才能ある外国人たちは、イギリスに留学すること、イギリスで商品を売ることに熱意(enthusiasm)を持っています。しかし、イギリスはその熱意に応えようとしていないかのようです。うかうかしていると、新興国の成長につれ、イギリスの人気(popularity)は落ちていくかもしれません。

競争の場であるこの世界で、イギリスは両足の靴ヒモを結び合わせまま走ろうとしている(Britain is trying to run with its shoelaces tied together)のでしょうか?



「動きの速い競争相手(much nimbler competitors)」

煩雑なお役所手続き(red tape)という靴ヒモで移民政策を縛ったままのイギリスはいずれ、ずっと動きの速い競争相手(much nimbler competitors)に抜かれていくこととなるかもしれません。

キャメロン首相は、イギリス唯一の希望が規制を削ぎ落とすことである、と明確に認識していながら、こと移民政策に関しては、大胆な方向転換(a bold U-turn)をする可能性は低そうです。







英語原文:
The Economist | Immigration : The Tories' barmiest policy

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2012年01月10日

世界の金融を司るイギリスのシティ(ロンドン)。繁栄を続けるために必要なこととは?

「シティ(ロンドン)を守れ(Save the City)」

英国エコノミスト誌 2012年1月7日号より



「資本の首都(the capital of capital)」

イギリスのロンドンは、世界の資本(the world’s capital)の首都(capital)と呼ばれています。

「シティ(The City)」というのはロンドンにある金融街で、イギリス中央銀行(BOE = Bank of England)を中心に証券取引所などが軒を連ねています。



「手っ取り早い稼ぎ(a quick buck)」

シティでは、金融業者(financier)が手っ取り早い稼ぎ(a quick buck)を上げるために、大胆な取引き(the temerity)を繰り返しています。



「行き過ぎに終止符を打つ(end excess)」

イギリスのキャメロン首相は、金融街の行き過ぎに終止符を打つ(end excess)と公言しました。



「怪しげな金融業(dodgy finance)」

閣僚たち(ministers)も、怪しげな金融業(dodgy finance)から誠実な製造業(honest manufacturing)へとシフトして、経済のバランスを取り戻すと話しています。



「来週の利益(profits next week)」

イギリス中央銀行(BOE)のマーヴィン・キング総裁も、来週の利益(profits next week)のような短期的な利益ばかりを追い求めるシティ(the square mile)に対しては、厳しい批判を繰り返しています。



「憎悪と切望(loathing and covetousness)」

ヨーロッパ諸国のシティに対する想いは複雑です。

ユーロ危機を悪化させたという憎悪(loathing)と、フランスやイタリアの賢い金融業者が集まって来るという切望(covetousness)が入り交じっているのです。



「銀行規制の改善(better regulation of bank)」

確かに、銀行規制の改善(better regulation of bank)は必要かもしれません。それは、イギリスの納税者を守ることにもなるからです。



「シティ叩き(the City-bashing)」

現在のシティ叩き(the City-bashing)は、主に言葉だけのものです。

というのも、世界で最も成功しているシティを実際に弱体化させることは、誰の利益にもならないからです(nobody’s interest)。



「シティの比較優位(the City’s comparative advantage)」

シティの比較優位(the City’s comparative advantage)は、イギリスの貿易収支(trade balance)を見れば一目瞭然です。

イギリスの金融サービス・保険分野(financial services and insurance)の貿易黒字(the export surplus)は、GDP比で3%を超えるのです。

これほどの国は世界でもイギリスだけで、アメリカですら及びません。



「縮小する可能性が高い(likely to shrink)」

しかし、今後数年間で、シティが縮小する可能性が高いようです(likely to shrink)。

なぜなら、新規の住宅ローン(new mortgages)の承認ペースが、2008年の危機前の半分にまで減ってしまっているからです。金融業界で働く人の数も、3年前から比べると7%減少しています。



「世界経済の落ち込み(the world’s economic funk)」

さらに、世界経済の落ち込み(the world’s economic funk)は、資産市場(asset markets)を動かなくしてしまっています。

そのため、トレーディングやM&Aの手数料収入は、ここ数年、ことによれば数十年で最悪の状態とも言えます。



「未発達な金融市場(underdeveloped financial markets)」

それでも、中国やインドの金融市場は未発達(underdeveloped)なため、ロンドンに収益のチャンスがなくなったわけではありません。イギリスはいわば金融の専門家(the expertise)なのですから。



「人民元の取引(yuan dealings)」

アメリカ・ドルが基軸通貨になっても、ロンドンは世界の中心地であり続けました。人民元の取引(yuan dealings)においても、同じことができるかもしれません。



「適切な政策(the right policies)」

シティが金融の中心であり続けるためには、適切な政策(the right policies)を実施する必要があります。規制(regulation)、税、移民(immigration)などなど。



「桁外れのリスク(an outsized risk)」

桁外れに大きい金融サービス業(an outsized financial-services industry)は、納税者に桁外れのリスク(an outsized risk)を負わせる危険があります。

自由な国際市場(freewheeling international market)を維持しながらも、納税者を危険にさらす部分の銀行システムは、厳しく規制する必要があるでしょう。



「金融取引税(the financial-transactios taxs)」

一方、ヨーロッパ連合(EU)からの提案は、イギリスにとって有害な(harmful)ものもあります。

金融取引税(the financial-transactions taxs)の導入などは、イギリスが拒否権(veto)を行使すべきものかもしれません。



「孤立(stand-off)」

この点で、イギリスのキャメロン首相はEU首脳たちと対立し、孤立してしまいました(stand-off)。

対立の名目はシティを守るため(to protect the City)ということでしたが、実際のところ、イギリス保守党のヨーロッパ懐疑主義者たち(Tory Eurosceptics)へのパフォーマンスだったのかもしれません。

イギリスが唯々諾々とヨーロッパの言いなりになることは、政治的な敗北にもつながるのです。



「骨抜きにする口実(the excuse to hamstring)」

しかし、キャメロン首相が強硬な態度をヨーロッパに示したことは、シティを骨抜きにする口実(the excuse to hamstring)をライバルたちに与えてしまったかもしれません。



「50%の税率(the 50% tax rate)」

2010年に導入された50%の税率(the 50% tax rate)は、イギリスに歳入増をほとんどもたらさず、いたずらにロンドンの税金を世界最高の水準に押し上げてしまいました。

現在の世代(the present generation)は、世界一の税率に我慢するかもしれませんが、もっと若い世代は、スイスや香港、ドバイに魅力(the pull)を感じているようです。



「有能な移民たち(talented immigrants)」

アジアのビジネスを勝ち取るためには、アジアの有能な移民たち(talented immigrants)にロンドンでの活躍の場を与える必要があるでしょう。

もし、移民の流入を厳しく制限してしまえば、シティの将来性(the City’s prospects)、つまりイギリスの将来を損なう恐れもあります。



「あらゆる言い訳(all sorts of excuses)」

それでも、イギリスの政治家たちはあらゆる言い訳(all sorts of excuse)を考え出すことに余念がありません。

50%の税率を廃止すること(abolishing)は政治的に危険だ…、移民はイギリス国民に嫌われている(unpopular)…、などなど。



「圧倒的な利点(formidable advantages)」

イギリスの政治家たちが言い訳を続けられるのは、現在のシティに圧倒的な利点(formidable advantages)があるからです。

アジア市場とニューヨーク市場の間をつなげる(bridge)のは、ロンドンの市場だけです。この点、ロンドン市場は代替がきかず、世界のトレーダーたちにとって、ロンドンはとても便利な市場なのです。



「最強の現職(the strongest incumbent)」

ロンドンは最強の現職(the strongest incumbent)であります。しかし、新しいデスクが他国に置かれていけば、いずれロンドンの力は弱まるでしょう。



「臨界量(the critical mass)」

現在は好循環(a virtuous circle)にあるロンドンも、その好循環を維持するための臨界量(the critical mass)を下回ってしまえば、なし崩しとなる危険性もあるのです。



「競争優位(competitive advantages)」

ロンドンの昔からもつ競争優位(competitive advantages)は、長年培ってきた大きな金融市場にあります。この規模を保持することが、好循環を維持することにもつながり、引いては将来的な発展をも約束します。

ところが、イギリスの政治家たちは、その本来の(innate)競争優位を軽んじているようでもあります。金融業をバカにする(deride)ような姿勢も見受けられます。



「悪意ある無視(malign neglect)」

もし、イギリスの政治家たちが、ロンドンの金融業に対して悪意ある無視(malign neglect)を続けるようならば、世界で最も成功しているシティは失われてしまうかもしれません。



「まともな暮らし(a decent living)」

いまや、シティは将来のイギリス国民がまともな暮らし(a decent living)を送るための、最大の希望(the best hope)でもあるのです。






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