2013年05月06日

働けない若者たち。裏目裏目の現実社会


失業の世代
Generation jobless

仕事と若者
Work and the young



仕事から外れている若者たち(young people out of work)。その数たるや、アメリカの人口に匹敵するほどだ。

英国エコノミスト誌 2013年4月27日号より



「若者は怠けるべきではない(Young people ought not to be idle)」

そう述べたのは、イギリスのサッチャー元首相。1984年のことでした。若者たちを中途半端な状態(in limbo)で放っておくことは、社会の悪だと彼女は言ったのです。



「失業手当(the dole)」

社会に出ると同時に失業手当(dole)を受けてしまうと、後々まで賃金が低く(lower wages)、その後の人生でも失業する期間は長くなってしまう(more spells of joblessness)といいます(およそ2倍に)。

それは、若年期に技術(skills)を身につけられなくなるからであり、自分への自信(self-confidence)も持てなくなってしまうからだそうです。



「ニート(Not in Employment, Education or Training)」

ところが現在、世界にはかつてないほど多くの、職を持たない若者たちがあふれています。

OECD(経済協力開発機構)の統計によれば、先進国の2,600万人以上の若者たち(15〜24歳)が、ニート(NEET)状態。職に就かず(not in employment)、教育もなく(not in education)、訓練も受けていない(not in training)のです。



「経済的に無活動(economically inactive)」

2007年以降、失業中の若者は30%増加し、全世界で7,500万人の若者が仕事を探して得られていないといいます(ILO・国際労働機関)。

世界銀行(World Bank)の調査によれば、新興国(emerging market)の2億6,200万人が経済的に無活動(economically inactive)となっています。統計の取り方次第では、その数はアメリカの全国民数(約3.1億人)に匹敵するのだとか。



「労働需要(demand for labour)」

若者たちは怠けたくて職を持たないわけではありません。長期にわたり低迷する先進諸国において(long slowdown)、労働需要(demand for labour)が縮小してしまっているのです。

若者たちには不幸にも、その採用(hiring)は見送られるのです(put off)。年配の労働者を解雇するよりも…。



「労働市場の機能不全(dysfunctional labour markets)」

また、新興国では労働市場が機能不全(dysfunctional)に陥っています。とりわけ、人口の急増するインドやエジプトなどにおいて。

インドには、労働と賃金(work and pay)に関わる法律が200近くもあるそうです。



「失業の孤(arc of unemployment)」

失業の波は、南ヨーロッパから北アフリカをへて、中東、南アジアへと続いていきます。まるで、失業が孤(arc)を描いて伝播していくかのように。

さらに、先進国の景気後退(recession)はそうした貧しい国々に、若者の反乱(youthquake)を誘発しました。



「若者たちの反乱(youthquake)」

職を得られぬという筋違いに、若者たちの怒りは爆発(burst)。その怒りは街頭で噴き出します。

凶悪犯罪(violent crime)が増加している国々(たとえスペイン、イタリア、ポルトガルなど)は、一様に若年失業率(youth unemployment)が驚くほど高い国々でもあります(startling high)。



「経済成長に火を着けろ(reignite growth)」

言うは易し、行うは難し(easier said than done)。経済がもっと成長すれば、自ずと若者たちにも職が巡ってくるはずですが、現実はそうもいかないようです。

先進各国は、もれなく過大な債務にその手足を縛られており(plagued by debt)、成長を画するどころか、逆に硬い甲羅の中に身を隠してしまっているのです。



「改革と改善(reforming and improving)」

そもそも、経済成長が雇用を生むか(Will growth give a job?)というのも疑問です。現在、若年失業率の極めて高い国々、たとえばスペインやエジプトなどは、経済が順調に成長軌道にあったときでさえ、高い若年失業率に苦しんでいたのですから。

すなわち、そうした国々では、労働市場そのものを改革する必要があり、若者たちに対する教育も改善しなければならないのです。



「硬直した労働市場(rigid labour markets)」

若年失業率が最悪化するのは決まって、労働市場が硬直化している国においてです。雇用(hiring)にかかる高い税金、解雇(firing)に対する厳しい規制…。

こうした要因が労働市場を硬直させ(rigid)、若者たちを街頭へと追いやってしまう(condemn to the street corner)のです。



「厳しい規制(strict rules)」

労働組合(trade unions)が強力なほど、その国の雇用と解雇(hiring and firing)に関して厳しい規制(strict rules)が敷かれることも多くなります。

たとえば、サハラ砂漠以南で最も失業率の高い南アフリカ共和国は、労働組合の最も強力な国の一つです。



「高い最低賃金(high minimum wages)」

また、失業の孤に属する多くの国々もそうであり、最低賃金(minimum wages)が高くて、労働に対する課税も甚だしいのです(heavy taxes)。

本来、労働組合(trade unions)は労働者を守るために生まれたはずが、労働者を過保護にするあまり、逆に労働者たちの首を締めてしまっているというのも、まったく皮肉な話です。



「規制緩和(deregulation)」

ならば、硬直化した規制(rigid rules)を緩和すればいいのでしょうか(deragulation)。

ではなぜ、労働市場がより柔軟(flexible)なはずのイギリスで、若年失業率が高いのでしょうか。



「より良い実績(better records)」

目下の模範例はドイツでしょう。この国は先進国で2番目に若年失業率の低い国です。政府が適度に救いの手を差し伸べるのがドイツ流です。

たとえば、企業が長期失業者(long-term unemployed)を雇用した場合、最初の2年間は賃金の一部(portion of the wages)を政府が負担してくれるます。ちなみに、こうした施策は北欧諸国(the Nordic countries)に多いようです。



「多すぎる大卒者(the graduate glut)」

イギリスとアメリカでは、高い学費をかけて大学を卒業した多くの若者たちが、まともな仕事にありつけていません。また、北アフリカでは、大卒者(the graduate)が大卒者以外の人々(non-graduates)の2倍の確率で失業しています。

これまた皮肉なことに、付加価値を高めるはずの大学の学位(degrees)が、逆にその人の賃金を上昇させてしまうため、企業から敬遠されてしまっているのです。



「隔たり(the gap)」

確かなのは、教育の世界と仕事の世界の間に、なんらかの隔たり(gap)が存在するということです。

大学の世界が孤立してしまうほどに、その学位は就職にとってより意味のないものとなってしまいます。ゆえに重要なのは、その中身(its content)。それが隔たりを埋めるものであるかどうか、ということです。



「企業と学校の関係(relations between companies and schools)」

伝統を誇るドイツの徒弟制度(apprenticeships)。これは企業と学校の隔たりを埋めるものです。韓国のマイスター学校(meister schools)も、それを目的としたものであり、シンガポールの技術大学(technical colleges)もそうです。

企業と学校の関係を強化すること(forging closer)、それが若者の雇用にもつながっていくようです。



「実地訓練(on-the-job training)」

IBMやマクドナルドなどの企業は、若者への研修プログラム(training grogrammes)を刷新しています(revamping)。また、大学側もテクノロジーを提供することによって、そうしたトレーニングのコスト(the cost of training)を引き下げています(reducing)。

そうした協力は、実地訓練(on-the-job training)と学問的指導(academic instruction)を一体化させることにもつながり、それは徒弟たち(youngsters)にとっても大いに有益なことでしょう。



「希望を抱かせる理由(some reasons for hope)」

政府による、教育と労働市場のミスマッチを改善する取り組み。企業側の、若者に対する責任(responsibility)。そして、進化するテクノロジーによる民主化への寄与。

教育と訓練の革命(education-training revolution)は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません…。







英語原文:
Work and the young: Generation jobless | The Economist

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2013年05月01日

差別是正の生む新たな差別。囚われすぎた人種の壁



人種差別の是正措置を廃するとき
Time to scrap affirmative action



政府は、人種偏見(colour-blind)になるべき

英国エコノミスト誌 2013年4月27日号より



「法のもとの平等な正義(Equal justice under law)」

この4語が、アメリカの連邦最高裁判所(Supreme Court)の入り口に刻み込まれているといいます。しかし今、人種の違いを無視すべきか否か(colour-blind)を争点に、アメリカが真っ二つに割れています(divide)。

人種の違いを考慮したほうが平等なのか(equal)、それとも、それは逆に不平等を生んでしまうのか、この2つに意見が割れているのです。



「アファーマティブ・アクション(差別是正措置、affirmative action)」

アメリカでは、特定の人種(race)や民族(ethnos)に対して、異なる基準(different standards)を設けて、その格差を是正する(give a leg-up)措置が採られています。

それらの法律を、アファーマティブ・アクション(差別是正措置)と呼びます。



「人種を考慮した入学(race-conscious admissions)」

テキサス大学では、人種を考慮した入学(race-conscious admissions)が合法か否かに関して、最高裁で争っています。

また、ミシガン州の住民投票では、そうした是正措置(affirmative action)を禁じる決断を下しています。



「まったくの善意(the best of intensions)」

人種の差を考慮する政策の多くは、そもそも、まったくの善意(the best of intensions)から生まれたものでした。

それは、歴史の過去における不平等を償い(to atone)、負の遺産を是正するため(to ameliorate)だったです。



「痛ましい差別(grievous discrimination)」

かつて、アメリカの黒人や、インドのダリット(dalits)と呼ばれる不可触民(untouchable)たちは、歴史の犠牲者でした。

今なお続く、痛ましい差別(grievous discrimination)。そうした人々に対する優遇措置は、社会をより公正なものとするためには、最も効率的な方法だったのです。



「大いなる改善(great progress)」

差別是正措置(affirmative action)が功を奏したのかどうか、差別されていた多くの集団では現在、大いなる改善(great progress)が見られています。

しかし、それらの優遇措置が格差是正にどれほど貢献したかを見極めることは困難です。というのも、その改善は経済成長のもたらした側面も大きいからです。



「優遇措置(special treatment)」

かりに優遇措置(special treatment)がなかったら? 被差別集団の状況がどうなっていたかを知ることも不可能です。

たとえば、優遇措置を受けていないシンガポールのマレー人(Malays)の方が、優遇措置を受けているマレーシアのマレー人よりも3倍豊かである、というアベコベの事実もあるからです。



「マイナス面(the downside)」

差別是正措置には、マイナス面(the downside)も確かにあります。

人種を考慮した優遇措置は、世界の多くの国々で採られていますが、どうやら近年、そのマイナス面(the downside)が世界の各所で浮かび上がってきているようです。



「黒人の学生(black students)」

アメリカの一部の大学では、黒人が優先的に入学できるようにしているところがあります。白人やアジア系の受験者よりずっと点数が低くても、黒人であるというだけで、簡単に入学できてしまうのです。

たとえば、1,600満点中その25%以上の450点、点数が低くても黒人の受験者(black applicants)は合格してまうところもあるようです。当然、ほかの受験者に対してまったく公正ではありません(unfair)。



「準備不足(ill-prepared)」

日本の大学と違い、アメリカの大学は卒業してなんぼです。もし、準備不足(ill-prepared)の黒人学生が学力不相応の大学に入学してしまうと、それは本人にとって不幸となってしまいます。

実際、優遇措置で入学した黒人学生の多くが、中退してしまいます(drop out)。その結果、弁護士資格を取得する黒人の数が減少しているという証拠もあります。



「不利な立場(disadvantaged)」

肌の色が条件に当たれば(the right color)、アメリカの企業が優遇するというプログラムもあります。

しかし実際には、肌の色により不利な立場(disadvantaged)にあると判断された人々の中には、おそろしく裕福な人も含まれています。ある人は、平均的なアメリカ家庭の87倍もの財産をもっていてなお、優遇措置を享受していました。



「黒人権利拡大政策(BEE, Black Economic Empowerment)」

南アフリカ共和国の黒人権利拡大政策(Black Economic Empowerment)に従えば、特定の集団に属しているというだけで、たとえ入札額が高くとも公共事業の契約(public contracts)を勝ち取れるようになっています。

推定6億7,500万ドル(約675億円)の資産をもつという与党の副党首は、この優遇措置の受益者(beneficiary)であるというのも、アベコベな話です。



「能力以外の理由(other than competence)」

インドやナイジェリアなどでは、ある集団に属しているというだけで、能力いかんに関わらず公務員(civil-service)になれるという割り当て制度(quotas)があります。

能力以外の理由(other than competence)で公務員の職を気前よく配ってしまうと(dish out)、当然、政府の能力は低くならざるを得ません(less competence)。インドやナイジェリアの公務員(officialdom)を相手に苦労した経験を持つ人は少なくないでしょう。



「アリ-ババ企業(Ali-Baba firms)」

特定の集団(particular groups)に与えられる優遇措置は、ずる賢い人々に悪用される危険もあります。

たとえばマレーシアには、アリババ企業(Ali-Baba firms)と呼ばれるものがありますが、これは優遇を受ける資格のあるマレー人(Ali)が、カネと引き換えに中国人ビジネスマン(Baba)に名義を貸した会社のことです。その名義のおかげで、アリババ企業は政府の契約(government contract)を容易に勝ち取ることができるのです。



「拡大する傾向(tend to spread)」

はじめは、ごく限られた集団(narrow groups)を優遇する政策であっても、その権利はオレもオレもという要求により、拡大していく傾向にあるようです。

アメリカには、入札なし(no-bid)で事業契約を結べる優遇措置がありますが、最初、それは黒人、ヒスパニック、ネイティブ・アメリカンの所有する企業を対象にしたものでした。ところが今や、その対象は33カ国にルーツをもつ人々にまで拡大しています。

またインドでも、人口の60%もの人々が優遇される、というおかしな状況にもなっています。最初は、指定のカーストや部族、または後進的階級(backward classes)の特権(privileges)だったはずなのですが…。




「民主主義を蝕む(poison democracy)」

差別的な規則(discriminatory rules)は、歴史上、その引かれた線によって分裂(divisions)を助長してきました。ルワンダやスリランカなどでは、大流血の紛争(bloody conflicts)を引き起こしたほどです。

その分裂を放おっておけば、先進国の民主主義といえども蝕まれる(poison)危険性があります。



「撤廃は、ほぼ不可能(almost impossible to get rid of)」

差別是正措置の不幸な点は、それがひとたび導入されてしまえば、その撤廃(to get rid of)はほぼ不可能だということです。弱者救済という旗印は、錦の御旗ほどに強力なものであり、逆に拡大していく傾向のほうが強まるのです。

たとえばインドでは、公務員の割り当て制度(quotas)を10年間で段階的に廃止する(phased out)としていましたが、その制度はむしろ拡大してしまっています(more widespread)。アメリカでも同様、法的な廃止圧力(legal pushback)に屈することがありません。



「多様性(diversity)」

テキサス大学は、黒人受験者を優遇する理由を、その多様性(diversity)に求めています。大学にとって、多様性は利益(benefit)になるというのです。

あるいは警察なども、いろいろな人種の警官がいるほうが、地域文化への理解が深まり(share a culture)、より治安を保ちやすくなるかもしれません(keep order better)。それはグローバルな企業などにも言えることでしょう。



「わびしい考え方(a bleak view)」

肌の色以上に多様化が進んでいる現代社会においては、その線引きを人種にばかり固定してしまうのは、少々わびしい考え方(a bleak view)なのかもしれません。

すべての黒人が同じように世界を見ているわけではないでしょう。それは日本人も同様です。つまり、人種というくくりは大雑把すぎるのです。



「公正でも効率的でもない(neither a fair nor an efficient way)」

現代社会において、不利な環境(disadvantaged backgrounds)に置かれている人々というのは、肌の色に限る話ではありません。

そう考えれば、人種に基づいて区分するという発想自体が、公正でも効率的でもない(neither a fair nor an efficient way)ということに気付かされます。



「いかなる人種や宗教でも(any color or creed)」

また、才能のある人間(talented people)というのは、人種や宗教を問わないはずです。

もし、差別是正措置(affirmative action)が人種に囚われ続けるのであれば、それは古い不平等(old injustices)を新しい不平等に置き換えていくことになるでしょう。



「人種を偏見しろ(be colour-blind)」

肌の色のおかげで大学に入ったというのは、誇れることでしょうか。もし、オバマ大統領の娘が大学を受験するのなら、きっとその学力(academic prowess)を評価されたいのではないでしょうか。

エコノミスト誌のいう、人種を偏見しろ(be colour-blind)というのは、少々激しい物言いですが、差別是正措置による弊害がその利を上回るようであれば、一考を要することでしょう。

そもそも、二度と撤廃できないような不可逆的な法律には、言いようもない不安を掻き立てられるのですが…。










英語原文:
Social policies: Time to scrap affirmative action | The Economist

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2012年10月02日

ベビーブーム世代の大移動、いよいよ佳境へ。


たかり始めたベビーブーム世代
Sponging boomers

英国エコノミスト誌 2012年9月29日号より



「高齢化するベビーブーム世代(ageing baby-boomers)」

新たな地平から姿を表した経済問題(economic mess)は、シワだらけの顔(wrinkled visage)をしていました。

それは、高齢化するベビーブーム世代(ageing baby-boomers)です。



「急増した出生率(births surged)」

第二次世界大戦の戦火が止むと、世界の先進国(the rich world)では一気に出生率が急増しました。

各国によりそのピークはさまざまですが、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本はそろってベビーブームに沸いたのです(all enjoyed)。




「独自の重力(own gravity)」

大人数となったベビーブーム世代には、独自の重力(gravity)が働き、その重さそのものが人口ボーナス(a demographic dividend)をも生みました。

その結果、ベビーブーマーたちの収入は他のどの世代よりも豊かなものとなり、恵まれた生活(charmed life)を謳歌できたのです。



「社会の変化(social change)」

ベビーブーマーたちが生み出した社会の変化は、彼らに有利なように働きました(favoured)。

女性の社会進出(working women)はますます労働力を増加させ、世帯の少人数化(smaller households)は家計所得を実質的に増やすこととなりました。また、高等教育への見返り(the return on education)も劇的に高まったのです(soared)。



「一回限り(one-offs)」

しかし残念ながら、これらの恩恵(gains)は一回限りのもの(one-offs)でした。

ベビーブーマーの定年退職(retirements)とともに、労働力の流れは反転(reverse)。働く女性ももう増えず、大学の学位(degree)もかつてほどは意味のないものとなってしまいました。



「壮大な上昇相場(a spectacular bull market)」

ベビーブーム世代は、数十年続いた資産価格(asset prices)の上昇によって豊かになりました(enriched)が、これはもう、今後の若い世代には期待できないことです。

引退後のベビーブーマーたちが生活のために資産を売却している(sell off)ため、株価には下落圧力がかかっています。そのため、若い世代が楽して富を築く道(easy route to wealth)が閉ざされてしまっているのです。

というのも、株価収益率(PER)というのは、高齢労働者が増えるほど低下する可能性が高いのだそうです。




「税率引き下げ(slashed tax rates)」

ベビーブーム世代の重みは、政治的にも大きな力を発揮し、彼らの所得が最も高まる時に、最も低い税率(tax rates)にまで引き下げることに成功しています。

アメリカにおける所得税と給与税(income and payroll taxes)の平均税率は、1981年の18%から、2011年には11%にまで引き下げられています。



「税金と給付金(taxes and benefits)」

低い税率により、支払った納税額の少なかったベビーブーム世代ですが、これから受け取ることとなる給付金(benefits)は、支払った税金よりもずっと大きなものとなります。

2010年に65歳だったアメリカ国民は全体で、納税額よりも3,330億ドル(約26兆円)多い給付金を受け取れる可能性があります。







「ベビーブーマーのたかり(boomers' sponging)」

こうしたベビーブーマーのたかり(sponging)は、後世に莫大なツケ(a huge bill)を残すこととなります。

その債務額(obligation)は、これからの若い世代が将来に残すとみられる額の10倍にも20倍にも上る見込みです。



「ベビーブーマーが残す負債(the debt left by the boomers)」

これから労働力の伸び(labour-force growth)が鈍化する時代、ベビーブーマーたちが残していく負債は、重い足カセとなって経済の足を引っ張り続けることとなります。

ある試算によれば、GDP比で90%を超す負債は、経済成長率を1%以上低下させる可能性があるとのことです。



「財政不均衡(fiscal imbalance)」

IMF(国際通貨基金)によると、アメリカの財政不均衡(fiscal imbalance)を是正するためには、すべての税金を35%引き上げ、すべての移転支出(transfer payments)を35%引き下げる必要があるそうです。

すでに軋みが生じている政治体制(a creaky political system)にとって、これほどの緊縮財政(austerity)は飲むには大きすぎる薬でしょう。







「政治の行き詰まり(partisan gridlock)」

財政の不均衡は、65歳以上の人口の上昇と政治の行き詰まり(gridlock)によって、ますます厄介な問題となります。

現在アメリカの有権者に占める65歳以上の人口の割合は17%ですが、これは2030年までに26%にまで拡大しているとのことです。これは、給付金を減らされたくない人々が増えること、そして、その人々がこれからますます政治的に強い力を持つことを意味しています。



「インフレ(inflation)」

インフレ(物価上昇)は、これからの若い世代にとってはプラスに働きます。なぜなら、未来の収入は上昇し、過去の借金の価値は相対的に低下するからです。

しかし、ベビーブーム世代はインフレを嫌います。なぜなら、貯蓄で食いつないでいる彼らにとってのインフレは、その貯金の価値を目減りさせてしまうからです。



「世代間の隔たり(the generational divide)」

インフレは借金の価値を減らすと同時に、貯蓄の価値をも減らしてしまうので、ここに世代間の闘争が必然となります。

借金の負担を減らしたい若い世代と、貯蓄を減らしたくないベビーブーム世代のガチンコ勝負となってしまうのです。



「ベビーブーマーの政治力(the political power of the boomers)」

そうしたガチンコを制するのは、ベビーブーム世代となるのでしょう。結局、選挙は数の力がモノを言います。つまり、この古い世代(older cohorts)はこれからも力を持ち続けるのです。

政治家たちは、ベビーブーマーの優先事項(boomer preferences)を無視するわけにはいかないどころか、それに突き動かされるようになるのです。



かつて、歴史上には民族の大移動というビッグイベントがありましたが、このベビーブーム世代が年代を移動していく様も、それと似通っているようにも思えます。

若い時は大変に強大な力を発揮したものの、退職してしまうと…。民族大移動によって横切られた国土には、いったい何が残されるのでしょうか?

「夏草や、……どもの夢のあと…」







英語原文:
The next crisis: Sponging boomers | The Economist

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2012年09月14日

引きこもりたがっている世界貿易。先の大恐慌の教訓とは?


閉じ込められた世界貿易
International trade : Boxed in

英国エコノミスト誌2012年9月8日号より



「不吉な兆候(ominous)」

貿易の活性具合いは、海の港に目をむければよく分かります。

港(docks)や埠頭(harbours)が賑わっていれば、業者たちが輸出入に忙しいということであり、波止場(quays)が閑散としているのならば、それは不吉な兆候(ominous)だということです。



「現実化(come to pass)」

2011年の終わり頃から、大きな港(big ports)のデータは不安定(choppy)になり始めていましたが、その不吉な兆候は今年、世界の景気減速として現実化してしまいました(come to pass)。

今年の第2四半期、イギリスとインドで輸出が4%以上減少し、ロシアと南アフリカでは8%以上も落ち込んでいます。これは、シンガポールや香港、アイルランドやベルギーなどの、より開かれた貿易依存の高い国家ほど大きな打撃となっています。





「明らかな原因(the obvious cause)」

貿易(trade)が落ち込む原因(cause)は明らかです。それは外国人たちの購買力(buying power)の低下です。買ってもらえなければ、輸出はできないからです。

そのため、貿易の好不調は、世界のGDP(国内総生産)の上下と綿密に連動する(track)ことになるのです。たとえば弱体化著しいヨーロッパの輸入は4.5%も減少していますし、その逆に(in contrast)、石油が好調な中東諸国は7.4%も輸入を増やしています。



「唯一の要因か?(the only factor)」

貿易とGDPが連動して動くのは確かなことですが、はたして貿易を左右するのはGDPの変動ばかりなのでしょうか?

IMF(国際通貨基金)の予測によれば、来年2013年は貿易が5.1%拡大することになっています。この予測は世界各地で金融緩和策が成功することを前提としたものだそうですが、なんとも楽観的(too optimistic)な数字です。



「期待薄(little hope)」

一方、最新の船舶輸送の統計(the latesst shipping data)は、急回復(a rapid rebound)が期待薄(little hope)であることを示しています。とりわけ、アジアからヨーロッパへ向かうコンテナ輸送の減少は深刻で、前年同月比で13.2%の減少となっていました(ロイズ・リスト)。

IMFの机の上では楽観的な数字が出ているものの、現実の港の状況は、それよりも厳しいもの(bleak)のようです。



「別の要因(other factors)」

貿易とGDPの連動は、なにも完璧なものではありません。先頃まで、貿易はGDP以上に速いスピードで上昇しておりましたし、今年の落ち込みは、GDPの減速以上の急落でした。

つまり、貿易とGDPとの間には明らかな緩みがあり、そこに別の要素が入り込んで、その変動幅を大きくしたり、小さくしたりしているということです。





「考えられる要因(one candidate)」

その別の要因として考えられるのは、貿易金融(trade finance)です。

たとえば輸出業者(exporters)は、製品を売ってから代金を回収するまでの間にギャップ(lag)が発生します。つまり、お金を受け取るまでに時間がかかるのです。そこで必要となるのが、短期(short-term)の貿易金融。代金を回収するまでの少しの間だけ銀行からお金を借りて、キャップを埋めるのです。

その貿易金融の貸し手が少なくなっているというのが、貿易低迷の一つの要因となっているということです。



「縮小(cutting back)」

貿易金融を大幅に縮小している(cutting back)のは、景気後退に陥っているユーロ圏の銀行です。

もともとヨーロッパの銀行は貿易金融で大きな役割(major player)を果たしていました。ユーロ圏の大手銀行は去年の世界貿易金融のじつに36%を担っていました。そのメジャー・プレーヤーが手を控えてしまっているのは、貿易にとっては大きな痛手なのです。



「縮小の理由(one reason for withdrawal)」

ではなぜ、ユーロ圏の銀行は貿易金融を縮小してしまったのでしょうか?

その一因はドル不足です。景気後退によってユーロの価値が下がってしまったことにより、ユーロ圏の大手銀行はドル資金を得にくくなってしまったのです。これでは主にドル建てで行われる国際貿易を担えません。



「容易な削減(easy to prune)」

もう一つの理由は、苦境に陥った銀行がスリム化を図るのに、貿易金融の縮小がもっとも手っとり早かったからです。なぜなら、主に短期的な性質(short-term nature)をもつ貿易金融は、すぐに削減できたのです(easy to prune)。

ユーロ圏の銀行が抜けた穴は、日本や中国、ブラジルなどの銀行が埋めようとしているのですが、以前ほどふんだん(abundant)に資金は供給されていないようです。





「何がなんでも貿易戦争は避けよ(avoid trade wars at all costs)」

何がなんでも(at all costs)、貿易戦争(trade war)は避けよ、これは1930年代に世界大恐慌に陥った際の最大の教訓(the lessons)でした。というのも、世界各国が自国良かれ主義に走った結果、世界恐慌はその穴を自ら深めた苦い経験があったからです。

その教訓によれば、自国を守ろうとする保護貿易主義(protectionism)の行き過ぎが、諸悪の根元となりうるということです。



「保護貿易主義の高まり(increased protectionism)」

今回の危機の初期段階において、世界各国は先の世界大恐慌の教訓を肝に銘じているかのようでした。

しかし最近、その教訓を黙殺するかのように、世界各国が保護貿易主義に走り始めています。アルゼンチンはスペインの企業を国有化し、アメリカと中国は、鉄鋼(steel)を巡る論争を激化させています。また、ブラジルは輸入100品目にたいして関税(tariffs)の引き上げを発表しました。



「死んだも同然(as good as dead)」

11年前から始まったドーハ・ラウンド(多角的貿易交渉)は、各国の貿易障壁を取り除くことで世界のGDP成長を目論んでいますが、いまや死んだも同然(as good as dead)です。

ドーハ・ラウンドのような全体的な貿易自由化よりも、世界各国は個別に、数国間もしくは2国間などによる地域貿易協定(reagional deal)を好んでいるようです。その絡まり合った様は、「スパゲティ・ボール(sgaghetti bowl)」と皮肉られています。



「つまらない保護貿易(the petty protectionism)」

それでもドーハ・ラウンドには、新協定(a new deal)で貿易円滑化(trade facilitation)に関して合意がなされることが期待されています。

もしそれが実現すれば、つまらない保護貿易(the petty protectionism)の不利益は相殺されて余りある成果をもたらす可能性もあります。

しかし残念ながら、自由貿易を後押ししようとする潮流(the tide)は、世界各地ですっかり弱まってしまっている(ebbing)ようでもあります…。



世界を守るよりも自国を守る。これは正しい発想なのかもしれません。しかし、先の世界大恐慌よりも各国のつながりが密になっている今、その弊害は1930年代以上のものとなる恐れもあるのです。

今の時代、箱に閉じこもっている(boxed in)ばかりが安全とは限らないようなのです…。






英語原文:
International trade: Boxed in | The Economist

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2012年08月13日

日本の失われた10年を笑った世界は、今…。


世界恐慌の危機:日本の教訓
The global crash : Japanese lessons


英国エコノミスト誌 2012年8月4日号より



「危機が始まった(the crisis begun)」

すべてが一変したのは2007年8月9日。フランスの銀行、BNPパリバがサブプライムローン(subprime-morgage)での巨額損失(big lossses)を明らかにしてからでした。それ以来、それまでのバラ色(rosy)の予測はすべてが無に帰したのです。



「悪い例(a warning)」

危機の最初の年、世界が目を向けたのは日本の実例でした。それは参考(a guide)のためというよりも、悪い例(a warning)としてです。

日本の実例とは、日本の債務バブル(debt bubble)がはじけた後、日本経済が10年にわたって成長することができなくなった、いわゆる「失われた10年(a lost decade)」のことです。



「日本流の経済停滞(Japanese-style economic stagnation)」

1991〜2001年にかけての日本の失われた10年を見ていた欧米の政策立案者たち(policymakers)は、日本流の経済停滞(economic stagnation)から3つの教訓(lessons)を得ていました。

一つは、迅速に行動すること(to act fast)、一つは、傷んだバランスシート(battered balance-sheets)をきれいにすること、一つは、大胆な景気刺激策(bold economic stimulus)を打つこと、でした。



「債務の山(debt mountains)」

日本流の経済停滞を避けようと躍起になっていた欧米各国ではありますが、どうやら好ましからざる日本化(turning Japanese)に陥りつつあるようです。

アメリカの消費者は債務の山(debt mountains)を着実に積み重ね(年間GDP比4%増)、危機勃発の2007年時点で、すでにGDP比100%に達していました。100%とはつまり、収入と借金が同額になってしまったという恐ろしい数字です。そして、それはヨーロッパも同様でした。そんな状態で欧米諸国は危機に突入することとなったのです。





「持続不能(unsustainable)」

危機が勃発したのは、積み上がった債務の山が持続不可能(unsustainable)、つまり返済不可能なように見え始めたからです。

とりわけサブプライム・ローン(住宅ローン)に関しては、貸した金が返ってくるとは到底思えませんでした。というのも、住宅の価値が買った時の金額よりも低下してしまっていた(worth less)ためです。

貸した金が回収できないとなると、その借金の金利(interest rates)は上昇します。なぜなら、金利の高さは返済できる確率で決まるものだからです(返済できないとみられれば上がる)。そして、金利が上がるほど借り手は借金を返す額が増え、ますます返済不可能になっていくのです。



「高い金利での借り換え(refinance at higher rate)」

金利の高騰は、一般の住宅ローンのみならず、政府や銀行が築き上げた債務の山をも直撃しました。高い金利での借り換え(refinance)を余儀なくされた政府や銀行は、突如として金利上昇というコスト高騰に見舞われたのです。

つまりは、住宅ローンという形で国民に返しきれないほどの借金を負わせた結果、その火の手は中央政府・中央銀行にまで飛び火してきたということです。こうして、「返済不能→金利高騰→ますます返済不能→さらなる金利高騰→…」の悪循環は、その輪をぐんぐんと広げていったのです。



「政策金利の引き下げ(slashed official interest rates)」

日本流の経済停滞を知っていた欧米政府の対応は迅速(quick)でした。アメリカ、ユーロ、イギリスの中央銀行は、即座に政策金利(official interest rates)を引き下げたのです。

そのスピードは日本の対応よりも2〜3年は速いものでした。危機の勃発を見るや、わずか1〜2年で政策金利を0〜1%近辺まで一気に下げてきたのです(危機前は4〜6%)。





「相殺(offset)」

各国の中央銀行が政策金利を下げる意図は明確です。返済不能→金利高騰の悪循環の輪を断ち切るためです。金利の引き下げにより、企業と消費者に負わされる債務コスト(金利コスト)の急増は相殺される(offset)ことになるのです。



「痛んだバランスシート(broken balance-sheets)」

さて、とりあえず金利の上昇には歯止めがかかりましたが、次に取り組むべきことはバランスシートの修復です。

バランスシートとは、保有する資産と借りている借金のバランスを示す表のことですが、一連の騒動により資産価値よりも借金が上回ってしまっていたのです。つまり収支がマイナス勘定になってしまっていたのです。

いくら金利の上昇が止まったからといって、借り越しのままでは借金は返し切れずに、経済全体までもが痛んだままです。



「3つの選択肢(three main options)」

バランスシートを修復する主な方法は3つ。債務を再交渉するか(renegotiate)、資本を増強するか(raise equity)、倒産するか(go bankrupt)です。

幸いにも、今のところお金を貸した債権者(debt investors)はキチンとお金を返してもらっているようです(honored)。ここ5年間の債券投資家のリターン(利益)は、アメリカ銀行債で31%、欧州でも25%という素晴らしいものでした。



「バランスシートの緩衝材(the balance-sheet shock-absorber)」

資産価値(assets value)が低下したのに対して、債務(借金)の価値は固定されたままでした(fixed value)。それなのになぜ、債務はキチンと返済され続けたのでしょうか。

それは、株式(equity)が緩衝材(shock-absorber)の役割を果たし、その価値を大きく下げたからでした。2007年の危機勃発以来、銀行の株式は6割以上も値を下げ、場合によっては9割以上も下げた銀行株もあるほどです。

問題を起こしたのは債務のはずなのに、血祭りに上げられたのは株式というのも、皮肉な話です。やはり、株式は債権以上のリスク資産ということです。



「小さすぎた株式の緩衝幅(the equity buffers were too small)」

それでも株式が吸収できる緩衝幅(buffers)には限界がありました。危機の衝撃を吸収できなかった余分に関して、結局は政府がお金を出すこととなりました。

こうした政府の介入もあって、ようやく痛んだバランスシートは何とかその体裁を保ったのです。



「公的資金の犠牲(at the expense of public ones)」

政府が銀行救済(bail-outs)に使ったお金とは、他ならぬ国民の税金、つまり公的資金です。要するに、銀行のバランスシートの修復は、国のバランスシート犠牲にすることで成されたのです。

言葉を換えれば、問題の先送りです。始めは家計のバランスシートを修復するために銀行のバランスシートがおかしくなり、それを救うために国家のバランスシートを崩す結果となったのです。そして、これ以上は問題を先送りできないのが、ツライところです。

ちなみに、銀行救済(bail-outs)に要した費用は、アメリカでGDP比5%相当、ヨーロッパではGDP比9%にも及びます。



「収入が十分ならば問題なし(fine as long as incomes are sufficient)」

結果的に膨らんだ政府の巨額な債務(high debt)。しかしそれでも、収入(incomes)が十分な限りそれほどの問題とはなりません。どんなに多額な借金をしても、稼ぎがそれを上回っていれば良いのです。

政府の収入とは税金のことですから、国の経済が活性化すれば、その収入は必然的に上昇します。そして、そのために必要なのが経済を活性化させる強力な刺激策(a strong stimulus)ということになります。



「量的緩和(quantitative easing)」

刺激策(stimulus)の一つが量的緩和(quantitative easing)という手法です。これは国家の借金(国債)を中央銀行が買い取ることで、結果的に新しいお金を大量に印刷してしまうという荒技です。

中央銀行が新しいお金を使って国債の強力な買い手となることで、国債の価格は上昇し、結果的に金利は低下します。その結果、債務は返済可能な水準に維持できるということです。



「大胆さを欠いた刺激策(the stimulus may not be bold enough)」

しかし残念ながら、量的緩和以外の刺激策(the stimulus)は大胆さを欠いているようです。イギリスでは景気が回復するのを待たずに、早々に刺激策が打ち切られてしまいました。その結果、景気後退入りを余儀なくされています。

なにせ、ただでさえ膨らんだ国家の借金、さらなる支出は大変に勇気のいることです。もし、お金を使うだけ使って、それが返ってこなかったら…。実際、日本の失われた10年の実例を見れば、刺激策は経済成長につながっていなかったのです。



「破綻したビジネスモデルの兆候(the sign of a broken business model)」

ここで立ち止まって考えなければならないのは、棒でも箸でも何でもかんでも救済すべきかどうかということです。バランスシートが崩れた時点で、そのビジネスモデルはすでに破綻の兆候を示しているのですから。

破産(bankruptcy)というのはツライ選択肢(option)でありながら、長期的にはもっとも軽度の痛みで済むこともあるのです。



「長期的なコスト(long-term costs)」

日本の実例では、不健全な企業をあまりにも多く存続させてしまった結果、その痛みは10年にも渡る長期的なものとなってしまいました。

それを知るはずのアメリカとイギリスも、同じ轍を踏もうとしています。非生産的な企業までもが政府の救済により存続してしまっています。アメリカ政府の救済により、928社が救援資金を受け取り、イギリスでは大手銀行4行のうちの2社の株式を政府が大量保有しています(売るアテもなく)。



「3つ目の日本の特徴(a third Japanese trait)」

上述した通り、欧米諸国は日本から教訓を得たとしながらも、日本と同じ轍を踏み続けています。

一つ目は、増え続ける借金に二の足を踏んだための、弱々しい刺激策(the meagre stimulus)。二つ目は、救済すべきでない企業を救ったことによる産業のゾンビ化(zombification of industry)。そして、三つ目が優柔不断な政策(policy indecision)です。



「日本の二の舞(aping Japan)」

危機に陥った欧米諸国が行ったことは、素早く政策金利を下げて、大量に新しい紙幣を印刷したことです。しかし、それらの対策は、結果的に景気を回復させるに至っていません。

日本の失われた10年に学んだと豪語していた彼らは、奇しくも日本の二の舞(aping Japan)を演じているのでありました。

ちなみに、「ape」という単語は「猿」という意味ですが、そこには「思慮なく日本を真似ただけ(悪い面までも)」という皮肉が込められているようです。







英語原文:
The global crash: Japanese lessons | The Economist

posted by エコノミストを読む人 at 08:48| Comment(0) | 世界 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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