「シティ(ロンドン)を守れ(Save the City)」英国エコノミスト誌 2012年1月7日号より「資本の首都(the capital of capital)」イギリスのロンドンは、世界の資本(the world’s capital)の首都(capital)と呼ばれています。
「シティ(The City)」というのはロンドンにある金融街で、イギリス中央銀行(BOE = Bank of England)を中心に証券取引所などが軒を連ねています。
「手っ取り早い稼ぎ(a quick buck)」シティでは、金融業者(financier)が手っ取り早い稼ぎ(a quick buck)を上げるために、大胆な取引き(the temerity)を繰り返しています。
「行き過ぎに終止符を打つ(end excess)」イギリスのキャメロン首相は、金融街の行き過ぎに終止符を打つ(end excess)と公言しました。
「怪しげな金融業(dodgy finance)」閣僚たち(ministers)も、怪しげな金融業(dodgy finance)から誠実な製造業(honest manufacturing)へとシフトして、経済のバランスを取り戻すと話しています。
「来週の利益(profits next week)」イギリス中央銀行(BOE)のマーヴィン・キング総裁も、来週の利益(profits next week)のような短期的な利益ばかりを追い求めるシティ(the square mile)に対しては、厳しい批判を繰り返しています。
「憎悪と切望(loathing and covetousness)」ヨーロッパ諸国のシティに対する想いは複雑です。
ユーロ危機を悪化させたという憎悪(loathing)と、フランスやイタリアの賢い金融業者が集まって来るという切望(covetousness)が入り交じっているのです。
「銀行規制の改善(better regulation of bank)」確かに、銀行規制の改善(better regulation of bank)は必要かもしれません。それは、イギリスの納税者を守ることにもなるからです。
「シティ叩き(the City-bashing)」現在のシティ叩き(the City-bashing)は、主に言葉だけのものです。
というのも、世界で最も成功しているシティを実際に弱体化させることは、誰の利益にもならないからです(nobody’s interest)。
「シティの比較優位(the City’s comparative advantage)」シティの比較優位(the City’s comparative advantage)は、イギリスの貿易収支(trade balance)を見れば一目瞭然です。
イギリスの金融サービス・保険分野(financial services and insurance)の貿易黒字(the export surplus)は、GDP比で3%を超えるのです。
これほどの国は世界でもイギリスだけで、アメリカですら及びません。
「縮小する可能性が高い(likely to shrink)」しかし、今後数年間で、シティが縮小する可能性が高いようです(likely to shrink)。
なぜなら、新規の住宅ローン(new mortgages)の承認ペースが、2008年の危機前の半分にまで減ってしまっているからです。金融業界で働く人の数も、3年前から比べると7%減少しています。
「世界経済の落ち込み(the world’s economic funk)」さらに、世界経済の落ち込み(the world’s economic funk)は、資産市場(asset markets)を動かなくしてしまっています。
そのため、トレーディングやM&Aの手数料収入は、ここ数年、ことによれば数十年で最悪の状態とも言えます。
「未発達な金融市場(underdeveloped financial markets)」それでも、中国やインドの金融市場は未発達(underdeveloped)なため、ロンドンに収益のチャンスがなくなったわけではありません。イギリスはいわば金融の専門家(the expertise)なのですから。
「人民元の取引(yuan dealings)」アメリカ・ドルが基軸通貨になっても、ロンドンは世界の中心地であり続けました。人民元の取引(yuan dealings)においても、同じことができるかもしれません。
「適切な政策(the right policies)」シティが金融の中心であり続けるためには、適切な政策(the right policies)を実施する必要があります。規制(regulation)、税、移民(immigration)などなど。
「桁外れのリスク(an outsized risk)」桁外れに大きい金融サービス業(an outsized financial-services industry)は、納税者に桁外れのリスク(an outsized risk)を負わせる危険があります。
自由な国際市場(freewheeling international market)を維持しながらも、納税者を危険にさらす部分の銀行システムは、厳しく規制する必要があるでしょう。
「金融取引税(the financial-transactios taxs)」一方、ヨーロッパ連合(EU)からの提案は、イギリスにとって有害な(harmful)ものもあります。
金融取引税(the financial-transactions taxs)の導入などは、イギリスが拒否権(veto)を行使すべきものかもしれません。
「孤立(stand-off)」この点で、イギリスのキャメロン首相はEU首脳たちと対立し、孤立してしまいました(stand-off)。
対立の名目はシティを守るため(to protect the City)ということでしたが、実際のところ、イギリス保守党のヨーロッパ懐疑主義者たち(Tory Eurosceptics)へのパフォーマンスだったのかもしれません。
イギリスが唯々諾々とヨーロッパの言いなりになることは、政治的な敗北にもつながるのです。
「骨抜きにする口実(the excuse to hamstring)」しかし、キャメロン首相が強硬な態度をヨーロッパに示したことは、シティを骨抜きにする口実(the excuse to hamstring)をライバルたちに与えてしまったかもしれません。
「50%の税率(the 50% tax rate)」2010年に導入された50%の税率(the 50% tax rate)は、イギリスに歳入増をほとんどもたらさず、いたずらにロンドンの税金を世界最高の水準に押し上げてしまいました。
現在の世代(the present generation)は、世界一の税率に我慢するかもしれませんが、もっと若い世代は、スイスや香港、ドバイに魅力(the pull)を感じているようです。
「有能な移民たち(talented immigrants)」アジアのビジネスを勝ち取るためには、アジアの有能な移民たち(talented immigrants)にロンドンでの活躍の場を与える必要があるでしょう。
もし、移民の流入を厳しく制限してしまえば、シティの将来性(the City’s prospects)、つまりイギリスの将来を損なう恐れもあります。
「あらゆる言い訳(all sorts of excuses)」それでも、イギリスの政治家たちはあらゆる言い訳(all sorts of excuse)を考え出すことに余念がありません。
50%の税率を廃止すること(abolishing)は政治的に危険だ…、移民はイギリス国民に嫌われている(unpopular)…、などなど。
「圧倒的な利点(formidable advantages)」イギリスの政治家たちが言い訳を続けられるのは、現在のシティに圧倒的な利点(formidable advantages)があるからです。
アジア市場とニューヨーク市場の間をつなげる(bridge)のは、ロンドンの市場だけです。この点、ロンドン市場は代替がきかず、世界のトレーダーたちにとって、ロンドンはとても便利な市場なのです。
「最強の現職(the strongest incumbent)」ロンドンは最強の現職(the strongest incumbent)であります。しかし、新しいデスクが他国に置かれていけば、いずれロンドンの力は弱まるでしょう。
「臨界量(the critical mass)」現在は好循環(a virtuous circle)にあるロンドンも、その好循環を維持するための臨界量(the critical mass)を下回ってしまえば、なし崩しとなる危険性もあるのです。
「競争優位(competitive advantages)」ロンドンの昔からもつ競争優位(competitive advantages)は、長年培ってきた大きな金融市場にあります。この規模を保持することが、好循環を維持することにもつながり、引いては将来的な発展をも約束します。
ところが、イギリスの政治家たちは、その本来の(innate)競争優位を軽んじているようでもあります。金融業をバカにする(deride)ような姿勢も見受けられます。
「悪意ある無視(malign neglect)」もし、イギリスの政治家たちが、ロンドンの金融業に対して悪意ある無視(malign neglect)を続けるようならば、世界で最も成功しているシティは失われてしまうかもしれません。
「まともな暮らし(a decent living)」いまや、シティは将来のイギリス国民がまともな暮らし(a decent living)を送るための、最大の希望(the best hope)でもあるのです。
