日本の消費者物価指数(CPI, Consumer Price Index)は、7月の時点でマイナスに転じた。
エコノミスト誌は言う。
After two years of remission, Japan seems likely to sink back into the "chronic disease" of deflation.
2年ほど治まっていたデフレという持病(chromic disease)に、日本はふたたび落ち着いたように思われる。
”2年”というのは、日銀の総裁に黒田東彦氏が就任した2013年からの期間を指す。2年前、黒田氏は言った、2年後にはインフレ率を2%まで上昇させる、と。そして大量の円紙幣を印刷してバラ撒いた。
日銀がこれまで購入した日本国債(JGBs, Japanese government bonds)は、長期のもので約800億円にのぼる。これは2年分の長期国債発行額に相当する。総額では現在、既発債(outstanding bonds)の3分の1にあたる3兆円分を日銀が保有している。
こうした金融緩和(monetary easing)は副作用をともなう。日本円が弱くなることによって輸出を主体とする大企業は恩恵をうけるが、中小企業や家計は輸入品の物価上昇という打撃をうける。また、日銀ばかりが国債を買い占めることによって、市場の健全な競争が損なわれる。政府の財政規律(fiscal discipline)も蝕まれてしまう。
2年間の派手な金融緩和の末が物価下落だったことに対して、黒田総裁はこう説明している。
The falling oil price has pushed down core CPI.
原油価格の下落が、コア(基礎的)CPI(消費者物価指数)を下押した、と。
ちなみに、原油価格の変動はエネルギーには加算されるも、生鮮食品(fresh food)には加味されない。
黒田氏はこれまで、インフレターゲットの達成期限(the deadline for achieving)を2度延期している。新たな2%達成期限は来年の夏となっているが、それも難しくなってきた。
Shinzo Abe, the prime minister, said he understood the bank's explanation that reaching the target of 2% is in fact getting difficult.
インフレ目標の2%に到達するのは事実上、難しくなってきたとする日銀の説明に、安倍晋三首相は理解を示した。
日本経済は第2四半期に、年率換算1.6%縮小している。それでも政府と日銀は、経済が好転しつつある(on the mend)と信じている。そして最大の問題は「お気に入りのインフレ指標(つまりCPI)」にエネルギーが含まれていることだと考えた。
それゆえか、CPI(消費者物価指数)がマイナスに転じた7月、政府は静かに新しい指標(a novel measure)、「食料およびエネルギーを除く総合」を月次の報告書で公示した。それを人は「new core CPI」と呼ぶ。この新しい指標では、生鮮食品と同様、エネルギーのコストが排除されている。
するとどうだ、消費者物価指数は0.7%のプラスになるではないか!
"New core CPI" is rising by a relatively brisk 0.7%.
(了)
出典:The Economist, Aug 29th 2015
Finance and economics, Monetary policy in Japan