2015年09月03日

日本独自(?)新しいインフレ指標 [The Economist]



日本の消費者物価指数(CPI, Consumer Price Index)は、7月の時点でマイナスに転じた。

エコノミスト誌は言う。

After two years of remission, Japan seems likely to sink back into the "chronic disease" of deflation.

2年ほど治まっていたデフレという持病(chromic disease)に、日本はふたたび落ち着いたように思われる。



”2年”というのは、日銀の総裁に黒田東彦氏が就任した2013年からの期間を指す。2年前、黒田氏は言った、2年後にはインフレ率を2%まで上昇させる、と。そして大量の円紙幣を印刷してバラ撒いた。

日銀がこれまで購入した日本国債(JGBs, Japanese government bonds)は、長期のもので約800億円にのぼる。これは2年分の長期国債発行額に相当する。総額では現在、既発債(outstanding bonds)の3分の1にあたる3兆円分を日銀が保有している。

こうした金融緩和(monetary easing)は副作用をともなう。日本円が弱くなることによって輸出を主体とする大企業は恩恵をうけるが、中小企業や家計は輸入品の物価上昇という打撃をうける。また、日銀ばかりが国債を買い占めることによって、市場の健全な競争が損なわれる。政府の財政規律(fiscal discipline)も蝕まれてしまう。



2年間の派手な金融緩和の末が物価下落だったことに対して、黒田総裁はこう説明している。

The falling oil price has pushed down core CPI.

原油価格の下落が、コア(基礎的)CPI(消費者物価指数)を下押した、と。

ちなみに、原油価格の変動はエネルギーには加算されるも、生鮮食品(fresh food)には加味されない。



黒田氏はこれまで、インフレターゲットの達成期限(the deadline for achieving)を2度延期している。新たな2%達成期限は来年の夏となっているが、それも難しくなってきた。

Shinzo Abe, the prime minister, said he understood the bank's explanation that reaching the target of 2% is in fact getting difficult.

インフレ目標の2%に到達するのは事実上、難しくなってきたとする日銀の説明に、安倍晋三首相は理解を示した。



日本経済は第2四半期に、年率換算1.6%縮小している。それでも政府と日銀は、経済が好転しつつある(on the mend)と信じている。そして最大の問題は「お気に入りのインフレ指標(つまりCPI)」にエネルギーが含まれていることだと考えた。

それゆえか、CPI(消費者物価指数)がマイナスに転じた7月、政府は静かに新しい指標(a novel measure)、「食料およびエネルギーを除く総合」を月次の報告書で公示した。それを人は「new core CPI」と呼ぶ。この新しい指標では、生鮮食品と同様、エネルギーのコストが排除されている。

するとどうだ、消費者物価指数は0.7%のプラスになるではないか!

"New core CPI" is rising by a relatively brisk 0.7%.






(了)






出典:The Economist, Aug 29th 2015
Finance and economics, Monetary policy in Japan




posted by エコノミストを読む人 at 09:52| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月01日

戦後70年の安倍談話、アジアへの反響 [The Economist]



第二次世界大戦の終戦から70年、台湾では李登輝(Lee Teng-hui)元総統の発言が物議をかもし出していた。

The 70th anniversary this year of Japan's second-world-war surrender as meant to "harass Japan and curry favor with China".

抗日戦70周年は、日本をいじめて中国に媚を売る(curry favor)ものだ。

台湾では7月4日に抗日戦争勝利70年を記念する式典が行われ、台湾軍の特殊部隊などが戦闘技術などのデモンストレーションや軍事パレードを行った。李登輝氏はそれを批判したのであった。





92歳になってなお気骨あふれる李登輝氏は、世に知れた親日派(fondness for Japan)だ。彼は言う。

Taiwan had been part of Japan.
台湾はかつて日本の一部だった。

日本統治時代の台湾に生まれた彼は、その流暢な日本語で「21歳(終戦の1945年)まで私は日本人だった」と言ってはばからない。戦時中は京都帝国大学に在学しており、学徒として出陣、名古屋で終戦をむかえた。彼にとって日本は "motherland(祖国)" なのである(本人弁)。



しかし、台湾においても中国においても、李登輝氏のような親日派は少ない。

Mr Lee's views are not uncommon in Taiwan. Nor, across Asia.

中国のメディアは李氏の批判を、"absurd remarks(ばかげた発言)" と一蹴した。中国本土では9月3日、抗日戦70周年を大々的な軍事パレードで祝うことになっている。『人民日報』はパレードの目的を「日本を震え上がらせ、戦後の世界秩序を維持する中国の断固とした決意を世界に向けて宣言すること」と書いている。



しかしエコノミスト誌は言う。

The angry derision was perhaps all the more intense because, historically, Mr Lee had a point. 

怒れる嘲笑はいよいよ激しくなるだろう。というのも、歴史的にみると李氏は的を得ている(has a point)からだ。




日本の安部政権は8月14日、戦後70年の談話を発表した。

それをエコノミスト誌は以下のように評する。

His "apology" itself, issued as a formal statement by his cabinet, was also seen as inadequate. It had all the right words, but glossed over some crimes, such as the imperial army's sexual enslavement of women.

内閣の公式声明として出された安部首相の”謝罪(apology)”は、不十分(inadequate)なように思われる。まったく正しい言葉で綴られているのだが、いくつかの戦争犯罪、たとえば帝国陸軍による従軍慰安婦(sexual enslavement of women)などに関して、うまく言い抜けてしまっている(glossed over)

This hints at the rosy version of Japan's imperialist past with which the country's far right likes to delude itself: Japan as liberator rather than coloniser and, in second world war, as victim rather than aggressor.

この談話は、日本の帝国主義を美化した見解(the rosy version)である。日本を植民地への入植者(coloniser)ではなく解放者(liberator)として、第二次世界大戦における侵略者(aggressor)というよりはむしろ犠牲者(victim)として記されており、これは日本の極右思想(far right)を正当化するものである。



当然のごとく、中国と韓国はこの談話に反発した。

China's official news agency dismissed it as "lacking sincerity". South Korea's president, Park Geun-hye, complained more soberly that it "did not quite live up to our expectations".

中国の国営放送は「誠意に欠ける(lacking sincerity)」とはねつけ、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領はもっと大真面目に「われわれの期待にまったく応えていない(did not quite live up to our expectations)」と不平を鳴らした。



両国に対して、安部首相の覚えは極めて悪い。

In China and  South Korea he is seen as a revisionist intent on whitewashing Japan's war record, jettisoning its pacifist constitution and making Japan strong and proud again.

中国と韓国では、安倍氏は戦争の歴史を歪曲(whitewash)しようと目論む修正主義者(revisionist)であり、平和憲法(pacifist constitution)を投げ捨て、日本にふたたび強さと誇りを取り戻そうとしている、と思われている。



エコノミスト誌は中韓両国の反応をこう評する。

In China the Communist party seeks to exploit the struggle against Japan to bolster its own legitimacy. South Korean nationalism, too, is founded in opposition to Japan. For South Korea, as for China, almost any apology would be unacceptable.

中国では、共産党が日本とやり合うことによって自身の正当性(own legitimacy)を高められる。韓国でも同様、日本と反対の立場をとることが自国の存立基盤となっている。 韓国にしろ中国にしろ、およそどのような謝罪であれ受け入れられるものではないだろう。



一方、東南アジア(South-East Asia)においては事情が異なる。

In South-East Asia, Japan's war guilt and perceived remorse seem to matter less to government and citizens. That is partly for historical reasons: Japan's invasion and colonial rule in South-East Asia were harsh but also comparatively short.

東南アジアにおいて日本の戦争犯罪に対する反省は、政府にとっても市民にとってもさほど重要ではない(matter less)。というのも、東南アジアにおける日本の侵略(invasion)と植民地支配(colonial rule)は歴史的にみて厳しかった(harsh)かもしれないが、比較的短い期間で終わっているからだ。

But most of all, South-East Asia has many other reasons to get on with a country that has been an important donor, trading partner, investor and, recently, potential ally against a rising China.

しかし何といっても、いまや日本は東南アジアにとって重要な援助者(donor)であり、貿易相手国であり、投資者である。そして最近では、台頭する中国に対抗する影の同盟者(potential ally)でもある。

A proper apology would be welcome, but it is less important.

然るべき謝罪(a proper apology)は大歓迎だが、それほど重要ではない。



確かに、日本は悪一面とは言い切れない。

Asian views of Japan's 20th-century expansionism are not all negative.

20世紀における日本の領土拡張政策(expansionism)に対するアジアの人々の考えは、否定的なものだけとはかぎらない(not all negative)



それでもエコノミスト誌は最後に、こう釘をさす。

But that is no reason why they should not be offered a better one.

そうは言っても、日本がもっとましな談話(a better one)を提示しなくていいという理由にはならない。






(了)






出典:
The Economist, Aug 29th 2015
Asia, Banyan「The uses of history」


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2015年08月31日

世界同時株安


It was a dramatic week for global stockmarkets, as fears deepened about whether the Chinese economy was heading for a "hard landing". Many share indices swung wildly.

世界の株式市場(stockmarkets)にとって、なんとドラマチックな一週間であっただろう。中国経済がハード・ランディング(硬着陸;急失速)に向かっているのではないかという懸念が深まりゆくとともに、多くの株価が荒々しく揺れ動いた(swung wildly)

The main Shanghai index plunged by more than 8% in a single day, its biggest loss since early 2007, wiping out the gains it had made since the start of the year.

上海市場はたった1日で8%以上の急落(plunged)、2007年初頭以来、最悪の損失となった。これで年初からの上昇分(gains)が帳消しとなった(wiping out)

The S&P 500, FTSE 100 and other markets in Europe and Asia were also rattled, with some recording their steepest falls since the financial crisis in 2008.

S&P500やFTSE100をはじめ、ヨーロッパやアジアの株式市場は大混乱(rattled)。2008年の金融危機以来、記録的な急激な落ち込みとなった。

By mid-week the markets had rebounded, chalking up huge gains in some places, but trading remained tense.

週の半ばまでは市場も反発(rebounded)、一部地域では巨大な利益が得られた。しかし、緊迫したトレードはまだ続いている(remained tense)


Business this week
The Economist, Aug 29th 2015






posted by エコノミストを読む人 at 08:39| Comment(0) | 金融 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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