2011年09月15日

中国は次の覇権国家となるのでしょうか? 思ったよりも速いペースで世界は変化しているようです。

記事タイトル:
「経済覇権の行方(The celestial economy)」
“celestial”の文字通りの意味は「すばらしい、至福の」。
(英国エコノミスト誌 2011年9月10日号より)

今日の記事は「中国」。メキメキと頭角をあらわしてきた中国が、今後の世界地図をどう変えてゆくのでしょうか?




「歴史は我々に味方している(History is on our side)」

こう広言して憚(はばか)らなかったのは、1956年のソ連です。「我々は君たち(アメリカ)を葬り去る(We will bury you)」とまでアメリカに通告していました(informed)。

ところが、その後のソ連は、歴史に味方されるどころか自滅してしまい、その代わりに歴史は1980年代は日本に味方し、そして今、中国に味方しようとしています(take China’s part)。




「自己否定的(self-denying)」

ソ連の予言(prophesies)は自己否定的(self-denying)だったそうです。

なぜなら、その予言を聞いたアメリカは、よけいに奮起し(rouse)、予言を覆してしまったからです(defied them)。

アメリカのサマーズ氏は、「未来のことを心配する限り(As long as we’re worried about the future)、未来は良くなる(the future will be better)」と自信たっぷりでした。

しかし、こと中国のこととなると、アメリカは少々分が悪いようです。中国の台頭(China’s rise)を防ぎたくとも、現在のアメリカには打てる手がほとんどない(precious little)という状況です。




「人口動態(demography)」

中国の人口(population)はケタ外れです。

アメリカの4倍の人口を抱える中国は、たとえ一人当たり(per head)の生産力(output)がアメリカの4分の1(a quarter)だとしても、アメリカと同等の経済規模となります。




「いくぶん遅れている(somewhat backward)」

現在の中国経済は、先進国よりもいくぶん遅れています(somewhat backward)。しかし、この遅れは成長するための(catch-up growth)大きな余地(plenty of scope)とも考えることができます。

それに対して、日本はすでに技術の先端(the technological frontier)にいるため、今後の成長余力は必然的に小さいものとならざるをえません。




「貿易の重力モデル(the gravity model of trade)」

貿易の重力モデル(the gravity model of trade)というのは、交易相手国との距離(the distance)が貿易量に影響を与えるというものです。

遠い国と交易するほど多くの労力が必要とされるため、近場に交易相手国がいるほうがガゼン有利になるのです。

その点、中国の周辺国(neighbours)のアジア諸国は、今後の成長が大いに見込めます。そして、中国自身も経済拡大がしやすい状況にあることになります。

それに対して、アメリカの裏庭(backyard)の国々には、少々さみしいものを感じずにはいられません。




「支配力(dominance)」

2030年までに中国は世界のGDPの23%を占めるようになると言われています。

これはアメリカの2倍(twice)の規模となります。同様に輸出入(imports and exports)におけるシェアも中国はアメリカの2倍以上になると言われています。

2030年時点での中国の支配力(dominance)は、1970年代のアメリカ、そして1世紀前のイギリスに匹敵する(match)とのことです。



「一極世界(unipolar world)」

世界は「G7(先進7ヶ国)」のような多極的(multipolar)な世界ではなく、「G1」という一極世界(unipolar world)に向かっているのかもしれません。

もちろん、その一極(the one)とはアメリカではなく、中国ということになります。




「中国へ対する弱気(China bear)」

2030年への中国支配への仮説(assumptions)は、じつは弱気(bear)な見方なのだそうです。

この仮説に用いた年間5.5%という一人当たりの所得(per-person income)の伸びは、過去20年間(the past two decades)の伸びよりも3.3%低く見積もっているのだそうです。

それは、重大な金融危機(major financial crisis)をも考慮に入れているからです。

ちなみに、過去20年間で年間5.5%の伸びを超えた国々は、日本、香港、ドイツ、スペイン、台湾、ギリシャ、韓国などなど。逆にこの数値を超えられなかった国は「ルーマニア(Romania)」だけということになっています。




「高齢者人口(ageing population)」

あと数年もすると、中国の人口に対する労働者の割合が、上昇(rising)から下降(falling)に転じます。

この人口動態上の転換(demographic turnaround)は中国の成長にどう影響するのでしょうか? この辺りはまだ不確かなようです。




「すべてが白紙に戻る(all bets will be off)」

もし、中国の政治体制(political regime)が崩壊すれば(implode)、すべては白紙に戻ります(all bets will be off)。

この辺りの予測も難しいところです。




「未熟な超大国(a premature superpower)」

中国は、ヤンチャな悪ガキ(bratty)になるのでしょうか?

もし、中国が国際社会での義務(global duties)を無視するようであれば、そうなるでしょう。

世界大戦中の世界は、リーダー不在の世界経済(the headless global economy)でした。イギリスにはリーダーになる能力がなく(unable)、アメリカはリーダーになるのを嫌がっていました(unwilling)。

中国が大国の責任を追わないのであれば、その様は世界大戦中と似た状態になるかもしれません(may resemble)。



「早熟な超大国(a precocious superpower)」

ヤンチャな悪ガキ(bratty)の代わりに、中国が温和な大国(benign superpower)となる可能性もあります。

中国は先日発表した白書(a white paper)の中で、中国は地域覇権(regional hegemony)や勢力圏(a sphere of influence)は求めない(not seek)と断言しました。

ちなみに、この記事で未熟という言葉「premature」は悪い意味に、早熟という言葉「precocious」は良い意味に解釈されています。




「暫定的な超大国(a tentative superpower)」


未熟(premature)であれ、早熟(precocious)であれ、現在の中国は暫定的な(tentative)超大国です。

現在の中国による支配(China’s dominance)は限定的(limit)です。かつてのアメリカは、戦後の白紙状態(wiped clean by war)の中で覇権を確立しましたが、現在の世界は白紙ではありません。




♪ キーンコーン ♪ カーンコーン ♪

今後の中国に目が離せなくなったところで、今日はオシマイです。

お疲れ様でした〜。



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2011年08月25日

「Redback」とは? 「Dim sum bonds」とは?

「Redback」とは、中国の紙幣を意味します。その名の由来は、紙幣が「赤みがかった色」をしているからです。この言葉は、アメリカの紙幣を「Greenback」と呼ぶことに対比されています。アメリカの紙幣は「緑色」なのです。

ちなみに、「redback」の本来の意味は、「背赤後家グモ」という「クモ」のことです。艶々とした黒い体のこのクモの背中には、赤い菱形が2つ重なったような模様があります。かつて日本にいなかった種ですが、1995年に大阪で発見されて以来、有害な外来種として問題になっています。というのも、このクモは「毒」を持つからです。また、このクモの糸は、「測量機器、測距儀、顕微鏡、爆撃照準器、望遠照準器などの光学機器の十字線(レティクル)に用いられる」とのこと。

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「dim sum」とは、中国料理の「点心」を意味します。

「dim sum bonds」は、「点心債」と訳されます(bondは債券を意味する)。この名の由来は、この債券が「点心」大好きの香港で発行されることと、発行枚数が少なく、「delicious but limited(美味しいけど少ない)」、「bite-sized(一口サイズ)」であることが挙げられます。

ちなみに、「点心」という言葉は、禅語「空心(すきばら)に小食を点ずる」からきたという説があります。食事の間に食べる「少量の食べ物(morsel)」が点心であり、間食・軽食の類いは全て点心ということになります。

この記事で挙げられている点心は、「dumpling(蒸し団子)」と「pork buns(豚まん)」。

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「yield」は、債権の「利回り(利息・利子)」を意味します。

この記事では、点心債の利回りがたったの「0.6%」なのに、なぜ大々的に宣伝されるのだろうかというところから始まっています。

一体どんな「unmissable(見逃せない)」チャンスがあるのだろう?

その理由は、利回りの高さをアピールしているのではなく、その規模の大きさを強調しているためです。一口サイズと言われていた点心債が、今回ばかりは200億元(31億ドル・2400億円)という大規模なものであることが、今回のテーマとなっております。

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「offshore」とは?

「shore」が海岸や岸辺を意味し、この語の前に「off」が付くことで、「岸から離れた」つまり、「沖合」という意味になります。ここでは、転じて「海外・国外」という意味で使われています。

ちなみに、「offshore」の反対語は「inshore」で、「沿海」という意味になります。また、「onshore」となると、岸から上がった「陸」を意味するようにもなります。

この記事では、「offshore」に対して「onshore」が使われていて、香港を「offshore」、中国国内を「onshore」と表現しています。

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「maturity」は、債権の「満期」を意味します。この語の元々の意味は「熟する」というところから来ています。

点心債の「maturity(満期)」は、2年か3年と短いものばかりで、「quick to digest(すぐ消化してしまう)」と表現されています。

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「privilege」は、「特権」を意味します。

今までは中国本土の銀行の「privilege(特権)」であった人民元の調達が、「offshore(国外)」の非金融企業にも解放されたという文脈で使用されています。

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「deterrent」は、「障害」を意味します。

「offshore(国外)」の借り入れを「onshore(国内)」にもどすことが、最大の「deterrent(障害)」だと記事で使われています。

ちなみに、「deterrent」という単語は、「抑止する」という意味もあり、核兵器による戦争の「抑止力」という具合に使われたりもします。

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「ambivalence」とは、「相反する感情」を意味し、どちらかに決めかねている状態を表します。

中国政府は、「Redback(中国紙幣・人民元)」を国外へ出すべきか否かを決めかねているというのです。点心債を香港で発行するということは、人民元が国外へ流出することであり、過度な流出は政府の意図(人民元の価値を低く保つこと)に反するからです。

ただ、「international trade(国際貿易)」において、中国政府は人民元を決済通貨として使うことを明確に認めています。しかし、それでも人民元は世界貿易の2%の決済に使用されているに過ぎません。


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2011年04月29日

傍若無人の中国勢、アフリカ大陸を席巻する。The Economist



「過去10年間、アフリカに来た中国人の数は、
過去400年間に来たヨーロッパ人よりも多い。」

そう言われるほどに、
中国人のアフリカ大陸進出は凄まじい。

かつて、中国人はアフリカの大部分で、
「救済者」のように崇められていた。

ところが、それから10年が経ち、
「中国の流儀」は今やアフリカでは
歓迎されるどころか、トラブルの種となっている。

「中国の建設工事は杜撰だ。
彼らが建設したビルは時折崩壊する。」

「中国勢が建設した道路は、
すぐに雨に押し流された。」

「中国の国営石油企業は、
原油を流出させ、油の湖をつくってしまった。」

「銅山の採掘現場では、換気装置がお粗末で、
事故による犠牲者が毎日出る。」

アフリカ在留の中国人は、
「ルールや規制を気にしない」
「破天荒で何でもありの商業文化出身」
である。

労働者への賃金の支払いも渋る。
南アフリカの繊維工場では、月給200ドル。
中国よりも高月給だが、南アの最低賃金以下だ。

中国人オーナーたちは、
「労働組合を無視し、
英語が全く話せないフリをする。」

贈賄の世界ランキングで、
「中国人経営者たちは首位近く」におり、
その中国の「腐敗文化」の腐臭に
アフリカ人たちは露骨な嫌悪を示す。

中国がアフリカに援助する資金は、
「ひも付き」であるため、
その資金は中国企業に使わなければならない。

「競争がないため、特別待遇の企業は
酷い道路や高すぎる病院を納めて
まんまとやりおおせる」

さらに悪いことに、
「援助金額は国家機密として扱われる」ため、
「こうしたカネについて全く透明性がない」

大量のカネをバラ撒きながら、
人海戦術でアフリカを席巻する中国勢。
その略奪まがいの侵略は止まるところを知らない。

かつてはヨーロッパ勢に散々荒らされたアフリカ大陸が、
今度はアジアの雄に食い荒らされている。

ヨーロッパ勢、中国勢、
どちらの仕儀も五十歩百歩であろう。

アフリカ勢も一方的な被害者ではない。
この混乱から利益を得る者達が確実にいるのだ。

もっとも、得をしているのは
雲の上の人々であろうが‥‥。

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2011年04月21日

そろそろ他人の尻馬に乗れなくなってくる中国 The Economist



ここ数年、新興国の経済成長が目覚ましい。
かたや、先進国の成長はノンビリしたものだ。

足踏みを続けていた日本が、
スタスタと中国に追い抜かれたのはその好例である。

新興国は、先進国が開拓し踏み固めた道を歩けるので、
その成長は早くて当然。

ところが、あるところまで来てしまうと、
やはり進む道は険しくなり、
なかなか思うに任せなくなってくるという。

そのラインが、
一人あたりGDP「1万6740ドル」だという研究がある。
この値を境目に、平均成長率は
年間5.6%から2.1%に低下するという。

日本、オーストラリア、韓国、香港は、
この研究どおり、経済成長を鈍化させている。

世界の投資家たちが注目するのは、
これから「1万6740ドル」を目指す「中国」である。

予測では2015年に、中国はこの値に達する。
中国が、今のまま自国通貨を過小評価するなら、
2015年以降の経済減速の可能性が高まるという。

そして、中国には高齢化の問題がある。
先進国すら未体験の「超高齢化」社会は、
日本を皮切りに、中国がケタ違いの規模で迎える大問題だ。

今までは他人の作った道を進めた中国も、
今度は先頭でラッセルしなければならなくなる。

問題が顕在化してからでは、
効果的な対処は難しくなる。

絶好調で余裕がある今の中国なら、
未知のゾーンの備えができるかもしれない。

過去の経験則から、
「7%の成長率であれば意味をなす投資も
5%の成長率では意味をなさないことが明らかになっている」
posted by エコノミストを読む人 at 10:14| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月20日

中国ほどお金持ちの国はない。The Economist



中国は世界一お金持ちの国家である。

中国の中央銀行は、
外貨準備高が「3兆ドル」を突破したと
発表した。

「3兆ドル」、日本円にして「250兆円」。
日本の国家予算の3倍に迫る巨大な数字だ。

「3兆ドル」あれば、何が買えるのか?

お金持ちが買うのは不動産だ。
「ワシントンとマンハッタンの不動産」を全部買っても、
たった「5000億ドル」、安すぎる。

優良な世界企業も買ってしまおう。
「アップル、マイクロソフト、IBM、グーグル」を
まとめて買っても、たった「1兆ドル」。

慈善事業として、EUの借金を払ってやってもいい。
「ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン」の国債
全部合わせて「1兆5000億ドル」。
ヨーロッパがギャーギャーやっている問題が一気に解決。

上記の「不動産、企業、国債」をあわせて
ようやく中国の保有する「3兆ドル」に届く。
「3兆ドル」とは、ここまで巨大な額である。

しかし中国の外貨準備「3兆ドル」の大半は、
アメリカ国債として保有されている。

先日、米国債の格付け見通しが引き下げられたが、
米国債の価値が低下すれば、
それに連動して中国の「3兆ドル」の価値も下がる。

世界一安定的と評価されていた米国債へ迫る影は、
それを大量に保有する中国へも当然、伸びてくる。

posted by エコノミストを読む人 at 07:19| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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