2015年09月11日

南アフリカの国営企業 [The Economist]


南アフリカの港町、ポートノロス(Port Nolloth)は人口わずか数千人しかいないにもかかわらず、驚くほどたくさん、ドイツの高級車(luxury German cars)が走りまわっている。というのも、付近のダイヤモンド鉱山からお宝をくすねてくるからだという。

The government says that only 10% are stolen.

南アフリカ政府は言う、たった10%しか盗まれていない。




警備員は気がついた、伝書バト(homing pigeon)がよく飛んでいるのを。

One old wheeze for getting gems out is to smuggle homing pigeon into the mine and then send them winging their way home carrying cargoes of rough diamonds.

宝石を持ちだす古くからの手口の一つに、伝書バト(homing pigeon)がある。鉱山に潜り込ませ、ダイヤモンドの原石を自分の巣箱へと運んでこさせるのだ。

鉱山のマネージャーは、やっとわかった。この小さな町に鳩クラブ(pigeon club)が6つもある理由が。


South Africa's state-owned diamond miner, Alexkor, has managed to make a hash of it. Over the past decade it has posted losses more often than profits and has needed frequent bail-outs.

南アフリカの国営ダイヤモンド採掘企業、Alexkor はすっかりダメになっている。過去10年間、利益よりも損失を多く計上してきた。救済措置(bail-out)もしばしばだ。





南アフリカには700以上の国有企業(state-owned firm)があるという。電力公社のエスコム(Eskom)、運輸公社のトランスネット(Transnet)、南アフリカ航空(SAA, South African Airways)などなど。

Many state-owned firms are also racking up large losses and guzzling subsidies.

多くの国営企業もまた巨大な損失を計上しており、補助金(subsidies)ばかりをガツガツ食らっている。

南アフリカ航空(SAA)はこの20年間で、300億ランド(約2,700億円)以上の政府援助を受けている。電力のエスコムは停電(power cut)をおこすこと頻繁で、工場や鉱山の生産性をいちじるしく損ねている。運輸のトランスネットもまた、輸送の障害となっている。

During the global commodity boom before the 2008 financial crisis South Africa's mines struggled to expand because underinvestment by Transnet had led to bottlenecks at ports their exports by as much as 50% had they had the means to get their minerals out to international markets.

2008年の金融危機以前の、世界的なコモディテーブームの間、南アフリカの鉱山はなかなか拡張することができなかった。というのも、資金不足のトランスネット社が港で輸出の妨げとなっており、掘り出した鉱物の半分も国際市場に出せなかったかったからだ。

Power shortages contributed to the dire economic news released on August 25th showing that the economy had shrunk at an annual rate of 1.3% in the three months to June.

電力不足によって、今年8月25日の経済ニュースが暗いものになってしまった。南アフリカの経済は第2四半期、年率換算で1.3%縮小していたのである。

Some economists reckon that if Eskom and Transnet were better run, the country could be growing at up to three times its current sickly rate, optimistically forecast to hit 1.5% this year.

もしエスコム社やトランスネット社がもっとうまくやっていれば、南アフリカは現在の弱々しい数字の3倍は成長できた可能性がある、と言うエコノミストもいる。楽観的な予測として今年は1.5%の成長を遂げられたかもしれない、と。





それでも、南アフリカ政府は懲りることがない。

Instead of learning the obvious lesson, that the state is not good at running businesses, the South African government seems keen to double down.

国家はビジネスが苦手だ、という明らかな教訓を学ぶかわりに、南アフリカ政府は負けを取り返そうと賭け金を熱心に増やしている。

コモディティー価格の低迷こそが、悪の元凶だと思い込んでいる。Ngoako Ramatlhodi 鉱物エネルギー大臣は言う、

We think we should give it a push and see if it works.

われわれはもっと国営企業を後押して、その後どうなるかを見守るべきだと思っている。

あくまでも自由市場(market)とは距離をおき、国こそが開発をおこなうのだという姿勢をくずさない。





歴史的には、1994年にネルソン・マンデラ氏が白人政権を受け継いだあと、与党ANC(African National Congress)によって南アフリカの民営化(privatisation)は進められた。輸入関税(import tariffs)を下げ、海外からの投資を呼び込んだ。

Yet this dash to privatisation soon slowed, because of opposition from COSATU and SACP, both of which are allies of the ANC. 

しかしながら、民営化への勢いはすぐに減速した。与党ANC(African National Congress, アフリカ民族会議)の連立相手であったCOSATU(Congress of South Africa Trade Unions, 南アフリカ労働組合会議)SACP(south African Communist Party, 南アフリカ共和党)によって反対されたからだった。

By 2007 privatisation fell victim to political infighting within the ANC as an alliance of unionists and leftists ousted then-president Thabo Mbeki and backed his replacement by Jacob Zuma, the current president.

そして2007年までには、政治的な内紛のなかで民営化は犠牲になってしまった。与党ANC(アフリカ民族会議)は労働系(unionists)や左翼系(leftists)などの連立相手と折り合いがあわず、当時のムベキ大統領は追い出され、現大統領であるズマ氏がその座についたのだった。

ズマ氏は大統領になるのと引き換えに、左派と約束を交わした。

The left got policies committing the governing party to "strengthening  the role of state-owned enterprises".

左派は与党から、国営事業(state-owned enterprises)の役割を強化する、という政治的公約を得た。

それまでの財務大臣は脇へどけられ、現在では共産系の2人、Ebrahim Patel 経済開発大臣(the economic development minister)Rob Davis 貿易大臣(trade minister)が経済に関する新たなプランを練ることになった。

Their model is China.

彼らのお手本は中国だ。

An ANC policy document gushes that the economic "leadership of the Communist Party of China...should be a guiding lodestar of our struggle.

ANC(アフリカ民族会議)の政策文書(policy document)には、こう謳われている。「中国共産党による経済的なリーダーシップは、苦境にある我らにとって導ける北極星(a guiding lodestar)となるべきだ」と。













(了)






出典:
South Africa's state-owned companies
"Commanding plights"
The Economist, Aug 29th 2015




posted by エコノミストを読む人 at 14:09| Comment(0) | アフリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月10日

課税がわりの料金徴収 [The Economist]


トイレ(loo)を流すにも、お金をとられるとしたら?

As cash strapped Western countries try to balance their books without raising unpopular taxes, they are charging higher fees for everyday services.

カネに困った西洋の国々は、不人気な増税を回避して会計の帳尻を合わせようとしている。毎日の公共サービスをより高い値段で有料化しているのだ。

今世紀初頭にくらべ、アメリカでは25%も公共料金が値上がりしたという。EU諸国の半分も、金融危機以来、医療費(health care charges)が上がっている。

In Britain, where a severe fiscal squeeze is under way, new fees are popping up in unexpected places, from the criminal courts to municipal pest-control agencies.

財政の引き締めが厳しいイギリスでは、法廷から自治体の害虫防除まで、思わぬところで新たな料金(new fees)が発生している。





Pay-as-you-go(利用した分だけ料金を払う)、そんなシステムを政府は採用しつつある。

Charging for services helps allocate resources efficiently, deterring overconsumption, just as parking meters stop people hogging spaces. Fees can be fairer than general taxation.

サービスごとに料金をとることで、限られた資金(resources)を効率的に分配できるようになる。たとえば、パーキングメーターを設置した場所が占有されなくなるように、使いすぎ(overconsumption)を防ぐことができる。料金制は広範な課税よりも公平になりうる。

節水する人(frugal users)が、水を出しっぱなしにする人(those who taps gush)と同じ料金だとしたら、いかにも不公平だ。とはいえ、その陰には政府の都合(political expediency)が見え隠れしている。

The recent spread of fees has less to do with economics than with political expediency.

近年における料金化の広がりは、経済的な理由というよりも、政治的なご都合主義(political expediency)が過分にある。

掲げたとたんに叩かれてしまう増税とちがって、料金の値上げならば簡単に通ってしまう。

It is no wonder charges are popular with governments. They are less loudly opposed than tax increases or welfare cuts. Britain's government will lose fewer votes a jump in the cost of getting divorced than an equivalent cut in benefits to the elderly, say.

料金制が政治家に人気なのは当然だ。増税や福祉削減ほど、やかましく反対されない。たとえば高齢者への給付をカットするよりも、同額の離婚費用を一気に値上げするほうが、イギリス政府は票を失わずに済むだろう。

こうなってくると、すでに手数料(charge)という名の税金(tax)だ。たとえばイギリスで扶養家族(dependent relative)のビザを取ろうとすると、その料金は2,141ポンド(約40万円)必要だが、それは実際の手続きでかかる費用の3倍以上だという。

When a charge exceeds the cost of a service it becomes a tax.

手数料(charge)がサービスの費用を超えたら、それは税金だ。

法廷という、まさに ”囲われた市場(captive market)” においては、じつに簡単に大金が巻き上げられる。

In America, whose courts are the most entrepreneurial in the developed world, charges are so high and widespread that many offenders end up in jail for non-payment.

アメリカは法廷においても、先進国のなかで最も起業家精神に富んでいる。その料金があまりにも高額で多岐にわたるため、法を犯してしまった人々は結局、金のかからない監獄の中に落ち着いてしまう。





イギリスでは2013年、雇用にかかわる訴訟料金を大幅に値上げしたところ、性差別(sex-discrimination)の訴えが83%減少したという。

People with strong cases have been priced out.

強く主張する人ほど、法外な値段をふっかけられてしまうのだ。

アメリカは特にそうらしいが、増税(tax increases)という言葉にアレルギーを起こしてしまう議員は数多い。だから、増税と言わずに政府の収入を増やそうとする。

Advocating low taxes while backing bogus, revenue-raising "charges" is a phoney sort of fiscal responsibility. It is a scam.

インチキくさく手数料を上げておいて安い税金を唱えることで、財政責任をはぐらかしているようなものだ。それじゃ詐欺(scam)だ。

Charging for public services sometimes makes sense. Often, though, it is a racket.

公共サービスを有料化することは、ある意味、理にかなっている。しかし時には、詐欺まがい(racket)にもなりえるのだ。













(了)






出典:
The Economist, Aug 29th 2015
Pay-as-you-go government, "It'll cost you"



posted by エコノミストを読む人 at 06:09| Comment(0) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月09日

ブラジルの落ちた穴 [The Economist]



Brazil's policymakers have stuck their heads in the sand.

ブラジルの政治家たちは、砂の中に頭を突っ込んでしまった。

世界的なコモディテー・ブームの終焉、インフレの高進、消費の低迷、失業率の急増、通貨レアルの暴落(free-falling)…。なすすべのなくなってしまったブラジルの政治家たち。悲惨な現実から目をそらそうと頭を砂に突っ込んでしまった(ダチョウは危機を感じると、そうするという俗説がある)




Its economy is in deep trouble and its fiscal credibility is crumbling fast. Brazil's GDP is expected to contract by 2.3% this year.

深刻な問題を抱えこんだブラジル経済、その財政的な信頼性はもろくも崩れた。ブラジルの今年のGDPは2.3%縮小すると見られている。

ルセフ大統領は来年度の予算案(draft budget)において、ハイパーインフレ時代後(post-hyperinflation era, 1980-95)初の赤字(primary deficit)を組み入れなければならなかった。

This year a planned primary surplus (ie, before interest payments) has vanished. Once interest payments are included, the total deficit this year is projected to be 8-9% of GDP.

今年計画された、金利支払い前の黒字(primary surplus)は消え去っていた。金利の支払いを勘定にいれると、全体の赤字額(the total deficit)はGDP比8〜9%と見積られた。

政府は借金をしなければならなくなったわけだが、ブラジルの借り入れは高くつく。経済規模に比べて国の金利(interest rate)が高いからだ。

Since the turn of the century Brazil's government has been guided by three principles: a credible inflation target, a floating currency and primary surpluses, ideally large enough to bring public debt down. 

今世紀、ブラジル政府は3つの原則(three principles)によって導かれてきた。信頼のおけるインフレ目標、変動相場、そして黒字(surpluses)の3つであり、公的負債を減らすには十分すぎるくらいだった。

この三本柱(tripod)のおかげで、ブラジルはハイパーインフレという過去を拭い去ることができていた。くわえて、数百万人を貧困から抜け出させた力強い成長もあった。

しかし現在

All this is now in jeopardy.

これらすべてが今、危険にさらされている。





ルセフ大統領ひとりを責めるわけにもいかないが、8%という支持率(public-approval rating)はあまりにも低い。議会での権威も損なわれている。

Lawmakers are also angered by her finance minister's attempts to rein in pork-barrel spending, and alarmed by a wide-ranging investigation into corruption at the state-controlled oil giant, Petrobras.

ブラジルの政治家たちはルセフ大統領に怒っている、彼らの金ヅルである助成金(pork-barrel)が財務大臣によって減らされそうになっているからだ。そして国家の管理下にある巨大石油企業、ペトロブラスに対して広範な汚職(corruption)捜査をしないよう警告している。

ルセフ大統領はプライマリーバランスの黒字化のために、2007年に廃止されていた金融取引税(a tax on financial transactions)を復活させようとしている。しかし、これは不人気だ。彼女の側近は言う、

It is stuffed with short-termists who are more concerned with lining their pockets than securing Brazil's future. Many, both in the opposition and among her supposed allies, are wasting their energy trying to impeach Ms Rousseff.

ブラジルの将来を案じるよりも、自分の財布をいっぱいにしたい近視眼的な奴ら(short-termists)ばかりがひしめいている。反対派であれ支持派であれ、たくさんの人々がルセフ大統領を弾劾しようと、無駄にエネルギーを費やしている。

ブラジルの行き詰まり(impasse)を早急に解決しなければ、信頼感(confidence)は損なわれる一方だ。海外の投資家たちが手を引いてしまえば、ブラジルは何年となくスランプに落ち込み、国の格付けも下げられてしまうだろう。

Ms Rousseff falls far short of that ideal.

ルセフ大統領は、理想のずっと手前で落ちてしまった。

ブラジルの公的支出(public spending)はGDPの40%と、中所得国(middle-income countries)にしてはずいぶん高い。しかし、その削減を試みようにも、来年の予算案では最低賃金の上昇と社会福祉への支払いがすでに約束されており、逆に10%も上昇する計算である。

Brazil is in an economic hole, and still digging.

ブラジルは経済の穴に落ち込んでしまった。そしてさらに墓穴を掘り続けている。













(了)






出典:
The Economist, Sep 5th 2015
Brazil's disastrous budget "All fall down"


posted by エコノミストを読む人 at 07:42| Comment(0) | 南北アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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