2015年09月08日

勇気ある独メルケル首相 [難民危機]


"If Europe fails on the question of refugees, it won't be the Europe we wished for."

もしヨーロッパが難民問題(the question of refugees)でしくじってしまえば、そのヨーロッパは私たちが望んだものではなくなるでしょう。

ドイツ・メルケル首相の言葉だ。”何もしない(without doing)”の代名詞とされる彼女が、いつもの狭量さ(her small-bore instincts)とは打って変わって、断固たる発言である。

She is right. The EU was born after a devastating war, on a promise of solidarity with the persecuted and downtrodden.

彼女は正しい。EU(欧州連合)は破滅的な戦争をへて、迫害・抑圧された者たちとの団結の約束(a promise of solidarity)として生まれたのだ。

Mrs Merkel's approach to Europe's migrant crisis is remarkable. The Chancellor has taken a brave stand.

ヨーロッパが直面している難民危機(migrant crisis)に対して、メルケル首相のアプローチは水際立っている。彼女はじつに勇気ある態度(a brave stand)をとっている。




そもそも移民という問題自体、政治的には一触即発の難題(a politically explosive problem)である。事実、ヨーロッパの指導者たちは尻込み(craven)している。

Many eastern European politicians have resorted to xenophobia, refusing to welcome refugees for resettlement.  David Cameron, Britain's prime minister, nonchalantly cites an opt-out agreement with the EU as an excuse to restrict the number of refugees.

東ヨーロッパの多くの政治家たちは、外国人嫌悪(xenophobia)を決め込んで、難民たちの移住(resettlement)を拒絶している。イギリスのキャメロン首相にいたっては、難民の数を制限する言い訳として、なんの臆面もなくEUとの適用除外条項(opt-out agreement)を持ち出してきた。





一方、ドイツのメルケル首相

She has denounced xenophobes, signalled Germany's readiness to take more Syrian refugees. Germany expects to register up to 800,000 asylum-seekers this year, far more than any other country in the EU. Mrs Merkel's leadership is a shining exception.

メルケル首相は外国人嫌悪(xenophobia)を非難すると、ドイツがシリアからの難民をさらに受け入れる用意があることを示唆した。ドイツは今年だけで最大80万人の亡命希望者(asylum-seekers)の手続きを行うつもりだ、と。この数はEU域内の他国をはるか凌ぐ。メルケル首相のリーダーシップばかりが、EU内の輝ける例外(a shining exception)なのだ。





EUにはすでに便利なシステムが存在する。

That is not difficult, thanks to the dismantling of passport controls at the EU's internal borders (a system known as Schengen, encompassing 26 European countries, but not Britain). This time Mrs Merkel is pushing hard for a proper European solution -a joint transfer system for refugees in which all Schengen members take part.

(移民の移動は)それほど困難ではない、EU内部の国境においてはパスポートが必要なくなっている。このシステムはシェンゲン協定(Schengen)として知られるもので、イギリスをのぞく26のヨーロッパ諸国がその範囲内にある。今回、メルケル首相はこの連結された移動システムを難民に適用して、ヨーロッパが適切に問題対処できるよう強く訴えている。

アフリカやアラブ諸国からの難民たちは、とりあえずイタリアやギリシャに殺到しているが、最終的にはドイツやイギリス、スカンジナビア半島へと行きたいのである。メルケル首相はその移動の便に、シェンゲン協定を利用しようと言っているのである。

The biggest displacement of people since 1945 is a test of European values, and of the ability of member states to work together. The refugees from civil wars in Syria and Iraq clearly need help.

1945年以来となる人民の大移動(displacement of people)、これはヨーロッパの人々が奉戴する価値観へのチャレンジであり、欧州各国がどれほど協調できるかを試すものである。シリアやイラクの内戦によって難民になってしまった人々は、明らかに助けを必要としているのだ。

近年のヨーロッパは、ユーロ危機におけるスッタモンダで世界の失笑をかっている。通貨は共通ながら借金は各国持ちということで、不完全な統合(incomplete integration)を露呈してしまっているのである。

もし、今回の難民問題でもヘタをうってしまうのなら


European integration will take a big step back.

ヨーロッパの統合は、大きく後ずさりすることになるだろう。






(了)






出典:
The Economist, Sep 5th 2015
Europe's migrant crisis "Merkel the bold"




posted by エコノミストを読む人 at 09:37| Comment(0) | ヨーロッパ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月30日

大量難民にたじろぐヨーロッパ [The Economist]



ヨーロッパに難民(asylum-seekers:亡命希望者)が押し寄せている。今年(2015)に入って27万人が記録され、すでに前年の総数を上回っている。ギリシャやイタリアなど沿岸諸国はEUに助けを求め、ここ2年間で3万2,256人を受け入れることに合意している。

一方、世界のもっと貧しい地域(much poorer parts)では、EUよりもずっと多くの難民たちを受け入れている。小国レバノンではシリアから約1万人の難民を歓迎している(1万人といえばレバノンの人口のおよそ4分の1にあたる)。同様にトルコでは1.7万人、タンザニアではコンゴやブルンジから何十万という難民たちを迎え入れている。ほとんど不平も言わずに(タンザニアの国民所得はEUの5分の1以下)。

現在ヨーロッパに詰めかけている避難民は27万人といえども、それはEU域内の人口に比すれば、まだヨーロッパ人1,900人に難民1人の比率にすぎない。



Europe can and should do better.

「ヨーロッパはもっとできるし、そうすべきだ」とエコノミスト誌は言う。そして、その理由は道義的なもの(moral reasons)というよりも、利己的なもの(selfish ones)だ。

Let them work.
「働かせればいい」



ヨーロッパの労働人口は高齢化そして縮小化していく。というのに、各国政府は膨大な借金(vast debts)を将来の世代に丸投げ(dump on)しようとしている。

Immigrants, including asylum-seekers, are typically young and eager to work. People who cross deserts and stormy seas to get to Europe are unlikely to be slackers when they arrive.

一方の、難民を含む移民たち(immigrants)は若く、そして働きたがっている(eager to work)。砂漠をこえ荒波を乗りきってヨーロッパにまでたどり着いた人々は、きっとナマケ者(slackers)ではないだろう。

Africans and Arabs are young. They bring complementary skills, ideas and connections. Europe can borrow some of their vitality. 

アフリカやアラブの人々は若い。彼らはヨーロッパのもっていない技能やアイディア、人脈をもたらしてくれる。ヨーロッパの人たちは彼らのバイタリティーを少し借りることができる。



ある研究によれば、現地の人より移民のほうが新たな事業を立ち上げることが多く、重大犯罪に手を染めることも少ないという。つまり、移民たちは国庫(the public purse)にとって純粋な貢献者(net contributors)となりうるのである。

事実、アメリカは移民によって繁栄した国家の好例である。

America did the successive waves of refugees in the 20th century, including plenty from Europe. A more open Europe with more flexible labour markets could turn the refugee crisis into an opportunity.

20世紀のアメリカは度々押し寄せる難民(refugees)の波を受け入れてきた。ヨーロッパからもたくさん来た。もしヨーロッパの労働市場(labour markets)がもっとオープンで柔軟であったなら、この難民危機(the refugee crisis)を絶好のチャンスに変えてしまうことができるだろう。



しかし実際のところ、群れをなして押しかける何千という難民たちを目にしたヨーロッパの人々は、すっかりたじろいでしまった(recoil)。思わず、野蛮なイスラム国(IS)が脳裏にうかんだ。

Islamic state (IS)does not hide its brutality. When it burns men alive or impales their heads on spikes, it posts the videos online.

イスラム国(Islamic state)はその残忍さを隠そうとしない。人間を生きたまま火あぶりにしたり、頭から串刺しにする、そんな映像をオンラインに投稿している。

彼らは神の意志(God's will)に従っていると公言する。もし彼らの占拠するシリアやイラクから逃げ出す者がいたら生かしてはおけない。ゆえに、ひとたび亡命をはかった者たちは、恐ろしさのあまり自国に戻ることは決してない(シリアでは人口の20%が流出しているという)。



ヨーロッパで移民への懐疑派(sceptics)が力を増すのも無理はない。

Not all who express such fears are bigots. And it is clear that monitoring of jihadist groups needs to be stepped up. The screening of asylum-applicants should be firm. Syria is a hellhole; Albania is not.

難民への不安を口にする人々は、皆がみな頑固者(bigots)というわけではない。ジハーディストに対する監視を向上させる必要があることは明らかだ。亡命者を受け入れるにしても、きっちり選抜しなければならない。シリアは最悪、アルバニアならOKだ。



ヨーロッパは世界中で最も豊かで平和な地域の一つである。その市民は当然、慈悲の心(compassion)をもっている。迫害(persecution)から逃れてくる人々にとっての避難港(safe harbour)たらんとする自負もある。

The recent surge of asylum-seekers has tested Europe's commitment to its ideals .

近年急増する亡命希望者(asylum-seekers)によって、ヨーロッパは自身の理想に対する責任(commitment)を試されている。



How can Europe assimilate migrants better?

ヨーロッパは移民をどう吸収していけるのか?

Let them in, and let them earn.

「受け入れ、そして稼がせよう」

Jobs keep young men out of trouble.

仕事があれば、若者たちはトラブルを起こさない。






出典:
The Economist, Aug 29th 2015
Migrant to Europe; Let them in and let them earn




posted by エコノミストを読む人 at 06:48| Comment(0) | ヨーロッパ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月28日

ギリシャ選挙、3度目の正直


ギリシャの左派政党シリザ(Syriza)は、アレクシス・チプラス(Alexis Tsipras)氏の首相辞任をうけた内部抗争(infighting)に苦しめられ、早期の選挙(an early election)を9月20日に求めている。

Syriza, the left-wing ruling party in Greece, was beset by infighting after Alexis Tsipras resigned as prime minister and called an early election for September 20th.

疲弊したギリシャ人(weary Greeks)が投票所へと向かうのは、1月の選挙と7月の国民投票(referendum)につづき、今年3度目となる。

It will be the third time that weary Greeks trudge to the polls this year, following an election in January and a referendum in July.


Politics this week
The Economist, Aug 29th 2015



posted by エコノミストを読む人 at 14:05| Comment(0) | ヨーロッパ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ギリシャからマケドニアへ、大量の難民


マケドニアは、隣国ギリシャを経由しての難民流入(an influx of migrants)への対処に苦慮している。

Macedonia struggled to cope with an influx of migrants entering the country via neighbouring Greece.

国連難民機関(The UN refugee agency)は、1日あたり3,000人あまりがシリアでの戦闘から逃れてくるだろうと予測しており、来月にはマケドニアを横断して(cross into)、まずはセルビア、そして西ヨーロッパへ向かってくるとのこと。

The UN refugee agency predicted that 3,000 people a day, most of whom are fleeting war in Syria, whould cross into Macedonia in the coming months, heading initially for Serbia and then western Europe.


Politics this week
The Economist, Aug 29th 2015



posted by エコノミストを読む人 at 13:27| Comment(0) | ヨーロッパ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

フランス、列車襲撃テロを防いだ英雄らに勲章


完全武装した乗客(ジハーディスト)によるパリ行き列車への襲撃(attack)は、数人の乗客らによって未然に防がれた(be thwarted)。そのうちの2人、休暇中だったアメリカ軍兵士(serviceman)が容疑者に体当たりして取り抑えた。

An attack by a heavily armed jihadist on board a train headed to Paris was thwarted by several passengers, including two holidaying American serviceman who tackled and subdued the gunman.

彼らとその仲間などが、フランス大統領フランソワ・オランド氏よりその勇気(bravery)を讃えられた。

They and their fellow travellers were praised by the French president, Francois Hollande, for their bravery.


Politics this week
The Economist, Aug 29th 2015



posted by エコノミストを読む人 at 12:58| Comment(0) | ヨーロッパ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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