香港(Hong Kong)で買ったものを中国本土の闇市場(black-market)で売りさばく。そうした商売(racket)を香港の人(Hong Kongers)は「並行交易(parallel trading)」と言って嫌う。
ところでなぜ、わざわざ香港で買い物するのか?
中国本土の消費税(sales tax)が17%なのに対して、香港では0%。無税で買えるとあらば、商売は十分に成り立つ。
しかし本土(mainland)から大量の人々が香港に押し寄せるものだから、香港の人々は辟易している。本土の人々はがさつ(boorish)で、店の棚を空っぽにしてしまう様は「イナゴ(locstas)」のようにしか見えない。
もともとの香港の人口は700万人程度。
それに対して本土からの人の波は4,700万人(2014)。香港人のおよそ6〜7倍という圧倒的多数だ。中国人訪問者は2013年から16.5%も増えており、この調子でいけば、2020年までにはその数が1億人を超えるという予測もある。
香港では2002年、イギリスによる植民地支配(colonial rule)が終わった5年後に、中国人旅行者(tourists)の人数制限(quota)を撤廃した。それ以来、隣接する深圳から境界線を越える人々は後を絶たない。
香港のモノは安いだけでなく、質も良い。
たとえば2008年、乳幼児の粉ミルク(fomula)が中国本土で汚染されたとき、香港では極端な粉ミルク不足(shortages)に見舞われた。香港政府が粉ミルクの輸出に厳しい制限をかけたほどだ。
客が来るのであれば、香港の小売店にとって喜ばしいはずだ。実際、本土の熱狂的な顧客(the frenxied custom)を歓迎する向きもある。しかし流れに乗れなかった多くの古い店舗(older outlets)は、賃料の上昇により閉鎖を余儀なくされてしまっている。
「上水文化を締め出している」
”lock out Sheung Shui culture”
本土との協会に近い上水(Sheng Shui)の新康街には、並行輸入(parallel import)に反対する団体ができた。
香港は中国でありながら中国ではない。
最新の世論調査(poll)では、自分たちを”中国人(Chinese)”と考えたがらない香港人が、かつてないほど増えていた。
「人々は怒っており、苦々しい気持ちを抱いている」
"People are angry and bitter"
香港の立法会(議会)議員、劉慧卿(Emily Lau)は言う。
ここ数週間、民主派のデモ隊(pro-democracy demonstrators)の抗議行動が再燃している。本土からの侵略(the mainland's encroachment)に対する憤怒(resentment)が香港人を暴力的にさせているのである。
かつてデモが行われるのは、香港都市部の人口密集地域(densely populated city)に限られていたが、最近では本土寄りだった境界線に近い場所(near the border)でも怒りが燃えている。
香港政府の立場は苦しい(in a bind)。それでも反本土感情(anti-mainland sentiment)に迎合して抗議者たちの味方をする気はない。
というのも、本土からの買い物客は法律をまもっている。最大5,000元(約10万円)という持ち帰り品(bring back goods)の枠の中におさまっている。闇商人(black-market traders)ですらそうだ。
しかし香港人は感情的にならざるをえない。
所得格差(income inequality)が広がっていることも、不動産価格(property prices)が急騰していることも、人口が高齢化していることも、”責任は本土の人間にある”と考えている人が少なくない。そして味方してくれない香港政府に対して、
”北京の中央政府に寝返った”
”Hong Kong's government has sold out to the one in Beijing"
と怒っている。とりわけ若い人などなおさらだ。
新たな火種(flashpoint)は、2017年の香港政府トップを選ぶ行政長官選挙に関する取り決めだ。これは昨年(2014)後半、香港の人々数千人をデモに駆り立てた案件である。香港政府のトップを選ぶ権利が彼らにないことに腹を立てたのだった。この件に関して、香港の立法会(議会)は今年夏までに議論をまとめなければならない。
また愛国教育(patriotic education)に関する問題もある。中国の歴史を学校でどう教えるべきかについてである。
6月4日
香港人は毎年の恒例行事として、天安門事件のデモ弾圧(1989)を記念した集会(rally)を行う。
7月1日
香港の中国返還記念日は大規模デモに発展しやすい。
香港政府に息抜きする暇はない。
The government will have little respite.
(了)
ソース:
The Economist 「Hong Kong-mainland relations; Aisles apart」
JB press 「香港と中国本土:遠のく関係」
単語集: